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3章 覚醒

39 突然の王命

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 二、三日過ぎて俺は王様に呼ばれた。
騎士団の寮でソラと生活する許可を取り、ソラも慣れてきたところだった。

 「団長。王様は俺に何の用ですか、聞いていますか?」
城へ続く回廊で、騎士団団長と並んで歩いていた。煌びやかな建物と装飾品が目に入ってきて、何となく身構えてしまう。緊張をほぐすために、団長に話しかけた。
「ん――。聞いてはいないが、たぶん魔獣関係じゃないかな? 俺も呼ばれているし、魔獣や魔物が増えてきている。何かいい対策があればいいが……」

 魔獣と魔物。いくら駆除してもキリがない。何とかならないか皆、悩んでいる。小動物系の魔物くらいだったら一般人でも倒してきたけれど、熊以上の大きな魔獣の駆除は無理だ。お城の騎士団は戦いの訓練をしているが、街に暮らす人々は非戦闘員だ。太刀打ちできない。
 これから魔獣の奇襲が増えたら、お城の騎士団だけじゃあ間に合わなくなる……。

 「着いたぞ。姿勢を正せ」
団長に言われて俺は姿勢を正した。
謁見の間の大きな扉が、扉を守る騎士の手によって開かれた。

 「行くぞ」
 団長が先に謁見の間に入り、俺は後に続いた。また臣下達が、玉座へ続く赤い絨毯に沿って並んでいた。俺は異世界人なので、王様に忠誠は誓ってなかった。だけど騎士団に、お世話になっている以上は忠誠を誓うそぶりはしなくてはならない。
 王様の見下ろす玉座の前で、団長と共にひざまついた。

 「騎士団団長 アラルド・ハインツ、騎士 アマノ・カケル……参上しました」
 団長が低く良く通る声で言った。
 
「うむ。先日の魔獣討伐ではご苦労だった。顔を上げよ」
王様の言葉で俺達は顔を上げた。チラと玉座の方を見ると、王様の横にアリシア姫様が立っていた。
 「あ、愛里」
並ぶ臣下達の先頭に、愛里と賢者ドクトリングがいた。

 「このところ皆が知っている通り、国は魔獣や魔物の被害が増えてきている。魔物ばかりではなく、トロルのような大型の魔獣も出現している」
 ざわざわと臣下達はお互いに話し始めた。もう大きな街ばかりではなく、人が住んでいる小さな村までも襲っていた。次はどこの街や村が襲われるか皆が恐怖していた。

 「知らせを聞き、騎士団が魔獣と討伐していた」
俺達騎士団が駆け付けた時は、もう町や村が焼かれていた。けが人など多くの人が犠牲になった。
「そこでだ!」
王様の声に、ざわめきが大きくなった。王様は続けて話をした。
「我がアリシア姫、騎士 カケル・アマノ、聖女アイリ・アマノにパーティーを組んで討伐の旅に向かって欲しい」
 おお――! と歓声が響き、どよめいた。

 俺達がパーティーを組んで討伐の旅に?
「この三人は強力な魔力、戦力を持っている。仲間を増やして各地を巡って魔獣を討伐して欲しい」
 アリシア姫を見ると、俺に気がついて微笑んでくれた。どうやら姫は、初めて聞いたわけじゃなさそうだ。愛里も事前に聞いていたのか?
「騎士 カケル」
 「はい」
 王様に名を呼ばれたので返事をした。
「やってくれないか?」

 王様の言葉に俺はちょっとイラついた。こんな臣下達がズラリと並ぶ前で『イヤです』とは言えないだろう。まして今は騎士団に身を置いている。
 母が嫌がっていた理由が何となくわかった。
「承りました」
頭を深く下げた。そろそろしゃがんでいる姿勢から、立っていいかな……疲れてきた。

 「一行とは別に騎士団は城にとどまり、城や街を守る。魔獣の被害のある街や村の近い方が、向かうことになるだろう」
 王様は玉座に座り、皆に話しかけている。威厳がある声だ。
「騎士 カケルの活躍には、期待している」
 「はっ!」
 王に返事をすると、団長が立ち上がった。俺もそれにならって立ち上がった。下がるぞ、という団長の小さな呼びかけが聞こえたので後について謁見の間から下がった。

 パーティーを組んで討伐の旅かぁ……。アリシア姫様の魔法の威力は凄いのがわかっているし、愛里の癒しの聖魔法も強力だし大丈夫だとは思うけど三人じゃ心細いな。
 「そういえば、この国には冒険ギルドとかあるんですか?」
俺は謁見の間を出て、廊下を歩きながら団長に聞いた。
 「ああ。あるな。仲間を増やしたければ、騎士団から騎士を選んでも良いし、ギルドから雇ってもいい。費用は国が出すだろう」
 それなら遠慮なくできるな。

 「なかなか大変な旅になりそうだが、カケルならやれる。無理はするな。頑張れよ!」
 「いてっ!」
 団長に背中をバン! と叩かれた。痛かった。

 さて……。旅の準備もあるし、パーティーのメンバーも増やしたいし色々やる事あるな。
 アリシア姫様と愛里と、話をした方がいいな。
 
 「お兄ちゃん!」
「カケル殿」
ちょうどアリシア姫様と愛里が謁見の間から出てきて、俺の方に駆け寄ってきたのが見えた。 
 
 
 
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