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第三章 女王イリスの誕生

1周年特別企画!「エリカちゃん&コンちゃん・・・死す。 その5」

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風竜シルフィーナと樹竜キューちゃんの修行の日々は続き丁度10年が経過した。

成長が早かったキューちゃんは、3年前には無事にキューちゃんが成竜になったのだ!
一応念の為にキッチリ3年、属性安定化の修行を続けたキューちゃん。

成竜になったとは言え見た目に変化はほとんど無い、身体の色が鮮やかな新緑になり一回り身体が大きくなったかな?と言った程度だ。

「「キューちゃん!こんなに大きくなってーーーー!!」」

「「キュイ?!」」

黒龍王ラザフォードとキューちゃんの感動の再会・・・
とは言えラザフォードが3日1回は必ず念話を送って来ていたのでキューちゃんに久しぶりと言う感覚も無い。

キューちゃんを抱きしめてウリウリしているのだが大きな黒い龍が小さな緑色の竜を食らっている様にしか見えない。

《わたくしがしっかりと育てましたからね!》ドヤ顔のシルフィーナ。
シルフィーナが心血を注ぎ育て上げたのでキューちゃんの属性は「緑属性」に完全に固定されている。

《ラザフォード様の加護でも属性が変わる事はもうありませんわ》

「「本当?!」」

シルフィーナの言葉に早速キューちゃんに加護を与えるラザフォード。
ラザフォードとキューちゃんの魂に回廊が繋がる。

「「キュイ?キュイ?キュイ?」」自分の身体をキョロキョロと見渡すキューちゃんだが、特別何か変化が有った様には見えない。

「「あれぇ?なんでぇ?もしかしたら失敗?」」

「「いやキチンとキューちゃんの身体の中にはラザフォードさんの加護が芽生えてるよ」」

《加護を受けた瞬間に劇的な変化が出る方が稀なのですわ。
この場合、受けた方に負担が掛かる事が多いので、これで正解なのですわ。
何かのキッカケで加護が発動しますので楽しみに待つのがよろしいですわ》

「「そうなんだ?!じゃあ楽しみに待とうねぇキューちゃん♪♪♪」」

「「キュイーン♪♪♪」」

ラザフォードの加護の恩恵がモロに出る瞬間を全世界縦断爆弾ロックツアーに出ていたラザフォード自身が見る事が出来ない事をこの時は誰も知らない。

それからのキューちゃんは、ラザフォードと遊び、ブリックリンと遊び、シルフィーナと遊び、シルフィーナの娘のシルフィエットと遊び、とにかく遊びながら修行に励む。

楽しい日々はあっという間に過ぎ去り60年が経過する。
そしてキューちゃんの竜生においての最大の転換期を迎えるのだ。

「「あれ?キューちゃんに「龍種への進化」の兆候が出てるね?」」

《え?まだ早過ぎません?》

爆弾ツアー真っ最中のラザフォードに精霊王と大精霊の会議の為に長期不在の母シルフィーナに代わってブリックリンと一緒にキューちゃんの遊び相手をしていた娘シルフィエットが小首を傾げる。

こう言う仕草は母シルフィーナとそっくりだ。

「「多分・・・ラザフォードさんの加護の影響だと思う」」
有り余るラザフォードの魔力をダイレクトに受け続けたキューちゃん。
龍種への進化に必要な魔力が溜まったのだ。

「「キュイ?キュイイ?キューン?」」

「「そうだね、「寝床」を作らないとダメだね。どこに作ろうか?龍都に来るかい?」」

「「キュー?キュイーンキュイキュイ」」
ブリックリンからの質問に「んー?知らない所より森の中が良い」と答えるキューちゃん。
この回答がキューちゃんの波瀾万丈な龍生の始まりになるのだ。

「「じゃあ俺が地中に作るよ、シルフィエットは「緑の結界石」を調達して貰えるかい?」」

ブリックリンの作る結界よりキューちゃんの属性に合った結界が好ましいので「宝珠ドライアドの涙」から作られる緑の結界石を使うつもりのブリックリン。

《あーー・・・今手持ちがありませんわ・・・ドライアドの森に行かないと》

「「いきなり進化の眠りに着く訳じゃ無いからね、慌てないで安全第一で行って来てね」」
このシルフィエットは慌てると、なんか知らんが壁に激突すると言う珍妙な特技が有るのだ。

《はぁい、了解しましたわ》こうしてシルフィエットも居なくなる。

激突精霊シルフィエットが戻るまでに「寝床」の準備に取り掛かるブリックリン。

「「キュイキュイキュイ」」

「「え?もっと狭い方が良いの?子猫見たいだねぇ」」

樹竜は寝る時は狭い方が落ち着く・・・なので寝床はサクッと完成する。

「「どうだい?」」

「「キュイキュイキュイーーーンン!!」」「良い感じー!」と答えるキューちゃん。
そしてフワーとあくびをして寝床で丸くなる、これはただのお昼寝である。

「「それじゃあ俺は龍都に「龍種登録」して来るね」」

「「キュイーン」」フワーとまたあくびをするキューちゃん。

キューちゃんを正式に龍種登録するべく近くの龍都へと向かうブリックリン。
これでキューちゃんは龍種から支援を受ける事が出来るのだ。

「「んー?保護者を誰にするべきか・・・俺にするとラザフォードさんが怒りそうだしなぁ。
後は・・・名前、そろそろラザフォードさんに・・・」」
登録内容に考えが向いて「今、キューちゃんの所には珍しく誰も居ない」事を失念しているブリックリン。

そう言う時に限って重大事件が起こるモノなのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ブリックリンの作った寝床でスヤスヤとお昼寝しているキューちゃん。

「「キュイ??」」すると何かの気配を感じて目をパチリと開く。
感じる気配は・・・とても暖かくてどこか懐かしい・・・
昔、誰よりも信頼して誰よりも大好きだった気配に似ている。

「「キュイイイーーーーンンン!!!」」この気配の主に会わなきゃいけない!

ドオオオオオオオンンン!!
そう思って慌てて起き上がったので寝床を破壊してしまったキューちゃん。

「「キュー??キュイーーーンン」」ああ?!せっかくお兄ちゃんが作ってくれたのにぃ!
寝床を壊してしまい愕然とするキューちゃん。


「きゃああああああ?!」

「おお?!なんだぁー?!」

「下がって!2人共!」


巻き上がる土煙の向こうから聞こえる男女3人の声・・・
その内の1人の女性の声には聞き覚えが・・・・・・・有る!

《王様です!!!》記憶は無いが何故かそう直感するキューちゃん。

《また会おうねぇー、コンちゃん》脳内に響く大好きだった王様の声と同じなのだ。
あの時交わした約束を思い出して思わず3人に走り寄るキューちゃん。

「なんだなんだぁ??」

「樹竜???」

「ふえええええ??」

《王様ーーー!!》と1人の女性の前に立って「「キュイーーンン!!」」と鳴く。

「こんにちは・・・だってさシーナ」

「ふええええ??・・・はい、こんにちは樹竜さん」
そう言って自分の首を撫でてくれる女性。
その時、女性の手から流れて来る魔力が自分の溜めてたラザフォードの魔力と呼応する。

この女性、つまり「霊樹ユグドラシル」の魔力がラザフォードの闇の魔力を全て緑の魔力へと変換したのだ。

《王様からお名前を貰えれば直ぐに・・・》
「「キュイーーーンン!!」」と大きく鳴くキューちゃん。

「シーナに名前を付けて欲しいってさ」男の子が自分の声を女性に通訳してくれる。

《そうそう、そうなのです!》ブンブンと尻尾を振るキューちゃん。

「ええ?名前・・・ですか?・・・そう・・・ですねぇ」考え込む女性。

《王様!早く早く!》待ち切れない様子のキューちゃん。

「・・・・・・・・・・「アリーセ」なんてどうですか?」

《!!!!!!「アリーセ!!」それがアタシの名前!!》

キューちゃんとユグドラシルとの間に魂の回廊が繋がる!
そしてその回廊からシーナの中に有った大好きな王様、エクセル・グリフォン・ロードのエリカの魔力も「アリーセ」の中に流れ込む。

「「キュイ!キュイイイーーーーンンン!!」」一際大きく鳴くアリーセ。
大きなキッカケを受けて身体に溜め込んでいたラザフォードの莫大な魔力が即座にアリーセの身体を再構成して、その存在を樹竜から樹龍へと作り変えてしまったのだ!



「樹龍に進化しちゃった・・・・・・・・」



ここに「新緑の樹龍アリーセ」が誕生したのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「「ママ・・・アリーセの事が嫌い?」」

「そんな事はありません!ただ・・・ちょっとビックリしただけです」

「「本当?!ママーー!!」」

世界に新しく誕生した樹龍アリーセ。するともう1人の女性、白銀龍エレンが騒ぎ出す。

「大変!こんな無理な進化!身体にどんな悪影響が有るか?!
そうだ!ノイミュンスター様の所に来ているリール様に診て貰いましょう!」

「「お姉さん?!アリーセなら大丈夫・・・きゃあああああ?!?!」」

ボウン!と白銀龍に変化したエレンが「「ヨッコラセー!!」」とアリーセを担いで、
ズドドドドドドドド!!!!と走り始める!

「エレンさん?!待って下さーーーい!!」

「「きゃあああああ?!ママーーー?!」」

「ええええーー?!早い!エレンお姉さん早いってーーー!!」

アリーセ、シーナ、エレン、ガイエスブルクの地龍4人による大運動会の開催である。

ズドドドドドドドド!!土煙を上げながら消え去る4人・・・




そして寝床には誰も居なくなった・・・・・・・





「「うわああああああ?!キューちゃーーーん?!?!」」

登録を終えてキューちゃんの寝床に帰って来て、その惨状に悲鳴を上げるブリックリン。
完全に破壊された寝床に全く気配を感じ無いキューちゃん。

何者かに襲われて誘拐された?!と大慌てのブリックリン。
実際には寝床を破壊したのはキューちゃん本人で、居ないのは天舞龍リールの所へと診察に向かっただけなのだが。

「「グウウウウウ!!おのれぇえええ!!!何者があああ!!」」
ブリックリンの身体が黒く変色して行く・・・怒りによる黒龍王化だ!!

《ええい!!!慌てるで無いわ!ブリックリンよ!!》
突然ブリックリンの脳内に響く念話。

《キューちゃんと言う樹竜は、我が娘のリールと地琰龍ノイミュンスターの所へと向かっただけじゃ、心配するでない》

「「ええ?!アメデ様?!一体どう言う事ですか?」」
一喝によって冷静になりプシュ~と身体の色が茶色に戻るブリックリン。

声の主は天龍王アメデだった。
なんの気も無しに加護を通して地龍王クライルスハイムの娘のシーナを様子をボケーと見ていたら今回の事件に遭遇した天龍王アメデ。

すると樹竜がノータイムで樹龍へと進化するわ、ブリックリンが黒龍王化するわで割ととんでもない事態になって緊急介入して来たのだ。

《それがじゃな・・・・・・・》
今までの経緯をブリックリンに説明を始める天龍王アメデだった。
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