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第三章 女王イリスの誕生

夏の特別企画!「宇宙を駆ける変態。 その2」

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10000年のある日、夏の空は快晴でとても清々しい朝の出来事。

海龍王のアメリアは数日前からフィジー海岸にある東屋で寝泊まりをしていた。
海龍はその名の通り大半を海の中で過ごすのだが、時折こうして太陽の光を浴びる為に地上で過ごすのだ。

やっぱり海龍も生き物なので日の光が無性に恋しくなるものなのだ。

「うーん・・・良い朝ですわぁ」ベッドの上でグイーと伸びをするアメリア。
昨日までやっていた溜まっていた地上でしか出来ない書類仕事も大方終わり今日はオフなので少し遊ぼうと考えている。

三龍王は常にそれぞれ本拠地の王座に座っている思われがちだが、割とアッチコッチにアグレッシブに出掛けている。
姿が人間達に確認されていないのは龍王達は完璧に人の姿に変装しているからである。

ちなみに天龍王アメデの趣味は世界各地の本屋を巡りオープンカフェなどでコーヒーを飲みながら、その時に買った本を日がな一日読みふける事だったりする。
なかなかのインテリぶりである。

自由に空を飛べる天龍王はまだしも、意外な事に地龍王クライルスハイムも頻繁に世界各地の人間の街に繰り出している。

目的は大好きな絵画や彫刻の鑑賞で世界全ての博物館と美術館を今まで3回も制覇していたりする。
こちらもインテリぶり全開である。

龍種は仕事のオンオフのメリハリが人間よりハッキリしているのである。
しかし中にオフの時間が長くて怒られる者も居るけどね。
この辺りは人間と一緒だね。

さて、では海龍王アメリアは?と言うと。彼女はとにかく「食べる」事が大好きなのだ。
美味しい料理の噂を聞くと辺境の街にある小さな食堂にまで現れるのだ。

「そうだ!今日はヴィグル帝国皇都のミートパイが美味しいと評判のお店に行きましょう」
狙うターゲットをミートパイに絞る。

目標が決まり薄紅色のワンピースを着て焦茶色のガウンを羽織り、青い髪を黒く変え地味な町娘の姿に変装するアメリア。

見事に海龍王の威厳も消してどう見ても可愛いらしい普通の町娘にしか見えない。
さすがの変装技術である、そりゃ龍王の目撃情報なんて出ないよな。

こうしてルンルンと上機嫌で岩場に隠してある転移魔法陣に向かう為に砂浜を歩く町娘アメリア。

しかしその町娘の視線にとんでもない特級呪物が飛びこむ!

「あ!おはようございますママン!良い朝ですね!」ゴシゴシゴシゴシ

そこには砂浜のど真ん中で全裸で乾布摩擦をしていやがる息子のジャコブがいやがりましたよ!!!

ゴシゴシとタオルで身体を擦ると一緒になって揺れるブラブラ!
「うわああ?!変態だー!」「見てはいけません!」「ママーーー!!」
ジャコブを見て逃げ惑う海水浴に来ていた運の悪い親子連れ!

「はいい!」スパァーーーーーン!
股間に打ち付けたタオルが小気味良い音を立てる!そしてブラブラも揺れる!

「な・・・な・・・なななな・・・」
それを見たアメリアは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・怒った!!!

そりゃそうだろう休日の気持ち良い朝、これから久しぶりのお出掛けだ!とルンルンしていた所に、よりにもよって子供の前で痴漢行為をしている息子が居たのだ!

大概の奴はブチ切れる!

「なあにをやってんだぁーーーー!!馬鹿息子ぉーーーーーー!!!」
海龍王アメリア渾身のドロップキックが変態に炸裂する!

ズッゴオオオオオオオオンンンンンンンーーーーーーー!!!!!!!
龍王逆鱗の全力のキックだ!その破壊力たるや瞬間的に広島型原爆の核爆発を遥かに超える!

「あっひょおおおーーーーーーーーんん??????」
物凄い勢いで変態は空の彼方へと消えて行ったのだった・・・・・・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・・・・と、言う事があったのです」
ゲン○ドウスタイルの海龍王アメリアが10000年前に何が起こったのか説明すると・・・
「はあ?・・・」とぉーっても気の無い返事を返したシーナ!

まぁ・・・誰しもこんな話しを聞かされても「はぁ?・・・」としか答えられないだろう。

「ここまでは日常茶飯事の事だったので問題は無かったのだが・・・」
関わりたくなかった天龍王アメデだが仕方なく説明に加わる。

「はぁ?・・・それが日常茶飯事だったんですね?」

「アメリアの一撃が強過ぎてな・・・ジャコブは大気圏外まで飛ばされたのだ」
アメデが全てを諦めた様子なので地龍王クライルスハイムも嫌々説明に加わる。

「大気圏外・・・」

「宇宙空間に飛ばされたジャコブなのだが、1/1500000ほどの確率でたまたまS78彗星の軌道と合致してな・・・・・・・・・S78彗星と激突した」

「はぁ?・・・それは何よりでしたねぇ」既に真面目に話しを聞くのが面倒臭くなったシーナは適当に相槌を打つ。

「わたくしも・・・良いお仕置きになった程度にしか思ってなかったのです。
・・・・・・・・・・・・・・・でもここからがマグマなのです」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


物凄い勢いで宇宙空間に放り出されたジャコブ、さぞや慌てていると思いきや?
「うむ!さすがママン!素晴らしい威力であった」母の折檻に大満足な様子の変態。
まぁーったく反省なんぞしとりゃせん!

「ふむ・・・無酸素真空プレイもなかなか・・・」
むしろ宇宙空間の負荷を楽しんでいやがりましたよ!

魔法生命体の龍種は樹龍や炎龍の例外を除き酸素が無くも問題はない。
少し苦しいかな?程度だ。
その苦しみも変態にはご褒美になってしまうのだ。

そんな感じに変態が宇宙空間を堪能していると、ジャコブの軌道がS78彗星との激突コースに乗る。

「ぬっ?!これは?!まさか・・・まさか?!」
いかに変態と言えど彗星と衝突などすれば無事では済まない。
ジャコブに死の恐怖が迫る!

「何と素晴らしい!最高じゃあああああ!!スタンボート・ イージーじゃあ!」
ぜぇーんぜん恐怖なんど感じずにむしろ自分で真正面から激突する為に軌道を微調整しましたよ!

そしてS78彗星に吸い込まれて行くジャコブ・・・


ドーン・・・




「あら?いやだわ、あの子彗星と衝突しちゃったわ・・・」
宇宙空間に飛び出した息子を龍眼で観測していた母。
息子の命の危機を心配しているかと思いきや?

「まっ!大丈夫ですわよね!ミートパイ、ミートパイ♪」
全く、露ほどの心配もしていなかった!ルンルンしながら転移魔法陣へと急ぐアメリア。
ジャコブの性格ってアメリアに似たんじゃないのか?変態なだけで。

アメリアが2、3歩、足を前に進めるとデジャブが訪れる!

「ただいまママン!良い朝ですね!」
そこには先程と変わらず全裸でゴシゴシのブラブラのジャコブが居た?!

「何なのよーーーーーー?!」
10秒前にS78彗星と激突したはずのジャコブが一瞬で目の前に居る事にパニックになるアメリア。
さしもの海龍王とてこの非常識な現象が理解不能なのだ。

「うむ!彗星と激突した衝撃で我は「増殖」のスキルを獲得したのですママン!」

「増殖ーーーーーーー?!?!?!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ぞ・・・ぞぞぞ増殖???分身体?ではなくて?」
大概の事では動揺しないシーナだが、変態が簡単に「増殖」した事実には動揺しまくる。

「そうです、増殖です。分身体は本体より劣りますが増殖は違います。
本体と変わらない性能を有します」

「いやあああああああ?!・・・・・・ふぅ・・・」

「リールさぁああああんん?!?!」

やっと目を覚ました天舞龍リールだが、変態が増殖した事を聞かされて悲鳴を上げてまた気を失ってしまう。

ここでシーナにもやっと悍ましい事態を把握する事が出来てリールを抱きしめながらガタガタ震え始める。
かつて恐れた「世界総変態」が一気に現実味を帯びて来たからだ。

「ああ・・・心配せずに良いシーナ。さすがに無制限に増殖は出来ぬ様だ。
地上で存在出来るジャコブは一体だけなのだ。
その一体が滅んでも直ぐに次のジャコブが誕生するがな」

「つ、つまり?今までジャコブさんがどんなに攻撃を受けても直ぐに復活していたのって・・・」

「うむ、「滅んでは誕生」を繰り返しておったのじゃ」

「きゃあああああああああああ?!?!・・・・・・ふう・・・」
充分におっかねぇよ!実質不死身と同じだ!幾ら滅ぼしても無限に増殖するのだから。
ジャコブの隠された恐怖を知りリールと共に気を失ったシーナだった・・・












やべぇ!めっちゃ楽しくなって来た!

「だから!この話しは何なのよ?!」

「ノーコメント」


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