25 / 68
両親の異変
しおりを挟む
扉にはもうすでにメイドと数名の衛兵が待ち構えており、今すぐにでも出発ができるように準備されていた。
二頭の芦毛の馬が並び、それを引く馬車はピカピカの黒塗り、大きさも大人が四人座れる程の物だ。
「さぁ、乗れ」
「乗れって……なんで急にそんな迎えに。それに挨拶って」
「顔合わせだ。俺には両親はもういないからな、会うのは俺くらいだ。ローズの意見など俺は聞かん、……もういいだろう」
有無を言わさずに馬車へと押し込み、すぐに扉を閉め鍵を掛けられた。
どうやら中から開けられないように鍵は外のみのようだ。
「……ではニコル様」
「あぁ」
衛兵は荷馬車を操作する使用人に合図を出すと、バシッと手綱を馬に当て、ゆっくりと動き出していく。
動く荷馬車がニコルの前を通過する時、私は必死に開けるように扉を叩くが、動き出した荷馬車を見るなり屋敷内へと戻る姿を目にした。
***
動き出し、中から開ける事が出来ない状態のまま敷地内を抜けた時、私は諦めがついた。
もう生家に行くまでは開けてもらえないな、と。
そう思い、馬車内で大人しく座ることにした。
荷馬車内は真っ赤で、座る椅子もだが、その椅子に至っては座ると自身のお尻が軽く沈み込む感じになり、屋敷の部屋の椅子とはえらい違いだ。
そんな椅子に座りつつ、ゴトゴトと生家へと向かい、しばらくすると街並みが見えてきて、2日ぶりなのに何故か新鮮な感じがした。
こんな馬車に乗っているからだろうか…。
街行く人も通るこの馬車に目を送り、中には手を振る子供もいた。
そして……
ガチャっと鍵を開ける音をした後、扉が開かれた。
「どうぞ、リース様」
「……どうも」
降りた先には私の生家。
色の違う木をつぎはぎに貼り合わせ、隙間がチラホラと見える家。
そんな隙間に風は入るたびにビュービューと乾いた音が鳴り、虫なんて年中入り放題だ。
とてもじゃないが、人に見せれる様な家じゃないなと改めて思った。
「リース!?」
そんな私を両親は出迎えた。
だが、すぐにこの黒塗りの荷馬車に慄き、私に歩みよる足を遅くしていった。
「リース様のご両親ですね。ニコル様の命で来ました。
……こちらを」
衛兵は一枚の紙を両親に手渡し、それを見るなり両親はみるみると顔色を変えていき、紙から目を離すと私を見てきた。
「な、何が書いてあるの?」
私はついその紙が気になり、近寄るが両親は『ダメだ』と一括し、寄る事を拒んできた。
「なんで?それ、ニコルからでしょ?私が見てもいいのでは?」
「だ、ダメだ。……リース、お前はニコル様と婚姻を結べ。いいな?」
「どうして!?まだ会ったばかり」
「関係ない!?必ずしろっ!?」
怒る父に迫ろうとするなり、衛兵が間に入り、『時間がありますので』とだけ言う。
「時間って、なに?その紙には何が?」
「すぐ用意してきます。お待ちを!?」
両親は身支度をするため慌てて家へと戻っていき、その手にはあの紙がくしゃっと握りしめられていた。
二頭の芦毛の馬が並び、それを引く馬車はピカピカの黒塗り、大きさも大人が四人座れる程の物だ。
「さぁ、乗れ」
「乗れって……なんで急にそんな迎えに。それに挨拶って」
「顔合わせだ。俺には両親はもういないからな、会うのは俺くらいだ。ローズの意見など俺は聞かん、……もういいだろう」
有無を言わさずに馬車へと押し込み、すぐに扉を閉め鍵を掛けられた。
どうやら中から開けられないように鍵は外のみのようだ。
「……ではニコル様」
「あぁ」
衛兵は荷馬車を操作する使用人に合図を出すと、バシッと手綱を馬に当て、ゆっくりと動き出していく。
動く荷馬車がニコルの前を通過する時、私は必死に開けるように扉を叩くが、動き出した荷馬車を見るなり屋敷内へと戻る姿を目にした。
***
動き出し、中から開ける事が出来ない状態のまま敷地内を抜けた時、私は諦めがついた。
もう生家に行くまでは開けてもらえないな、と。
そう思い、馬車内で大人しく座ることにした。
荷馬車内は真っ赤で、座る椅子もだが、その椅子に至っては座ると自身のお尻が軽く沈み込む感じになり、屋敷の部屋の椅子とはえらい違いだ。
そんな椅子に座りつつ、ゴトゴトと生家へと向かい、しばらくすると街並みが見えてきて、2日ぶりなのに何故か新鮮な感じがした。
こんな馬車に乗っているからだろうか…。
街行く人も通るこの馬車に目を送り、中には手を振る子供もいた。
そして……
ガチャっと鍵を開ける音をした後、扉が開かれた。
「どうぞ、リース様」
「……どうも」
降りた先には私の生家。
色の違う木をつぎはぎに貼り合わせ、隙間がチラホラと見える家。
そんな隙間に風は入るたびにビュービューと乾いた音が鳴り、虫なんて年中入り放題だ。
とてもじゃないが、人に見せれる様な家じゃないなと改めて思った。
「リース!?」
そんな私を両親は出迎えた。
だが、すぐにこの黒塗りの荷馬車に慄き、私に歩みよる足を遅くしていった。
「リース様のご両親ですね。ニコル様の命で来ました。
……こちらを」
衛兵は一枚の紙を両親に手渡し、それを見るなり両親はみるみると顔色を変えていき、紙から目を離すと私を見てきた。
「な、何が書いてあるの?」
私はついその紙が気になり、近寄るが両親は『ダメだ』と一括し、寄る事を拒んできた。
「なんで?それ、ニコルからでしょ?私が見てもいいのでは?」
「だ、ダメだ。……リース、お前はニコル様と婚姻を結べ。いいな?」
「どうして!?まだ会ったばかり」
「関係ない!?必ずしろっ!?」
怒る父に迫ろうとするなり、衛兵が間に入り、『時間がありますので』とだけ言う。
「時間って、なに?その紙には何が?」
「すぐ用意してきます。お待ちを!?」
両親は身支度をするため慌てて家へと戻っていき、その手にはあの紙がくしゃっと握りしめられていた。
1
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
2度目の人生は好きにやらせていただきます
みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。
そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。
今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」
先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。
「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。
だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。
そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる