上 下
72 / 269
第一章 エルフの少女

71話 「豊穣の祝福」その7

しおりを挟む
そろそろ儀式が始まるかと言う時、グリフォンロードのエリカだけが帰って来た。

「あれ?他の皆んなは?」

《3人で周囲の警備をするらしいです。
私はイリスちゃんと一緒に居た方が良いらしいので帰って来ました》

確かに何か起こった時イリスとエリカが一緒に居ると対応がし易い。
ガストンの鼻血噴射タイムは引き延ばされた様だ。

何よりエリカは豊穣の祝福の儀式に興味があったのだ。
《なんか凄いファンタジーっぽい!ワクワクするわ!》
登山も好きだったがゲーム、漫画も大好物の女子大生だったのだ。

そして準備されたメインの祭壇はまさしく本物のファンタジー。
緑を基調にした祭壇の上に純金、純銀製の器が並び、祭壇周辺には15個の既に魔力を通され淡く光る立体型魔法陣。

しかも儀式を行うのは本物のエルフと来たもんだ!
そりゃあテンション爆上がりしますわ!

なのでシルフィーナの隣で見学する事にした。
いきなりグリフォンロードが儀式に参列する状況にあんまり驚く事がないのはさすが鬼族である。

これが人間だったら大パニック不可避だろう。

そして豊穣の儀式の為にそれぞれの位置につく神官達。
イリスは祭主のクレアと白ちゃんの補助なので祭壇下右に位置を取る。
めっちゃ目立たないポジションだね、主人公なのに。

儀式が始まるので、ついさっきまで長布1枚のエロい衣装にモジモジしていたクレアだが既にキリリと表情になり威風堂々としてるのはさすがだ。

薄着に慣れている白ちゃんは飄々としている。
イリスは何を考えてるか分からない・・・何も考えてない様にも見受けられる。
まぁ補助なので。

ぼけ~としている様にしか見えないイリスだが実はシルフェリアに儀式の流れを説明していた。

《師匠が呪文を唱え始めると私もトランス状態になるけどシルフェリアがどうなるか分かんないね?》

かなり強烈なトランス状態になるのでイリスと意識が繋がっているシルフェリアにも何らかの影響が出ると思われた。

《多分大丈夫ですよ。いざとなれば私も儀式に参加しますから》
と何とも無さげに言い切るシルフェリア。

さすが腐っても緑の大精霊である、臨機応変に対応するらしい。
常にそうしていればダメ精霊呼ばわりされなくて済むモノなのに。

ピシャーーン!ピシャーーン!ピシャーーン!
小川の水面をクレアが杖で叩き「豊穣の祝福」の儀式が始まった。

同時にイリス達、7人ハイエルフが、

『オホハラヘノコトバ』と同時に呪文の詠唱を行う。

《え?》小さく言葉を漏らしたエリカ。

続けてクレアが杖を両手で持ち眼前に据えて目を瞑り、
『オオハラへノ、ネガイタテマツリ、
タカマノハラニ、カムヅマリマススメムツカムロギ・カムロミノミコトモチテ・・・』と唱え始めた

冒頭の祝詞を聞き、元日本人のエリカは「あれ?!」と思った。
普通の日本人でも呪文にしか聞こえないが大学で郷土史を専攻していたエリカには1発で祝詞の意味が分かるのだ。

何せこの祝詞が単位の試験に出て来たからだ。
所々アレンジされているが大まかな部分が有名な大祓の祝詞と同じ文脈なのだ。

「不思議な言葉ですわ、何て言ってるのか全然解りませんわ。
でも強力な言霊を感じますし、テンポも気持ち良い不思議な言語です。
あら?どうしましたエリカ?」

エリカが唖然としているのが分かったシルフィーナが心配して声を掛けると、
《あっ、この言葉、前世の私の故郷の言葉です》と答えると、

「ええ?どう言う事ですの」シルフィーナが不思議そうな顔をする。

『アマノヤヘグモヲイズノチワキチワキテ、アマクダシヨサシマツリキ』
こうしている内にも儀式は進行して行く。

「つまりエリカはこの謎の言葉の意味が解るのですか?」

《はい!完全ではありませんが大体の所は・・・えーと?最初は・・・
大祓祝詞願い奉り、高天原に神留まり坐す皇親神漏岐・・・》

「まっ待って下さいなエリカ。
余計に難しくなりましたわ、出来れば簡単にお願いしますわ」

漢字満載の説明に思わず待ったをかけるシルフィーナ。

《えっ?ああ!あはははは、
そうですね、古い言葉で言い回し難しいですもんね》

『カクノラバ、アマツガミアマノイワヲオシヒラキテ・・・』

《今の所を要約すると「神様が岩の門を開けた」と言ってます》 

「へー、全体的には何て言っているのですか?」

《う~ん?言い回しが古い神話を交えての遠回しなので・・・抽象的とも言えるので
簡単に説明すると大地の穢れを風と水の力で清めて新しい外部の力を受け取って欲しいと世界に願ってる?と言った感じでしょうか・・・》

『ハヤカハノセニマスセオリツヒメトウフカミ、オホウウナバラモジイテナム』
そろそろ1回目祝詞も終わりが近づいている。

周囲のゴブリン達は自分達の死活問題なので懸命に祈っている。

『ヤホヨロズノカミカミタチトトモニ、キコシメセトマヲス・・・・・・・』
祝詞が終わりクレアは木の枝を小川に付けて大きく振ると、周辺に水のしぶきがパラパラと降り注いだ。

『アマツハラニマシマシテ、テントチニアハラキヲアラワシヲミマウリユウオウノ』
今度はイリス達が呪文の詠唱を始める。

バシャーン、バシャーン、バシャーン
その中でクレアは踊りながら木の枝の水しぶきを周辺に撒き続ける。

「なるほど、これは幻想的ですわ・・・」
1枚物の布を纏うクレアが回転すると続けて布も回転する。
なかなか美しい女性とマッチして幻想的に見えるのだ。

「別に着る服は何でも良いんですけどね。
でもボンッキュッボンッの師匠ならこれが一番です!」

と言う理由なのだがとにかくエロいのだ。
周囲は女性とゴブリンとオーガしか居ないで特にエロさを気にする者はいない。
単にエロいクレアをイリスが見たかったから・・・だけの衣装なのだ。

そしてこのとんでもなくエロいクレアを見ても平然な様子で祈りを続けるゴブリン。
ゴブリンがエルフには欲情しない証拠でもあるのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...