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今は頼るしか…

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「来ないで!本当に刺しますよ!」

「やってごらん、でもしっかり考えた方が良いのはあやかさん、君の方だよ」

「えっ、どういう…」

「はははっ、君は僕の立場を忘れてないかな?
仮にも私はこの国、ローツェの王子だよ。
そんな人を刺したら君は処刑されてもおかしくない。
…いや、断罪だね」

「あっ…」

アランさんの言葉で私は構えたナイフを少し下に向けた。
そうだ…この人は王子だ…。
そう思ったら今向けているこの場を見られてヤバいのは…私だ。

下に向けたナイフはさっきまでの脅威は無くなりすぐにでも取り上げられそうだった。

「どうやら納得したみたいだね。君のが今はマズい立場だと」

頭を下げ項垂れた私にアランさんは近づき、手を伸ばし手からナイフを取り上げようとした。

(取られたらもう逃げれない…!)

そう思った私は顔を上げ、ナイフを横に振った。
ナイフはアランさんの手をかすめ、そこから血が流れ出した。

「なっ!」

驚き、一歩だけ後ろに下がったアランさんを見て、私はすぐに思った。

(今しかない…!)

すぐ横を走り抜け部屋から脱出した。



「どうする…どうする…どうする…」

走りながら安全な場所を探すが、出てこない。
ミハエルさん…マリーさん…
頼れそうな人を思い浮かべるが迷惑をかけてしまいそうだ。

クロウさん…?

後ろから追いかけてくるかもしれないアランさんがいる状況で私は走る足をピタッと止めた。

「いや…クロウさんは…」

コツっ…コツっ…とゆっくりと
でも確実に私を追ってくる足音が近くまで来ていた。

「ーーーー今は頼るしか…」

私はクロウさんの部屋に向かい出した。

何度も後ろを振り向き、来る気配がするアランさんに恐怖を感じていた。

(確かここを曲がれば…)

今日来た道を思い出し、興味が無く、聞き流していた壺や鎧を目印に部屋を目指す。
そして、見覚えがある廊下に出た。

「もうすぐそこだ…」

私がクロウさんの元に向かっていると思ったのだろうか…アランさんは歩くスピードを早め、足音が先程よりも近くに聞こえてくる。

ドンドンドン!?

私は早く開けてと願いながら何度も扉を叩いた。

「うるせぇな!誰だ!?」

扉が開くと煙たそうな顔をしながらクロウさんが顔を出す。

「…あやか、何故?」

「いいから!私を入れて!?」

状況を理解できないクロウさんだったが、私の後ろを走って追ってくるアランさんを見て、手を掴みすぐに中に入れた。
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