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エピローグ

その後の邪神

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「くそ! くそ!」

邪神と呼ばれたアンゴラモードがその空間でヨレヨレになっていた。
元々邪神ではなく、正式なこの世界を管理する神の一柱である。その管轄が「死と破壊を司る」もの。

「なんなんだあの有象無象共!」

とある世界で面白い魂を見つけ、これを活用して世界を混沌に返すことは出来ないだろうか? そう思ったのがきっかけだった。
世界を破壊するなど、彼女らの母、創造神が許すはずもないのだが、彼女は己に課せられた使命に忠実だった。
死と破壊を世界にもたらす。
これこそ最上の選択だと思い、その魂を攫った。

元より人種族の勝手な振る舞いにイライラしていたこともある。一度まっさらにしてしまった方が、より良い世界が作られるのではないかと思った。
双子のアルカディスにはもちろん内緒だ。彼女が司るのは生と創造なのだから。もちのろんで反対されることは決まっている。
誰にも気付かれぬよう準備して、自分の意識を下ろすための仮の器も用意した。そして、あの珍しい魂を世界に降ろした。

事は順調に運んだ。もっとも愚かな聖教国の者達は、亜人殲滅と言えばコロリと騙された。あとはあの珍しい魂の持ち主を聖女として迎え入れる。
血を抜き取り、そこに自分の手で細工し、人類殲滅のための魔薬を作り出す。
生物の魔道器官の働きを狂わせる魔薬。最終的にそれを用いて戦闘生物を作り出すのだ。

しかしどんなにこそこそしようとも、いずれ他の女神達にばれるは必須。その前に事を終わらせられれば良いのだが、きっと時と運命を司る女神が許さないだろう。
その時は来た。世界に双子のアルカディスの気配を宿した者が降りたのが分かった。時を置いてもう一体。
時間差があったのは時と運命を司る女神の計略だろう。自分の謀略はいずれ止められてしまう。
だがやらない選択肢はない。
簡単な問題だ。使徒を返り討ちにしてしまえば良いのだ。
だがそれもダメだった。よく分からない規格外の人間達。自分の知らぬ力を使い、最終的に世界から追い出されてしまった。
やはり姉の時と運命を司る女神を出し抜くことは出来なかった。

自分の体へ返ってきて、アンゴラモードは知っている限りの悪態を吐きまくった。
人類を殲滅させることが正しいことだと彼女は信じていたから。
そこへ、異世界からの有象無象の者共が押し寄せた。

「儂らの世界から人を攫った落とし前! つけてもらうぞ!」

問答無用で攻撃を仕掛けてきた。
世界を管理する神と、土地や人を守護する神。その力の差は歴然。
しかし彼らはとにかく数が多かった。
どれだけの宗教が生まれて消えたのか知らないが、とにかく形も様相も違う様々な者達。中には神に至らない者も混ざって攻撃してきた。
さすがの世界を管理する神のアンゴラモードも、しつこい攻撃にダメージを受けた。なんとか相手を殲滅しながらも、満身創痍になってしまっていた。
そして体を横たえながらも、また悪態を吐いていたのであった。

「アンゴラモード。少しは反省しましたか?」

美しい声が空間に響く。
はっとしてアンゴラモードが声のした方を見ると、そこには双子の妹アルカディスがいた。

「てめ…」

アンゴラモードが体を起こそうとすると、アルカディスが手に持った何かを掲げた。

「!!」

ガジャゴン!

アンゴラモードの周りに、檻が現われた。

「て、てめえ!」

檻に縋り付き破壊しようとするが、壊れない。

「無駄です。お母様のお力の檻ですよ。貴女には破壊できません」

静かにアルカディスが言う。

「お、お母様…」

さすがに母たる全ての創造神には敵わない。

「「貴女は少しやりすぎました。お仕置きはあの方達に任せましたから、少しは痛い目を見たでしょう。そして、この先貴女がきちんと反省するまで、そこから出すことは致しません」とお母様からの伝言です」
「そ、そんな…。でも、おれの仕事は…」
「「そこからでも出来るでしょう? アルカディスも補佐に回しますから」ですって。私にしてはいい迷惑ですけど、貴女を止められなかったので、その責任を被ることになりました」

如何にも納得できんとばかりにアルカディスが頬を膨らませる。

「お、おれは、世界のためを思って…」
「それでも、一度皆に相談はするべきです! しなかったのは不味いことだと承知していたからではないのですか?」

返す言葉も無い。

「そこでしっかりと反省なさって下さい。それでは、私は誰かさんが仕事を増やしてくれたので忙しいのでこれで」

そう言ってアンゴラモードに背を向けてスタスタと足早に去って行く。

「あ、アルカディス!」

アルカディスがピタリと足を止めると、くるりとアンゴラモードに向き直った。

「貴女の分の仕事も請け負ってあげるんですからね。あとでちゃんと報酬・・をいただきますから!」
「は? 報酬?」

何を言われているのか分からず、アンゴラモードが目をパチクリさせて、ハテナマークを浮かべる。

「たまには人の真似をするのも面白いですね」

うふふと笑いながら、アルカディスはその場を去って行った。
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