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16 二人の時間

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「大画面だー!やったー!」
金持ち万歳!
秋になり、先に入籍だけ済ませた。
一緒に住みたいと直真なおさださんが言ったためである。
もー!本当に寂しがりなんだから!と思いながら、顔がにやけた。
直真さんが親に挨拶にきて、父親はだめだ!とか言っていたけれど、父親と売り物の『鬼殺し』で飲み比べをし、直真さんが勝った。
そのおかげかどうかしらないけど、直真さんと父親は仲が良くなり、たまに一緒に店で飲んでいるらしい。
そして、父親の許しを得て今日から一緒に暮らすようになった。
でもね、なにが一番嬉しいってこれよ!
テレビを前に微笑んでいると、直真さんが段ボールを片付けながら言った。
「お前、喜ぶところ違うだろ」
ゲーム機をせっせとテレビに接続していると、呆れた様子でそれを見ていた。
「いいか、ゲームは一日二時間まで!」
「私は小学生か…」
「一時間のところを二時間にしてやったんだ。ありがたく思え」
「わかりました。ネトゲは二時間で他のゲーム機ならいいですか?」
「駄目に決まってるだろ!?」
「はぁー。束縛がひどいですね」
「どこがだ!はあ…お前と話してると体力が削られるな」
「歳ですか」
「やかましいわ!」
大画面でやる狩りは最高だった。
この日のためにコントローラーも新しくしたから、操作の反応もいい。
ダラダラと人間をダメにするクッションに寝転がり、言った。
「直真さんもやります?」
日曜日だというのにカタカタと忙しそうにパソコンのキーを叩いている直真さんはきっぱりと断ってきた。
「そんな暇あるなら仕事をするほうがマシだ。秋からは宮ノ入みやのいり本社に戻るからな」
仕事の鬼め。
そうなのだ。
直真さんは沖重グループの社長ではなくなり、また社長秘書になるらしい。
先輩に赤ちゃんができたため、宮ノ入社長に秘書がいなくなるからだ。
「私も社長秘書は終わりですね」
「なんだ、そのせいせいしたみたいな顔は。宮ノ入に戻ったら、有里ゆりは秘書室に配属だからな」
「ええええ」
「一緒にいれて嬉しいだろ?」
にっこりと直真さんは微笑んだ。
私だけ早く帰って、ゲームしたいとか、思っているのバレてるな。これ。
「そうですね。わあ、うれしいな」
思わず、棒読みになった。
「今、欲しいものあるか」
今かぁ…。そうだなぁ。
「欲しいレアアイテムあって、それが、なかなかとれなくて……どうしようかと」
「そうじゃねえ!」
「じゃあ、新しいゲーム機ですかね。VRやってみたいんですけど」
「指輪だろ!?普通!」
「今っていうから、じゃないですか。それに結婚指輪はもらいましたけど」
そんな話だったのか。
「婚約指輪の分だ」
「あー…別にいいですよ。このテレビとゲーム機さえ、あれば」
「お前はっ!」
よいしょ、と立ち上がり、座って仕事をする直真さんを後ろから抱きしめた。
「直真さんがいれば、それで」
そっと耳元で囁いた。
意地っ張りでめんどくさくて、寂しがりやなこの人には不意打ちが一番、有効だと言うことを知っている。
直真さんは驚いた顔で私を見上げた。
「本当に何をしてくるか、わからないな―――」
直真さんは振り返り、唇を重ねた。
何をするかわからないから、面白いんでしょ?
頭のいい直真さんは先をわかってしまう。
だから、わからない私を選んだ。
「これからも振り回しますよ?」
「おてやわらかに。奥さん」
奥さん―――えへっとにやけた私に直真さんは笑い、またキスをした。
「好きだ、有里」
「私もですよ?」
「ゲームより?」
「えっ?」
私と直真さんはしばらくお互いの目を合わせたまま、固まった。
「……もちろんですよ!」
「今、間がなかったか?」
「ないです!ないない!」
イラッとした顔をされて、直真さんは深くキスをした。
「ま、待ってくださいっ」
私の言い訳を塗りつぶすようなキスをした。
私が『好きです』というまで直真さんが体をなぶり、満足するまで言わされたあげくに謝らせた。
本当に嫉妬深くて、怖い男だ―――きっと私は魔王と結婚したに違いない。



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