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26.再生、できませんわ
しおりを挟む先ほどまでシフォンケーキを見て嬉しそうにしておりましたのに、アルフォンソ殿下の機嫌が悪くなってしまいましたわ。
でも、どうしていきなり機嫌が悪くなってしまったのでしょう。
「叔父様には魔道具について相談したりするのに、僕には見せたくないんですか?」
少しだけ苛立ちの混じった声に、わたくしはなるほど、と思いました。
わたくしの見せたくないという言葉を、アルフォンソ殿下は魔道具については見せたくないと、言ったように聞こえたのですわね。
「違いますわ、魔道具をお見せしたい訳ではなくて……」
言葉で説明しようとしましたけれど、わたくしもあまり言葉にしたい事ではありません。ですので、魔石に黙って魔力を流しました。けれど「受信機」はなんの反応も示しません。
あら? もしかして失敗してしまったのかしら。
でも、さきほど魔力はちゃんと流せていましたし、鑑定でもちゃんと「受信機」とでましたのに。
そこでわたくしは気づきました。そうですわ、この魔石は映像を受信しているだけではありませんか。
これでは映像を確認することは出来ません。
「ちょっとお待ちいただけます?」
わたくしはそれだけ言いますと、もう一度魔石に魔力を流し込みます。
映像を再生させる機能がなければ、見ようにも見られるはずがありません。すっかり失念しておりましたわ。
先ほど既に魔力は流し切っているので、ほんのちょっと魔力を流しながら映像再生ができるようにいたします。鑑定しますと「受信・再生」と出ましたわ。これで大丈夫でしょう。
さてこれを再生させるのはいいのですが、スクリーンのようなものがあった方が見やすいでしょうか。
ただこのお部屋の壁は、草花の模様が描かれた可愛らしい壁紙ーーいえ、布が貼り付けられていますので、壁に映しても見づらいと思うのです。
柄のない白い布、となりますとベッドのシーツくらいしか思いつきませんわね。出来ればシルクよりはリネンの方が心置きなく使えるのですけれど。
「ソフィア、ベッドのシーツで色や柄のない、白いものを用意してくださる? できればシルクではなくリネンの方がいいのだけれど」
わたくしがソフィアにそう申し付けますと、できる侍女は何も聞き返さずに自分用に宛がわれている隣の小部屋へと向かいました。ここでは貴人のお部屋には、使用人などがいつ何時でもお世話ができるようにと物置のような部屋が付いているのです。
もちろんソフィアには彼女自身の部屋が使用人棟の方に用意されておりますから、こちらの部屋はほとんど使用しておりません。
ただわたくしがいつも突拍子もない事を言い出すので、色々とその部屋に必要そうなものを置いているらしいですわ。でもわたくし、そんなに突拍子もない事を言っているつもりはないのですけれど。
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