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白焔パーティー編
パーティー
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「こんちはー」
オックス魔導具店に着くと顔パスで奥に通された。従業員の躾がしっかりしている。
「やあ。サーガ君」
すぐにオックスもやって来た。
「君のおかげでザイードもだいぶ元気になった。店に復帰するのも近いだろう。あの時は本当に世話になった。改めて礼を言うよ」
オックスが深々と頭を下げる。
「や、別に。金はちゃんともらったからな」
仕事をしただけとサーガは視線を逸らす。
「いつの間にかランクもCに上がっていたようだね。流石は期待の新人と言ったところかな?」
「そんなことはどうでもいいから、仕事の話ししてくれ」
褒められ慣れていないサーガは、さっさと仕事の話しをしろと急かす。
「ああ、もう少し待ってくれるかな? じつはもう一つの冒険者パーティーにも声を掛けているんだ。さすがに野宿などをする時は君1人では大変だろうと思ってね」
「・・・・・・」
別に平気だけど…。しかし確かに人手があったほうが負担は減るだろう。多分。
それから勧められるままに茶菓子などを齧っていると、男女入り混じった1つの冒険者パーティーがやって来た。
「こんにちはオックスさん。あの噂の冒険者君が来てくれたって?」
リーダーと思わしき男がサーガの姿を見た。
「おお、本当に黄色い子男…」
「誰が子男だ!」
サーガの鋭いツッコミが入る。
「ま、まあまあ、「白焔」の君達もとりあえず座り給えよ」
「失礼します」
サーガの前にある3人掛けのソファーに、リーダーと思しき男を真ん中にその両隣に神官らしき格好の女性と魔法使いらしき女性が座った。後ろに大きな盾を持った男と弓矢を持った女性が立つ。
「君達もサーガ君の隣に座ったらどうだね? サーガ君、いいだろう?」
「俺の隣は女性じゃないと許しません」
などとサーガが我儘を言うので、弓矢を持った女性がサーガの隣に。その隣に盾を持った男が座った。
「さて、まずは自己紹介から始めようか。私は今回依頼を出したオックスだ。王都に商品の仕入れに行くので、今いる君達に護衛を頼んだ。そして、こちらが今噂になっているらしいサーガ君だ」
「サーガだ」
男もいるので愛想が良くない。
「無名でありながらDランクから始まり、ついには先日Cランクに上がったばかりの実力者だ。私もその強さは多少見せてもらったけれど、いやあ強いのなんの。あっという間に盗賊達をバッタバッタ…」
「そういうのは置いといて、あちらさんの事知りたいんだけど?」
語り始めるオックスの言葉をバッサリ切る。
「ああ、失礼。こちらは「白焔」というパーティーの冒険者達だ。君と同じCランクのパーティーだよ。今回ばかりはギルドの方にも確認を入れて信頼出来る者達を紹介してもらったよ」
前回逃げられてしまったので慎重になっているようだ。
「リーダーをやらせてもらっているジャッカスだ」
目の前の男が名乗る。
「私はエミリーと申します」
神官服の女性が名乗った。
「リラ」
魔法少女が名乗る。
「あたしはカリン」
サーガの隣に座った女性が名乗る。
「俺はフィリップだ」
一番大柄で盾を持っていた男が名乗った。
「今までにも護衛の仕事は何度もしている。安心してくださいオックスさん」
ジャッカスが胸を叩く。
「ああ、頼りにしているよ」
「それで、出発はいつになるんですか?」
「サーガ君、準備期間もいるだろうし、3日後でどうだい?」
「ああ、いいぜ」
「よし。では3日後の朝、西門の広場に来てくれ」
皆が頷いた。
店を出ると、
「サーガ君」
ジャッカスに呼び止められた。
「少し時間はあるかな? もしよければ少し手合わせ願いたいんだけど」
「ジャッカス!」
弓矢を持った赤毛のカリンがジャッカスの腕を引く。
「あんたまた馬鹿な事!」
「別にいいぜ?」
サーガがケロリンと答える。
ジャッカス以外の面々が頭を抱え、ジャッカスだけは顔を煌めかせる。
「じゃあ早速ギルドへ…」
「あそこの地下だと狭いから街の外に行こうぜ」
「ま、待って下さい!」
金髪美女エミリーが止めに入る。
「あの、もし怪我をさせてしまいましたら治療をしても構いませんが、料金を頂く事になってしまいます」
「はあ。怪我しなきゃいいってことね」
「そんなわけにはいかないではないですか」
「ジャッカスの戦闘狂に無理に付き合わなくても良いぞ?」
大柄なフィリップも止めに入って来た。
「いや、俺もやってみたいからダイジョーブ」
「戦闘狂同士。やらせるしかない」
黒髪の魔法少女リラが言った。
それを聞いて、止めに入った面々は溜息を吐いた。
「ここまでくりゃいいだろ」
街から出てしばらく行った森の中で見付けた少し広い場所。
「ああ。問題ないだろう」
人目もほとんどないのでばれる心配はない。ギルドにばれると問題になる。
お互いに距離を取り、向き合う。
「本当にいいんだな? サーガ君」
フィリップが最後にもう一度確認してくる。
「ああ。怪我しなきゃ良いんだろ?」
「そういう問題じゃないんだが…」
「まあ一応、俺の実力を見ておいた方がそちらさんもいいっしょ?」
4人が黙り込む。確かに噂になってはいるが、サーガの実力がどの程度の物か分からない。分からなければこの後の対策も立てられない。
お互いに剣を抜き、構える。しばしの睨み合いののち、動いたのはジャッカスだった。
「だ!」
勢い良く振り下ろされた剣を、サーガは正面から受けた。
「いい打ち込みだあね」
「君もいい剣を持ってるじゃないか。ミスリルだね?」
「あら分かる? なんか希少な金属らしいよ」
鍔迫り合いを押し返し、今度はサーガが切りかかる。
「!」
振り下ろされた剣が避けられる事を予想していたのか、すぐさま跳ね上がり鼻先を掠める。
「いい太刀筋じゃないか」
「そっちもいい反応するじゃん」
そんな事を言い合いながら打ち合いは続く。
「魔法使いじゃなかったっけ?」
カリンが2人の打ち合いを見ながら小首を傾げる。
「剣を履いてるから剣士だと思ってた」
リラが言う。
「魔法もかなりの使い手と聞いてます」
エミリーも小首を傾げている。
「思った以上に動けてるな」
最初は心配していたフィリップも、2人を観察しながら頷いている。
拮抗した打ち合いが数度続いた後、2人は距離を取った。
「よし。じゃあサーガ君には僕の奥の手を見ておいてもらおうかな」
「ほう? 奥の手?」
「! ジャッカス! やり過ぎよ!」
カリンの止める声も聞かず、ジャッカスが剣に魔力を行き渡らせる。するとなんの原理か、剣が炎を纏い出した。
「実はこれは魔剣なんだ。魔力を注ぐと炎を纏う。その名も火剣カングーラ!」
ジャッカスが剣を構える。
「ほう。それは野営の火付けの時に便利そうだな」
ジャッカスがこけそうになった。
「そういう事に使う為の物ではないよ?」
「なるほど。後で肉を焼く時間も短縮出来るな!」
「そういうことじゃなくてー」
ジャッカスが若干涙目になっている。からかうのもほどほどにしなさい。
「だったら俺も」
サーガも剣に風を纏わせる。
「おお。魔法もかなりの使い手とは聞いてたけど、本当だったんだな」
「風だけだけどね」
そしてサーガも正眼に構える。
両者が相対し、そして同時に切り掛かった。
剣と剣がぶつかり合う金属音が響き渡った直後。
「な…!」
ジャッカスが炎に包まれた。
「あらら?」
サーガが不思議そうな顔をしてジャッカスを眺める。
ジャッカスは炎に包まれたまま地面を転がり続ける。
「ちょっと待て。自分で制御も出来ないのかよ」
サーガが風を操ると、途端に炎が小さくなった。
「かはっ! げはっ!」
4人は呆然とその光景を眺めていた。
「おいおい、多分炎に包まれたまま息を吸って肺が火傷してるぞ。治療しなくて良いの?」
「え? あ! はい!」
慌ててエミリーが駆け寄り、治療を始めた。
「な、何が起きたんだ?」
フィリップが当然の疑問を口に出す。
「風が炎を纏ったままジャッカスに襲いかかったように感じた…」
リラが解説する。
「い、今までそんなことなかったわよね…?」
カリンも顔を青くしている。
「え? 剣に纏った炎を操れるんじゃないの?」
サーガがキョトンと問い返す。
リラが溜息を吐きながら説明をし始める。
「普通魔剣などは魔力を流すとその属性の力を纏うだけのもの。その力そのものを操る事は出来ない」
「え? そーなの? つまらんなぁ」
「あなたみたいに纏わせた力を操るなど見たことない」
「え? そーなの?」
サーガが首を傾げている。
「い、一体、何がどうなっているんだ?」
治療を終えたジャッカスがサーガに聞いて来る。
「え? いや、だから、炎を使って攻撃してくると思ったから、こっちもそのつもりで風で応戦しようと思って。炎を使ってくるならそれを利用して返せばいいやって思ったんだけど…。まさか制御出来ないとは思わなかった」
「ジャッカスの炎を風で煽って強めて、ジャッカスに襲いかからせた感じ」
リラが付け足し解説をしてくれた。
「そんなこと…、出来るのか?」
「え? 出来ないのか?」
「普通出来ない」
さすがは魔法使い。魔法に詳しいのか、リラが首を横に振る。
「へ~、そーなの~」
サーガが呆れたような声を出した。
「なるほどな。さすがDランクから始まっただけはある。ただの虚仮威しかと思ってたけど、ギルマスの判断は正しかったんだな」
ジャッカスがうんうん頷いている。
「どうだろう。もし良かったら、俺達のパーティーに入らないかい?」
「お断りします」
速効で断わった。
「またジャッカスは皆に断りもなく…」
カリンが頭を抱えている。
「いやしかし、俺は誘うのには賛成だぞ。まあ断わられたけどな」
フィリップは苦笑いしている。
「面白い素材…。仲間に引き入れるは賛成」
リラの瞳が心なしかギラついている気がする。
「私も賛成でしたけど、断わられてしまったのは仕方ありません。ジャッカス、あまりしつこくしてはいけませんよ」
「駄目かな~?」
「お断りします」
ジャッカスの未練がましい視線も軽く交わして、サーガはお決まりの文句を述べた。
オックス魔導具店に着くと顔パスで奥に通された。従業員の躾がしっかりしている。
「やあ。サーガ君」
すぐにオックスもやって来た。
「君のおかげでザイードもだいぶ元気になった。店に復帰するのも近いだろう。あの時は本当に世話になった。改めて礼を言うよ」
オックスが深々と頭を下げる。
「や、別に。金はちゃんともらったからな」
仕事をしただけとサーガは視線を逸らす。
「いつの間にかランクもCに上がっていたようだね。流石は期待の新人と言ったところかな?」
「そんなことはどうでもいいから、仕事の話ししてくれ」
褒められ慣れていないサーガは、さっさと仕事の話しをしろと急かす。
「ああ、もう少し待ってくれるかな? じつはもう一つの冒険者パーティーにも声を掛けているんだ。さすがに野宿などをする時は君1人では大変だろうと思ってね」
「・・・・・・」
別に平気だけど…。しかし確かに人手があったほうが負担は減るだろう。多分。
それから勧められるままに茶菓子などを齧っていると、男女入り混じった1つの冒険者パーティーがやって来た。
「こんにちはオックスさん。あの噂の冒険者君が来てくれたって?」
リーダーと思わしき男がサーガの姿を見た。
「おお、本当に黄色い子男…」
「誰が子男だ!」
サーガの鋭いツッコミが入る。
「ま、まあまあ、「白焔」の君達もとりあえず座り給えよ」
「失礼します」
サーガの前にある3人掛けのソファーに、リーダーと思しき男を真ん中にその両隣に神官らしき格好の女性と魔法使いらしき女性が座った。後ろに大きな盾を持った男と弓矢を持った女性が立つ。
「君達もサーガ君の隣に座ったらどうだね? サーガ君、いいだろう?」
「俺の隣は女性じゃないと許しません」
などとサーガが我儘を言うので、弓矢を持った女性がサーガの隣に。その隣に盾を持った男が座った。
「さて、まずは自己紹介から始めようか。私は今回依頼を出したオックスだ。王都に商品の仕入れに行くので、今いる君達に護衛を頼んだ。そして、こちらが今噂になっているらしいサーガ君だ」
「サーガだ」
男もいるので愛想が良くない。
「無名でありながらDランクから始まり、ついには先日Cランクに上がったばかりの実力者だ。私もその強さは多少見せてもらったけれど、いやあ強いのなんの。あっという間に盗賊達をバッタバッタ…」
「そういうのは置いといて、あちらさんの事知りたいんだけど?」
語り始めるオックスの言葉をバッサリ切る。
「ああ、失礼。こちらは「白焔」というパーティーの冒険者達だ。君と同じCランクのパーティーだよ。今回ばかりはギルドの方にも確認を入れて信頼出来る者達を紹介してもらったよ」
前回逃げられてしまったので慎重になっているようだ。
「リーダーをやらせてもらっているジャッカスだ」
目の前の男が名乗る。
「私はエミリーと申します」
神官服の女性が名乗った。
「リラ」
魔法少女が名乗る。
「あたしはカリン」
サーガの隣に座った女性が名乗る。
「俺はフィリップだ」
一番大柄で盾を持っていた男が名乗った。
「今までにも護衛の仕事は何度もしている。安心してくださいオックスさん」
ジャッカスが胸を叩く。
「ああ、頼りにしているよ」
「それで、出発はいつになるんですか?」
「サーガ君、準備期間もいるだろうし、3日後でどうだい?」
「ああ、いいぜ」
「よし。では3日後の朝、西門の広場に来てくれ」
皆が頷いた。
店を出ると、
「サーガ君」
ジャッカスに呼び止められた。
「少し時間はあるかな? もしよければ少し手合わせ願いたいんだけど」
「ジャッカス!」
弓矢を持った赤毛のカリンがジャッカスの腕を引く。
「あんたまた馬鹿な事!」
「別にいいぜ?」
サーガがケロリンと答える。
ジャッカス以外の面々が頭を抱え、ジャッカスだけは顔を煌めかせる。
「じゃあ早速ギルドへ…」
「あそこの地下だと狭いから街の外に行こうぜ」
「ま、待って下さい!」
金髪美女エミリーが止めに入る。
「あの、もし怪我をさせてしまいましたら治療をしても構いませんが、料金を頂く事になってしまいます」
「はあ。怪我しなきゃいいってことね」
「そんなわけにはいかないではないですか」
「ジャッカスの戦闘狂に無理に付き合わなくても良いぞ?」
大柄なフィリップも止めに入って来た。
「いや、俺もやってみたいからダイジョーブ」
「戦闘狂同士。やらせるしかない」
黒髪の魔法少女リラが言った。
それを聞いて、止めに入った面々は溜息を吐いた。
「ここまでくりゃいいだろ」
街から出てしばらく行った森の中で見付けた少し広い場所。
「ああ。問題ないだろう」
人目もほとんどないのでばれる心配はない。ギルドにばれると問題になる。
お互いに距離を取り、向き合う。
「本当にいいんだな? サーガ君」
フィリップが最後にもう一度確認してくる。
「ああ。怪我しなきゃ良いんだろ?」
「そういう問題じゃないんだが…」
「まあ一応、俺の実力を見ておいた方がそちらさんもいいっしょ?」
4人が黙り込む。確かに噂になってはいるが、サーガの実力がどの程度の物か分からない。分からなければこの後の対策も立てられない。
お互いに剣を抜き、構える。しばしの睨み合いののち、動いたのはジャッカスだった。
「だ!」
勢い良く振り下ろされた剣を、サーガは正面から受けた。
「いい打ち込みだあね」
「君もいい剣を持ってるじゃないか。ミスリルだね?」
「あら分かる? なんか希少な金属らしいよ」
鍔迫り合いを押し返し、今度はサーガが切りかかる。
「!」
振り下ろされた剣が避けられる事を予想していたのか、すぐさま跳ね上がり鼻先を掠める。
「いい太刀筋じゃないか」
「そっちもいい反応するじゃん」
そんな事を言い合いながら打ち合いは続く。
「魔法使いじゃなかったっけ?」
カリンが2人の打ち合いを見ながら小首を傾げる。
「剣を履いてるから剣士だと思ってた」
リラが言う。
「魔法もかなりの使い手と聞いてます」
エミリーも小首を傾げている。
「思った以上に動けてるな」
最初は心配していたフィリップも、2人を観察しながら頷いている。
拮抗した打ち合いが数度続いた後、2人は距離を取った。
「よし。じゃあサーガ君には僕の奥の手を見ておいてもらおうかな」
「ほう? 奥の手?」
「! ジャッカス! やり過ぎよ!」
カリンの止める声も聞かず、ジャッカスが剣に魔力を行き渡らせる。するとなんの原理か、剣が炎を纏い出した。
「実はこれは魔剣なんだ。魔力を注ぐと炎を纏う。その名も火剣カングーラ!」
ジャッカスが剣を構える。
「ほう。それは野営の火付けの時に便利そうだな」
ジャッカスがこけそうになった。
「そういう事に使う為の物ではないよ?」
「なるほど。後で肉を焼く時間も短縮出来るな!」
「そういうことじゃなくてー」
ジャッカスが若干涙目になっている。からかうのもほどほどにしなさい。
「だったら俺も」
サーガも剣に風を纏わせる。
「おお。魔法もかなりの使い手とは聞いてたけど、本当だったんだな」
「風だけだけどね」
そしてサーガも正眼に構える。
両者が相対し、そして同時に切り掛かった。
剣と剣がぶつかり合う金属音が響き渡った直後。
「な…!」
ジャッカスが炎に包まれた。
「あらら?」
サーガが不思議そうな顔をしてジャッカスを眺める。
ジャッカスは炎に包まれたまま地面を転がり続ける。
「ちょっと待て。自分で制御も出来ないのかよ」
サーガが風を操ると、途端に炎が小さくなった。
「かはっ! げはっ!」
4人は呆然とその光景を眺めていた。
「おいおい、多分炎に包まれたまま息を吸って肺が火傷してるぞ。治療しなくて良いの?」
「え? あ! はい!」
慌ててエミリーが駆け寄り、治療を始めた。
「な、何が起きたんだ?」
フィリップが当然の疑問を口に出す。
「風が炎を纏ったままジャッカスに襲いかかったように感じた…」
リラが解説する。
「い、今までそんなことなかったわよね…?」
カリンも顔を青くしている。
「え? 剣に纏った炎を操れるんじゃないの?」
サーガがキョトンと問い返す。
リラが溜息を吐きながら説明をし始める。
「普通魔剣などは魔力を流すとその属性の力を纏うだけのもの。その力そのものを操る事は出来ない」
「え? そーなの? つまらんなぁ」
「あなたみたいに纏わせた力を操るなど見たことない」
「え? そーなの?」
サーガが首を傾げている。
「い、一体、何がどうなっているんだ?」
治療を終えたジャッカスがサーガに聞いて来る。
「え? いや、だから、炎を使って攻撃してくると思ったから、こっちもそのつもりで風で応戦しようと思って。炎を使ってくるならそれを利用して返せばいいやって思ったんだけど…。まさか制御出来ないとは思わなかった」
「ジャッカスの炎を風で煽って強めて、ジャッカスに襲いかからせた感じ」
リラが付け足し解説をしてくれた。
「そんなこと…、出来るのか?」
「え? 出来ないのか?」
「普通出来ない」
さすがは魔法使い。魔法に詳しいのか、リラが首を横に振る。
「へ~、そーなの~」
サーガが呆れたような声を出した。
「なるほどな。さすがDランクから始まっただけはある。ただの虚仮威しかと思ってたけど、ギルマスの判断は正しかったんだな」
ジャッカスがうんうん頷いている。
「どうだろう。もし良かったら、俺達のパーティーに入らないかい?」
「お断りします」
速効で断わった。
「またジャッカスは皆に断りもなく…」
カリンが頭を抱えている。
「いやしかし、俺は誘うのには賛成だぞ。まあ断わられたけどな」
フィリップは苦笑いしている。
「面白い素材…。仲間に引き入れるは賛成」
リラの瞳が心なしかギラついている気がする。
「私も賛成でしたけど、断わられてしまったのは仕方ありません。ジャッカス、あまりしつこくしてはいけませんよ」
「駄目かな~?」
「お断りします」
ジャッカスの未練がましい視線も軽く交わして、サーガはお決まりの文句を述べた。
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