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第三章 女王イリスの誕生

26話 「静かに始まった戦い」

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『ソード・ハイマスターにしてスパイダークイーンのアラクネーが魔王エリカになす術も無く敗退する!!!!』

この衝撃ニュースは世界の冒険者ギルドを駆け巡る!

何でこんなに早く人間社会に伝わるのか?
それは人間の商人さんもあの時のトトカルチョに参加していたからだね!
本当に皆んな好きだねぇ博打・・・

エリカのせいでモフ落ちしたしまったアラクネーさん・・・
《しまった?!やり過ぎた?!》と頭パーン!状態から復帰したエリカの羽の中で爆睡して次の日の昼に目が覚めた。

今は念話を使って「世界の言葉」こと女神ハルモニアと話しをしている。

《へー?アラクネーさんって、そんなに凄い剣士だったんですねぇ?》

『エリカが勝ったなんて今でも信じられませんねぇ・・・
と言うよりアレは勝ったと言えるのか疑問ですけどねぇ』
そう言いつつ女神ハルモニアもエリカのモフモフが気になっている。

イリス曰く、「アレはやべぇ、直ぐに寝てしまう」との事。

自分が如何にとんでもない事をしでかした事を全く理解していないエリカは恥か死ぬ発作の後遺症なのかホゲェ~としている。

一晩経過して一応今は少し冷静になってるが直ぐに「ウッヒョオオ!!」の発作が出る。
「限界集落」にて誠意作成中だが、さすがにこの「ウッヒョオオ!!」話しを世に出して良いモノなのかマジで悩んでいる。

話しを戻そう。

さて改めてアラクネーさんが何者なのかを説明するとアラクネーさんは、天界では「神剣士」と呼ばれる神々の護衛亜神で女神アテネの直系眷属だ。

現在は天界からの指示で魔法世界にて因果関係の情報収集している。

要するに2万年間ずっと1人での激務が続いていた女神ハルモニアへの天界からの待ちに待った待望の増員である。
遂に!ようやく!良かったねパシリ女神!頑張ったね!

『全ての元凶の貴方に言われても嬉しくも何ともないんですが?』

酷い?!


そんな訳で神力全開の本気状態のアラクネーさんとまともに戦ったらエリカなど一瞬で細切れグリフォン肉になるほどの力の差が有る。

今回のアラクネーさんは良い子のゴーストスパイダーを滅ぼした悪辣非道な魔王エリカに全治半年程度のキツイお仕置きをするつもりだったのだ。
別にエリカを殺そうとまでは考えては無かった。

《モフモフ・・・》寝ぼけた虚ろな目でエリカの翼をモフるアラクネーさん。

『アラクネー?!大丈夫なんですかぁ?!』

女神アテネの眷属なら当然ながら女神ハルモニアとも知り合いで放心状態のアラクネーさんを心配している。

女神ハルモニアの知る限り天界でもアラクネーが一対一の戦いで負けた記憶は無い。

『そんなに負けたのがショックなのですか?でもアレって本当に勝負だったんですか?』
イマイチ合点がいかない女神ハルモニア。

《・・・・・・・・・・・モフモフ・・・・ハア・・・良デスネェ》
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ

『え?はい?』

《「モフモフ」ッテ素晴ラシイデスネ、ハルモニア様》
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ

『えーと?アラクネー・・・一体何を?大丈夫ですよね?ね?ね?ね?』

《アラクネーハ出会ッテシマイマシタ・・・宇宙ノ真理ニ・・・
アラクネーハ・・・エリカ様ノ従者トシテ生キマス》
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ

モフ落ちしてモフモフの魅力に取り憑かれたしまったアラクネーさん?!

これは・・・アラクネーさんの中で素晴らしいモフモフの持ち主のエリカ→仕えるに相応しいご主人様・・・との図式が成立してしまった?!

『きゃあああ?!大丈夫ですか?!正気に!正気に戻って下さいアラクネー!
エリカ!どうしてくれるんですかぁ?!私の大切な大切な応援要員を!
大事な事なので3回言いますよ!私の大切な応援要員をどうしてくれるんですかぁ?!
君がちゃんと責任を取れぇーーーーーー!!』

2万年も待ってやっと来た応援の神を使い物にならなくされた女神ハルモニア。
激オコプンプン丸になるのも仕方あるまい。

《そうなんですねぇ・・・お詫びです、思う存分にモフって下さい》

《ハイ・・・エリカ様~》
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ

虚ろな目でモフりモフられる2人・・・こりゃあマジでしばらくは使いモンにならねぇ!

『きゃああああ?!この因果大爆発中の忙しい時に?!また私1人ですかぁ?!
バルドルーーー!助けて下さーいバルドルーー!』

《うむ!知らん!》・・・・・・・・プツン・・・ツーツーツー

『バルドルーーーー?!』

魔王バルドルに助けを求めるも現在メチャクチャ忙しいバルドルに言葉少なげに無慈悲に見捨てられた女神ハルモニアだった・・・

いや、魔王バルドルも人の世話を焼ける様な状態では無いのだ。
もしかしたら今の世界で一番忙しい奴かも知れない。

何せエリカがバルドルの想定を超える動きをするので調整がメッチャ大変なのだ。

今回のアラクネーさん襲撃事件は一時的にエリカが止まったのでバルドルにとって文字通りの救いの神になっている。

そして時間稼ぎの為にロテール君にいらん事を吹き込み焚き付けたのもコイツだったりする。


結局2人が立ち直るまで2週間掛かった。


そして話しは現在へと戻る。


魔族(スペクター)から暗殺者が送られて来るのを予想している魔王エリカ。
既に「エアランド・バトル」と呼ばれる「縦深防衛体制」敷いて待ち構えているのだ。

この場合の「縦深防衛体制」と言うのは堅い防衛体制を敷いているエリカの巣穴である大洞穴まで敵の先鋒を誘い込み、後衛をグリフォン隊で索敵急襲する作戦だ。
オーソドックスで堅実な戦法と言えるだろう。

敵の全滅狙うよりかは追い払いに主眼を置いてる消極的防御である。
戦争においての消極的防御は古来からの戦術の基本なので別に変な作戦ではない。

消極的防御の理由は敵の規模が直前まで正確に分からないので下手に包囲殲滅戦術は使えない。

もしも敵の数の方が多かった場合は反撃されて逆にこっちが反包囲される危険性が有るからだ。

しかしある程度の予想は立てているエリカ。

《予想される暗殺の実行部隊の人数は特殊部隊1000名前後だと予想されます》

《エッ?!1000名?暗殺目的ナノニ?余リニモ数ガ多クナイデスカ?》
平時での暗殺は、目立たない様に10名前後の人数で行うモノのでアラクネーさんの疑問も当然だろう。

《例えば街中で視察とかの最中での暗殺実行ならともかく、戦時中の要塞内でしかも厳戒態勢の軍隊相手に10人程度の少人数で来ても意味ないですねぇ。
ほぼ100%見つかって撃破されますから》

戦争映画とかで凄腕の暗殺者が要塞内に侵入して歩哨をしている警備兵を1人ずつ倒しながら標的の将軍に近づくシーンは良く有る描写だが現実であり得ない事だ。
アレはあくまで映像栄えの演出だ。

実際の戦時中では厳戒態勢中の警備兵が1人や2人での歩哨を行ったり、外から見える位置に単独で立って周囲を警備する事は絶対に無い。

厳戒警戒中の警備兵は外部から見え辛い防御が整った建屋内、トーチカなどに迷彩等を施して籠るのが普通だ。

仮に周辺で歩哨を行うにしても分隊(8名)規模で広く展開し警戒しながら行うので後ろからナイフでズドン!とかの状況にはならない。

《暗殺者達は離れた位置から情報収集する事から始めるでしょう。
多分、先遣隊はもう来てるんじゃないっすかねぇ》

エリカの予想通りに以前から魔王エリカ軍団の偵察任務していた部隊に暗殺実行の先遣部隊が既に合流して情報交換をしている。

《エエ?!ソレナラ早ク探シ出シテ殲滅シタ方ガ良クナイデスカ?》

《探しても向こうが見つかるヘマを働くと思えないので放置ですねぇ。
それなら巣穴の防御設備を整えた方が良いです。
・・・・・スケちゃん?準備は進んでいる?》

{ココト入リ口付近ノ準備ハ終ワッテマスガ何分ニモ他ガ広イデスノデ築城ニ時間ガ掛カリマス・・・正直、マダマダ時間ガ欲シイデス}

ゴーストスパイダー族と一緒に魔王エリカに降伏した鼠人間の「スケイブン」の「スケちゃん」

あれから全然出て来んな?と思っていたら勇者ロテールと一緒に物資調達とか施設の建設とかの裏方の任務をしていた。

話しを聞けばスケイブン族はこう言った仕事が得意との事なので本人が志願して来たのだ。

魔王エリカの噂を聞き付けて他のスケイブン族も次々と合流して来て現在は200名程度のスケイブン工作部隊を編成している。

裏方の任務は常にとても忙しいので全然表に出て来なかっただけである。

《増員欲しい?》

{ウーン?・・・逆ニ壊サレソウナノデ・・・様子見デ、オ願イシマス}
あんまり芳しく無い反応のスケちゃん。

《確かに作り来て壊して帰りそうだよね・・・》
特にミノタウルス族などは釘を打とうとして角材をへし折りそうだ。
と言うか、もう角材へし折ってしまったのだ。

悪気が全く無いので怒るに怒れず、スケちゃんも困ってしまうのだ。

こうして魔王エリカとスペクターとの戦いはスロースタートで始まったのだ。
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