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第一章 エルフの少女

26話 「エルフの街で師との出会い」

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「たーのーもーうー」イリスがクレアの館に呼び掛ける。

バカ精霊シルフェリアがイリスに訂正するのを忘れていたのだ!
一瞬唖然としてからのシルフィーナの顔がヤバい!

ラザフォードはキョトンとしている、おそらくラザフォードはこれはエルフの挨拶だと思っているが・・・
アメリカの人には分からないよね・・・すみません日本語っす。

何でシルフェリアがこんな日本語を知っていたか・・・俺も知らん。

もう一回、「たーのーもーうー」と呼び掛けるイリス・・すると・・・

「ほほほ、なかなか愉快な掛け声よのぅ」と1人のエルフが扉を開けた。

腰まである長い金髪、ハイエルフらしい澄んだ白い肌、瞳の色は・・・
「あれ?薄い緑色?」とイリスは思った、青い瞳と聞いていたからだ。
顔立ちはとにかく美しいとしか形容が出来ないほど整っている。

背は高いが華奢な印象がする。
「こんな人が「体育会系?」イリスは疑問に思うが?さて・・・

「よう来たのぅイリスよ、妾がクレアじゃ、よろしゅう」

ハッとイリスは我にかえり、
「ユグドラシルの森のウッドエルフのイリスです!
不束者ですがこれからよろしくお願いします!
後、約束の日に来れなくてすみませんでした!」

そう言って深々と頭を下げる。

クレアはイリスの挨拶に満足そうに頷き、「それから・・・」

今度はラザフォードの方へ向き、
「久しいのぅラザフォードよ、そなたの活躍は聞き及んでおるぞ?
もはや人化の法は完全に己れの物とした様じゃな」

「はい、おかげ様で、色々とありがとうございました師匠」
子供っぽく笑うラザフォード、クレアはこの世界での母親の代わりなのだ。

「そなたの「ろっく」じゃったか?妾も楽しみにしておるぞ」

「はい!最高にクールな公演にします!」
ラザフォードはこれから公演主との打ち合わせが忙しくなる。
とりあえずイリスとの同行はここまでだ。

「ほほほほ、・・・それからシルフィーナ殿」

「はっ・・・はい!」

「色々とお話しがあります故に後ほど、
この瞳についても知りたい事がありましょう?」

「・・・はい!後ほど」

「さて・・・挨拶も済んだ事だし遅くなった理由を聞こうかのう?
ささ、お茶が用意してある故、座るが良いぞ」
見るとメイドさんがお茶の準備をしてくれている。

「うっ、はい!」隠すと碌な事にならん!とイリスの直感が働いた。
なので椅子に座ると偽る事なく、ここまでの全ての出来事を話す。

シルフィーナが「そのお酒のくだりはいらないと思いますわー?!」と叫びそうになる市場での話しまで丁寧に話した。

クレアはお茶を飲みながら黙って話しを聞いている。
ひとつひとつの動作が洗練されていて美しい。
とても体育会系に見えない儚さすら感じる。

「・・・と言う事があり遅れました、すみませんでした」と再度頭を下げる。

クレアは少し考えを整理している様に見える。
そしてゆっくりとカップをソーサーの上へ置くと、

「ふむ・・・シルフィーナ殿、
大燕にぶつかるのを防ぐ為に何が必要だったと思いますかの?」

「えっ?!え・・・え~と前方への集中力ですね!」

「それも必要じゃが何よりも回避する為の腰の粘り強さじゃ」
ん?腰?粘り強さ?

「ああー、始まったぁー!」そんな表情のラザフォード。

「イリスよ咄嗟に「浮遊」で難を逃れたのは見事じゃ」

「はっ・・・はい!ありがとうございます」

「しかし川を流された時、もっと脚力が有ればもっと早く岸に辿り着く事が出来て魚に食われる事もなく、シルフィーナ殿と容易く合流出来たのでないか?」

「!!!そっ・・・そうですね!仰る通りだと思います!」
ん?何かイリスの様子が変わったぞ?

「それから紫虫王から逃れるスピードが有れば更に良き結果を得る事が出来たのではなかろうか?」

「そうですね!スピードは大丈夫だと私も思います!」

「あっ・・・あの?イリス?」

クレアの「下半身マジ重要」理論にズンドコと引き込まれつつあるイリス。

「鍾乳洞を歩く時も、お店を手伝うのも大事なのは・・・」

「下半身ですね!」

「その通りじゃ!よお言ったイリスよ。さすが妾の弟子じゃのぅ」
どうやら弟子入り試験は合格だ!・・・いや?ええ??

「さて、この街の外苑は15kmほど有り、走り易い様に整備されておる」

「最高ですね!」

「ふむその通り最高なのじゃ、してイリスよお主がすべき事は?」

「朝夕に自分の限界まで走ります!」

「良く言った!己れに見合ったスピードと距離を掴む事も重要なのじゃ」

「分かりました!師匠!」

「シルフィーナ殿もイリスと共に走ればその「ビールっ腹」も引っ込むであろう」

「私はビールっ腹ではありません!」

するとイリスは真顔になって、
「シルフィーナ、嘘はいけないよ?」とシルフィーナを諭す。
そうか出てたんだ・・・腹が。

「あうううう・・・」涙目のシルフィーナ、毎日のジョギング決定である。

「ラザフォードも付き合い、走り方を2人に教えてやるが良いぞ。
肺活量アップにも走るのは効果的じゃからのぅ」

「分かりました師匠」
こうなると最初から分かっていたのであろう、ラザフォードは笑顔で承諾する。

女王クレア・・・彼女は「理論派の体育会系」だった。
言葉巧みに弟子をその気にさせて走らせるのだ。

そしてそんな彼女の新しい信奉者に幼いウッドエルフが加わったのだった。
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