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魔法大会

第四五話:予選6

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 心斎橋駅から地下鉄に乗り、中津駅で下車してから少し歩いて淀川河川敷に行き、俺たちはまたα世界に移動した。

「さて、普通に狩ってもいいが、ちょうどいい相手を見つけてしまったな」

 α世界に移動してすぐ、一反木綿を狩っている女の子3人組を発見した。

 3人組もすぐこちらに気付き、狩るのを止めて攻撃体勢に入る。

「相手が女の子だろうと、気を抜くなよ。こっちの世界の戦闘は女主体の世の中なんだからな」
 
 俺の言葉に、アイが頷く。

 俺とアイが迎撃しようと、魔法を使おうとしたところで、親父に肩を叩かれて止められた。

「長丁場になるんだ。魔法はあまり使わん方がいいだろう」

 そう言った後、単騎全速力で相手の所まで走って行き、素手で相手の腹部を殴って一撃で倒してしまった。
 そしてすぐ違う相手の所に行き、同じように腹部を殴って一撃で倒し、また次の相手の所に行って腹部を殴って、一瞬で敵全員を倒してしまった。

 親父、強ぇえ……。
 そして女の子を何の躊躇いもなく殴ってるし……。
 ってか、魔法大会なのに一切魔法を使ってねえんだけど……。
 まあ、別にいいか。

 親父は相手が狩った一反木綿を取り、枚数を数えながら戻ってきた。

「6枚か、結構あるじゃねえか。よっしゃ。この調子でドンドン一反木綿を集めていくぞ」

 親父はそう言った後、魔法で白色の光る玉を作り、倒した3人組各々にぶつけた。

「えっ、回復させちゃうの?」

 アイが親父に質問する。
 確かに、あの白い光は親父が得意とする回復魔法の光だ。

「遅効の回復魔法だ。いくら敵対する組だとは言っても、女の子をこんな河川敷で寝かせ続けて、万が一があると恐えからな」

 なるほど。
 ここは学園から離れている分、救援も遅いだろう。
 確かに、アフターケアしてあげた方が安心だ。
 あれで親父も色々考えているんだな。

「遅効の回復魔法なんて、そんなのあるんだな」

 俺がそう言うと、少し照れたように親父が言った。

「暇な時に色々と試してみたんだ。授業じゃ教わらないことも、結構できるようになったぜ」

 そう言って親父は、掌の上で火の玉を作ったかと思えば、その火の玉を鳥の形に変化させ、すぐに消した。
 器用に魔法を使う親父は、魔法に才があるのだろう。
 
 しかし、あまり魔法を使うなと言った親父が、倒した相手を思って魔法を使っている。
 言ってることとやってることが正反対だが………いや、俺たちはこれでいい。
 相手が死んだと思った関西弁女との戦い。あんな思いはもうしたくない。
 
「さあ、明日の昼までこの調子で頑張りましょう」

 サクヤ様の言葉に、俺は質問した。

「えっ、明日の昼まで?」

「ええ。明日の正午に大会予選を終了するって、職員室に追加で貼り出されていたわよ」

 ……マジか。危ねぇ。
 大会の始まりも急な連絡だったけど、終わりも急か。
 完全に見落としていた。

「あと24時間もないな……。最後まで寝ずに頑張るか」

 俺がそう言うと、親父とアイが拳を突き上げ、「おー!」と声を上げた。


 親父は、元格闘家ということもあって、素手で相手を倒すことができる腕力と技術がある。
 筋肉の鎧を装備し、体も丈夫で打たれ強い。
 さらに、魔法も才があるようで、本来は魔法玉を使わないと手に入らない強力な火の魔法を使うことができる。
 そして、魔法玉を使って手に入れた回復魔法もある。
 親父と戦ったことはないが、当然俺よりもアイよりも強い。
 いや、もしかしたら今や学園一の実力があるんじゃないだろうか。
 そんな親父の張り切りもあって、俺たちが獲得した一反木綿は、3日の朝には56枚という数になっていた。

「さて、そろそろ学園に帰るかな」

 俺がそう言うと、眠そうな目を擦りながらアイが言う。

「え、もういいの? まだ朝だよ?」

「もういいだろ。ここにはもう狩れる相手がいない」

 俺たちは一晩中、他組を襲い一反木綿を強奪し続けた。
 体力のある親父やアイも、さすがに疲れた様子をしている。
 それに、昼まで猶予があるといっても、ここに居れば俺たちが襲った相手が回復して、襲い返してくる可能性が高いのだ。
 しかもその相手に勝ったとしても、もう相手は一反木綿を所持していない。
 戦うだけ無駄なのだ。
 さっさと学園に帰って一反木綿を納めちまった方がいい。
 それで一反木綿が少なければ、それはもう仕方がない。
 だけど、壱組も弐組も、納品数はそう増えてないはずなのだ。
 同盟を結んだはずの壱組と弐組が、そろそろ対立する頃合いだと思う。
 どちらの組も、最終的には自分の組の優勝を狙うのは必然な訳で、同盟なんかいつまでも続く訳がなく、絶対に対立は発生する。
 そうなると、対立側の組が納品しようとする一反木綿を奪うか燃やすはずなんだ。
 俺たちの、関西弁女との出来事は無意味ではなかったはずだ。
 あの出来事のお陰で、戦わずに相手の納品を阻止する方法として、火の魔法で相手の獲物を燃やしてしまうという方法が知れ渡ったはずだ。
 かなりの数が燃やされてしまったのではないかと思う。
 加えて、俺たちが一晩中他組の一反木綿を奪い続けたということもある。
 だからきっと、壱組も弐組も、納品数はあまり増えていない。 
 あくまでも予想でしかなく、他組の実際の納品数を確認できないところが痛い所だが、56枚もあればおそらく大丈夫だろう。

「さすがに疲れたな。さっさと納品して眠りてえ」

 強靭な体の親父も、さすがに疲労と睡魔には勝てない様子だ。

「それじゃあ、β世界に行くわよ」

 そう言ったサクヤ様に俺たち家族は近づき、サクヤ様の神通力で地面に体を沈ませていった。



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