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番外編 (麗奈のその後)

1 露原家の嫁

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露原つゆはら家の嫁として、相応しい立ち振舞いを身につけて頂きますからね!」
任せてください、お義母様ーーーなんて、私が言うとでも思った?
言うわけないでしょ!
今日はさとるさんの実家に連れてこられているんだけど、もう最悪。
聡さんと籍を入れたので、その報告にきただけなのに露原のおば様じゃない、お義母様はいきなりそんなことを言い出して、こっちはいい迷惑よ!
「まずはお辞儀から」
ちら、と聡さんを見ると、謝るように手を合わせていた。
渋々、お辞儀した。
「姿勢がよろしくない!」
なにそれ。
いつまでも頭を下げているのも馬鹿馬鹿しくなって、顔を上げると、ぎろりと睨まれた。
なによ?そんな目で見たって、怖くないわよ!
「露原家としては莉世りせさんなら、聡さんの嫁に相応しいと思って、絹山家との縁談を承諾したんですよ」
なんですって!?
思わず、何か言い返してやる!と思った私の口を聡さんがすばやく手でふさいだ。
「浮わついたところのない、しっかりしたお嬢さんでしょう?それなのに聡さんときたら」
茶道教室の先生でもある露原のお義母様は高そうな着物をきっちり着こなして、髪のほつれは一つもないし、お堅そうでお姉様のような地味系女子が確かに好きそうなタイプよね。
言っておくけど、私の方が可愛いわよ!絶対!
「麗奈さん。毎週土日はお休みよね」
「まあ、そうだけど」
「はい、だけで結構!この露原家にきて、作法を学んでもらいます」
嫌よ!と言う前に聡さんが手で制して、答えた。
「もちろんですよ。麗奈のためになります。ありがとう、母さん」
は?
なに言ってるの?
聡さんはそれじゃあ、帰ろう!と、私を引きずるようにして、露原家から出たのだった。


◇    ◇     ◇     ◇      ◇


「毎週土日なんで、嫌よ!せっかくのお休みなのに冗談じゃないわ!」
マンションに帰り、感情のままに暴れる私を聡さんはまあまあ、と笑いながらなだめた。
なにが『まあまあ』よっ!
「麗奈のためになることじゃないか。自分のスキルアップになると思って、母さんから学んだらいい」
夕飯は私が作ったサラダと聡さんが作ったカレーだった。
サラダなら作れるようになったんだから!
私だって、進歩してるのよ。
こうみえても。
それが、なに?
スキルアップ?
そんなのお断りよ!
「仕事もあるのに!ストレスだわ!」
グサッとトマトをフォークで突き刺すと、聡さんは苦笑した。
「麗奈なら、余裕なんじゃないか?習い事も色々していたし」
「おしゃべりに行ってただけよ。真面目にするわけないでしょ?」
「そうかぁ」
聡さんは怒りもしない。
前から思っていたけど、聡さんって何にも怒らないのよね。
変なの。
「麗奈、キュウリの輪切りがくっついているから、今度からは切れているかどうか、確認して切るといいよ」
「言われなくても、わかってるわよっ」
あー、やだやだ。
いいわ。
聞かなかったことにすれば、いいのよね。
絶対に行くものですか!
私の休みは死守してみせる!
露原のお義母様の顔を思い浮かべながら、ザクザクッとレタスをフォークで切り刻んでやった。
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