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立場が逆

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「なんだ?どうかしたか?」

「いえ…なんでもありません。お願いします」

扉をゆっくり開く。
だが、そこにはアランさんは居なかった。
ホッと胸を撫で下ろす私にクロウさんは側にいてくれた。
でも…少し近いと言うか私の肩がぶつかっていた。

何かあった時には安心だが、ぶつかる右肩が気になってしまった。

「いくぞ」

私はいるかもしれないアランさんとぶつかる肩、両方を気にしながら歩いていく。

でも、やっぱり気になってしょうがないから言ってしまった。

「あの…近くに居てくれるのはありがたいですが、
ぶつかって歩くのは気になります…。
もう少し…」

「じゃあお互い廊下の両端を歩くか?」

「別にそこまでしろとは…なんでそんな極端なんです?1人分くらい開けてくれたら…」

クロウさんは私から少し離れてくれた。
そして、こう告げてきた。

「明日は先程くらいな距離じゃないと変に思われるぞ?」

「…大丈夫です。明日だけですから」

「そうか…」

私とは逆の方を向き、ふぅ…と息を吐いていた。 

もしかして、明日以降もさっきくらいの距離感で居たいのかと思ったが、やはり不安がある。
それにいま部屋に戻る際も歩みが少し遅めだ。

合わしていると言うよりゆっくり歩き、少しでも長く私といることを望んでいるみたいだ。

でも、私の気持ちは早く部屋に着き、鍵を掛け、安心する方に向いていた。

だからクロウさんより歩く速度を速めていった。

「おい、早いぞ?」

「少し前まで私の先をスタスタ歩いていたのに、何故今は歩みがゆっくりなんですか?
それに、早く休めって言ったから早く着いてゆっくりしたいです」

「まぁ、そう言ったが…」

「じゃあ行きましょうよ、早く。いつもみたいに」

私はいつもとは逆。
先に私が歩く形になった。
でも、クロウさんが小さく呟く…。

「ちょっ…れよ…」


先を歩いていた私は全部は聞き取れなかったが、そこは気にしなかった。

そして、私はようやく自分の部屋にたどり着き、
クロウさんに頭を下げお礼を言うと、部屋に入ろうとした。

「あやか…明日は頼む…」

扉のノブを握りながら私は振り返る事なく、こくりと頷き部屋へと進んだ。


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