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目覚めたら遠い国
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カランカラン…
「いらっしゃいませ」
私は榊原彩香、小さな街の動物病院で働く、ごくごく普通な女、25歳。
周りでは髪を染めたりオシャレをしたりするが、私は今まで染めたりした事は無かった。
だが、そんな黒髪も周りから綺麗だと褒められるから悪い気はしなかった。
そんな髪を胸辺りまで伸ばした髪は、よく店に来る動物達に食べられる『おもちゃ』となっている。
「先生、この子、いきなり吐いちゃった…。死んじゃうの…?」
母親について来た小さな女の子の悲痛な言葉が私に刺さる。
「大丈夫だよ、私が診てあげる」
病院に来たのは一匹の猫。
真っ白な体は手入れがしっかりされており、大事にされているなとすぐに分かった。
「一度レントゲンを撮ってみます、準備お願いします」
「はい」
レントゲンを撮るとお腹辺りに白く何かあるのが分かった。
形から異物を飲み込んだのではないかと推測した。
「家で何か普段食べない物を口にしたりしませんでしたか?」
「そういえば…」
母親は思い当たる節を私に話し、処置を施した。
すっかり元気になった猫を見て女の子は満面の笑みを浮かべ私にお礼を言った。
「ありがとう、先生!」
「どういたしまして、何かあったらすぐ来てね」
こんな風に私の一日は過ぎていく。
※※※
「ただいまー」
誰もいないマンションの一室で私の帰宅の声に反応し、出迎えるのが黒猫のクロ。
名前はありきたりだが…。
「今日も疲れたよ、クロ」
クロを抱き抱え、リビングへと向かい、私のご飯とクロのご飯を準備する。
「ニャー、ニャー、ニャー…」
今日は催促が激しいみたいだ。いつもと同じ時間に
ご飯なんだが…。
クロにご飯をあげ、その様子を見ていると疲れからか私はご飯も食べずに横になり、眠ってしまった。
『お前さんや、動物に愛されてるのぅ、どうじゃ?動物と話してみたくないか?
お前さんならこの能力を授けようぞ』
ガバッと私は起きた…。
「何、いまの…??」
私は辺りを見渡し、私以外にクロしか居ない事を確認すると夢なんだ、と納得した。
しかし…
『疲れてるの?』
ハッキリと私に話しかけてくる声が聞こえた。
驚き、キョロキョロすると、やはりクロ以外いない。
『ねぇ、大丈夫?』
私はクロと目が合い、まさか…と思いクロに話しかけた。
「ク、クロ…今、話しかけてる?」
『そうだよ』
「キャアァァァア!!??」
私はビックリし、後ろに仰反るとベッドの柱に頭を思いっきりぶつけた。
「いたたたた…」
頭を両手で押さえ、痛みが引くのをジッと待った。
その間、私はクロに目線を送る。
(猫と話せる…。しかもちゃんとキャッチボール出来てる…。さっきのは夢じゃないの…?)
私は寝たらこんな風になったのだから、また寝たら元通りになるんじゃ…と思い、お風呂も入らず、いそいそとベッドに潜り込み寝ようとした。
(早く、早く…)
寝よう寝ようとすればする程、頭が冴え全く寝れなかった。
『ねぇねぇ、遊んでよ』
私と遊びたいクロの声が余計に寝れなくさせた。
強く目を閉じ、布団を被り、真っ暗な状態にさせ体を丸めて寝る事に全力を注いだ。
しばらくすると、すーっと意識が無くなり私はようやく寝れた。
※※※
「んっ…」
私は目を覚ますと部屋で寝ていたのに、今は辺り一面が岩や草、木、近くには川が流れている場所になっていた。
「え…え…」
すぐに起き、とにかく状況を理解しようと周りを見た。
しかし目に映るのは森の様な感じの場所だった。
「いたい…」
私はほっぺを強く摘んだが、痛さがちゃんとあった。
(夢じゃない…現実?)
「おい、誰だ?お前は?」
声のする方を見ると馬に跨った甲冑姿の人がいた。
その甲冑は金色に輝いており、いかにも高そうと分かる程で高貴な人物なんだろうかと思った。
「…誰だと聞いている。言葉が通じないのか?」
腰に携えた剣を抜こうと右手で柄を握ろうとしているのが見えたので慌てて答えた。
「ココ、何処ですか!?」
その人は私の問いに困惑した表情を見せ、私に答えた。
「ローツェだが?知らんのか?」
私は日本じゃない場所に飛ばされたみたいだった…。
「いらっしゃいませ」
私は榊原彩香、小さな街の動物病院で働く、ごくごく普通な女、25歳。
周りでは髪を染めたりオシャレをしたりするが、私は今まで染めたりした事は無かった。
だが、そんな黒髪も周りから綺麗だと褒められるから悪い気はしなかった。
そんな髪を胸辺りまで伸ばした髪は、よく店に来る動物達に食べられる『おもちゃ』となっている。
「先生、この子、いきなり吐いちゃった…。死んじゃうの…?」
母親について来た小さな女の子の悲痛な言葉が私に刺さる。
「大丈夫だよ、私が診てあげる」
病院に来たのは一匹の猫。
真っ白な体は手入れがしっかりされており、大事にされているなとすぐに分かった。
「一度レントゲンを撮ってみます、準備お願いします」
「はい」
レントゲンを撮るとお腹辺りに白く何かあるのが分かった。
形から異物を飲み込んだのではないかと推測した。
「家で何か普段食べない物を口にしたりしませんでしたか?」
「そういえば…」
母親は思い当たる節を私に話し、処置を施した。
すっかり元気になった猫を見て女の子は満面の笑みを浮かべ私にお礼を言った。
「ありがとう、先生!」
「どういたしまして、何かあったらすぐ来てね」
こんな風に私の一日は過ぎていく。
※※※
「ただいまー」
誰もいないマンションの一室で私の帰宅の声に反応し、出迎えるのが黒猫のクロ。
名前はありきたりだが…。
「今日も疲れたよ、クロ」
クロを抱き抱え、リビングへと向かい、私のご飯とクロのご飯を準備する。
「ニャー、ニャー、ニャー…」
今日は催促が激しいみたいだ。いつもと同じ時間に
ご飯なんだが…。
クロにご飯をあげ、その様子を見ていると疲れからか私はご飯も食べずに横になり、眠ってしまった。
『お前さんや、動物に愛されてるのぅ、どうじゃ?動物と話してみたくないか?
お前さんならこの能力を授けようぞ』
ガバッと私は起きた…。
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私は辺りを見渡し、私以外にクロしか居ない事を確認すると夢なんだ、と納得した。
しかし…
『疲れてるの?』
ハッキリと私に話しかけてくる声が聞こえた。
驚き、キョロキョロすると、やはりクロ以外いない。
『ねぇ、大丈夫?』
私はクロと目が合い、まさか…と思いクロに話しかけた。
「ク、クロ…今、話しかけてる?」
『そうだよ』
「キャアァァァア!!??」
私はビックリし、後ろに仰反るとベッドの柱に頭を思いっきりぶつけた。
「いたたたた…」
頭を両手で押さえ、痛みが引くのをジッと待った。
その間、私はクロに目線を送る。
(猫と話せる…。しかもちゃんとキャッチボール出来てる…。さっきのは夢じゃないの…?)
私は寝たらこんな風になったのだから、また寝たら元通りになるんじゃ…と思い、お風呂も入らず、いそいそとベッドに潜り込み寝ようとした。
(早く、早く…)
寝よう寝ようとすればする程、頭が冴え全く寝れなかった。
『ねぇねぇ、遊んでよ』
私と遊びたいクロの声が余計に寝れなくさせた。
強く目を閉じ、布団を被り、真っ暗な状態にさせ体を丸めて寝る事に全力を注いだ。
しばらくすると、すーっと意識が無くなり私はようやく寝れた。
※※※
「んっ…」
私は目を覚ますと部屋で寝ていたのに、今は辺り一面が岩や草、木、近くには川が流れている場所になっていた。
「え…え…」
すぐに起き、とにかく状況を理解しようと周りを見た。
しかし目に映るのは森の様な感じの場所だった。
「いたい…」
私はほっぺを強く摘んだが、痛さがちゃんとあった。
(夢じゃない…現実?)
「おい、誰だ?お前は?」
声のする方を見ると馬に跨った甲冑姿の人がいた。
その甲冑は金色に輝いており、いかにも高そうと分かる程で高貴な人物なんだろうかと思った。
「…誰だと聞いている。言葉が通じないのか?」
腰に携えた剣を抜こうと右手で柄を握ろうとしているのが見えたので慌てて答えた。
「ココ、何処ですか!?」
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