16 / 21
16 二人の時間
しおりを挟む「大画面だー!やったー!」
金持ち万歳!
秋になり、先に入籍だけ済ませた。
一緒に住みたいと直真さんが言ったためである。
もー!本当に寂しがりなんだから!と思いながら、顔がにやけた。
直真さんが親に挨拶にきて、父親はだめだ!とか言っていたけれど、父親と売り物の『鬼殺し』で飲み比べをし、直真さんが勝った。
そのおかげかどうかしらないけど、直真さんと父親は仲が良くなり、たまに一緒に店で飲んでいるらしい。
そして、父親の許しを得て今日から一緒に暮らすようになった。
でもね、なにが一番嬉しいってこれよ!
テレビを前に微笑んでいると、直真さんが段ボールを片付けながら言った。
「お前、喜ぶところ違うだろ」
ゲーム機をせっせとテレビに接続していると、呆れた様子でそれを見ていた。
「いいか、ゲームは一日二時間まで!」
「私は小学生か…」
「一時間のところを二時間にしてやったんだ。ありがたく思え」
「わかりました。ネトゲは二時間で他のゲーム機ならいいですか?」
「駄目に決まってるだろ!?」
「はぁー。束縛がひどいですね」
「どこがだ!はあ…お前と話してると体力が削られるな」
「歳ですか」
「やかましいわ!」
大画面でやる狩りは最高だった。
この日のためにコントローラーも新しくしたから、操作の反応もいい。
ダラダラと人間をダメにするクッションに寝転がり、言った。
「直真さんもやります?」
日曜日だというのにカタカタと忙しそうにパソコンのキーを叩いている直真さんはきっぱりと断ってきた。
「そんな暇あるなら仕事をするほうがマシだ。秋からは宮ノ入本社に戻るからな」
仕事の鬼め。
そうなのだ。
直真さんは沖重グループの社長ではなくなり、また社長秘書になるらしい。
先輩に赤ちゃんができたため、宮ノ入社長に秘書がいなくなるからだ。
「私も社長秘書は終わりですね」
「なんだ、そのせいせいしたみたいな顔は。宮ノ入に戻ったら、有里は秘書室に配属だからな」
「ええええ」
「一緒にいれて嬉しいだろ?」
にっこりと直真さんは微笑んだ。
私だけ早く帰って、ゲームしたいとか、思っているのバレてるな。これ。
「そうですね。わあ、うれしいな」
思わず、棒読みになった。
「今、欲しいものあるか」
今かぁ…。そうだなぁ。
「欲しいレアアイテムあって、それが、なかなかとれなくて……どうしようかと」
「そうじゃねえ!」
「じゃあ、新しいゲーム機ですかね。VRやってみたいんですけど」
「指輪だろ!?普通!」
「今っていうから、じゃないですか。それに結婚指輪はもらいましたけど」
そんな話だったのか。
「婚約指輪の分だ」
「あー…別にいいですよ。このテレビとゲーム機さえ、あれば」
「お前はっ!」
よいしょ、と立ち上がり、座って仕事をする直真さんを後ろから抱きしめた。
「直真さんがいれば、それで」
そっと耳元で囁いた。
意地っ張りでめんどくさくて、寂しがりやなこの人には不意打ちが一番、有効だと言うことを知っている。
直真さんは驚いた顔で私を見上げた。
「本当に何をしてくるか、わからないな―――」
直真さんは振り返り、唇を重ねた。
何をするかわからないから、面白いんでしょ?
頭のいい直真さんは先をわかってしまう。
だから、わからない私を選んだ。
「これからも振り回しますよ?」
「おてやわらかに。奥さん」
奥さん―――えへっとにやけた私に直真さんは笑い、またキスをした。
「好きだ、有里」
「私もですよ?」
「ゲームより?」
「えっ?」
私と直真さんはしばらくお互いの目を合わせたまま、固まった。
「……もちろんですよ!」
「今、間がなかったか?」
「ないです!ないない!」
イラッとした顔をされて、直真さんは深くキスをした。
「ま、待ってくださいっ」
私の言い訳を塗りつぶすようなキスをした。
私が『好きです』というまで直真さんが体をなぶり、満足するまで言わされたあげくに謝らせた。
本当に嫉妬深くて、怖い男だ―――きっと私は魔王と結婚したに違いない。
33
お気に入りに追加
1,378
あなたにおすすめの小説
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
私はオタクに囲まれて逃げられない!
椿蛍
恋愛
私、新織鈴子(にいおりすずこ)、大手製菓会社に勤める28歳OL身。
職場では美人で頼れる先輩なんて言われている。
それは仮の姿。
真の姿はBL作家の新藤鈴々(しんどうりり)!
私の推しは営業部部長の一野瀬貴仁(いちのせたかひと)さん。
海外支店帰りの社長のお気に入り。
若くして部長になったイケメンエリート男。
そして、もう一人。
営業部のエース葉山晴葵(はやまはるき)君。
私の心のツートップ。
彼らをモデルにBL小説を書く日々。
二人を陰から見守りながら、毎日楽しく過ごしている。
そんな私に一野瀬部長が『付き合わないか?』なんて言ってきた。
なぜ私?
こんな私がハイスぺ部長となんか付き合えるわけない!
けれど、一野瀬部長にもなにやら秘密があるらしく―――?
【初出2021.10.15 改稿2023.6.27】
★気持ちは全年齢のつもり。念のためのR-15です。
★今回、話の特性上、BL表現含みます。ご了承ください。BL表現に苦手な方はススッーとスクロールしてください。
★また今作はラブコメに振り切っているので、お遊び要素が多いです。ご注意ください。
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる