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番外編 (麗奈のその後)
2 義姉
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土曜日、テレビを見ながらソファーにゴロゴロと転がっていると、インターホンが鳴った。
聡さんの新しい仕事は自宅でできる仕事みたいで、ずっーとパソコンをカタカタと叩く音がする。
元々、頭は悪くないから、聡さんはそれなりにデキる男なのよ。
ただ、何かに突出した才能がないだけで。
「新聞の勧誘かな」
聡さんはやれやれ、とソファーから立ち上がった。
来客は全部、聡さんが対応している。
前に押し売り業者をお客様と間違えて、部屋にいれてしまったのが、悪かったみたいで、あれ以来、危ないからでないように言われている。
ちょっと失敗しただけなのに。
「困るよ、いや、いるけど」
玄関で押し問答を繰り返しているのが、聞こえて様子を見に行くと、露原家の長男の嫁、睦子さんがいた。
お義母様のコピーじゃないのってくらい雰囲気が似ている。
前髪をピシッとわけ、鶯色の着物を着ているせいか、実年齢より、ずっと上に見えた。
それに顔の表情をちっとも変えない。
あなた、ロボットなの?って、きいてやりたいくらいにね。
私もバカじゃないから、聡さんと 睦子さんが玄関でもめている間に服を着替え、メイクをし、ソファーにズサッと滑り込んだ。
ちょうど、座った頃に聡さんが敗北して、リビングに睦子さんか入ってきた。
ほらね。
絶対に聡さんが負けると思ったわよ。
「おはよう。麗奈さん」
「おはようございます。お義姉様」
睦子さんの後ろから、遅れて入ってきた聡さんが私の早業に目をしばたかせていた。
これくらいで、驚かないで欲しいわ。
「今日から、露原家で作法を学ばれるようにと、お義母様から言われていたでしょう?」
「ごめんなさい。ちょっと気分が優れなくて」
「そう」
私を見下ろす、冷ややかな目からは嘘をつくんじゃないわよ!と、睦子さんの心の声が聞こえてくるようだった。
「熱を計りましょうか」
睦子さんは体温計を差し出した。
なかなかやるわね。
でも、私は負けないわよ。
「そういうんじゃないんです。胸がムカムカして、吐きそうで、気持ち悪くて。これって、もしかして?」
「えっ!?」
睦子さんが目を見開いた。
案外、素直な人ね。
「だから、今日は遠慮させてもらってもよろしいかしら?」
「そ、そう。わかりました」
動揺した睦子さんはフラフラと帰って行った。
マンションのドアが閉まるのと同時に聡さんが肩をつかんだ。
「誰の子供だ!?」
「なに言ってるの?妊娠したなんて、一言も言ってないわよ」
「なんだ。びっくりした」
「できるわけないでしょ?勝手に勘違いして帰って行ったんだから、私は悪くないわよ」
だいたい避妊はちゃんとしてるんだから、聡さんが驚くことが自体がおかしいでしょ。
なに一緒になって、騙されてるのよ。
「そうだけど」
なんとも言えない複雑な表情をした聡さんは再びパソコンの前に座り、仕事を始めた。
雑誌で顔を隠しながら、聡さんをチラリと盗み見ると、どことなく、元気がない。
ちょっと可哀想になったので、お昼はオムライスを作ってあげた。
聡さんは喜んでくれたけど、絶対にまた睦子さんか、お義母様がくるわよ。
結婚って、本当に大変よね。
聡さんの新しい仕事は自宅でできる仕事みたいで、ずっーとパソコンをカタカタと叩く音がする。
元々、頭は悪くないから、聡さんはそれなりにデキる男なのよ。
ただ、何かに突出した才能がないだけで。
「新聞の勧誘かな」
聡さんはやれやれ、とソファーから立ち上がった。
来客は全部、聡さんが対応している。
前に押し売り業者をお客様と間違えて、部屋にいれてしまったのが、悪かったみたいで、あれ以来、危ないからでないように言われている。
ちょっと失敗しただけなのに。
「困るよ、いや、いるけど」
玄関で押し問答を繰り返しているのが、聞こえて様子を見に行くと、露原家の長男の嫁、睦子さんがいた。
お義母様のコピーじゃないのってくらい雰囲気が似ている。
前髪をピシッとわけ、鶯色の着物を着ているせいか、実年齢より、ずっと上に見えた。
それに顔の表情をちっとも変えない。
あなた、ロボットなの?って、きいてやりたいくらいにね。
私もバカじゃないから、聡さんと 睦子さんが玄関でもめている間に服を着替え、メイクをし、ソファーにズサッと滑り込んだ。
ちょうど、座った頃に聡さんが敗北して、リビングに睦子さんか入ってきた。
ほらね。
絶対に聡さんが負けると思ったわよ。
「おはよう。麗奈さん」
「おはようございます。お義姉様」
睦子さんの後ろから、遅れて入ってきた聡さんが私の早業に目をしばたかせていた。
これくらいで、驚かないで欲しいわ。
「今日から、露原家で作法を学ばれるようにと、お義母様から言われていたでしょう?」
「ごめんなさい。ちょっと気分が優れなくて」
「そう」
私を見下ろす、冷ややかな目からは嘘をつくんじゃないわよ!と、睦子さんの心の声が聞こえてくるようだった。
「熱を計りましょうか」
睦子さんは体温計を差し出した。
なかなかやるわね。
でも、私は負けないわよ。
「そういうんじゃないんです。胸がムカムカして、吐きそうで、気持ち悪くて。これって、もしかして?」
「えっ!?」
睦子さんが目を見開いた。
案外、素直な人ね。
「だから、今日は遠慮させてもらってもよろしいかしら?」
「そ、そう。わかりました」
動揺した睦子さんはフラフラと帰って行った。
マンションのドアが閉まるのと同時に聡さんが肩をつかんだ。
「誰の子供だ!?」
「なに言ってるの?妊娠したなんて、一言も言ってないわよ」
「なんだ。びっくりした」
「できるわけないでしょ?勝手に勘違いして帰って行ったんだから、私は悪くないわよ」
だいたい避妊はちゃんとしてるんだから、聡さんが驚くことが自体がおかしいでしょ。
なに一緒になって、騙されてるのよ。
「そうだけど」
なんとも言えない複雑な表情をした聡さんは再びパソコンの前に座り、仕事を始めた。
雑誌で顔を隠しながら、聡さんをチラリと盗み見ると、どことなく、元気がない。
ちょっと可哀想になったので、お昼はオムライスを作ってあげた。
聡さんは喜んでくれたけど、絶対にまた睦子さんか、お義母様がくるわよ。
結婚って、本当に大変よね。
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