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第三章 女王イリスの誕生

15話 「エリカの視点での黙示録戦争」

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エリカがスペクター(上級魔族)を容認出来ないとする理由を語り始めた。

「今現在のスペクターの世界は資源が枯渇しているそうです」

「え?資源の枯渇?」

「そうです、結論から言うと苦労をしないで資源を使いたい放題使い、節約と言う概念が無い彼等は遂にはあらゆる資源を食い潰してしまったそうです。

まぁ・・・元日本人の私から言わせて貰うと「資源のリサイクル」すれば良いだけだと思いますけどね。
聞いた範囲だと都市資源はまだまだ無尽蔵にある様に感じます」

「都市資源は何となく理解出来るけど「りさいくる」って言葉は初めて聞いたわ」

「前の鉄不足で私が軍部にある古く使われていない隊舎の倉庫から使わない鉄製品を全部引っ張り出して加工し直したでしょう?あれが「都市資源のリサイクル」です」

「ああアレね、想像以上に使えるモノが多くてビックリしたよね。
倉庫もスッキリ綺麗になって上層部の皆んなも喜んでたよね。
エリカが石炭の灰と粘土を焼いた錬金術で凄いモノを作っていたけどアレもリサイクル?」
だんだんとリサイクルの概念を理解し始めるイリス。

「ポルラルドセメントの事ね、アレも当然リサイクルの分野ですね。
と言うかイリスから見たらアレも錬金術に見えるんだ・・・

地球人のセメントの歴史は古いわよ~、何せ9000年近く使われているからね。

ん?良く考えて見たらセメントってバルドルさん達の先祖、メソポタミア文明が起源じゃん。

「9000年?!ほへぇ~「ちきゅう」ってすごいねぇ。
ゴミだと思っていた灰から何かを作るとか本当に凄い知識だよね、さすがはエリカ博士」

エリカ博士が開発したポルラルドセメントを使い現在のラーデンブルク公国の建築技術は一段階上がっている。

参謀だったり博士だったり魔王だったりとエリカも色々と忙しいのだ。

「私は博士ではありません。ついでに言うとセメントは私が開発した訳でもありません。
更に言うとポルラルドセメントを作ったのは日本人でもありません。
地球各地に住んでいたご先祖様達が苦労に苦労を重ねて編み出した世界全体の知恵です。

ついでに言うと木灰からもリサイクル製品が作れるのよ?毒草の毒を消して食品に変える薬になるのよ」
わらびとかの毒消し方法だね。

「ほへぇー?魔法とは全然違う概念の知恵だよね~。
あっ!それが「世界は住人が育てるモノ」と言う考えね!」

ようやくエリカが言わんとしている事が分かるイリス。

「正解~。
さて、その点も踏まえて話しを続けるね。
世界を育ててなかったスペクターとスペクターの神様が資源枯渇を打開する為に何をやったか・・・」

「他の異世界への侵略戦争?」

「その通りね、ただ当初は同じ神が管理している異世界に限定していたのだけど、それもあっという間に無理が生じたのよ。
スペクターの住んでいた世界が最大規模の世界だったからね。

その結果、全ての異世界で資源枯渇と言う地獄見たいな状況になって資源枯渇よる滅亡の危機が訪れてスペクター達の生存を賭けた戦いへと変貌して行ったの」

「・・・・・何と言うか・・・随分と自分勝手な話しだね?」

「そうだねー、自分勝手甚だしいよね。
そんな中で我らが「ユグドラシル」がスペクターに救いの手を差し伸べたのよ」

「ええ?!ママが?!」

「全員は無理だけど20万人の難民をこの世界に受け入れたらしいわ。
そして難民達は比較的肥沃な「北の大陸」に拠点を設けたのね」

「え?肥沃?北の大陸って土地が痩せている不毛の大地って聞いているわ?」

「・・・あのね?イリス。
北の大陸って全ての地域に渡って冬の山には雪がたくさん降る土地なのよ?
そして地面の表面地質は火山灰と黒土層で形成されているの。
その山に降った雪解け水が夏に黒土層の大地に流れるの、水資源が豊富で肥沃な土地になれど痩せる要素なんて無いの」

火山灰と黒土層の土地・・・畑や園芸をやるなら夢の様な良地質の土地だね。

「え?なら、痩せているってどう言う話しなの?」

「移民として入植した彼らは過去の自分達の祖先の過ちを全く反省していなかったのよ。
土地を育てず、ただ闇雲に作物を作り収穫した結果、数千年掛けて蓄積されていた肥沃度は失われて作物が育たなくなったの」

「自業自得も良い所じゃん!!何よそれ!」
イリスが激昂するのも無理はない、亜人達の国、ラーデンブルグ公国は当初はお世辞にも豊かな土地では無かったのだ。

それをハイエルフが土地を研究して研究して、長い年月を使って「豊穣の祝福」を編み出して土地に住む者の全員の努力の結果、食糧不足を克服して来たのだ。

始めから土地ガチャSSRを引っ張って何も努力して来なかったスペクターに対してイリスが激昂するのも無理はないだろう。

「それで「食糧不足をなので他国に侵略します」なんて言われて納得する者はいないよね?」

「当たり前だよ!」

「ただスペクター達が将来的に暴挙に出る事を最初から分かっていた種族が居た。
それが「レムリアの民」、現在の「人間族」よ。
そして彼らは子孫達に警鐘を鳴らすべく書物を作成した、それが・・・」

「黙示録の書?」

「そっ、イリスは読んだ事有る?」

「ガストンさんに借りて読んだ事が有るわ、
何と言うか・・・宗教の書と言うより「兵法指南書」だと思ったわ」

「ああ、イリスは「第4巻」を読んだのね。
黙示録の書は全25巻で構成されている、「黙示録戦争規模や展開の予測の書」なのよ。
それぞれの「巻」に個別に予想される戦争展開が書かれているのよ」

「そうなの?エリカは黙示録の書を読んだの?」

「全部読んだわ。うふふふふ、はいコレをあげるわ」
そう言ってエリカは机の上に有った分厚い本をイリスに渡す。

「!!!!!黙示録の書じゃん!!!」

「全25巻、全部有るわよ」ポンっと机に置かれている本の山を叩くエリカ。

「ふわ~???」歴史的に貴重な本の原本を手に呆けるイリス。

「バルドルさんに渡されてね、私はもう熟読して頭に叩き込んだからイリスに全部あげるわ。
と言うよりバルドルさんからイリスへのプレゼントだったけど私が勝手に借りて読んでいただけなのよ」

「ふわ~???・・・・・この本が有れば黙示録戦争に勝てる?」

「全然勝てないわ、戦争状況を良く予想されていて凄く参考にはなるけど現在の様々な要素を網羅していないからね。
ただスペクターの考え方、戦いの傾向、現在の戦力予想、は正解が書かれていると私は思っている」

異世界のバリバリの武門の出身で近代地球史の戦いの勉強に励んでいたエリカには黙示録の書は穴が多いと思えるのだ。

「さて・・・ここまで話しをして・・・イリス?勇者達はどんな戦いの準備をしているのかしら?」

「え?!」

「私はこの黙示録の書のみを参考にした戦略は、とても危険だと思うの。
多分・・・勇者達はヴィグル帝国に全ての戦力を集中させての防衛遊撃戦を選択していると予想しています、違うかしら?」

「うう?!・・・・・はい、そうです」
参謀エリカの予想はズバリ的中で観念するイリス。

「足りて無いわ全然、スペクターに勝つ為の要素が全然ね。
今は「世界大戦」の真っ最中よ?全ての可能性を考慮する必要があるわ」

黙示録戦争とは別に現在の世界は各種族入り乱れての大戦乱期の真っ只中だ。

「どうすれば良いの?」

「現在の世界大戦を対黙示録戦争戦略に最大限に利用します。
具体的には人間族だけの黙示録戦争を世界大戦に組み込んで世界大戦ごと潰してしまおうと考えています」

「うえええ?!そんな事出来る訳無いじゃん?!」

イリスも軍人の端くれなのでエリカの戦略が大言壮語なのが分かる。
エリカは魔王とは言え所詮は「グリフォンの王」なのだ。
人間に例えると、多少は強い小国の王様に過ぎ無いのだ。

そんな弱小魔王が格上の魔王全てを配下に加えて大戦を制すると言っているのだ。

「普通なら絶対に無理ねぇ、そんな絵空事。
でも、複数の魔王が最初から手を組めばどう変わるかしら?
イリスが行った「亜人大同盟」の時の様に」

エリカが黙示録戦争・・・世界大戦に勝つ為に考え出した戦略とは?







『エリカが怖い!怖いですよぉ・・・』

「ん?まぁ、「鬼島津」の末裔じゃからな、本来の彼女はこんな感じじゃろうて」

『バルドル・・・エリカと組んで何を企んでいるんですか?』

「まだ秘密じゃ、と言うよりは、「まだ戦略とも言えるまでのモノが完成しとらん」と言った方が正解じゃな」

『本当に大丈夫なんですかぁ?
エリカとバルドルが死んだら本気で泣き喚きますよ?私は・・・』

「なぁに心配するで無い、儂もエリカも「命大切に」がモットーだからな」












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