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第一章 エルフの少女

83話 「地龍の真なる逆鱗」その3

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仲間の中に叩き落とされて大爆発したスペクターの魔法剣士・・・
かろうじて一命は取り留めて泣いていた。

「悪ぃ・・・俺が不甲斐ねぇばかりに死なせちまった・・・」
魔法剣士の周囲には焼け焦げた仲間の死体が散乱していた・・・

「あんなの勝てる訳ねぇって・・・何なんだよ?アイツ」
ブリックリンに裏拳で弾かれた時に魔力暴走の起爆術式を埋め込まれたのだ。

あの一瞬でそんな芸当が出来るのは三龍王かそれに匹敵出来る最高位クラスの龍種くらいな者だけだろう。

「黒龍・・・おっかねえよ」そう言って涙を流した。

一方でスペクターの重装剣士は仲間を逃がす為に絶望的な戦いをブリックリンと行っていた。

スパァン!!「ぐううう!!!」
剣を弾き飛ばされる度に衝撃が剣を伝って自分にダメージが来るのだ。
何かしらの攻撃的なカウンター防御技なのだろう。

側から見るとブリックリンが余裕綽々に重装剣士を嬲り物にして遊んでいる様に見えるがそうでも無い。

重装剣士は自分と同レベルで物理攻撃力が強くブリックリンが攻撃に転じたら間違い無く攻撃が通りダメージ必至なのだ。

なので重装剣士が攻撃せざる得ない状況を作り出してハメたのだ。
そしてこのカウンター防御技もツノの周囲感知に相手に魔力衝撃とかなり燃費が悪い技なのだ。

実際にブリックリンの魔力はゴリゴリに削られている。

《魔力が尽きるまでに間に合うかな?》
しかし百戦錬磨のブリックリンはその苦境を楽しむ事が出来る。

何せ黒龍王時代は世界最強の剣士と戦っていたのだ。

天龍王アメデ。

彼は本当に強かった・・・
毎回挑んでは情けを掛けられていたなぁ・・・
ああ・・・でも今は味方なんだよね、少し残念だよ。
また会いたいなぁ、って今は地龍なんだからその気になれば会えるのかぁ・・・
もっと強くなったら手合わせして貰おう。

そんな事を考えていたら・・・カラーン・・・剣が落ちる。
重装剣士に限界が来た。

ブリックリンのカウンター技で重装剣士の両手の骨はバキバキに骨折していたのだ。
もう剣は握れ無い・・・勝負ありだ。

ギン!!凄い形相でブリックリンを睨む重装剣士!

「「!!!!しまった!!」」

ズゴオオオオオオオオオンンン!!!!
重装剣士は隠し持っていた魔石で自爆したのだ!
至近距離にいたブリックリンに問答無用でダメージが入る!!

イリス達が感じた二回目の爆発だ。
二回共、爆発を起こしたのはスペクターでブリックリンでは無かったのだ。

しかしブリックリンを倒しきれる程では無く、結構な火傷と打撲を受けたが戦闘不能にはならなかった。

「「ぐううう!アメデの事を考えて油断したよ!不覚!」」

「「ふうん?お父様が何だって?ブリックリン君?」」

ブリックリンの背後から鈴の音色の様な可愛いらしい声が聞こえた。

「「あっ・・・」」
産まれて初めて背中に汗が流れる貴重な体験をしたブリックリン。

「「どうも、リールさん」」
ヘラリと愛想笑いを浮かべながらブリックリンが振り返ると腕を組んだ天舞龍リールが居たのだ。

「「任務お疲れ様でしたブリックリン君、三龍種の監査官として来ましたよ。
それで?君はお父様とどんな関係なのかなぁ?」」

「「いやぁ、天龍王アメデ様は強くてカッコいいなぁって」」

「「ウソつきなさい!!ハッキリと「アメデ」って言ったじゃん!
それにその姿!君!前の黒龍王でしょ?!そのまんまの姿じゃんか!」」

「「うわあーーー??!!」」逃がさん!とヘッドロックをされるブリックリン。
ブリックリンは黒龍王時代に天舞龍リールとの面識は無かったが天龍王アメデが黒龍王の事を楽しそうに話すのを聞いていたリール。

そして洗いざらい根掘り葉掘り吐かされたブリックリンだった。

そして頭を抱えてしゃがんで動かなくなったリール。
中々の重大な事態だ、前の黒龍王は天龍の討伐対象だったからだ。

「「あの・・・なんかすみません」」

「「そりゃ叔父様も君の事を天龍側に報告出来ないよね」」
叔父様とは地龍王クライルスハイムの事だ。

ガバッと立ち上がりブリックリンに詰め寄るリール。
黒龍王時代には分からなかった事だが今は女性の美しさを理解できる。
美人さんのドアップに狼狽えるブリックリン。

「「それで君は前の様に無差別に暴れる気は無いのね?」」

「「地龍と龍騎士隊イリスに危害が及ばない限りは」」
そこはハッキリと断言出来るブリックリン。

「「お父様は?天龍王アメデを恨んでない?」」

「「手合わせして欲しいなぁとは思ってます」」
ここも誤魔化す事も無いので正直に話す。

「「よろしい!ではこちらの条件です。
天龍の承認無しに龍騎士隊イリスから脱退しない事です」」

「「勿論了解しました」」

龍騎士隊イリスに所属していたらブリックリンの所在はすぐに分かるので監視がし易いのだ。

「「うん、君を信じるよ」」ニコリと笑った天舞龍リール。
思わぬ大ダメージ受けて飛行困難のブリックリンを抱えて飛び去るリール。
美人さんと密着してドキドキのブリックリンだった。

二人の龍種が飛び去り少ししたら地面がモコモコと動き出した。

ボコォ!!地面の中からスペクターの重装剣士が這いずり出て来た。
爆発と防御結界が連動した魔石だったのだ。

「天舞龍リールまで動いていたか・・・我々は間違ったな・・・」
今回の地龍襲撃は龍種の組織だっての行動だと理解した重装剣士。

ズリズリと地面を這って魔法剣士の元へ行く重装剣士・・・

「生きてるか?」

「ああ、最悪な事にな・・・」

「あれは仕方あるまい気にするな・・・」

「龍種・・・おっかねえな」

「そうだな・・・」

こうして二人のスペクターは地面を這いながらブレストの元へ行くのであった。
二人は「地龍の真なる逆鱗」人間の世界の終わりの一片を垣間見たのだった。
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