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第一章 エルフの少女

53話 「戦後処理」

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一連の反攻を受けてゴルド王国は中央大陸での拠点のほとんどを失い南西の古い城塞に立て籠った。

交通の要所と言う訳でも耕作地と言う訳でも無い位置なので無理に攻撃する勢力は居なかったのでギリギリ橋頭堡だけは確保する事が出来たゴルド王国軍。

しかし大軍の食糧の維持は出来そうも無いので勝手に瓦解するだろう。
それからすぐに戦後の各勢力への戦利品分配も終わった。

元々どこが上と言う訳で無かったので攻略した土地をそのまま維持管理する事で話し合いは決まった。

1番勢力拡大したのはやはりピアツェンツェア王国だろう。
大陸の中央部と東部のほとんどを獲得した。

南部は未開拓の地なので手付かず、西部にはフィジー共和国が誕生する。
エルフ達はドライアドの森を中心に100km半径圏内を獲得して防衛線を強化する事に成功する。

北部にはヴィグル帝国の支援を受けたトゥールーズ王国が誕生する。
これからの時代の中央大陸はピアツェンツェア王国の主導で動く事になるだろう。

捕らえた捕虜は面倒くさいので身ぐるみ剥いで放り出した。
ある意味では酷いが命が助かっただけマシだろう。

そんな戦後処理が終わった頃・・・

「何?うちで働きたいじゃと??」
クレアの前に人間の「勇者」ガストン・エスピナスが膝をついている。

「はい!どちらか言うとイリス様にお仕えしたいと思いまして」

「えっ?!嫌ですよ」即断するイリス、いや何言っての?状態だ。

「そんな?!我が主よ!あんまりです!俺結構強いのでお買い得ですよ?」

「私はガストンさんの主ではありません。
そもそもの話しで人を雇える財力なんて私はありませんから。
家臣なんて無理ですよ?」

これは本当だ、何せ無給で働いているのだから、欲しい物はクレアが好きなだけ買ってくれてるので完全に無給とは言えないが現金収入は無い。

周囲は精霊と地龍なので給料はいらん・・・と言うよりシルフィーナとブリックリンはめっちゃ大金持ちだ、金銀宝石なんて掘り放題なのだ。

財宝の収集は龍種の本能なので2人も集めている・・・理由は知らん。

「これはしたり!イリスに報酬を渡しておらなんだ!」
戦後処理に忙しくて龍騎士イリスの報酬をガチで失念していたクレア。

イリスも特に期待・・・別にいらんと思って特に何も言わなかったのでクレアの側近達も戦功第一の人物に報酬を与えるのを忘れていて顔が青ざめている。

「ああ、それなら大丈夫です。
俺も給料とかいりませんから、自分の食い扶持くらい何とでもなりますから」

「そう?なら良いよ」イリス?!軽っ?!

「ありがとうございます!これからよろしくお願いします!主よ!」

「いや!待て待て!そんな訳に行くか!」
トントン進む話しにクレアが慌てて待ったを掛ける、国として外聞が悪すぎて無給でこき使うなんて真似は出来ないのだ。

「そもそもお主、ピアツェンツェア王国はどうするつもりじゃ?」
うん、そこはイリスも気になっていた。

「クレマン国王に話しをしたら、「別に良いんじゃね?てかずるい!私もイリス様に仕えたい!」とか言い出したので殴って気絶させました」

「ナイスです!」グッと親指を立てるイリス。

「ナイスです!ではないわ!
下手すればこちらとの外交問題では無いか!」

「ああ、そこも大丈夫です。
国王を気絶させたら周囲の側近から「ナイス!」と言われましたから」

「どんな国なのじゃ全く・・・」

「まぁ、真面目は話しをすれば「ユグドラシルの瞳」を持つ者はなるべく近くに居た方が良いと思いましたので」

「ぬう・・・」

クレアとガストンは「ユグドラシルの瞳」継承した者同士なのだ。

「正直、私はこの「瞳」を扱いかねてます。
力や能力では無く「どの様に使う」かを・・・それはクレア様も同じなのでは?」

「・・・・最初からそう言えば良いのじゃ」
クレアも「ユグドラシルの瞳」を扱いかねているのは事実だ。

何せユグドラシルから世界を「丸投げ」された状態だ。
こんな前例など無い話しで15000歳のクレアと言えど簡単に答えが出ていない。

「そちらの情報は話して貰うぞ?」

「もちろんですクレア様、では家臣として?」

「仕方あるまい、イリスの龍騎士隊に加わるが良い」

ガストンはクレアの言葉に少し顔を顰めて・・・
「・・・つまりシルフィーナ様に乗れと?
私はさすがに美しい女性を足蹴にするのは憚かれます」
と素で言い切った。

「まあ!」美しいと言われて嬉しそうに驚くシルフィーナ。
今まで「可愛い」とは散々言われたが「美しい」と言われた事が無かったからだ。

このガストン、表向きは軽くて飄々としているが実の性根は「凄え真面目で誠実」な人物なのだ。
だから「ユグドラシルの瞳」に選ばれたのだが。

「それなら俺に乗れば良いですよ、イリスはシルフィーナ様に乗れば・・・」

「問題解決だね!」

「しっ・・・仕方ありませんわね、私もそれでよろしいですわ!」
少しガストンに惹かれるシルフィーナはツンデレを発動している。

「そうですか・・・そう言う事なら私にも異論はありません」

《うふふふふ、ガストンさん、「俺」から「私」に変わってますよ?》
ダメ精霊の分際で鋭いツッコミをいれるシルフェリアだった。

結局、イリス個人に報奨金として1億円相当の金貨が贈られた。
月の給料は300万円相当だ、この中からイリスの龍騎士隊の給料が払われるのでイリス個人は80万円相当の金貨が残る計算だ。

日本に当て嵌めると政府の官僚くらいの給料だね。

ブリックリンとシルフィーナは人間の金貨を貰ってもどうしょうもなく、受け取る気はないので、ガストンには半額の150万円相当の給料にした。 

「さすがに半額では・・・」と渋るガストンに、

「いや、そんなに貰っても幼児に使い道なんて無いから」との事だ。

戦後処理が終わってイリスは大量の金貨と新しい仲間をゲットした。
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