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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

外伝!「黒龍ラザフォードとマッドサイエンティスト」その14

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歌を歌い終わり地琰龍ノイミュンスターから、
「うむ、これなら今日の「こんさぁと」だったか?公演も問題無いじゃろうて、我もコッソリと見に行くので頑張るが良い」と言われてテンション爆上がりのラザフォード。

ラザフォードはノイミュンスターに手をブンブン降ってルンルン気分で王都へ戻り準備に入る。

しかし黒龍の姿のせいで笑顔で手をブンブンの可愛さ満点の仕草が恐ろしき笑顔の恐怖さ満点の仕草に変わったのは失当である。

こんな感じに順調に御前コンサート当日を迎えたはず・・・だったのだが当日早朝に大問題が発生する。

完全な徹夜明けなのだが黒龍の睡眠は少し変わっていて30日くらいは寝ない・・・と言うか寝たくても寝れない。

30日くらい起きて丸々3日程度寝れば充分睡眠時間は取れると言ったローテーションだ。

朝の四時から人間の姿に戻り鼻歌を歌いながらせっせと舞台衣装のチェックをしていたら超絶不機嫌そうな銀髪少女がやって来て、
「コーレンス王国が攻めて来たっすね」と爆弾投下の緊急事態をラザフォードに告げる。

「ええええーーー?!」

何と!敵対していた隣国のコーレンス王国が略奪目的の為に朝駆けして来やがりましたよ!

そしてこの時代の中央大陸では略奪戦争は別段珍しい事でもないとの事。
コーレンス軍は王都まで10km地点の最終警戒ラインを超えて更に接近中と偵察部隊から連絡が入ったそうだ。

最終警戒ラインとは「ここを超えたらこっちも攻撃すっからな!」のラインである。

ちなみに3ヶ月前にもコーレンス軍が来て最終警戒ライン外の村落を軽く荒らして行ったんだそうだ。

その行為は今回の侵攻の為の威力偵察だったんだろうとの予測だ。

「そそそそ・・・それじゃあ御前コンサートは中止・・・」

「になりませんよ?アタシが蹴散らして来ますから。
 向こうに「はぐれ者」が居るのでアタシの参戦理由はバッチリっす」

銀髪少女は見た通りに滅茶苦茶不機嫌だった。
割と苦労して御前コンサートの準備をしていたのに思い切り水を刺されたからだ。

敵軍が人間だけの編成なら銀髪少女にも手が出せなかったが幸い?にも敵軍に龍種が居ると偵察中の海龍から念話が入ったのだ。

「お陰でアタシにも参戦許可が出たっすよ!盛大に鬱憤を晴らして来ます!
龍種だけは誰にも渡さないっすよ!」
同行している龍種を殴る気マンマンのリリー。

「龍種って・・・リリーさん危ないですよ!そんなのダメです!」
ラザフォードは黒龍の件で龍種からの攻撃の恐怖を嫌と言う程に身に染みている。

「リリーさんに行かせるくらいなら・・・・・・・・私が出ます!」

16歳の少年を出すくらいなら私が!とラザフォードは決意を固める。
そう言えばラザフォードはリリーが地龍の龍戦士だと言う事をまだ知らなかった。
そして未だに少年と勘違いしているのだ。

すると銀髪少女は一瞬キョトンとしてから優しく微笑む。
「ラザフォードは優しいっすね」
ドキーーーン!!超美少女の微笑みに心臓を撃ち抜かれるラザフォードだった。

「なら二人で行くっすよ!ラザフォードは居るだけで牽制になりますからね。
ああ、でも周囲にフォローが沢山居るので身の危険を心配する必要は無いっすよ」

ピアツェンツェア側は迎撃に300人程度出るらしい・・・
敵勢4000人に対して300人と言う圧倒的な不利な状況だが、これが300人全員が龍種だとしたら?

うん?儂なら一目散に逃走するな!間違い無い!300人が全員が龍種とか普通に怖えよ!

そして街の市民に見つからない様にコッソリと朝焼けの空を目掛けて戦場へと向かったラザフォードと銀髪少女。

黒龍に戻ったラザフォードの背中に飛べない銀髪少女が乗っている構図だ。

「「空を飛ぶって気持ち良いっすね。アタシも練習しようかな?」」

「「リリーさんが龍種だったなんて・・・驚きました」」

出発の時、ボウン!と龍になった銀髪少女。

「じゃあラザフォード、アタシを乗せて連れて行って下さい」そう言って王都の側の森の中で龍の姿に戻ったリリー。
しかし何か王都で有事がある時は必ずこの森が舞台になるよな?

地龍は「危ないから連れて行けません!」などと言わない。
「やりたいなら一緒に行くっすよ!」の一択である。

そしてリリーは地龍種にしては、かなり珍しい白龍だったのだ、いや少し全体的に銀色っぽいので銀龍かな?

「えええええーーーー?!」リリーの龍化には驚いたラザフォード。
そして正確にリリーを認識して女性だと分かり更に驚いた。

これはラザフォードは悪くない、リリーが意図的に性別を誤認させる認識阻害術式を組み込んだからだ。

体長30mの大柄なラザフォードに対して、リリーの体長は10mほどなので問題なくラザフォードの背中に乗れた。

こうして白黒龍コンビの新ユニットが誕生したのだ。

リリーを乗せて空に飛び上がり敵軍を空から「遠視」のスキルを使い確認して見ると王都まで7kmと言う地点で両軍が睨み合っていた。

と言うよりは敵方の馬がビビって動けないのだ。
人の姿とはいえ300人の龍種が横並びになって思い切り「やんのかこら!」とガン飛ばしているからだ。

馬にして見れば恐怖でしかなかろうな。
そしてコーレンス兵士達も本能的に恐怖を感じているのだろう。

「なななななな何故動かない?!おおおおお前ら?!どうした?!しっかりしろ!」
敵の将軍が頑張って部下を鼓舞しているのだが自分も大いにビビっているので効果は無い。

寧ろ部下を見捨てて自分だけ逃げ出さない根性を褒めて良いだろう。

「「このまま、ど真ん中に着陸して下さいラザフォード」」

「「ええ?!大丈夫なの?!」」

「「大丈夫っす」」

ドオオオオオン!!ゴオオオオオオオオオ・・・

リリーに促されるままに両軍のど真ん中に着陸するラザフォード。
勢い余って思い切り地面を抉ってしまったラザフォード。

「「ああああ・・・足が・・・痺れたーーー・・・ふえええん」

意図せずだったがコーレンス兵士を威嚇するのには充分過ぎた。
何が空からやって来たか理解出来ず誰一人として声を出す者はいない。

こうしてピアツェンツェア王国対コーレンス王国の戦いの火蓋が切られた!
正確には銀髪地龍少女リリーの戦いなのだがな!
黒龍王ラザフォードは、ホケーと見ているだけだ!
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