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しおりを挟むフリートディートとノーチェの出会いは、魔の森という魔獣たちが跋扈する場所だった。
ノーチェは蜘蛛の魔物として生まれ、弱肉強食の世界で生き抜いて進化したのだ。
けれどそれまでに、どれだけの兄妹が次々に殺されて捕食されていくのを見送ったか。
母を殺されて絶望を覚え、ただ死にたくないと足掻いて、足掻いて。
そしていつの間にか大蜘蛛に進化し、多くの仲間を抱え、魔の森で一大勢力を築いていた。
しかし蜘蛛は、数は多くても小さくて弱い。
強い個体に進化するには、魔素を大量に取り込み強い魔物を捕食するしかない。
仲間たちが殺される度にノーチェは相手を屠り、仲間たちの進化を促した。けれどそれでも多くの仲間たちが零れ落ちていく。
フリートディートと出会ったのも、餌場を争っていた時だった。
ノーチェも大蜘蛛から更に進化していたけれど、それでも相手の方が強く、仲間も大勢殺された。
だから死を覚悟するには充分で。
でもノーチェに死は訪れなかった。
なぜなら2体の精霊を連れた人間が、ノーチェを助けてくれたのだ。
最初は訳が分からなかった。
どうして魔物である自分を助けたのか。しかも傷ついた仲間を癒している。
ノーチェが知っている人間は、冒険者というやつで、彼らは勝手に縄張りに入り込んでは仲間を殺し、その身体を持ち去る奴らだった。
けれど冒険者は、強い魔物の体内にある魔石や素材が欲しいのか、魔物を殺しては解体して必要なものしか持っていかない。だから解体とやらが終わった頃に冒険者を脅すと、そのまま逃げてしまう。すると後には苦も無く餌が手に入った。
仲間が多いノーチェには戦わなくても手に入る餌は、とても有難い。だから、なるべく人間は襲わないようにした。
そしてノーチェたちを助けてくれた人間は、フリートディートと名乗り、魔の森の蜘蛛たちは人を襲わないから助けたと言い、時折訪れては、餌や魔石をくれるようになった。
そのおかげで仲間はだいぶ進化が進み、ノーチェも含めて人化できるものも増え、やがてノーチェたちはフリートディートを主と仰ぐようになりーー今ではすっかりフリートディートの僕と化している。
彼の僕としているためには、常に人化していなければならないのが少しばかり煩わしいが、フリートディートの側に居れば仲間が殺される事もない。そう思っていたのだけれど。
フリートディートと同じ人間が、彼を殺そうとする。
別にノーチェとて同族殺しが悪だとは言わない。狭い餌場で仲間を養おうとすれば、どうしたって同族でやり合う事もあったからだ。
けれど主であるフリートディートの状況は違う。
フリートディートの父親だと言う国王陛下とその妻であるはずの王妃と側妃の関係や、そんな彼らとフリートディートの関係に、フリートディートが何故命を狙われるのか。
彼の従僕として側に居るうちにノーチェはそれを理解した。
本当なら、さっさと始末してしまえばいいと思う。
相手がフリートディートを殺そうというのだ。ならば殺されたって仕方がないだろうとノーチェは思っている。
けれど今までは、フリートディートがそれを良しとはしなかった。
しかし今度こそ主は彼らを許さないだろう。
ノーチェは主の寝台の横で、そんな事を考えながら、その帳が開かれるのをただ待ち続けた。
ーーーーーーーーーー
精霊のシャンティのイメージは極楽鳥、リューイはユキヒョウ
今回ノーチェ回でした。たくさん進化した蜘蛛の魔物。人化できる。
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