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第3話 出会い

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「皆さん!昨日の声優アカデミー賞受賞の生中継みましたでしょうか!なんとあの謎の人気声優神楽かぐら湊音みなとさんが地声初披露しました!声だけの出演でしたが、ファンの間では地声だけでも聞けて良かったと言う歓喜の声が上がっています!」
「今まで一切本人についての情報はありませんでしたからね~実は私も娘の影響で『ability』見始めましてハマっちゃいましてね。娘も私も今回の地声公表には万歳して喜びましたね(笑)」

朝ご飯食べながらいつものニュース番組を見る。

「たかが地声だけでよくそんな騒げるなぁ」
(ホントは地声じゃないけど…)

世間では地声地声と騒がれているが、若干違う。演じれば良いと言われたので地声より少し高めで、神楽湊音を演じた。このことを知っているのは事務所の関係者と、共演者と本人くらいだ。授賞式の後、汐梛しなさんや涼太りょうたさんからよくあるSNSアプリでおめでとうの連絡がきた。

「地声が公表されたことにより、ネット上では声からして女性ではないかという線が性別に関しては濃厚なようです。」
「年齢の方もまだまだ若そうな声だった、と言うような声上がっています。」

「さてと、」

机の端に置いてあったメガネを手に取ってから、立ち上がり学校の準備をする。授賞式が終わってから初めての登校でみんなにバレていないか多少心配ではあるが、一応皆勤賞目指しているので休むわけにはいかないので学校へ行く。

「おはよぉ。咲槻さつき~見た見た?声優アカデミー賞!ついに地声が聞けたよー!ヤバイねもうホント何回も聞き直したよぉ」
「おはよ。美里、月曜の朝から元気だね~」

相変わらず美里は、友達のいない私を気遣ってか喋りかけてくれる。ちょっと嬉しい。学校に行く楽しみは、これくらいだ。

「あ、そうだ。今日ね昼ご飯なんだけど、部活の人たちと食べることになったんだけど…咲槻さえ良ければ一緒に食べてもいいって言ってくれてるんだけどどう?」
「んー、いやいいよ私は、楽しんどいで」
「そっかー私がいなかったらあんた一人じゃない?大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。1人は慣れてるから」

そう言って私が笑う。すると、

「そっか…てゆーかさ前から思ってたんだけどあんたメガネ似合ってないと思うんだよねぇ~」
「そう?」
「うん、似合ってないというか地味!もっとオシャレなのかけたらさ~こう、あんたの根暗さがなくなって友達増えると思うんだね~」
「いや、結構言うね美里…でも私はこの地味メガネが気に入ってるんだよね~メガネを掛けるだけで誰も近寄ってこないのがいいんだよ、私には」
「メガネ掛けてるから根暗なのかと思ってたけど違うのね(笑)」

といった感じで美里も諦めて話題を変えた。こう言われることはよくあって、中学時代にも何度かあった。でも、私は誰かといるより1人の方が楽だと思っているから特にボッチであることを気にしてはいない。


~昼休み~

教室で1人で食べると声優アカデミー賞の話題で耐えられそうになっかたので、屋上で食べることにした。屋上に行くと最近暑くなってきたからか、誰もいなかった。

(よっしゃー誰もいないー!)

暑くはなっているものの屋上は風が気持ちいい。

(これからはここで食べてもいいかもな…)

誰もいなかったのでルンルン気分で日陰になっているところに座る。日陰になっているところに座ると、教室にいるより涼しいかもしれない。自分で作ったお弁当をひろげ、お昼ご飯を食べる。

(うん、いつも通りの美味しさ♪)

自分のお弁当に自画自賛しながら食べていると、誰かが屋上に入ってきた。出来ればいることをバレたくないので気配を殺す。

「やっぱり、ここだよなぁ。だーれもいなくて居心地いいや」

独り言をいう人物をよく見ると少し前、担任に頼まれて手伝いをした帰りにぶつかった男の子だった。

「あ…」

びっくりしてつい声を出してしまった。その声に気づいた男の子がこちらへ向かってくる。こちらに来たその人は、挨拶をしてきた。

「あ、誰かと思えばこの前の…よっ!覚えてるか?この前廊下でぶつかったの」
「はい、覚えてますけど…」

少し馴れ馴れしい態度。

(なんなのこの人、…なんかすごい馴れ馴れしい)

そんな態度に少し警戒する。でもまぁ同じ学年だから相手にとっては、普通のことなのかもしれない。

「良かった。覚えててくれたんだ!あ、あん時メガネも吹っ飛んでたけど壊れたりとかしてない?」
「はい大丈夫です。これ結構丈夫なんで。で、どーしてあなたは屋上に?用事がないなら別の場所に行っていただけると嬉しいのですが。」

少しうざったいというように返す。これで帰ってくれるかなと思いながら返事を待つ。

「あー用事?ないけど…あ!今できた!聞きたいことあんだけど聞いてい?」
「気になること?なんでしょうか。」

(ほぼ初対面で気になることってなんだろ…)

不思議そうに聞き返すとその男の子は質問をする前にこう言った。

「えーっと、君と俺ね、同じクラスなんだけど…」
「!?」

私があからさまに驚いていると

「やっぱり、覚えてなかった」
「ごめんなさい。私、人には興味無いので」

(なんか見たことある顔だとは思ってたけど!)

クラスで最初に自己紹介したはずのクラスメイトを覚えていなかったのは失礼かなと思い、一応謝罪する。

「いや~いいのいいの(笑)君いっつも美…じゃなくて、西条さいじょうさんとしかいないし、他の人のこと覚えてないとは思ってたから。」
「はあ…」

(いやいやいや、なんで私が美里みさととしかいないこと知ってんだ…)

私が嫌な顔をしたのがわかったのか、話を変えてきた。

「あ、そーいえば自己紹介もっかいしなきゃだね!覚えてないなら!」
「いや、別に知る必要ないので結構です。」

(そんなの知ってどーするのよ。どーせこの後喋ることなんてないだろうし)

そう思い、屋上での昼ごはんは中途半端だが諦めて教室に帰ることにした。でも去り際に変に目立つといけないので注意しておくことにした。

「あっ!1つ言っておきます。教室では私に喋りかけないでください!」

喋り方とかから陽キャの部類に入るだろうと思い、そう言うとその男が返事をする。

「え?あ、うん!わかったー教室では喋りかけねぇー」

その返事を聞くだけ聞いて屋上から出ていこうとすると後ろからまぁまぁデカい声でこう言った。

「えっちょ、ちょっと待って!まだききたいこといってねぇんだけど!まぁいいや!俺の名前は柏尾かしお 翔奏かなた!よろしく~!覚えとけよー!」

二度と呼ぶことがないであろう名前を聞き流しながら私は屋上を去る。
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