1 / 46
1.わたくしの名前は、レオノーラ・エイムズ
しおりを挟むわたくしの名前は、レオノーラ。
エイムズ伯爵家の長女ですわ。
今年で15歳になりました。
兄のアラステア・エイムズはエイムズ伯爵家の嫡男で18歳、妹のエイヴリル・エイムズは次女で13歳になったばかり。
どこにでもある歴史だけは古い、でも、貧乏ではないけれど裕福でもない、領地も可も不可もない、それがエイムズ伯爵家ですの。
そんな我が家ではありますが、一つだけ問題を抱えております。それがわたくしの妹のエイヴリル。
エイヴリルは、わたくしのものを何でも欲しがります。
多分物心がついたころからだったと思いますわ。
お誕生日に貰ったクマのぬいぐるみ。柔らかいブランケット。おばあ様から頂いたブレスレット。お兄様がお祭りの露店で買ってくださった玩具の指輪。色鉛筆、可愛らしい便箋と封筒、お気に入りのガラスペン。綺麗な琥珀色のインク壺。お茶会で可愛いと言われたドレス。靴。手袋。それはもう色々。
金額の多寡に関わらず、わたくしが持っているものなら何でも欲しがりました。
妹が小さい頃は、それでも我慢しました。可愛い妹ですもの。お母様だって、「お姉様の真似をしたいのね、きっと」と言っていましたから、大目にみていました。
それに、欲しがる割には飽きっぽいあの子は、わたくしから奪ったものをすぐに忘れてしまいます。だから、わたくし付きのメイドが、こっそり取り返してくれたりするので、そのうち気にしなくなりました。それでも、そんな事を繰り返すうちに、扱いが酷くなったんです。破られたり壊されたり。さすがのわたくしも我慢が出来ずに収納機能のついたマジックポーチを購入しました。
サイズ的には手鏡とハンカチ、蜜蝋の薄い色付きリップが入るくらいの小さなものです。でも、容量は一部屋分くらいあるのだそう。もちろん、魔道具であるマジックポーチは、いくら小さいとはいえそれなりのお値段がします。
貴族の家の収入は、基本、領地から上がってくる税収ですから、あまり贅沢はできません。
これで商売をされているお家や城勤めされている方がいらっしゃるお家であれば、領地収入の他に収入がありますから贅沢もできるのでしょうが、我が家はしがない伯爵家ですから質素倹約を心掛けておりますの。
それでも貴族ですから、お茶会にご招待されることもしばしば。いくら質素倹約を心掛けているとはいえ、ドレスやそれに付随する小物などは家で用意していただけます。そのかわり、ちょっとした小物やーーそれこそ便箋やペン、インク、ノートなどーーお友達とランチを楽しんだり、ティータイムを過ごしたりする分は自分で支払うことになっています。
それに、個人的にお呼ばれしたお茶会には手土産を持参しなくてなりませんし、いつも自分のお小遣いとにらめっこして予定を立てるのですわ。
そんな状況のお財布事情ですから、それなりのお値段がするマジックポーチの購入には、半年ほど色々と我慢しました。
何せ小さなものでも魔道具ですから金貨5枚もするんです。カバン型や背負い袋だと大きさによってもまちまちですが、金貨30枚から100枚するものもあるんですって。その代わり平民の家1件分だったり、貴族のお屋敷1件分の容量があるらしいです。でも、貴族のお屋敷なんて、大きなお屋敷も小さなお屋敷もありますから、いったいどれくらい入るのでしょうね? ちょっと気になるところです。
ようやく手に入れたマジックポーチには、今のところ妹から取り返したものと、取られたくないと思っているものを収納しています。
本当は、わたくしのものが全て収納できるのなら、全部収納してしまいたいのですけれど、部屋に何も置いていないというのもおかしいでしょう? これでマジックポーチに目をつけられでもしたら目も当てられません。
でも、お値段の割にこのマジックポーチは可愛らしい要素はありませんし、使用者登録も出来るものなので、わたくしとわたくしのメイド以外は中身を取り出せないようにしてあります。ですから、たとえ妹に取られても安心と言えば安心なんですけれど。
ーーーーーーーーーー
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので
結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中
お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜
湊未来
恋愛
王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。
二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。
そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。
王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。
『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』
1年後……
王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。
『王妃の間には恋のキューピッドがいる』
王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。
「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」
「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」
……あら?
この筆跡、陛下のものではなくって?
まさかね……
一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……
お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。
愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる