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14.そして婚約を申し込まれたのです
しおりを挟むお米はお母様が糠をとても気に入ってくださったので、屋敷中のメイドたちが代わるがわる玄米をついてくれる事になりましたわ。記憶にある真っ白なお米からは程遠いですが、それでもだいぶ近づきましたの。
そうして、わたくしはやりたい事をやり続けましたわ。
もちろん化粧水もあの後、ハーブを見つけましたので作りましたし、和食の再現は色々と足りないものが多すぎて無理でしたけれど、塩むすびは作りましたわよ。後はリゾットやオムライス、ピラフ、パエリアもどき。ご飯もので思いつく洋食を可能な限り作りましたわ、料理長が。
わたくしはまだ小さいのでーーもう9歳なのですけれどーー火を扱うものはさせられないと、お父様と料理長の両方から言われてしまいました。
わたくしが手を出せたのは、お米を炊く準備まで、でしたの。
もちろん滑車もどんどん生産されておりました。
共同井戸に滑車をつけたところ、皆さんとても感謝してくれたそうですわ。そしてうちの領で商売をしている方たちが、こぞって滑車が欲しいと言ってくださいました。
果てには孤児院を経営している神殿(支部のようなものですわね)も滑車を欲しいと仰っていただいたので無料で取り付けたようですの。
その後には王都にも店を持つ大店の商人たちが、滑車を売ってくれと言い出しました。この場合は、少しお値段は高めでお売りしたそうですわ。
だって、きっとどこかに売りに行くつもりなのでしょうから。そうでもないと滑車を30個欲しがったりしませんでしょう?
次にはどこで噂を耳にしたのでしょうか。隣りの領主である叔父様が、うちにも欲しいと仰いました。もちろんお代はいただきますが、取り付けサービスは無料(というよりもうち持ちですわね)で大工の棟梁さんと鍛冶職人の親方さんにお願いして、お弟子さんを派遣してもらいましたわ。
そうこうしているうちに滑車は王都をも席巻し、ハーブの化粧水も王都で流行り始め、カーティス領はかなり潤う事になりましたの。
そして、当然の結果として王族の耳にも入ってしまったのです。
そこからはもう、あっという間でしたわ。
王家から婚約の申し込みの書簡が届き、わたくしは断ることもできずに王太子殿下の婚約者という立場になりました。
王都から半日ほどでつく距離も不味かったかもしれません。
なぜならカーティス伯爵家は王都にタウンハウスを持っていないのです。何せ半日もあれば帰れてしまうので、社交シーズンでも毎日どこかのおうちに招待されている訳でもないですし、夜会であれば招待してくださった方がゲストルームに泊めてくださったりもします。
もしそれが難しくても一泊、二泊程度であれば宿に泊まった方が、王都にタウンハウスを持つよりも断然安上りなのです。
まさかそれが仇になるとはお父様も思わなかったでしょう。
わたくし、王太子妃教育のために王宮内に部屋を賜ってしまいましたの。
これには本当に参りましたわ。だって、さすがに王城で好き勝手はできませんでしょう? それに全く興味のない王太子殿下と毎日のように顔を合わせることになるのですよ? どうして喜ぶことができるというのでしょうか。
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