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第三章 女王イリスの誕生
1周年特別企画!「エリカちゃん&コンちゃん・・・死す。 最終話」
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「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
お久しぶりのラザフォードにギャン泣きのアリーセ。
ラザフォードと音信不通で寂しかったアリーセがドレスデンに対してイライラしていた原因でもあったのだ。
「アリーセちゃん!久しぶりーーー!!」
自分に飛び着いて来るアリーセをビシッと抱き締めるラザフォード。
ドシーン!!幼女の姿をしているのは言え中身は龍、結構良い音を立ててラザフォードに衝撃が来る。
病み上がり・・・と言うか現在絶賛治療中(医療室からさりげなく脱走中)のラザフォードはアリーセの突撃を食らい「ウグッ!」と倒れそうになるが根性で堪え忍ぶ。
お姉ちゃんとして恥ずかしい姿を妹に見せる訳には行かぬのだ!
ん?母は諦めたのか?と言うと、アリーセがシーナ(ユグドラシル)を母と認識している以上はアリーセの思いを最優先にして変なトラブルを避ける為にもアリーセのお姉ちゃん枠に収まる事に決めたのだ。
まだ名付け親に関してシーナに対しての嫉妬心は当然少しあるのだが、元アメリカ人らしい実に合理的な考えのラザフォードなのだ。
何よりもシーナがアリーセを大切に思っているのは魂の回廊を通して流れて来るので最初からシーナに対する悪感情は無い。
ならいっその事ラザフォードもシーナの娘になろうと思っている、と言うか既になってしまっている。
そうなればアリーセとも本当の姉妹になれるからだ。
シーナの預かり知らぬ所で自分には世界最強クラスの黒龍王の娘が出来ていたのだ!
一見すると、「すみません、齢1000歳が10歳児の子供になるとかアホですか?」な考えに思えるのだが、実はかなりしっかりとした理由もある。
魂の回廊を通して得た様々な情報を元に異世界の知識も統合させたラザフォードはシーナが世界樹ユグドラシルだと言う事を見抜いていたのだ。
「なるほどねー、ユグドラシルは世界全ての母なのだから私1人くらい娘が増えても別に良いよね~」とラザフォードは考えた。
やっぱり凄く頭が良く柔軟な考えのラザフォードなのだ。
アリーセの所に来る前にシーナへ挨拶をしに行ってる所も実に用意周到だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「シーナちゃん、シーナちゃん」
「ふえ?!・・・あの・・・貴女はどなたですか?」
シーナが天龍教教会に行こうとトムソン鍛治店から1人で街を歩いていたら建物の傍からチョイチョイとボンっ!キュ!ボンっ!の黒髪の美女に呼び止められた。
突然、見知らぬ美人に呼び止められて当然警戒するシーナだが、黒髪美女が纏う魔力には覚えがある。
シーナがおずおずと美女の近くまで来て、
「あの・・・もしかしましたら・・・貴女様が私に魔力をくれた人なのですか?」
と尋ねると・・・
「そうそう、そうなのです」笑顔でコクコク頷くラザフォード。
「やっぱり、そうだったのですね?」
アリーセを介して繋がったシーナとラザフォードとの魂の回廊、その回廊を通してたくさんの魔力(生命力)を分けてくれた謎の人物はシーナ(ユグドラシル)からして見れば命の恩人だ。
「その節は大変お世話になりました、ありがとうございます」
深々とラザフォードに頭を下げるシーナ。
「えへへへへ、どういたしまして」素直にお礼を受けるラザフォード。
「あの・・・この御恩に対して私は貴女様にどの様に報いれば宜しいのでしょうか・・・
何分にもこの通り、今は力無き身の上でございまして・・・」
目の前の美女には自分の正体がユグドラシルだとバレていると直感しているシーナは、変な演技をすれば恩人に対して失礼に当たると思い素で接している。
「なら私をアリーセちゃんのお姉ちゃん、シーナちゃんの娘にして下さい」
「その言葉を待ってました!」とばかりに自分を売り込みに入るラザフォード。
「え?・・・ふええええ?!?!」
ラザフォードからの予想外の要求にめっちゃ驚くシーナ。
「えへへへへ、実はですねぇ・・・」
アリーセとの出会いから今までの話しをシーナに説明するラザフォード。
「・・・・・そっ・・・そうだったのですね?
私ったら何も考えずにあの子に名付けなどをしてしまって・・・」
「はい!そんな事を言ったらアリーセちゃんが可哀想なので、もう言ったらダメですよママ?
名前を否定すればアリーセちゃんを否定する事にもなりますからアリーセちゃんが泣きます。
今後そんな事を言っては絶対にいけません」
「はっ?!そうですね・・・良くない事でした」
「それにですね?アリーセちゃんから産まれたこの縁を大切にしたいと私は思っているんです。
だって今の私には「家族」が居ませんからね」
今世の家族だった炎竜達は黒龍王ブリックリンに滅ぼされてもう居ない。
アリーセの母になる事に異常に固執したのもラザフォードはずっと1人きりで寂しかったからだ。
暗黒の覇者、黒龍王である以上「実の子供」を持つ事が容易では無い事くらいはラザフォードも理解している。
アリーセの母になれないのなら今回の縁を大切にして母と妹が欲しいとラザフォードは思ったのだ。
とか思っているラザフォードであるが超アッサリ結婚してサクッと男の子の産んでしまうのだが、それはまた別のお話。
「しかし私に母など務まるのでしょうか?」
世界の構築の途上でリタイアしてしまったユグドラシル。
当然ながら世界の母、世界樹ユグドラシルとして責務を全う出来なかった自責の念も後悔も有る。
名付けの時にアリーセの「ママ」発言に戸惑ったのは、そんな自責の念から「子」など持っても良いのか?と感じたからだ。
「そうですねぇ~・・・思うに母親とは子供に作られるモノではないでしょうか?」
「え?・・・・・・」
「子供から母親に色々な思いをぶつけられて、その思いを受け止めて行く内に本当の母親になって行くのだと思います。
子供を産んだから直ぐに母親では無いのです。
子供と一緒に泣いて笑って一生懸命に歩んで行く内に親子になって母親になるんです。
血の繋がりは大切だけど、それだけでは親子とは言えないと思いませんか?」
「・・・・・・・・・・」
ラザフォードの前世、ラザフォードは養子だったらしい。
らしいと言うのはラザフォードの両親がラザフォードが養子なのを「完全に忘れていた」のでラザフォードも今の今まで忘れていたのだ。
10歳の頃に一度だけ母親と父親から自分が養子なのを伝えられて母親にこの話しをされた。
それ以来も両親とは普通に親子関係だったので養子の事は気にしていなかった。
悩むシーナを見て、その時の母親の言葉を思い出してそのまま伝えたのだ。
「私と親子と言うモノを「一緒に作っていきませんか?」ママ!」
そう言ってニコリと笑うラザフォード。
「・・・・・・・うふふふふ・・・何だかラザフォードちゃんの方が母親らしいですね?
私の方がラザフォードちゃんの娘になりたいです」
困った様に笑うシーナ。
「えへへへへ、私の元のお母さんが母親らしかっただけですね。
実は今までも子供は産んだ事も無いんですよね私は」
「とても素敵なお母様だったのですね」
「えへへへへ、ならママも私とアリーセちゃんの素敵なママになって下さい。
ママは「何万年も世界の母親」として頑張っていたじゃないですか、だから絶対に素敵なママになれますよ」
「あ・・・・・・・」
素直に娘としての思いをぶつけられたシーナ。
娘に今までの自分の行いを全肯定されて感情が溢れて目から涙が溢れる。
「うふふふふ、これからよろしくね、ラザフォードちゃん」
今までの取り繕った笑顔では無く、本当の笑顔で娘に笑い掛けるシーナ。
「はい!ママ!」
こうして母娘になったシーナ(ユグドラシル)とラザフォード。
この親子関係は遥か遠い未来まで続くのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんな訳で、もう既にアリーセのお姉ちゃんになっているラザフォード。
あれ?そう言えばお兄ちゃんのブリックリンは?と言うと、ラザフォード脱走に加担してハイエルフのクレアに盛大にしばかれていた。
「きょ・・・今日の師匠の説教は一段と凄かった・・・」
「か・・・過去最強に怒られて笑う・・・」
脱走を止めなかった事での連帯責任でイリスも巻き添えを食らい、クレアから2時間に渡る説教を受けてグッタリしているイリスとブリックリン。
ベッドに寝たままの説教だったので逃げる事も出来ずダイレクトに食らったのだ。
「ここまで怒られたんだから上手く親子になって欲しいよね・・・」
「んー?大丈夫じゃない?」
「あれ?イリス?何か不機嫌?」
「別に~」
完全に忘れられているが、ユグドラシルを「ママ」と呼んで慕ったのはイリスが1番最初である。
言わばイリスがユグドラシル三姉妹の長女な訳なのだが、その事を関係各位全員から忘れられていて何か面白くないのだ。
「俺もイリスをママって呼んだ方が良いかな?」
「本当にブリックリンには隠し事出来なくて笑うわ~。お母様でも良いわよ?」
2人の間にも穏やかな時間か流れる・・・だがしかし?
カラカラカラカラ
「はーい2人共、「しーしー」のお時間ですよー」そこに看病器具各種を搭載された台車を押しながら満面の笑顔のルナが登場する。
「あっ、龍種の俺はそう言うのは大丈夫なのでイリスにお願いします」
「そう?じゃあイリスちゃん、行きますよ~」
「秒速で母を裏切ったわね?!息子よ!ああー!いやああああああああ?!?!
ルナさん!ブリックリン前では、いやあああああ?!?!」
医療室にまたイリスの悲鳴が響き渡ったのだった・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
場面は最初に戻り、アリーセの髪を撫で撫でながら、
「お姉ちゃんもシーナママの娘になりました」とラザフォードが微笑む。
「本当ですか?!」
「シーナママは修行の為にちょっとの間ここには来れないらしいで代わりにまたお姉ちゃんがアリーセちゃんの側にいます」
「・・・ママは来れないのですか?・・・
でも、お姉ちゃんが側に居てくれるなら我慢します!」
「良い子ーーーーーー!!!」
「えへへへへへー」
一瞬、落ち込んだが直ぐに笑顔になったアリーセを抱きしめてウリウリウリウリするラザフォード。
現在のシーナ(ユグドラシル)は地琰龍ノイミュンスターの特別訓練の真っ最中だ。
その訓練で使うエネルギーをラザフォードが立て替えているので相変わらず魔力枯渇状態なのだ。
その上、アリーセの修行の相手もしないといけないので自分にとっても厳しい修行になったラザフォード。
しかし家族の為なので凄く嬉しそうに日々を過ごしていた。
それから3年後・・・
「創世陣!」ニョキ・・・ニョキニョキニョキと小さな栗の木をたくさん作るアリーセ。
創世魔法の練習をしているのだが、どうせ作るなら自分の好きなモノをと、桃だの蜜柑だの木もたくさん作っている。
「凄いわね~」
いつもの妹推しの褒め言葉ではなく本心からアリーセを褒めるラザフォード。
学校の一角はアリーセの果樹園となっているのだ。
土龍のドレスデンが土をいい感じに耕してアリーセが木の苗を作る作業を繰り返して行く内に児童達の夏休みの宿題のアサガオの栽培なんてレベルで済まない大規模農園が完成しつつある。
収穫が早かった葡萄や蜜柑やリンゴなどの自分達で食べ切れない分はスカンディッチ伯爵領領都に卸して儲けたお金で好きなモノを買って食べている。
もう完全に農家の龍である。
元王様のアリーセは1人で儲けを享受するので無く民(同級生)にも惜しげもなく富の分配をするので、クラスを挙げての産業となっている
その影でラザフォードの闇の魔力が大量に犠牲になっている事をアリーセ達は知らない。
「もう魔力枯渇状態にも慣れたわね~」
児童達が農作業に勤しむのを収穫されたリンゴをシャクシャク食べながら眺めているラザフォード。
畑の肥料のお姉ちゃんなのだ。
「そろそろママが帰って来るわね・・・私も仕事に戻らないとね~」
また活動を停止したロックシンガー、ラザフォードのスタッフから「早く活動再開して欲しいっす!」との嘆願書がたくさん届いている。
シーナ(ユグドラシル)が修行結界から出て来たら歌手活動を再開するべくラーデンブルク公国に戻らないといけない。
それまではアリーセと思い出をたくさん作ろうと魔力枯渇にもめげずに頑張るラザフォード。
「お姉ちゃーん!梨が食べ頃になりましたですーーーー!!」
「はぁーーーい」
これは樹龍と黒龍王の変わった姉妹の物語。
これから先、この姉妹にどんな物語が待っているのか?
それは本編の「新緑のアリーセ編」へと続きます。
お久しぶりのラザフォードにギャン泣きのアリーセ。
ラザフォードと音信不通で寂しかったアリーセがドレスデンに対してイライラしていた原因でもあったのだ。
「アリーセちゃん!久しぶりーーー!!」
自分に飛び着いて来るアリーセをビシッと抱き締めるラザフォード。
ドシーン!!幼女の姿をしているのは言え中身は龍、結構良い音を立ててラザフォードに衝撃が来る。
病み上がり・・・と言うか現在絶賛治療中(医療室からさりげなく脱走中)のラザフォードはアリーセの突撃を食らい「ウグッ!」と倒れそうになるが根性で堪え忍ぶ。
お姉ちゃんとして恥ずかしい姿を妹に見せる訳には行かぬのだ!
ん?母は諦めたのか?と言うと、アリーセがシーナ(ユグドラシル)を母と認識している以上はアリーセの思いを最優先にして変なトラブルを避ける為にもアリーセのお姉ちゃん枠に収まる事に決めたのだ。
まだ名付け親に関してシーナに対しての嫉妬心は当然少しあるのだが、元アメリカ人らしい実に合理的な考えのラザフォードなのだ。
何よりもシーナがアリーセを大切に思っているのは魂の回廊を通して流れて来るので最初からシーナに対する悪感情は無い。
ならいっその事ラザフォードもシーナの娘になろうと思っている、と言うか既になってしまっている。
そうなればアリーセとも本当の姉妹になれるからだ。
シーナの預かり知らぬ所で自分には世界最強クラスの黒龍王の娘が出来ていたのだ!
一見すると、「すみません、齢1000歳が10歳児の子供になるとかアホですか?」な考えに思えるのだが、実はかなりしっかりとした理由もある。
魂の回廊を通して得た様々な情報を元に異世界の知識も統合させたラザフォードはシーナが世界樹ユグドラシルだと言う事を見抜いていたのだ。
「なるほどねー、ユグドラシルは世界全ての母なのだから私1人くらい娘が増えても別に良いよね~」とラザフォードは考えた。
やっぱり凄く頭が良く柔軟な考えのラザフォードなのだ。
アリーセの所に来る前にシーナへ挨拶をしに行ってる所も実に用意周到だ。
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「シーナちゃん、シーナちゃん」
「ふえ?!・・・あの・・・貴女はどなたですか?」
シーナが天龍教教会に行こうとトムソン鍛治店から1人で街を歩いていたら建物の傍からチョイチョイとボンっ!キュ!ボンっ!の黒髪の美女に呼び止められた。
突然、見知らぬ美人に呼び止められて当然警戒するシーナだが、黒髪美女が纏う魔力には覚えがある。
シーナがおずおずと美女の近くまで来て、
「あの・・・もしかしましたら・・・貴女様が私に魔力をくれた人なのですか?」
と尋ねると・・・
「そうそう、そうなのです」笑顔でコクコク頷くラザフォード。
「やっぱり、そうだったのですね?」
アリーセを介して繋がったシーナとラザフォードとの魂の回廊、その回廊を通してたくさんの魔力(生命力)を分けてくれた謎の人物はシーナ(ユグドラシル)からして見れば命の恩人だ。
「その節は大変お世話になりました、ありがとうございます」
深々とラザフォードに頭を下げるシーナ。
「えへへへへ、どういたしまして」素直にお礼を受けるラザフォード。
「あの・・・この御恩に対して私は貴女様にどの様に報いれば宜しいのでしょうか・・・
何分にもこの通り、今は力無き身の上でございまして・・・」
目の前の美女には自分の正体がユグドラシルだとバレていると直感しているシーナは、変な演技をすれば恩人に対して失礼に当たると思い素で接している。
「なら私をアリーセちゃんのお姉ちゃん、シーナちゃんの娘にして下さい」
「その言葉を待ってました!」とばかりに自分を売り込みに入るラザフォード。
「え?・・・ふええええ?!?!」
ラザフォードからの予想外の要求にめっちゃ驚くシーナ。
「えへへへへ、実はですねぇ・・・」
アリーセとの出会いから今までの話しをシーナに説明するラザフォード。
「・・・・・そっ・・・そうだったのですね?
私ったら何も考えずにあの子に名付けなどをしてしまって・・・」
「はい!そんな事を言ったらアリーセちゃんが可哀想なので、もう言ったらダメですよママ?
名前を否定すればアリーセちゃんを否定する事にもなりますからアリーセちゃんが泣きます。
今後そんな事を言っては絶対にいけません」
「はっ?!そうですね・・・良くない事でした」
「それにですね?アリーセちゃんから産まれたこの縁を大切にしたいと私は思っているんです。
だって今の私には「家族」が居ませんからね」
今世の家族だった炎竜達は黒龍王ブリックリンに滅ぼされてもう居ない。
アリーセの母になる事に異常に固執したのもラザフォードはずっと1人きりで寂しかったからだ。
暗黒の覇者、黒龍王である以上「実の子供」を持つ事が容易では無い事くらいはラザフォードも理解している。
アリーセの母になれないのなら今回の縁を大切にして母と妹が欲しいとラザフォードは思ったのだ。
とか思っているラザフォードであるが超アッサリ結婚してサクッと男の子の産んでしまうのだが、それはまた別のお話。
「しかし私に母など務まるのでしょうか?」
世界の構築の途上でリタイアしてしまったユグドラシル。
当然ながら世界の母、世界樹ユグドラシルとして責務を全う出来なかった自責の念も後悔も有る。
名付けの時にアリーセの「ママ」発言に戸惑ったのは、そんな自責の念から「子」など持っても良いのか?と感じたからだ。
「そうですねぇ~・・・思うに母親とは子供に作られるモノではないでしょうか?」
「え?・・・・・・」
「子供から母親に色々な思いをぶつけられて、その思いを受け止めて行く内に本当の母親になって行くのだと思います。
子供を産んだから直ぐに母親では無いのです。
子供と一緒に泣いて笑って一生懸命に歩んで行く内に親子になって母親になるんです。
血の繋がりは大切だけど、それだけでは親子とは言えないと思いませんか?」
「・・・・・・・・・・」
ラザフォードの前世、ラザフォードは養子だったらしい。
らしいと言うのはラザフォードの両親がラザフォードが養子なのを「完全に忘れていた」のでラザフォードも今の今まで忘れていたのだ。
10歳の頃に一度だけ母親と父親から自分が養子なのを伝えられて母親にこの話しをされた。
それ以来も両親とは普通に親子関係だったので養子の事は気にしていなかった。
悩むシーナを見て、その時の母親の言葉を思い出してそのまま伝えたのだ。
「私と親子と言うモノを「一緒に作っていきませんか?」ママ!」
そう言ってニコリと笑うラザフォード。
「・・・・・・・うふふふふ・・・何だかラザフォードちゃんの方が母親らしいですね?
私の方がラザフォードちゃんの娘になりたいです」
困った様に笑うシーナ。
「えへへへへ、私の元のお母さんが母親らしかっただけですね。
実は今までも子供は産んだ事も無いんですよね私は」
「とても素敵なお母様だったのですね」
「えへへへへ、ならママも私とアリーセちゃんの素敵なママになって下さい。
ママは「何万年も世界の母親」として頑張っていたじゃないですか、だから絶対に素敵なママになれますよ」
「あ・・・・・・・」
素直に娘としての思いをぶつけられたシーナ。
娘に今までの自分の行いを全肯定されて感情が溢れて目から涙が溢れる。
「うふふふふ、これからよろしくね、ラザフォードちゃん」
今までの取り繕った笑顔では無く、本当の笑顔で娘に笑い掛けるシーナ。
「はい!ママ!」
こうして母娘になったシーナ(ユグドラシル)とラザフォード。
この親子関係は遥か遠い未来まで続くのだ。
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そんな訳で、もう既にアリーセのお姉ちゃんになっているラザフォード。
あれ?そう言えばお兄ちゃんのブリックリンは?と言うと、ラザフォード脱走に加担してハイエルフのクレアに盛大にしばかれていた。
「きょ・・・今日の師匠の説教は一段と凄かった・・・」
「か・・・過去最強に怒られて笑う・・・」
脱走を止めなかった事での連帯責任でイリスも巻き添えを食らい、クレアから2時間に渡る説教を受けてグッタリしているイリスとブリックリン。
ベッドに寝たままの説教だったので逃げる事も出来ずダイレクトに食らったのだ。
「ここまで怒られたんだから上手く親子になって欲しいよね・・・」
「んー?大丈夫じゃない?」
「あれ?イリス?何か不機嫌?」
「別に~」
完全に忘れられているが、ユグドラシルを「ママ」と呼んで慕ったのはイリスが1番最初である。
言わばイリスがユグドラシル三姉妹の長女な訳なのだが、その事を関係各位全員から忘れられていて何か面白くないのだ。
「俺もイリスをママって呼んだ方が良いかな?」
「本当にブリックリンには隠し事出来なくて笑うわ~。お母様でも良いわよ?」
2人の間にも穏やかな時間か流れる・・・だがしかし?
カラカラカラカラ
「はーい2人共、「しーしー」のお時間ですよー」そこに看病器具各種を搭載された台車を押しながら満面の笑顔のルナが登場する。
「あっ、龍種の俺はそう言うのは大丈夫なのでイリスにお願いします」
「そう?じゃあイリスちゃん、行きますよ~」
「秒速で母を裏切ったわね?!息子よ!ああー!いやああああああああ?!?!
ルナさん!ブリックリン前では、いやあああああ?!?!」
医療室にまたイリスの悲鳴が響き渡ったのだった・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
場面は最初に戻り、アリーセの髪を撫で撫でながら、
「お姉ちゃんもシーナママの娘になりました」とラザフォードが微笑む。
「本当ですか?!」
「シーナママは修行の為にちょっとの間ここには来れないらしいで代わりにまたお姉ちゃんがアリーセちゃんの側にいます」
「・・・ママは来れないのですか?・・・
でも、お姉ちゃんが側に居てくれるなら我慢します!」
「良い子ーーーーーー!!!」
「えへへへへへー」
一瞬、落ち込んだが直ぐに笑顔になったアリーセを抱きしめてウリウリウリウリするラザフォード。
現在のシーナ(ユグドラシル)は地琰龍ノイミュンスターの特別訓練の真っ最中だ。
その訓練で使うエネルギーをラザフォードが立て替えているので相変わらず魔力枯渇状態なのだ。
その上、アリーセの修行の相手もしないといけないので自分にとっても厳しい修行になったラザフォード。
しかし家族の為なので凄く嬉しそうに日々を過ごしていた。
それから3年後・・・
「創世陣!」ニョキ・・・ニョキニョキニョキと小さな栗の木をたくさん作るアリーセ。
創世魔法の練習をしているのだが、どうせ作るなら自分の好きなモノをと、桃だの蜜柑だの木もたくさん作っている。
「凄いわね~」
いつもの妹推しの褒め言葉ではなく本心からアリーセを褒めるラザフォード。
学校の一角はアリーセの果樹園となっているのだ。
土龍のドレスデンが土をいい感じに耕してアリーセが木の苗を作る作業を繰り返して行く内に児童達の夏休みの宿題のアサガオの栽培なんてレベルで済まない大規模農園が完成しつつある。
収穫が早かった葡萄や蜜柑やリンゴなどの自分達で食べ切れない分はスカンディッチ伯爵領領都に卸して儲けたお金で好きなモノを買って食べている。
もう完全に農家の龍である。
元王様のアリーセは1人で儲けを享受するので無く民(同級生)にも惜しげもなく富の分配をするので、クラスを挙げての産業となっている
その影でラザフォードの闇の魔力が大量に犠牲になっている事をアリーセ達は知らない。
「もう魔力枯渇状態にも慣れたわね~」
児童達が農作業に勤しむのを収穫されたリンゴをシャクシャク食べながら眺めているラザフォード。
畑の肥料のお姉ちゃんなのだ。
「そろそろママが帰って来るわね・・・私も仕事に戻らないとね~」
また活動を停止したロックシンガー、ラザフォードのスタッフから「早く活動再開して欲しいっす!」との嘆願書がたくさん届いている。
シーナ(ユグドラシル)が修行結界から出て来たら歌手活動を再開するべくラーデンブルク公国に戻らないといけない。
それまではアリーセと思い出をたくさん作ろうと魔力枯渇にもめげずに頑張るラザフォード。
「お姉ちゃーん!梨が食べ頃になりましたですーーーー!!」
「はぁーーーい」
これは樹龍と黒龍王の変わった姉妹の物語。
これから先、この姉妹にどんな物語が待っているのか?
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