キーナの魔法

小笠原慎二

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ミドル王国編

暴走しないように

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ポ・・・

「!!!」

キーナの周りに火の玉が出現し始める。
そしてキーナはゆっくりと目を開けると、左手を前に差し出した。
その指先から勢いよく炎が生まれ、瞬く間にキーナの体を包み込む。

ボウッ!!

キーナを核として大きな火の玉が燃え盛った。

「こ、これは・・・」

予想外の出来事におじいさんが呆然となる。
確かキーナは魔法を習ったことがないと聞いていたのだが・・・。
基礎も学ばずに精霊の力を引き出すことは常人にはとうてい無理な話だ。とすると・・・。

ゴオッ!!!

炎はますます勢いを増して燃え上がった。
ところが核となるキーナは意識があるのかないのか、ふらふらとしている。

「! いかん!」

キーナの服や髪の毛がチリチリと燃え始めた。このままでは・・・。

「水(クア)よ!」

おじいさんが急いで水を召喚する。

バッシャアアア!!!

大量の水がキーナの頭上から降りそそいだ。

キョトン・・・。

何がおきたのかよく分からないキーナ。呆けた顔でずぶ濡れになった体を見渡す。

「あれ?」
「嬢ちゃん、大丈夫かね」

おじいさんが駆け寄ってきた。

「僕、確か炎を出せたよね?」

不思議そうな顔をしておじいさんに問いかける。

「ああ、じゃが、呑まれたのう」
「呑まれた?」
「まあ、力が暴走しそうになったっちゅうことじゃ」

とりあえず何もなさそうなキーナを見ておじいさんは胸をなでおろす。

「あのままじゃったら嬢ちゃんは力に呑まれて己を焼いてしまっていたぞ」
「え・・・・・」

キーナの顔が青くなった。
やっと事態の深刻さが分かったらしい。

「しかし驚いたのう。呪文も使わずにいきなりあれだけの炎を出してしまうとは・・・」

そういうおじいさんの瞳がキーナの体を嘗め回す。
小柄で細身でまだまだ幼児体系に近い体つきのキーナではあるが、出るところはきちんと出て、活動的なことを表すかのように、あちこち引き締まっている。
これからの発展がとても楽しみな体つき・・・。
ではなくて。
水に濡れたせいだ。服がぴっちりとキーナの体のラインに沿って張り付いてしまっているのだ。
それを眺めるおじいさんの顔つきが緩む。

(それに・・・細身じゃがなかなか・・・)

この好色ジジイ、ストライクゾーン広すぎやしないか?

「? おじいさん?」

なんだかポワ~ンとした表情をするおじいさんを、何の疑いもなくキーナは見つめる。

「あああ! いや、何でもない! 何もやらしいことなど考えてもいないぞ!」

正直なじいさんだ。
おもわず垂れそうになった唾を飲み込み、おじいさんは慌てて取り繕う。

「今なら水の気配が満ちていて水を喚びやすい。さっきのようにやってごらん」
「うん!」

うまいことごまかしたな。
キーナの顔はやる気満々という風に輝いている。

「ただ、呑まれんように気をつけてな。自我をしっかり保つのじゃ」
「ジガ?」
「精霊に同調しすぎると、己の肉体を壊してしまうのじゃよ。
 力は自分を核にして引き出すということを忘れずにな」
「うん!」

さすがは一応大魔道士。うまいことを言う。
キーナは先程のように、精霊の気配を掴み取るために集中し始めた。
目を閉じ、自分の周りに意識を広げていく。
そんなキーナを見ながら好色ジジイは考えていた。

(中に何も着せないか、着せたものが白ければ・・・もしかしたら禁断の果実が見えていたかもしれない・・・)

もうこんな奴書くのやめていいですか?










一人街道の側の森の中を歩くテルディアス。

(なんだ・・・? さっきから首元がチリチリとするような・・・)

右手で首の後ろをポリポリとかいた。
嫌な予感・・・?

(大丈夫だよな・・・)

不安に思いつつもその足を止めることはない。

ピチョン

キーナの髪から雫が滴り落ちる。
意識を集中して世界を感じようとする。
力の流れ・・・
精霊の気配・・・

(! ・・・また・・・)

先程とは違う、ふわっとするような不思議な気配を感じた。
目を閉じているのにその人が近づいてくるのが分かった。
濃い青い髪をした美しい女性。
水の中を泳ぐかのようにキーナの周りをするりと駆け抜ける。
そしてキーナの目の前で恭しく片膝をつき、頭を垂れた。

(誰?)

『我が力、お望みとあらば』

その女性がさも嬉しそうにそう言った。
そして・・・

「!」

キーナの意識が水の中に沈んでいく。









ドオッ!!!!

物凄い量の水が、キーナの周りから逆さまの滝のように噴き出した。
その中心でキーナは目を瞑ったまま、己が身をあるがままに任せている。
このままでは溺れてしまうだろう。

「嬢ちゃん!! 力に溺れるな!!」

おじいさんが怒鳴った。
その声がかろうじて聞こえたのか、キーナがはっと目を覚ます。
その途端、荒れ狂うように噴き出していた水が動きを止め、キーナの周りで静かに漂いだした。
まるで大きな水滴の中にキーナが浮かんでいるようだった。

「やりおった・・・」

おじいさんがほっとした顔になる。
キーナがキョロキョロと周りを見渡す。
右も左も上も下も、水が自分を優しく包んでいる。
不思議と息苦しくない。

「これ・・・僕が・・・?」

おじいさんが近づいてきた。

「どうやら制御できたようじゃの」
「おじいさん」

にっこり笑いながらおじいさんはキーナを見つめる。

「嬢ちゃんはどうやら強大な魔力を持っとるみたいじゃの。
 制御の仕方さえ覚えてしまえば、すぐにテルディアスを追えるぞい」
「ほんと!」
「ああ」

キーナの顔がパッと輝いた。

「次は風をやってみなさい」
「うん!」

キーナが再び集中し始めた。
水の気配が消えていき、風の気配が強まっていく。
その様子を見ながらおじいさんは微笑む。

(テルディアス。もしかしたらこの娘は・・・お前の捜し求めるものかもしれんぞい)

強大な魔力、精霊を従える唯一の存在。
それがもしかしたら・・・。
風が音を立ててキーナの周りに集まる。さながら風の壁といったところか。
風に煽られ、キーナの髪が舞い上がり、ついでにヒラヒラと服も舞い上がろうと・・・。

「げ!」

それに気づいたキーナ。
素早く裾を押さえるが、風がそれすらも舞い上げんと勢いを増す。
風がキーナの頬を、服を、体のあちこちを掠める。
薄く皮膚が切れ、血が滲み出す。

「嬢ちゃん! パンチラ何ぞ気にせずに力を制御するんじゃー!」
「できるかーーー!!!」

もっともだ。
だがこのままでは、風はもっと勢いを増し、最悪パンチ・・・ではなく、確実に体を切り刻み始めるだろう。

(こーなりゃ・・・!!)

キーナが意識を風から地へと移す。
風は急速に力を失い、パンチラだけは防ぐことができた。
そして、地面からは、ピョコピョコと植物の芽が出て・・・。

「ん?」

とおじいさんが思った途端、

ドザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ

勢いよく植物が育ち始めた。
それはあっという間に大木となり、ドームの屋根さえ突き抜けるかと思えるほど巨大に広がる。

「嬢ちゃんめ、地の力を使いおったな」
(チッ、もう少しだったのに)

エロジジイはほっといて。

「おじいさ~~~ん」

天井に近い高いところから、キーナの声が降ってきた。
木々の間にでもいるのか、姿はさっぱりと見えなかった。

「どうしたんじゃー、嬢ちゃん」

様子を見におじいさんが声のしたほうへ飛んでいくと、

「お?」

おじいさんの目が輝いた。

「はさまれちゃった・・・」

なんともきわどい格好で、キーナが木の間に手を挟まれている。
体のあちこちを、その細いラインを引き立たせるかのようにツタが張っていて、完全に動けなくなっていた。
思わずごくりと唾を飲むおじいさん。

「うまく制御できなかったみたいなのぉ」

困った顔でキーナがおじいさんに訴える。

「あちこち絡まって動けないし・・・、おじいさん?」

おじいさんの顔がぽや~と、一点を見つめている。
ハッと我に返ると、

「あ、ああ! そうじゃの! 今解いてやるからの!」

ベシッ! と何故か自分の頬をたたく。

(しかし・・・)

おじいさんは、もう一度キーナの体に絡まっているツタを目で追う振りをする。

(いやいやいや、この子に手を出すわけには・・・)

頭をぶるぶると振りながら、理性を保つ。
そうだ。手を出すんじゃないこのエロジジイ。
キーナはわけが分からず、頭にハテナマークを浮かべている。
おじいさんが手をかざし、何事か唱えると、あれ程ビクともしなかった木々やツタがスルスルと解かれていった。

「あーよかった」

やっと自由になれて、キーナがほっと息をつく。

「後は自分でやってごらん」
「うん」

言うが早いか、キーナの周りの空気が揺らめいた。

ゴウッ!!

あっという間に大きな炎が木を包み、瞬く間に消滅させてしまった。

「ほ、コリャでかいのう。たいした子じゃ」

ヒラリっと軽やかに地面に降り立つキーナ。

「ん~~~~なんとなく分かってきた!」

嬉しそうに体を震わす。

「そいつはたいしたもんじゃ」
「もう一回やっていい?」

キラキラしながらキーナがおじいさんに問いかける。

「ああ、じゃが、その前に・・・、服を替えたほうがいいぞ」

ふと、キーナが自分の体を見ると、

「わ!」

あちこち切れて破けて、きわどいところが見え隠れ。正に満身創痍という言葉がぴったりの有様だった。











「疲れた~~」

ベッドにゴロンとダイブする。
一日中頑張ったおかげで体が重い。
一度横たわると動くのが面倒な程に疲れきっていた。

「も、・・・だめ。動けらい・・・」

まともに喋ることもままならないらしい。

「う~~~~、ねるにゃーーーー!」

勢いに任せてきちんとベットに潜り込む。
きちんと布団をかけて寝ないと風邪を引きますからね。
上半身の力を抜くと、重力に引っ張られるまま体はベットに倒れこむ。

「うっぷ」

倒れこんだ勢いで顔が枕にめり込んだ。
半目を開けて枕の向こうに視線を動かす。
昨日はそこにテルがいた。
だが今日は、ただ暗い部屋が寒々と広がるだけだった。
一人用の部屋だ。そんなに広くはないはずだった。
だが今は・・・。
耐え切れなくなって枕に顔を埋める。
独りであると感じることが怖かった。

(寝るのが怖い・・・)

またあの夢を見ても、もうテルはいないのだ。
テルは傍に、いないのだ。









同じ頃。
街道から少し外れたところで暖をとる、テルディアスの姿があった。
パチパチと爆ぜる薪を見つめる。
周りを囲む闇が、いつも以上に深く感じていた。
そして、とても静かだった。

(何故?)

答えなど分かりきっている。
あの破天荒娘がいないから。
今までも独りであることなどざらだった。
ダーディンになる前でさえ、一人であることを好んだ。
人といることが窮屈でしょうがなかった。
なのに・・・。
それとなくあの少女の気配を探している自分がいた。
あの少女がいるだけで、なんと安らかな気持ちになれたことか。
傍にいるということが、こんなに大きな意味を持つとは・・・。
今までに感じたことのない寂しさ。

「くそっ!!」

認めたくはない。認めたくはないが。

(俺はこんなに・・・弱かったのか?!)

拭いきれぬ想いに頭を抱えるテルディアス。
炎は唯一つの影を、ゆらゆらと揺らすだけだった。

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