81 / 81
エピローグ
その後の邪神
しおりを挟む
「くそ! くそ!」
邪神と呼ばれたアンゴラモードがその空間でヨレヨレになっていた。
元々邪神ではなく、正式なこの世界を管理する神の一柱である。その管轄が「死と破壊を司る」もの。
「なんなんだあの有象無象共!」
とある世界で面白い魂を見つけ、これを活用して世界を混沌に返すことは出来ないだろうか? そう思ったのがきっかけだった。
世界を破壊するなど、彼女らの母、創造神が許すはずもないのだが、彼女は己に課せられた使命に忠実だった。
死と破壊を世界にもたらす。
これこそ最上の選択だと思い、その魂を攫った。
元より人種族の勝手な振る舞いにイライラしていたこともある。一度まっさらにしてしまった方が、より良い世界が作られるのではないかと思った。
双子のアルカディスにはもちろん内緒だ。彼女が司るのは生と創造なのだから。もちのろんで反対されることは決まっている。
誰にも気付かれぬよう準備して、自分の意識を下ろすための仮の器も用意した。そして、あの珍しい魂を世界に降ろした。
事は順調に運んだ。もっとも愚かな聖教国の者達は、亜人殲滅と言えばコロリと騙された。あとはあの珍しい魂の持ち主を聖女として迎え入れる。
血を抜き取り、そこに自分の手で細工し、人類殲滅のための魔薬を作り出す。
生物の魔道器官の働きを狂わせる魔薬。最終的にそれを用いて戦闘生物を作り出すのだ。
しかしどんなにこそこそしようとも、いずれ他の女神達にばれるは必須。その前に事を終わらせられれば良いのだが、きっと時と運命を司る女神が許さないだろう。
その時は来た。世界に双子のアルカディスの気配を宿した者が降りたのが分かった。時を置いてもう一体。
時間差があったのは時と運命を司る女神の計略だろう。自分の謀略はいずれ止められてしまう。
だがやらない選択肢はない。
簡単な問題だ。使徒を返り討ちにしてしまえば良いのだ。
だがそれもダメだった。よく分からない規格外の人間達。自分の知らぬ力を使い、最終的に世界から追い出されてしまった。
やはり姉の時と運命を司る女神を出し抜くことは出来なかった。
自分の体へ返ってきて、アンゴラモードは知っている限りの悪態を吐きまくった。
人類を殲滅させることが正しいことだと彼女は信じていたから。
そこへ、異世界からの有象無象の者共が押し寄せた。
「儂らの世界から人を攫った落とし前! つけてもらうぞ!」
問答無用で攻撃を仕掛けてきた。
世界を管理する神と、土地や人を守護する神。その力の差は歴然。
しかし彼らはとにかく数が多かった。
どれだけの宗教が生まれて消えたのか知らないが、とにかく形も様相も違う様々な者達。中には神に至らない者も混ざって攻撃してきた。
さすがの世界を管理する神のアンゴラモードも、しつこい攻撃にダメージを受けた。なんとか相手を殲滅しながらも、満身創痍になってしまっていた。
そして体を横たえながらも、また悪態を吐いていたのであった。
「アンゴラモード。少しは反省しましたか?」
美しい声が空間に響く。
はっとしてアンゴラモードが声のした方を見ると、そこには双子の妹アルカディスがいた。
「てめ…」
アンゴラモードが体を起こそうとすると、アルカディスが手に持った何かを掲げた。
「!!」
ガジャゴン!
アンゴラモードの周りに、檻が現われた。
「て、てめえ!」
檻に縋り付き破壊しようとするが、壊れない。
「無駄です。お母様のお力の檻ですよ。貴女には破壊できません」
静かにアルカディスが言う。
「お、お母様…」
さすがに母たる全ての創造神には敵わない。
「「貴女は少しやりすぎました。お仕置きはあの方達に任せましたから、少しは痛い目を見たでしょう。そして、この先貴女がきちんと反省するまで、そこから出すことは致しません」とお母様からの伝言です」
「そ、そんな…。でも、おれの仕事は…」
「「そこからでも出来るでしょう? アルカディスも補佐に回しますから」ですって。私にしてはいい迷惑ですけど、貴女を止められなかったので、その責任を被ることになりました」
如何にも納得できんとばかりにアルカディスが頬を膨らませる。
「お、おれは、世界のためを思って…」
「それでも、一度皆に相談はするべきです! しなかったのは不味いことだと承知していたからではないのですか?」
返す言葉も無い。
「そこでしっかりと反省なさって下さい。それでは、私は誰かさんが仕事を増やしてくれたので忙しいのでこれで」
そう言ってアンゴラモードに背を向けてスタスタと足早に去って行く。
「あ、アルカディス!」
アルカディスがピタリと足を止めると、くるりとアンゴラモードに向き直った。
「貴女の分の仕事も請け負ってあげるんですからね。あとでちゃんと報酬をいただきますから!」
「は? 報酬?」
何を言われているのか分からず、アンゴラモードが目をパチクリさせて、ハテナマークを浮かべる。
「たまには人の真似をするのも面白いですね」
うふふと笑いながら、アルカディスはその場を去って行った。
邪神と呼ばれたアンゴラモードがその空間でヨレヨレになっていた。
元々邪神ではなく、正式なこの世界を管理する神の一柱である。その管轄が「死と破壊を司る」もの。
「なんなんだあの有象無象共!」
とある世界で面白い魂を見つけ、これを活用して世界を混沌に返すことは出来ないだろうか? そう思ったのがきっかけだった。
世界を破壊するなど、彼女らの母、創造神が許すはずもないのだが、彼女は己に課せられた使命に忠実だった。
死と破壊を世界にもたらす。
これこそ最上の選択だと思い、その魂を攫った。
元より人種族の勝手な振る舞いにイライラしていたこともある。一度まっさらにしてしまった方が、より良い世界が作られるのではないかと思った。
双子のアルカディスにはもちろん内緒だ。彼女が司るのは生と創造なのだから。もちのろんで反対されることは決まっている。
誰にも気付かれぬよう準備して、自分の意識を下ろすための仮の器も用意した。そして、あの珍しい魂を世界に降ろした。
事は順調に運んだ。もっとも愚かな聖教国の者達は、亜人殲滅と言えばコロリと騙された。あとはあの珍しい魂の持ち主を聖女として迎え入れる。
血を抜き取り、そこに自分の手で細工し、人類殲滅のための魔薬を作り出す。
生物の魔道器官の働きを狂わせる魔薬。最終的にそれを用いて戦闘生物を作り出すのだ。
しかしどんなにこそこそしようとも、いずれ他の女神達にばれるは必須。その前に事を終わらせられれば良いのだが、きっと時と運命を司る女神が許さないだろう。
その時は来た。世界に双子のアルカディスの気配を宿した者が降りたのが分かった。時を置いてもう一体。
時間差があったのは時と運命を司る女神の計略だろう。自分の謀略はいずれ止められてしまう。
だがやらない選択肢はない。
簡単な問題だ。使徒を返り討ちにしてしまえば良いのだ。
だがそれもダメだった。よく分からない規格外の人間達。自分の知らぬ力を使い、最終的に世界から追い出されてしまった。
やはり姉の時と運命を司る女神を出し抜くことは出来なかった。
自分の体へ返ってきて、アンゴラモードは知っている限りの悪態を吐きまくった。
人類を殲滅させることが正しいことだと彼女は信じていたから。
そこへ、異世界からの有象無象の者共が押し寄せた。
「儂らの世界から人を攫った落とし前! つけてもらうぞ!」
問答無用で攻撃を仕掛けてきた。
世界を管理する神と、土地や人を守護する神。その力の差は歴然。
しかし彼らはとにかく数が多かった。
どれだけの宗教が生まれて消えたのか知らないが、とにかく形も様相も違う様々な者達。中には神に至らない者も混ざって攻撃してきた。
さすがの世界を管理する神のアンゴラモードも、しつこい攻撃にダメージを受けた。なんとか相手を殲滅しながらも、満身創痍になってしまっていた。
そして体を横たえながらも、また悪態を吐いていたのであった。
「アンゴラモード。少しは反省しましたか?」
美しい声が空間に響く。
はっとしてアンゴラモードが声のした方を見ると、そこには双子の妹アルカディスがいた。
「てめ…」
アンゴラモードが体を起こそうとすると、アルカディスが手に持った何かを掲げた。
「!!」
ガジャゴン!
アンゴラモードの周りに、檻が現われた。
「て、てめえ!」
檻に縋り付き破壊しようとするが、壊れない。
「無駄です。お母様のお力の檻ですよ。貴女には破壊できません」
静かにアルカディスが言う。
「お、お母様…」
さすがに母たる全ての創造神には敵わない。
「「貴女は少しやりすぎました。お仕置きはあの方達に任せましたから、少しは痛い目を見たでしょう。そして、この先貴女がきちんと反省するまで、そこから出すことは致しません」とお母様からの伝言です」
「そ、そんな…。でも、おれの仕事は…」
「「そこからでも出来るでしょう? アルカディスも補佐に回しますから」ですって。私にしてはいい迷惑ですけど、貴女を止められなかったので、その責任を被ることになりました」
如何にも納得できんとばかりにアルカディスが頬を膨らませる。
「お、おれは、世界のためを思って…」
「それでも、一度皆に相談はするべきです! しなかったのは不味いことだと承知していたからではないのですか?」
返す言葉も無い。
「そこでしっかりと反省なさって下さい。それでは、私は誰かさんが仕事を増やしてくれたので忙しいのでこれで」
そう言ってアンゴラモードに背を向けてスタスタと足早に去って行く。
「あ、アルカディス!」
アルカディスがピタリと足を止めると、くるりとアンゴラモードに向き直った。
「貴女の分の仕事も請け負ってあげるんですからね。あとでちゃんと報酬をいただきますから!」
「は? 報酬?」
何を言われているのか分からず、アンゴラモードが目をパチクリさせて、ハテナマークを浮かべる。
「たまには人の真似をするのも面白いですね」
うふふと笑いながら、アルカディスはその場を去って行った。
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる