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マナーの入口

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部屋に入ると見えたのがテーブルに置かれた食器やナイフ、フォーク。
予め用意していた様で綺麗に並べられていた。

「じゃあ、やるか」

「お、お願いします…」

私は礼をし、教えを乞う。
しかし、いきなり違うといってくる。
えっ、と思い頭を上げると腕を組んでしかめっ面のまま言う。

「角度がなってない。それじゃあ笑われるだけだ。
そんな体を折り曲げるな、45°が正解だ。もう一度」

まさか、もう始まってるとは…。
てっきりテーブルマナーを学ぶんだと思っていたらお辞儀から。
やらずにいると、おい。とドスが効いた声が飛んでくる。
スパルタだ…。

「明日まで全部覚えるまでは終わらんからな?」

「覚えるまで、ってどれだけあるんですか?」

「さぁな。数えた事なんてない。時間が無いんだから早くやれ」

もう私の気持ちなんて無視し、口調も元に戻っている。
全然人の話なんか聞いていない、この人は。

「違う。もう一度。…違う、何回言ったらわかるんだ?お前は」

繰り返しお辞儀ばかりをさせられる。
そんなにガミガミ言うなら手本くらい見せて欲しいとお願いすると、フンッと鼻息をつき、見てろと言う。

「…」

直立でビシッと立ったかと思ったら腰から上だけ傾けて私にお辞儀をする。
下半身は全くブレてなく、そんなお辞儀をする姿に少しブルッとした…。

(なんであんな綺麗に…)

私はクロウさんから目線を外した。

「分かったか?姿勢が良ければそれだけで印象が違う。…おい、見てなかったのか?」

「…見てましたよ」

「なら何故こっちを見ない?さては、お前…見惚れたな?だから俺を見るのが恥ずかしいんだろ?」

「…また自意識過剰ですか?私はあなたに惚れたりはしないですよ。ただ、育ちが良いなと思っただけです」

「まぁな、近い将来一国の王になるんだ。礼儀作法くらい完璧に出来ないなんて笑われる。
俺よりお前だ。コレが出来ないと先なんて今日中には終わらんぞ!」

やっぱりこんな役引き受けるんじゃなかった…。
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