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黒猫と共に迷い込む
ドラゴンの里へ
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ドラゴンの里は高い山の上にあるらしいので、夜を待ってクレナイの背に乗っていくことになった。
「いくつかの国の上空を渡ることになるが、バレなければ構わんじゃろう」
不法上空入出国ですね。どうせあっという間に通り過ぎちゃうわけだし、バレなきゃ良いっしょ。
夜になって、クレナイの背に乗る。念の為、雲より高く高度を保った。でも所々にしか雲がないから隠れてはいない。できるだけ雲間に体を隠しながら、マメダ王国から北北西の方向へと飛んで行った。
「おお、高い山々が見えて来た」
アルプス山脈のようだ。
「うむ。あそこから同胞の気配がしてくるのじゃ」
一直線にそこへと向かう。
さすがに夜に訪ねるのもなんだからと、麓に降りて野営することに。
朝になったらシロガネの背に乗って山を上がって行く事になった。
シロガネが青い顔しながら、高い山の山頂を見上げていた。
うん、上がれるかどうか心配なのかもね。シロガネの飛ぶ高さって、クレナイのように雲を突き抜けるとかないし。いや、普段は力を抜いているのかもしれない。きっと上がれるよね。
顔を青くしているのは、肉食獣の中に飛び込む恐ろしさから来ているのかもしれないね。
朝になり、早速山頂を目指して飛び上がる。
ドラゴンの里は山頂近くにあるらしい。クレナイ談。
高度が上がる程に空気が薄くなって飛びづらくなるらしく、シロガネの羽の羽ばたきが多くなった。見れば、ハヤテもちょっと苦戦している。
「大丈夫? 降りて歩こうか?」
「大丈夫である!」
ハヤテもめげずに飛んで行く。
ようやっと落ち着ける所までやって来ると、シロガネとハヤテがへばってしまった。
それをリンちゃんがほわんと癒やす。
「魔法があっても飛びづらいってあるんだね」
「妾のように大きな翼ならともかく、シロガネ殿とハヤテの翼では空気を掴むのも苦労するじゃろう。風魔法はそこに空気がなければ、やはりその力は弱まるのじゃ」
「そうなんだねぇ」
今この場所は、標高どれくらいか分からないけど、とっても空気が澄んでいて気持ちよく感じる。登山はしたことないけど、見下ろす景色が地平線の彼方まで見えているので、そうとう高いと言う事は分かる。
「雲も下に見えてるって事は、富士山並に高いって事だよね」
「フジサンとはなんじゃ? 主殿」
「私の住んでた国で、一番高い山だったの。確か、標高が3700メートルくらいだったから、ここはそれ位か、それ以上の高さになるんだろうね」
「ヒョウコウ?」
「高さを表す単位です」
それ以上の説明は面倒くさいので、却下。そうか、この世界には山の高さを表す単位がないのかもしれない。
体力は回復したものの、魔力がまだ充電出来ないと、しばしそこで休憩。ついでにお昼も食べて景色を見てのんびりして、動けるようになったら、そこから道らしき道を辿っていく。
すぐに、大岩に挟まれた道が見えて来て、その手前に衛兵らしき人達が立っているのが見えて来た。
「え? 人?」
「妾のように人化しておるのじゃろう」
「え? ドラゴンなのに?」
「ハクロウ殿やソウシも人化しておったじゃろう」
そういえばそうね。てか、滄司は「殿」付けないんだね。
「何者だ?!」
こちらに気付いて1人が問いかけてきた。
「あ、あの~、滄司からお話が行っていると思うんですけど…」
と言った後ろから、なんか怖い気配が湧いてきた。え?ナニコレ?
「妾じゃ」
「! その気配は、もしや行方知れずの赤の姫君?! これは失礼を! お待ちしておりました!」
すると、怖い気配が嘘のように消えた。ああ、これがいつもクレナイが消しているというドラゴンの気配なのね。そうか、こんなに怖いものだったのか。
でもねぇ。
チラリとクレナイの顔を見るも、気付いたクレナイがにっこり返してくる。
う~ん、無害に見える…。
そのギャップに困惑しながら、どうぞとばかりに前を歩き始めた衛兵さんの後ろをついて行った。
衛兵さんが道々説明してくれた所によると、入り口の大岩は侵入者を防ぐ為に設けられたものらしい。その昔、ここがドラゴンの里、というか巣があるということを聞きつけた人間が、その卵を狙って幾度もやって来たとか。
この世界でも人間は密漁に精を出しているのね…。
なので、人間がやっと3人通れるかという通路を大岩で作ったとか。ちなみに、その大岩、1つじゃなくて両側に3つずつ並んでましたよ。
これなら大勢の人間が一気に入ってくる事もなく、侵入者を見つけるのも容易くなったと言う訳だ。おかげで卵を狙われる事のなくなったとの事。良かったね。
大岩を抜けると、少し広い草原が広がって、その向こうに家々が建っているのが見えた。
あれ?なんだか皆人間サイズ。
衛兵さんにそれを言うと、笑って答えた。
「私達は普段、人間の姿をとって生活しているのです」
にゃんと?!
詳しくは長老がお話下さるでしょうと、村の入り口まで案内すると、出て来た別の人に私達を頼んで、また警備に向かった。
出て来たのは柔和そうなお姉さん。髪は黄色で目も黄色。これは、黄ドラゴンさんなのでしょうか。
「お待ちしておりました。ご案内いたします」
そう言って歩き出す。その後を素直について行くと、
「姫?!」
「姫!」
そう言って、赤髪に赤い瞳の、おそらく夫婦がこちらに駆け寄ってきた。
「もしや、父君に母君?!」
クレナイの顔が気色に染まる。
「我が娘よ! とうとう会えた!」
「ああ、やっと抱けた。もっとよう顔をみせておくれ」
周りを跳ね飛ばす勢いでやって来た夫婦が、クレナイに飛びついた。
「父君、母君…。妾は、妾は、お会い出来て嬉しゅうございます…」
クレナイも半泣きの顔をして嬉しそうだ。
感動の親子の再会を続ける3人だったが、
「赤の君。お話が違うございませんか?」
黄色いお姉さんがピシャリと親子の再会を中断させる。
「おお、リリ殿。申し訳ない。逸る気持ちを抑えてはいたのだが、つい、姫の姿を見たら、抑えきれなくなってしまって」
「申し訳ございません。嬉しくて我を忘れておりました」
夫婦が黄色いお姉さんに謝る。お姉さんの名前はリリというらしい。また二文字並びかい。
「まずは長老にご挨拶なさってから。それからゆっくりとお会い下さいませ」
「も、申し訳ない」
「申し訳ございません」
夫婦が頭を下げて、すごすごと帰って行った。
帰る寸前に、何故かお父さんの方が、一瞬私に殺気の籠もった視線を向けたんだけど…。何故?
長老さんのお屋敷に着くと、リリさんが扉を開けて、中へどうぞと手で指し示す。
「お、お邪魔します…」
と入ってみれば、おお、玄関のような上がり框があるぞ。日本家屋かい!
外はログハウスみたいなんだけどね…。
畳はないけど、なんか、こう、時代劇に出てくる平民の家みたいな造り…。おう、デジャヴ…。まさか、迷い人の影響なんじゃ…。いやしかし、ここまで来るのってかなり大変…。いやしかし、人間が卵を乱獲しに来たって…。考えられない事じゃないか…。
靴を脱いで上がると、奥の部屋に2つの人影。
向かって左に白いお爺さん。右に黒いお婆さん。
奥さんかな?
「よお、久しぶりじゃのう。思ったより早う来たのう。ささ、こっちへ近う」
「あ、お邪魔します」
「邪魔するのじゃ」
「お邪魔するである」
「お邪魔します」
「おじゃまー?」
します付けようねハヤテ。
並べられている座布団、だよね、の上にそれぞれ座る。うわ、正座なんて久しぶり。
「無理せんで、足を崩して良いからのう。さて、改めて、儂はこのドラゴンの里の長老、ハクロウ・ムクじゃ!」
胸を張って堂々と言い切る。余程気に入ったのだろうな。
「私が妻の、ププでございます」
Oh…。さすがの名付けセンス…。
「あ、えと、私が人間の八重子です。それと、こちらが…」
「妾はドラゴンのクレナイじゃ! よしなに」
「我はペガサスのシロガネである。よろしくである」
「私は獣人のコハクと申します。よろしくお願いいたします。」
「ハヤテはハヤテー」
うん、ハヤテは可愛いからそれでよし。
「頭の上の子が妖精のリンちゃん。で、この猫がクロです」
リリン
「よろしくだの」
クロもご挨拶。
「ぬ? 猫が喋った?!」
あれ?知らなかったっけ?
「そういえば、前に会った時は特に用もないから喋らなかった気がするの」
そうだっけ?
害はないと説明。クレナイがそう言ってるしと納得してもらう。
「魔獣ではなく妖のう…。これまた珍しいものが現われたものじゃのう」
繁々とクロを見て感嘆の声を漏らす長老さん。
「まあ、それは良いとして、お主らは大事な客人じゃ。ゆっくりしていってくれ」
「はい」
「それとのう」
「なんでしょう?」
「ヤエコ殿にお願いがあるのじゃが…」
「はあ? 私に出来る事ですか?」
「お主にしか出来ぬ事よ」
いやな予感…。
「儂の妻がな、儂の名が羨ましいと言っておってな。是非にお主が来たら、名を付けて欲しいと先々から脅されて…いや頼まれておってのう…」
脅されてたんすか。てか、夫婦ですよね?
「ヤエコさん、是非に、私にも名を、お願いいたします」
そう言って頭を下げる奥さん。
「あああ、頭をそんな、下げないで下さい。ええと、私の拙い知識で良ければ…」
「まあ! ありがとうございます!」
嬉しそうに微笑む奥さん。しかし、見事に綺麗な黒髪に黒い瞳。でも顔立ちが人間離れしてるから、日本人には見えない。あ、人間離れじゃなくて、アジア人離れか?
これで若かったら、相当な美人だったんだろうなという感じ。そして、こんな風に綺麗に年を取りたいなという見本みたいなお上品なお婆さん。
これは、綺麗な名前を付けたい。
黒か。黒にちなんだ名前…。黒と言ったら黒曜石だよね。黒曜…。悪くないけど、なんか違う気がする。濡れ羽色…。う~ん。闇、夜、闇主、はちょっと男っぽい。夜を纏ってるみたいだから夜纏、でどうかしら?
「え~と、夜を纏うと書いて、「夜纏」で如何でしょう?」
「ヨマトイ…」
奥さんがブツブツ口の中で呟いている」
「夜を纏う…。なんて美しい名前。ありがとう。私は今から、名をヨマトイと致します!」
奥さんの体が薄ら光った。
これで、ドラゴンの真名を2つ書き換えました。
いいのかよ、これ。
「それで、氏の名は?」
白老で統一とはいかないかな?!いかないよね?!
「いくつかの国の上空を渡ることになるが、バレなければ構わんじゃろう」
不法上空入出国ですね。どうせあっという間に通り過ぎちゃうわけだし、バレなきゃ良いっしょ。
夜になって、クレナイの背に乗る。念の為、雲より高く高度を保った。でも所々にしか雲がないから隠れてはいない。できるだけ雲間に体を隠しながら、マメダ王国から北北西の方向へと飛んで行った。
「おお、高い山々が見えて来た」
アルプス山脈のようだ。
「うむ。あそこから同胞の気配がしてくるのじゃ」
一直線にそこへと向かう。
さすがに夜に訪ねるのもなんだからと、麓に降りて野営することに。
朝になったらシロガネの背に乗って山を上がって行く事になった。
シロガネが青い顔しながら、高い山の山頂を見上げていた。
うん、上がれるかどうか心配なのかもね。シロガネの飛ぶ高さって、クレナイのように雲を突き抜けるとかないし。いや、普段は力を抜いているのかもしれない。きっと上がれるよね。
顔を青くしているのは、肉食獣の中に飛び込む恐ろしさから来ているのかもしれないね。
朝になり、早速山頂を目指して飛び上がる。
ドラゴンの里は山頂近くにあるらしい。クレナイ談。
高度が上がる程に空気が薄くなって飛びづらくなるらしく、シロガネの羽の羽ばたきが多くなった。見れば、ハヤテもちょっと苦戦している。
「大丈夫? 降りて歩こうか?」
「大丈夫である!」
ハヤテもめげずに飛んで行く。
ようやっと落ち着ける所までやって来ると、シロガネとハヤテがへばってしまった。
それをリンちゃんがほわんと癒やす。
「魔法があっても飛びづらいってあるんだね」
「妾のように大きな翼ならともかく、シロガネ殿とハヤテの翼では空気を掴むのも苦労するじゃろう。風魔法はそこに空気がなければ、やはりその力は弱まるのじゃ」
「そうなんだねぇ」
今この場所は、標高どれくらいか分からないけど、とっても空気が澄んでいて気持ちよく感じる。登山はしたことないけど、見下ろす景色が地平線の彼方まで見えているので、そうとう高いと言う事は分かる。
「雲も下に見えてるって事は、富士山並に高いって事だよね」
「フジサンとはなんじゃ? 主殿」
「私の住んでた国で、一番高い山だったの。確か、標高が3700メートルくらいだったから、ここはそれ位か、それ以上の高さになるんだろうね」
「ヒョウコウ?」
「高さを表す単位です」
それ以上の説明は面倒くさいので、却下。そうか、この世界には山の高さを表す単位がないのかもしれない。
体力は回復したものの、魔力がまだ充電出来ないと、しばしそこで休憩。ついでにお昼も食べて景色を見てのんびりして、動けるようになったら、そこから道らしき道を辿っていく。
すぐに、大岩に挟まれた道が見えて来て、その手前に衛兵らしき人達が立っているのが見えて来た。
「え? 人?」
「妾のように人化しておるのじゃろう」
「え? ドラゴンなのに?」
「ハクロウ殿やソウシも人化しておったじゃろう」
そういえばそうね。てか、滄司は「殿」付けないんだね。
「何者だ?!」
こちらに気付いて1人が問いかけてきた。
「あ、あの~、滄司からお話が行っていると思うんですけど…」
と言った後ろから、なんか怖い気配が湧いてきた。え?ナニコレ?
「妾じゃ」
「! その気配は、もしや行方知れずの赤の姫君?! これは失礼を! お待ちしておりました!」
すると、怖い気配が嘘のように消えた。ああ、これがいつもクレナイが消しているというドラゴンの気配なのね。そうか、こんなに怖いものだったのか。
でもねぇ。
チラリとクレナイの顔を見るも、気付いたクレナイがにっこり返してくる。
う~ん、無害に見える…。
そのギャップに困惑しながら、どうぞとばかりに前を歩き始めた衛兵さんの後ろをついて行った。
衛兵さんが道々説明してくれた所によると、入り口の大岩は侵入者を防ぐ為に設けられたものらしい。その昔、ここがドラゴンの里、というか巣があるということを聞きつけた人間が、その卵を狙って幾度もやって来たとか。
この世界でも人間は密漁に精を出しているのね…。
なので、人間がやっと3人通れるかという通路を大岩で作ったとか。ちなみに、その大岩、1つじゃなくて両側に3つずつ並んでましたよ。
これなら大勢の人間が一気に入ってくる事もなく、侵入者を見つけるのも容易くなったと言う訳だ。おかげで卵を狙われる事のなくなったとの事。良かったね。
大岩を抜けると、少し広い草原が広がって、その向こうに家々が建っているのが見えた。
あれ?なんだか皆人間サイズ。
衛兵さんにそれを言うと、笑って答えた。
「私達は普段、人間の姿をとって生活しているのです」
にゃんと?!
詳しくは長老がお話下さるでしょうと、村の入り口まで案内すると、出て来た別の人に私達を頼んで、また警備に向かった。
出て来たのは柔和そうなお姉さん。髪は黄色で目も黄色。これは、黄ドラゴンさんなのでしょうか。
「お待ちしておりました。ご案内いたします」
そう言って歩き出す。その後を素直について行くと、
「姫?!」
「姫!」
そう言って、赤髪に赤い瞳の、おそらく夫婦がこちらに駆け寄ってきた。
「もしや、父君に母君?!」
クレナイの顔が気色に染まる。
「我が娘よ! とうとう会えた!」
「ああ、やっと抱けた。もっとよう顔をみせておくれ」
周りを跳ね飛ばす勢いでやって来た夫婦が、クレナイに飛びついた。
「父君、母君…。妾は、妾は、お会い出来て嬉しゅうございます…」
クレナイも半泣きの顔をして嬉しそうだ。
感動の親子の再会を続ける3人だったが、
「赤の君。お話が違うございませんか?」
黄色いお姉さんがピシャリと親子の再会を中断させる。
「おお、リリ殿。申し訳ない。逸る気持ちを抑えてはいたのだが、つい、姫の姿を見たら、抑えきれなくなってしまって」
「申し訳ございません。嬉しくて我を忘れておりました」
夫婦が黄色いお姉さんに謝る。お姉さんの名前はリリというらしい。また二文字並びかい。
「まずは長老にご挨拶なさってから。それからゆっくりとお会い下さいませ」
「も、申し訳ない」
「申し訳ございません」
夫婦が頭を下げて、すごすごと帰って行った。
帰る寸前に、何故かお父さんの方が、一瞬私に殺気の籠もった視線を向けたんだけど…。何故?
長老さんのお屋敷に着くと、リリさんが扉を開けて、中へどうぞと手で指し示す。
「お、お邪魔します…」
と入ってみれば、おお、玄関のような上がり框があるぞ。日本家屋かい!
外はログハウスみたいなんだけどね…。
畳はないけど、なんか、こう、時代劇に出てくる平民の家みたいな造り…。おう、デジャヴ…。まさか、迷い人の影響なんじゃ…。いやしかし、ここまで来るのってかなり大変…。いやしかし、人間が卵を乱獲しに来たって…。考えられない事じゃないか…。
靴を脱いで上がると、奥の部屋に2つの人影。
向かって左に白いお爺さん。右に黒いお婆さん。
奥さんかな?
「よお、久しぶりじゃのう。思ったより早う来たのう。ささ、こっちへ近う」
「あ、お邪魔します」
「邪魔するのじゃ」
「お邪魔するである」
「お邪魔します」
「おじゃまー?」
します付けようねハヤテ。
並べられている座布団、だよね、の上にそれぞれ座る。うわ、正座なんて久しぶり。
「無理せんで、足を崩して良いからのう。さて、改めて、儂はこのドラゴンの里の長老、ハクロウ・ムクじゃ!」
胸を張って堂々と言い切る。余程気に入ったのだろうな。
「私が妻の、ププでございます」
Oh…。さすがの名付けセンス…。
「あ、えと、私が人間の八重子です。それと、こちらが…」
「妾はドラゴンのクレナイじゃ! よしなに」
「我はペガサスのシロガネである。よろしくである」
「私は獣人のコハクと申します。よろしくお願いいたします。」
「ハヤテはハヤテー」
うん、ハヤテは可愛いからそれでよし。
「頭の上の子が妖精のリンちゃん。で、この猫がクロです」
リリン
「よろしくだの」
クロもご挨拶。
「ぬ? 猫が喋った?!」
あれ?知らなかったっけ?
「そういえば、前に会った時は特に用もないから喋らなかった気がするの」
そうだっけ?
害はないと説明。クレナイがそう言ってるしと納得してもらう。
「魔獣ではなく妖のう…。これまた珍しいものが現われたものじゃのう」
繁々とクロを見て感嘆の声を漏らす長老さん。
「まあ、それは良いとして、お主らは大事な客人じゃ。ゆっくりしていってくれ」
「はい」
「それとのう」
「なんでしょう?」
「ヤエコ殿にお願いがあるのじゃが…」
「はあ? 私に出来る事ですか?」
「お主にしか出来ぬ事よ」
いやな予感…。
「儂の妻がな、儂の名が羨ましいと言っておってな。是非にお主が来たら、名を付けて欲しいと先々から脅されて…いや頼まれておってのう…」
脅されてたんすか。てか、夫婦ですよね?
「ヤエコさん、是非に、私にも名を、お願いいたします」
そう言って頭を下げる奥さん。
「あああ、頭をそんな、下げないで下さい。ええと、私の拙い知識で良ければ…」
「まあ! ありがとうございます!」
嬉しそうに微笑む奥さん。しかし、見事に綺麗な黒髪に黒い瞳。でも顔立ちが人間離れしてるから、日本人には見えない。あ、人間離れじゃなくて、アジア人離れか?
これで若かったら、相当な美人だったんだろうなという感じ。そして、こんな風に綺麗に年を取りたいなという見本みたいなお上品なお婆さん。
これは、綺麗な名前を付けたい。
黒か。黒にちなんだ名前…。黒と言ったら黒曜石だよね。黒曜…。悪くないけど、なんか違う気がする。濡れ羽色…。う~ん。闇、夜、闇主、はちょっと男っぽい。夜を纏ってるみたいだから夜纏、でどうかしら?
「え~と、夜を纏うと書いて、「夜纏」で如何でしょう?」
「ヨマトイ…」
奥さんがブツブツ口の中で呟いている」
「夜を纏う…。なんて美しい名前。ありがとう。私は今から、名をヨマトイと致します!」
奥さんの体が薄ら光った。
これで、ドラゴンの真名を2つ書き換えました。
いいのかよ、これ。
「それで、氏の名は?」
白老で統一とはいかないかな?!いかないよね?!
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