上 下
29 / 31
番外編 (麗奈のその後)

2 義姉

しおりを挟む
土曜日、テレビを見ながらソファーにゴロゴロと転がっていると、インターホンが鳴った。
さとるさんの新しい仕事は自宅でできる仕事みたいで、ずっーとパソコンをカタカタと叩く音がする。
元々、頭は悪くないから、聡さんはそれなりにデキる男なのよ。
ただ、何かに突出した才能がないだけで。
「新聞の勧誘かな」
聡さんはやれやれ、とソファーから立ち上がった。
来客は全部、聡さんが対応している。
前に押し売り業者をお客様と間違えて、部屋にいれてしまったのが、悪かったみたいで、あれ以来、危ないからでないように言われている。
ちょっと失敗しただけなのに。
「困るよ、いや、いるけど」
玄関で押し問答を繰り返しているのが、聞こえて様子を見に行くと、露原家の長男の嫁、睦子むつこさんがいた。
お義母様のコピーじゃないのってくらい雰囲気が似ている。
前髪をピシッとわけ、うぐいす色の着物を着ているせいか、実年齢より、ずっと上に見えた。
それに顔の表情をちっとも変えない。
あなた、ロボットなの?って、きいてやりたいくらいにね。
私もバカじゃないから、聡さんと 睦子さんが玄関でもめている間に服を着替え、メイクをし、ソファーにズサッと滑り込んだ。
ちょうど、座った頃に聡さんが敗北して、リビングに睦子さんか入ってきた。
ほらね。
絶対に聡さんが負けると思ったわよ。
「おはよう。麗奈さん」
「おはようございます。お義姉様」
睦子さんの後ろから、遅れて入ってきた聡さんが私の早業はやわざに目をしばたかせていた。
これくらいで、驚かないで欲しいわ。
「今日から、露原家で作法を学ばれるようにと、お義母様から言われていたでしょう?」
「ごめんなさい。ちょっと気分が優れなくて」
「そう」
私を見下ろす、冷ややかな目からは嘘をつくんじゃないわよ!と、睦子さんの心の声が聞こえてくるようだった。
「熱を計りましょうか」
睦子さんは体温計を差し出した。
なかなかやるわね。
でも、私は負けないわよ。
「そういうんじゃないんです。胸がムカムカして、吐きそうで、気持ち悪くて。これって、もしかして?」
「えっ!?」
睦子さんが目を見開いた。
案外、素直な人ね。
「だから、今日は遠慮させてもらってもよろしいかしら?」
「そ、そう。わかりました」
動揺した睦子さんはフラフラと帰って行った。
マンションのドアが閉まるのと同時に聡さんが肩をつかんだ。
「誰の子供だ!?」
「なに言ってるの?妊娠したなんて、一言も言ってないわよ」
「なんだ。びっくりした」
「できるわけないでしょ?勝手に勘違いして帰って行ったんだから、私は悪くないわよ」
だいたい避妊はちゃんとしてるんだから、聡さんが驚くことが自体がおかしいでしょ。
なに一緒になって、騙されてるのよ。
「そうだけど」
なんとも言えない複雑な表情をした聡さんは再びパソコンの前に座り、仕事を始めた。
雑誌で顔を隠しながら、聡さんをチラリと盗み見ると、どことなく、元気がない。
ちょっと可哀想になったので、お昼はオムライスを作ってあげた。
聡さんは喜んでくれたけど、絶対にまた睦子さんか、お義母様がくるわよ。
結婚って、本当に大変よね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

ご褒美

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
彼にいじわるして。 いつも口から出る言葉を待つ。 「お仕置きだね」 毎回、されるお仕置きにわくわくして。 悪戯をするのだけれど、今日は……。

処理中です...