上 下
218 / 269
第三章 女王イリスの誕生

10話 「ドワーフ王国跡地」

しおりを挟む
「デート楽しみですね!エリカ参謀!」
エリカの腕を組みベッタリと引っ付いて離れない百合っぺ代表。

彼女の名前はイースターリリーと言う茶色の髪と黒い瞳が愛らしいハーフエルフの女の子だ。

《イースターリリー???・・・何かの冗談・・・でしょ?》
鹿児島県出身のエリカはイースターリリーの名前の由来を知っている。
と言うか旧実家の庭でも沢山咲いていた。
イースターリリーの和名は「シンテッポウユリ」鹿児島県原産のユリの名前なのだ。

「私はイースターリリーが大好きなんです!だから自分の名前が好きなんです!」

いや・・・エリカが困惑しているのは花そのものでは無く、君の行動のよる一般的な俗称が「ユリ」と君の名前と見事に一致しているからだと思うよ?

「そうねぇ・・・イースターリリーは私も大好きよ・・・えへへへ」
エリカは挙動不審者になって苦しそうに笑う。

「本当ですか?嬉しい!」
嬉しそうにエリカの腕を思い切り抱きしめるイースターリリー。

腕に顔をスリスリさせて来るイースターリリーに、
「り・・・リリーは男の子の事は嫌いなの?」と聞くと・・・

「いいえ?男の子も普通に好きですよ?でも女の子の方がもっと好きなのです!」
どうやら彼女は女の子好き寄りのバイセクシャルの様子だ。

「・・・そうなんだ」
バイセクシャルなら・・・これは何とかどうにかギリギリ彼女を更生させる事が出来るか?と思案を巡らすエリカ。

ここにエリカを百合世界に引き摺り込みたいイースターリリーとイースターリリーを百合世界から更生させたいエリカの攻防戦が開始された。

「そうなると・・・」
1番手っ取り早いのは同行している2人の青年龍騎士とイースターリリーをくっ付ける事が出来れば・・・とイリスの方を見ると・・・

「隊長!重いでしょう?!私がお持ちします!」

「ダメ!これは誰も触っちゃダメ!」
ゴブリンロードのドンゴの遺品である大戦斧を抱きしめて死守しているイリス。

「隊長!お腹空いていませんか!俺、弁当を持って来ているんです!」

「さっき食堂でご飯食べたばかりでしょう?!」

龍騎士青年2人は目的のイリスの心を奪う為に熾烈な攻勢を掛けていた。

魔王バルドルの奥さんのフレイから元気付けられてオドオド感が若干無くなったが、やっぱりイリスは恥ずかしそうだ。

こんな4人だが、どこで何をしているかと言うと龍騎士隊イリスの野営地より馬車で30分の所に有る、「旧ドワーフ王国跡地」の入り口で先行調査をしているトレジャーハンター達を出待ちしているのだ。

馬車で30分?何でそんな近場で?と言うと幸いな事に世界最大規模を誇る未知なる巨大なダンジョンが近場に有ったからだ。

最初はローランともう一人の2人で来国する予定だったのだが、表向き鎖国状態のラーデンブルク公国に堂々と入国出来ると聞き他のトレジャーハンターの参加希望者が増えて現在は17人のパーティーとなっている。

そしてあの岩盤職人さんの中から3名ばかりが補佐として参加しているのだ。

そして「旧ドワーフ王国跡地」

正確には、まだ管理と監視の為に1000人程度のドワーフが居住しているが300年ほど前までドワーフ達の王国が存在していた場所だ。

現在はラーデンブルク公国と合併して王国は自然消滅してドワーフ達は別の場所に居住している。

王国が放棄された理由は地下鉱物資源が枯渇した事が最大の理由では有るのだが、もう一つの理由は「何も考えないで坑道を掘りまくってたら、いつの間にか王都が迷宮になっちゃった」からである。

王国跡地を管理しているドワーフの職員曰く、
「いやー、俺達ドワーフって計画性が余り無いでしょう?
ご先祖様達が記録も残さないで本能のままに掘りまくっていたら最近産まれた現代人にはただの迷宮でねぇ・・・」

要するに住んでるだけで毎日が子供達の迷子の危機の危険エリアなので、危な過ぎて住んでられん!と放棄したとの事だ。

それから最近まで入り口を完全に封鎖して放置していたら自然発生した魔物達の楽園になってしまい、これまた危険だと言う話しになり国を上げての王国の再調査が開始されたと言う経緯だ。

「せっかくなんだからイリス達もダンジョンの調査に協力して来てね?
調査期間は5日間、これは正式に任務扱いにするわ」

余りにも広いダンジョンで人手が足りん!と調査チームから人員増強要請が国に入っていた所で今回の「ダンジョンデート」騒動である。

せっかくなので「ダンジョンデート」を最大限に利用してやろうと思ったホワイト侯爵からデートに参加するイリス達に探索任務の命令が来たのだ。

そしてデートのお相手のダンジョン専門職のトレジャーハンター達も欲しかったので渡りに舟、ローラン達の入国審査もアッサリとパスしたのだ。

1週間前に先乗りしたローランを含むトレジャーハンター達は国から正式に依頼された先行調査の為にダンジョンに潜っているので出待ちをしているのだ。

「・・・エリカ?寂しくない?彼氏さんが近くに居るのに・・・」
仕方ないとは言え確かに1週間前に自分の直ぐ側まで来た彼氏に無視された形になってしまっているエリカ。

今までは空を飛べるエリカがローランの所に会いに行っていたのだ。

「ふふふ~、彼も仕事だからねぇ・・・・・・・すっごく寂しいよぉ~」

「よしよし、もう少しでローランさんに会えるからね~泣くなよ~」

寂しくて瞳をウルウルさせているエリカの頭を撫で撫でするイリス。

そんなイリスとエリカを見て・・・

「凄え・・・流れる様に息ピッタリの動きだ・・・」

「でしょ?でしょ?やっぱり隊長と参謀ってそうなんじゃない?」

「あのガチ百合関係説か?・・・・・・・否定出来ないかもな・・・」

息ピッタリのイリスとエリカに対してこちらも息ピッタリに妄想を膨らませる龍騎士の3人、何だかんだ言って戦友の彼らの連携力はとても強固なのだ。



それから1時間後・・・


「出て来ないね?」エリカが心配そうに入り口を見つめる。

「そうだね」

約束の時間が過ぎてもトレジャーハンター達がダンジョンから出て来ない・・・

「ダンジョンですから時間ピッタリとは行かないでしょう。
無理に入って入れ違いになると危険です、まだ待ちましょう」

「そうだね」

連日に渡りふざけまくっているが彼らも正規の軍人。
しっかりしている所はしっかりしている、安易に飛び込む危険性を熟知している。


更に1時間後・・・


「うーん?イースターリリーは管理している職員にダンジョン内から何か連絡はないか聞いて来て。
確か非常用の通信設備が有るはずだから。

エリカはマッピングされている範囲内で捜索開始、トリスタンはエリカの援護、2人共絶対にマッピング範囲外から出ないように、私とサグファーは待機。

エリカ?1時間後に必ずここに合流、命令よ」

「了解!」エリカとトリスタンがダンジョンの入り口に入って行く。
言い遅れたが2人の青年龍騎士の名前はトリスタンとサグファーだ。

「了解しました」イリスの命令を受けてイースターリリーが管理事務所へと走る。
探索にエリカを送るのは此処に居ても不安でエリカにストレスが溜まるからだ。

2時間遅れと言うのは軍事作戦において結構ギリギリのラインだ。
相手が軍人では無いので問題も無いのだが何か有った時に備えておく。
人員配置は各自の能力適正を考慮した結果でそれ以上の意味は無い。

「隊長、探索魔法は?」

「さっきから使っているけど地下だからノイズが走るわ。
場合によってはイースターリリーと合流したら私達も中に入ります」

それから30分後、イースターリリーが走りながら戻って来た。

「地下4層目で負傷者1名有り!魔物との遭遇戦で大腿部の裂傷!生命に別状無し!
但し自力歩行は困難な模様!救助要請が出ています!」

「了解!目的地までのマッピングは?」

「大雑把ですがこれです!」
少しイースターリリーが戻るのに時間が掛かったのは、トレジャーハンターからの情報から未踏エリアのマッピングを行なっていたからだ。

「了解!私達も中に入りエリカ達と合流!彼らを救助します!」

「ダンジョンデート」から一転、負傷者救助に目的が変わる。

「かなりの手練揃いの中での重度の負傷者よ気を引き締めるわよ!」

「「「了解!!」」」

こうして先行しているエリカとトリスタンと合流するべくダンジョン内へ足を踏み入れるイリスだったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

けだものだもの~虎になった男の異世界酔夢譚~

ちょろぎ
ファンタジー
神の悪戯か悪魔の慈悲か―― アラフォー×1社畜のサラリーマン、何故か虎男として異世界に転移?する。 何の説明も助けもないまま、手探りで人里へ向かえば、言葉は通じず石を投げられ騎兵にまで追われる有様。 試行錯誤と幾ばくかの幸運の末になんとか人里に迎えられた虎男が、無駄に高い身体能力と、現代日本の無駄知識で、他人を巻き込んだり巻き込まれたりしながら、地盤を作って異世界で生きていく、日常描写多めのそんな物語。 第13章が終了しました。 申し訳ありませんが、第14話を区切りに長期(予定数か月)の休載に入ります。 再開の暁にはまたよろしくお願いいたします。 この作品は小説家になろうさんでも掲載しています。 同名のコミック、HP、曲がありますが、それらとは一切関係はありません。

処理中です...