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青い髪の少女編
シア
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然程のこともないだろうというダンの診察。さすがに道端に放って行くわけにも行かないので、少女が目覚めるのを待った。
「う…ん」
ほどなくして少女が目覚めた。
「なんですの、これ」
一応ダンにグルグル巻きにしてもらっている。
「あ、起きた?」
キーナが少女に近寄った。
「なんですの、あなた。これ解いて下さいませ」
「え~と、まずは話し合いをしてからかな…」
また暴れられても困る。
「僕はキーナ。君は?」
「あなたに名乗る名などございませんわ」
ふん!と顔を背けた。
「可愛くないガキ…」
「あ、あなた…!」
サーガを見て体を強ばらせた。若干トラウマになっているようだ。
「やはり置いて行っても良かったんじゃないか?」
テルディアスが呟いた。
テルディアスは適当にそこら辺にぶら下げておいても良いのではないかと主張したくちである。相変わらずキーナ以外には冷たい。
「な…!」
少女がテルディアスを見て固まった。しっかり5秒はフリーズしていた。
「ん? おーい、どうしたの?」
キーナが目の前で手を振ると、何故か夢から覚めたようなハッとした顔になる。
「そ、そちらの方は…」
「ん? テルのこと?」
「テル、様…?」
「テルディアスだ!」
キーナ以外にテルと略されると腹が立つ。
「テルディアス様…? なんて素敵なお名前…」
メリンダの眉がピクリと動く。なんとなく不穏な空気を感じ取った。
少女の顔を見てみれば、瞳はキラキラ、顔も紅潮してキラッキラ。
(あ~~…)
メリンダは溜息を吐いた。
「あの~、それで、なんで宝玉泥棒なんて言ってたのかな?」
「泥棒を泥棒と呼んで何が悪いのですの?!」
キッとキーナを睨む。
「でも僕達、ちゃんと王様の許可は貰ったよ?」
「何か汚い手を使って、お父様達を騙したのでしょう?! 私は騙されませんわ!」
「そんなことはしていない。キーナがきちんと水巫女の試練とやらを受けて、資格があるからと王直々に借り受けることを承諾してもらったんだ」
と、テルディアスが口を挟むと、何故かモジモジし始める少女。
「え、いえ、でも、水の一族でもない方が、水巫女の試練など…」
「キーナはちゃんとやり遂げたぞ」
テルディアスが睨むと、少女がしゅんとなった。
「つーか、今お父様言わんかった?」
サーガが突っ込んだ。
「聞こえたわね」
メリンダも頷いた。
「あの~、君の名前は?」
「知りません!」
キーナには塩対応である。
「名無しか」
別にどうでもいいとテルディアスが溜息を吐く。
「私の名は、ルクレティシア・エレ・アクアオーラですわ! どうぞ親しみを込めてシアと呼んでくださいませ!」
何故かテルディアスに向かって嬉しそうに語り出す。キーナガン無視である。
キーナちょっぴり傷ついた。
「キーナちゃん」
メリンダがキーナにおいでおいでをする。素直にメリンダの側へと寄るキーナ。
「あの子への質問はテルディアスに任せておきましょ」
「え? でも…」
「その方が口が軽いみたいだからね。いいわね、テルディアス」
メリンダがテルディアスを睨み付ける。
テルディアス、苦い顔をするも、どうやら自分には素直に質問の答えを返すようだと仕方なく質問する。ただし、側に寄るようなことはしない。
「お前は水の王国の関係者か?」
「はい! 私は水の王国の王の8番目の姫でございます!」
姫だった…。しかも8番目てことは、上に7人も姫がいる…。あの王様頑張ってたんだな。
「何故俺達を泥棒呼ばわりする?」
「それは…。王達から水の宝玉が水の王国からなくなったことは聞きました。しかし、水の一族でもない者がそう簡単に持って行ける物でも無し、きっと何かおかしな術でも使って盗み出したのであろうと思いまして…。しかし今日、分かりましたわ! 私の勘違いだったのだと!」
「そうか」
それなら何も問題はないなと、切り上げようとしたが…。
「はい! テルディアス様が私の夫と認められて宝玉を貸し与えられたのだと! それなら辻褄も合いますわ!」
ずっこけた。
「テルディアス様を私の婚約者にして王族関係としてしまえば、それなりに諸外国にも面目が立ちますし…」
何を照れながら言っているのだろう。
頭を抱えるテルディアス。呆れてものも言えないメリンダとキーナ。
「いや~、良かったな。逆玉じゃん」
「ふざけるな!」
ニヤニヤテルディアスを見るサーガ。面白がっている。
「いいんじゃん? まだガキだけど、将来美人になるぜ~?」
確かに可愛い顔をしている。将来はメリンダに負けず劣らず美人になるだろう。
美人になる、と言われて気を良くしたのか、
「あなた、分かってますわね。でも私はテルディアス様一筋ですわ!」
聞いてもいないことを喋り出す。
「お~、そんで、嬢ちゃんいくつよ?」
「私は12歳ですわ!」
ガキだった。
「んん! テルディアス! 大丈夫! いけるぜ!」
「ふ・ざ・け・る・な!」
他人事だと思って楽しむサーガ。テルディアスは剣に手をかけた。
「テル、テル、まあまあ」
「サーガも、ふざけすぎよ」
「へいへい」
キーナがテルディアスを宥め、メリンダがサーガを窘める。
「なんにせよ、宝玉はきちんと借り受けた物なんでしょ? だったらなんの問題もないわよね」
メリンダがテルディアスに念を押す。
「ああ。まったくない」
「だったらさっさと先に進みましょ。これじゃあ街まで行けないわよ」
変な所で足止めを食った。もう今日は街までは辿り着けないと思った方が良いだろう。
「そうだな」
「で、これ、どーすんだ?」
サーガがこれを指さす。指さされたシアが「これ」呼ばわりされてむっとした顔になる。
「私はテルディアス様の婚約者ですもの。テルディアス様と共に参りますわ!」
「勝手に決めるな!」
テルディアスの鋭いツッコミが響き渡る。
暴れないと念押しし、ダンが戒めを解いてやると、
「テルディアス様~!」
とテルディアスの胸に向かって飛び込んだ。テルディアスはひらりとそれを避ける。テルディアスが避けたが故に、そのまま飛んで行って地面にぶつかるシア。
「ひ、酷いですわ、テルディアス様。お恥ずかしいからと言って、婚約者の抱擁を避けるなどと…」
「誰が婚約者だ…」
テルディアスの声が低い。かなりマジで怒っているようだ。しかしシアはそんなこと意に介さず、魔法で痛みを止めると、そそそとテルディアスの側に寄ろうとする。
テルディアスは素早くシアと距離を取り、キーナを盾にする。鬼ごっこか。
「テルディアス様。お恥ずかしがらずに、さあ手をお取りになって」
「寄るな触れるな」
キーナを挟んで攻防が始まる。
「あの…。言って良いか分からないけど、邪魔なんだけど…」
目の前を、背後をウロチョロされるのは邪魔すぎる。
「おい、何やってんだよ」
「行くわよ、テルディアス」
テルディアス達が邪魔で動けないキーナ。攻防をやめない2人。今夜は野宿確定かなと、ダンは空を見上げた。
「ちょっと、これ、外してくださいまし」
ダンが首を横に振る。
いつまでたっても諦めないシアに、テルディアスが街道から離れ、森の中へと逃げ出した。それを追って行こうとしたシア。しかしその足に蔓が巻かれて、正面から地面に激突した。見ている方が痛い…。
「なんですの?! この蔓?!」
思い切り顔を打ったらしく、顔を押さえながら起き上がったシア。足に巻き付く蔓を外そうと藻掻く。そこへダンが静かに近寄り、鼻血を出していたシアの顔を拭いてやり、治してやった。
「あらあなた、治癒魔術が得意なんですのね?」
詠唱もなしにあっという間に治してしまったダンに、シアが感心した声を上げた。しかし、
「あら? 腰にいつの間に…」
足に巻き付いていた蔓は外れていたが、いつの間にか腰に巻き付いている。そしてその先端を、ダンが握っていた。
「嫌がる、無理強い、駄目」
ダンが首を振る。
「嫌がる? テルディアス様は恥ずかしがっているだけですわ」
どうも思い込みが激しい娘のようである。
「森、危険。駄目」
森の中にはご存じの通り、妖魔がうろついている。テルディアス程の実力者であれば問題ない。だがシアは戦闘訓練は受けていそうだが、実力はそれほどでもないとダンは見ていた。
正解。
下手に遭遇して命を落とすことになっても、そこにテルディアスを巻き込むことになっても(テルディアスは余裕で見捨てそうであるが)大変である。なので、ドクターストップならぬダンストップがかかりました。
自分だったら大丈夫だと声を張り上げるシアであったが、ダンは聞かなかった。
なので、そのまま腰に蔓を巻いたまま、一行の後ろを歩いていたのである。一応一緒について行けば、テルディアスも共に行くという事は理解したようだった。
1度シアが水で蔓を切り、脱走を図ったものの、
「これでテルディアス様を追えますわ!」
と意気揚々と走り出したその足に新たに蔓が。
再び地面に正面激突し、ダンに捕まったのだった。
ダンが本気になったら、逃げ出すことは叶わない…。
「う…ん」
ほどなくして少女が目覚めた。
「なんですの、これ」
一応ダンにグルグル巻きにしてもらっている。
「あ、起きた?」
キーナが少女に近寄った。
「なんですの、あなた。これ解いて下さいませ」
「え~と、まずは話し合いをしてからかな…」
また暴れられても困る。
「僕はキーナ。君は?」
「あなたに名乗る名などございませんわ」
ふん!と顔を背けた。
「可愛くないガキ…」
「あ、あなた…!」
サーガを見て体を強ばらせた。若干トラウマになっているようだ。
「やはり置いて行っても良かったんじゃないか?」
テルディアスが呟いた。
テルディアスは適当にそこら辺にぶら下げておいても良いのではないかと主張したくちである。相変わらずキーナ以外には冷たい。
「な…!」
少女がテルディアスを見て固まった。しっかり5秒はフリーズしていた。
「ん? おーい、どうしたの?」
キーナが目の前で手を振ると、何故か夢から覚めたようなハッとした顔になる。
「そ、そちらの方は…」
「ん? テルのこと?」
「テル、様…?」
「テルディアスだ!」
キーナ以外にテルと略されると腹が立つ。
「テルディアス様…? なんて素敵なお名前…」
メリンダの眉がピクリと動く。なんとなく不穏な空気を感じ取った。
少女の顔を見てみれば、瞳はキラキラ、顔も紅潮してキラッキラ。
(あ~~…)
メリンダは溜息を吐いた。
「あの~、それで、なんで宝玉泥棒なんて言ってたのかな?」
「泥棒を泥棒と呼んで何が悪いのですの?!」
キッとキーナを睨む。
「でも僕達、ちゃんと王様の許可は貰ったよ?」
「何か汚い手を使って、お父様達を騙したのでしょう?! 私は騙されませんわ!」
「そんなことはしていない。キーナがきちんと水巫女の試練とやらを受けて、資格があるからと王直々に借り受けることを承諾してもらったんだ」
と、テルディアスが口を挟むと、何故かモジモジし始める少女。
「え、いえ、でも、水の一族でもない方が、水巫女の試練など…」
「キーナはちゃんとやり遂げたぞ」
テルディアスが睨むと、少女がしゅんとなった。
「つーか、今お父様言わんかった?」
サーガが突っ込んだ。
「聞こえたわね」
メリンダも頷いた。
「あの~、君の名前は?」
「知りません!」
キーナには塩対応である。
「名無しか」
別にどうでもいいとテルディアスが溜息を吐く。
「私の名は、ルクレティシア・エレ・アクアオーラですわ! どうぞ親しみを込めてシアと呼んでくださいませ!」
何故かテルディアスに向かって嬉しそうに語り出す。キーナガン無視である。
キーナちょっぴり傷ついた。
「キーナちゃん」
メリンダがキーナにおいでおいでをする。素直にメリンダの側へと寄るキーナ。
「あの子への質問はテルディアスに任せておきましょ」
「え? でも…」
「その方が口が軽いみたいだからね。いいわね、テルディアス」
メリンダがテルディアスを睨み付ける。
テルディアス、苦い顔をするも、どうやら自分には素直に質問の答えを返すようだと仕方なく質問する。ただし、側に寄るようなことはしない。
「お前は水の王国の関係者か?」
「はい! 私は水の王国の王の8番目の姫でございます!」
姫だった…。しかも8番目てことは、上に7人も姫がいる…。あの王様頑張ってたんだな。
「何故俺達を泥棒呼ばわりする?」
「それは…。王達から水の宝玉が水の王国からなくなったことは聞きました。しかし、水の一族でもない者がそう簡単に持って行ける物でも無し、きっと何かおかしな術でも使って盗み出したのであろうと思いまして…。しかし今日、分かりましたわ! 私の勘違いだったのだと!」
「そうか」
それなら何も問題はないなと、切り上げようとしたが…。
「はい! テルディアス様が私の夫と認められて宝玉を貸し与えられたのだと! それなら辻褄も合いますわ!」
ずっこけた。
「テルディアス様を私の婚約者にして王族関係としてしまえば、それなりに諸外国にも面目が立ちますし…」
何を照れながら言っているのだろう。
頭を抱えるテルディアス。呆れてものも言えないメリンダとキーナ。
「いや~、良かったな。逆玉じゃん」
「ふざけるな!」
ニヤニヤテルディアスを見るサーガ。面白がっている。
「いいんじゃん? まだガキだけど、将来美人になるぜ~?」
確かに可愛い顔をしている。将来はメリンダに負けず劣らず美人になるだろう。
美人になる、と言われて気を良くしたのか、
「あなた、分かってますわね。でも私はテルディアス様一筋ですわ!」
聞いてもいないことを喋り出す。
「お~、そんで、嬢ちゃんいくつよ?」
「私は12歳ですわ!」
ガキだった。
「んん! テルディアス! 大丈夫! いけるぜ!」
「ふ・ざ・け・る・な!」
他人事だと思って楽しむサーガ。テルディアスは剣に手をかけた。
「テル、テル、まあまあ」
「サーガも、ふざけすぎよ」
「へいへい」
キーナがテルディアスを宥め、メリンダがサーガを窘める。
「なんにせよ、宝玉はきちんと借り受けた物なんでしょ? だったらなんの問題もないわよね」
メリンダがテルディアスに念を押す。
「ああ。まったくない」
「だったらさっさと先に進みましょ。これじゃあ街まで行けないわよ」
変な所で足止めを食った。もう今日は街までは辿り着けないと思った方が良いだろう。
「そうだな」
「で、これ、どーすんだ?」
サーガがこれを指さす。指さされたシアが「これ」呼ばわりされてむっとした顔になる。
「私はテルディアス様の婚約者ですもの。テルディアス様と共に参りますわ!」
「勝手に決めるな!」
テルディアスの鋭いツッコミが響き渡る。
暴れないと念押しし、ダンが戒めを解いてやると、
「テルディアス様~!」
とテルディアスの胸に向かって飛び込んだ。テルディアスはひらりとそれを避ける。テルディアスが避けたが故に、そのまま飛んで行って地面にぶつかるシア。
「ひ、酷いですわ、テルディアス様。お恥ずかしいからと言って、婚約者の抱擁を避けるなどと…」
「誰が婚約者だ…」
テルディアスの声が低い。かなりマジで怒っているようだ。しかしシアはそんなこと意に介さず、魔法で痛みを止めると、そそそとテルディアスの側に寄ろうとする。
テルディアスは素早くシアと距離を取り、キーナを盾にする。鬼ごっこか。
「テルディアス様。お恥ずかしがらずに、さあ手をお取りになって」
「寄るな触れるな」
キーナを挟んで攻防が始まる。
「あの…。言って良いか分からないけど、邪魔なんだけど…」
目の前を、背後をウロチョロされるのは邪魔すぎる。
「おい、何やってんだよ」
「行くわよ、テルディアス」
テルディアス達が邪魔で動けないキーナ。攻防をやめない2人。今夜は野宿確定かなと、ダンは空を見上げた。
「ちょっと、これ、外してくださいまし」
ダンが首を横に振る。
いつまでたっても諦めないシアに、テルディアスが街道から離れ、森の中へと逃げ出した。それを追って行こうとしたシア。しかしその足に蔓が巻かれて、正面から地面に激突した。見ている方が痛い…。
「なんですの?! この蔓?!」
思い切り顔を打ったらしく、顔を押さえながら起き上がったシア。足に巻き付く蔓を外そうと藻掻く。そこへダンが静かに近寄り、鼻血を出していたシアの顔を拭いてやり、治してやった。
「あらあなた、治癒魔術が得意なんですのね?」
詠唱もなしにあっという間に治してしまったダンに、シアが感心した声を上げた。しかし、
「あら? 腰にいつの間に…」
足に巻き付いていた蔓は外れていたが、いつの間にか腰に巻き付いている。そしてその先端を、ダンが握っていた。
「嫌がる、無理強い、駄目」
ダンが首を振る。
「嫌がる? テルディアス様は恥ずかしがっているだけですわ」
どうも思い込みが激しい娘のようである。
「森、危険。駄目」
森の中にはご存じの通り、妖魔がうろついている。テルディアス程の実力者であれば問題ない。だがシアは戦闘訓練は受けていそうだが、実力はそれほどでもないとダンは見ていた。
正解。
下手に遭遇して命を落とすことになっても、そこにテルディアスを巻き込むことになっても(テルディアスは余裕で見捨てそうであるが)大変である。なので、ドクターストップならぬダンストップがかかりました。
自分だったら大丈夫だと声を張り上げるシアであったが、ダンは聞かなかった。
なので、そのまま腰に蔓を巻いたまま、一行の後ろを歩いていたのである。一応一緒について行けば、テルディアスも共に行くという事は理解したようだった。
1度シアが水で蔓を切り、脱走を図ったものの、
「これでテルディアス様を追えますわ!」
と意気揚々と走り出したその足に新たに蔓が。
再び地面に正面激突し、ダンに捕まったのだった。
ダンが本気になったら、逃げ出すことは叶わない…。
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