6 / 71
6.お米のお嬢様?
しおりを挟むお父様がお二人に向かってさくさくと話を進めていきます。うちの屋敷の取り付けはいつになるのかしら、なんてわたくしは考えていましたけれども。
「街役を呼ぶならご領主様んところの井戸に先に滑車をつけちまいますか? その方が話は早いでしょう」
あら、親方さんったら中々ナイスなことを仰るじゃありませんか。もちろんお父様もそれには頷きました。街役さんは決して怖い方ではないのですけれど、いくら街のためになると言っても、ご自身が納得されないとダメなんですって。そういう方でしたら、やはり見て貰うのが一番だと思いますわ。
ということで今度は我が家に移動することになりました。鍛冶職人の親方さんとお弟子さんが二名、木工職人の親方さんと滑車をいくつか台車に載せて運んでくださるお弟子さんが二名、あとは大工の棟梁を呼びに行った方や、お父様に付いてきておりました執事のバスティスは、どうやら街役さんのところに向かうようです。
ぞろぞろとそれなりの人数が、屋敷に向かって歩き出しました。もちろん先頭はお父様とわたくしです。
そうしますと周辺に住んでいる住民の方たちも気になるのでしょう。ちらちらと視線が気になりますわ。でもわたくしは領主の娘、住民の視線に怯んでいてはいけません。
キリっと顔をあげてわたくしが歩いていますと、唐突に声が聞こえました。
「あ、お米のお嬢様だ~」
「本当だ、お米のお嬢様!」
「お米見つかった? お嬢様」
ええ、ええ、きっと皆さまであればお分かりでございましょう。
元日本人の性と申しますか、食の大国日本で暮らしていたせいでしょうか、わたくしこちらの世界でお米を見つけたいとみんなに聞いて回りましたの。
でも、残念な事にまだ見つけるには至っておりませんわ。
けれど、聞き回ったせいで、子供達に妙な呼び名をつけられてしまいまいましたわ。
それでも仕方ありませんわよね?
だって、こちらのお食事は肉と野菜とパンばかり。味付けは塩がメインで、他に調味料と呼べるものは砂糖に胡椒、ビネガー位のものでしょうか。
それでも我が家の料理長は頑張って美味しい料理を作ってくださいます。けれどどう頑張っても味は単調になってしまいます。わたくしも主婦をしておりましたから毎日三食の食事を、メニューから考え作る大変さは身に染みて理解しておりますもの。
けれどそれでも旨味が足りないのです!
それにせっかく作っているお野菜はとても新鮮で味は美味しいのです。ですから野菜くずを捨てるのはもったいない。日本の万能調味料である醤油がありませんので、ここは野菜くずと鳥の骨を使ってスープの素を作るのです。
というわけで我が屋敷では、コンソメスープやシチュー、天然酵母で作った柔らかなパンと卵とお酢と塩胡椒で作った簡単マヨネーズ、ケチャップもどき(材料が足りませんのよ)、ミートソースなどが食卓に上がるようになりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちょとコミカルなタイトルをつけようとして失敗している感じでしょうか。
副題難しいですね。
すみません、この回ではまだお米は見つけていませんでしたので修正しました。
23
お気に入りに追加
3,144
あなたにおすすめの小説
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
【完結】高嶺の花がいなくなった日。
紺
恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。
清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。
婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。
※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。
家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる