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4章 旅立ち
45 甘いパンケーキと苦いコーヒー②
しおりを挟む「お? 本当に美人だな。こっちに来い」
下品な声を上げてサラサさんの腕を掴んだ。
「!?」
「やめろ!」
俺は、サラサさんの腕を掴んだ人相の悪い人の腕を掴んで払った。すると数人の人相の悪い人達が、俺に敵意を持ってにじり寄ってきた。……まずいな。
魔獣相手なら手加減なしで倒せるけれど、人間相手だと下手したら大怪我をさせてしまう。
「王子様、気取りか? はん! ガキが!」
いきなり殴りかかってきた。俺は反射的に避けると、相手は顔を真っ赤にしてさらに怒りをあらわにした。
「なんだ? 避けられてやがる」
「うるさい!」
仲間から馬鹿にされて、ますます頭に血が上っている。わざと殴られれば良かったのか?
「ほら。俺と遊ぼうぜ? うわ!」
サラサさんに抱きつき声をかけてきた男は、あっという間に地面に倒れていた。サラサさんが男を投げ飛ばしていた。強い。さすがだ。
「ちっ! 皆、痛めつけてやれ!」
「おう!」
男の一声で俺達に襲い掛かってきた。剣は抜けない。避けるのが精いっぱいだ。サラサさんは男達に体術でいなしている。だけど息切れしていた。
俺は殴り合いの経験は少ない。避けるだけだ。くそ……!
「女の子と一人に大勢で、何してる?」
俺達と人相の悪い人達とは別の声が、割り込んできた。威圧的な低い声。
「なんだ? てめえは!」
振り向くと背の高い、赤毛の男性が立っていた。俺達は突然現れた男性に驚いていた。人気のなかった裏路地に音もなく現れた。
バキッ!
男性はいきなり人相の悪い人達に殴りかかった。
「くっ……! 強いぞ! この辺で許してやる! 引くぞ!」
人相の悪い人達はヨロヨロとしながら、バタバタと去っていった。
「ああいう輩は手加減しなくてもいい」
大人数相手に傷一つなく、息も乱れてなかった。振り向いて俺達に言った。
「あり、がとう……御座いました」
スッと背筋の伸びた背中。鍛えられた筋肉。他にも色々武器とか扱えそうだ。この男性は強そうだった。
「ジョーンズ先輩!?」
サラサさんが男性を見て驚いていた。知り合いらしい。
「久しぶりだな。オブライエン嬢。俺は今、ジョーと名乗っている。ただの冒険者だ」
冒険者? もしかしたら……。
「あの……」
俺はサラサさんとこの男性の、話の途中に割り込むのは気が引けたけれど、確認したいことがあった。
「ん? なんだ?」
嫌がらずに俺の方へ向いてくれた。良い人かも。
「もしかして、ギルド長が紹介したい人物って貴方ですか?」
俺は直球で聞いてみた。突然現れた男性。もしかして? と思った。サラサさんもハッ! として男性を見た。
「ん――? たぶん、そうだ」
男性……ジョーさんは曖昧に返事をした。
「なぜ、曖昧な返事なのですか……?」
サラサさんはジョーさんをじっと見て言った。ジョーさんは手のひらを上にかざして笑った。
「ギルド長があるパーティーを紹介するとは聞いていたが、どんなパーティーか、何が目的なのかは聞いていない。だから、すぐには返事は出来ないと返事をしたはずだ」
なるほど……。ギルド長は強引な人なのかな?
「まさか、もと同僚のオブライエン嬢のいるパーティーだとは思わなかったな」
「私もまさかギルド長が、紹介したい人物がジョーンズ先輩だとは……」
お互いに驚いているようだった。
「あの! とりあえずここから移動しませんか?」
また変な奴らに絡まれたら面倒だ。
「そうね」
「そうだな。俺に付いてこい」
俺達はジョーさんのあとに、ついて行くことにした。
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