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第一章 エルフの少女

10話 「くすぐり結界」

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朝です。そうですね、見りゃ分かりますよね。
マッピングが終わったイリスは意気揚々と、いよいよ「ドライアドの森」の最深部へと侵入しようとしてますが中々前に進めません。

と言うのも要所要所に難解な結界術式を解除する必要が有り苦戦してるからです。

昼まで2つの術式を解除したが3つ目の術式がかなり高度な術式なのだ、術式の石板の前で計算用の紙を広げて悩むイリス。

「う~ん?うん?」シルフェリアから貰った分厚い術式コードの本を片手に唸っているイリス。

一回でも解除コードを間違えると最初に戻り微妙にコードが変更される仕様なので慎重に行かないと駄目なのだ。

術式の難易度はB、人間の学校だと高等部卒業試験に相当します。
つまりドライアドは、幼いがイリスは、その程度の知識を有してると判断してる訳です。

どこかの一般教養の再教育中のパープー精霊の試練と違いイリスの実力に見合ったちゃんとした試練になってます。

同行してるシルフィーナに質問も可ですがイリスは自力で頑張ろうと決めていたので解除までに時間が掛かっている次第なのだ。

そんなイリスを眺めてたシルフィーナ・・・
ふと結界を見て・・・「解除しないで入ったらどうなるのかしら?」と好奇心が湧いて一歩結界内に入ると、

「きゃーーー?あははははは!ああん?!いやーーん!」
めっちゃ、全身をくすぐられた!

「グエエエエエ?」《なにしてんすか?》

「何もしてない」何も無かった様に澄ましているシルフェリア。

「クエグエエエエエ」《だって今・・・》「てーい!」
突風を起こしてブリックリンを結界内へ放り込むシルフィーナ。

「グエ??クエエエーー??」いきなり全身をくすぐられて慌てて結界から飛び出したブリックリン。

「グエエエエエクエー??」《なんすか?これー?》

「ドライアド特製の「くすぐり結界」よ」

「・・・・」それを聞いたブリックリンはイリスをヒョイと抱っこして・・・
そっとイリスを結界内へ入れた?!

「なぁに?ん?んん?!きゃー?!あははははなはは!!いやーん?!」

今まで感じた事が無い感覚にイリスは涙目になりながら慌てて結界から飛び出す。

「もーう!なぁにぃ?!」プリプリと怒るイリスに、

「グエエエエエクエ」《少し休んだ方が良い》と答えるブリックリン。
ブリックリンは朝からずっと根を詰めるイリスに休憩しろ、と言いたかったのだ。

「そうねぇ、イリスちゃんは少し頑張り屋さん過ぎるかもね」

「そうかなぁ?・・・あれぇ?」気が抜けたのかフラフラしたと思ったらブリックリンの手の中に倒れて寝てしまった。

50歳児(人間では5歳児)にはキツイ作業だった様だ。
こうしてイリスは次の朝までブリックリンの手の中で爆睡するのだった。

次の日の朝、
「ぐっすりと寝たからもう大丈夫!!」と張り切るイリスだが午後2時でダウンしてしまった。

更に次の日の朝、
「ふえーん、いつまで経っても終わらないよぉー」

「焦らなくても大丈夫よ、わたくし達も暇だから」
そんな事を言ってるシルフィーナだが実は森の管理など本来は忙しい。

シルフィーナが受け持つ範囲はシルフェリアが担当してる範囲より広い。
そこは居残り大精霊がヒーヒー言いながら代役を務めている事だろう。

結局イリスが3番目の結界術式を解除出来たのは9日目だった。
それから4番・5番と解除して行き最深部の最後の結界術式に到達出来たのは2ヶ月後だった。

全員が長命種なので余り気にしてないが人間ならマジキレしていた事だろう。
最後の結界術式に相応しい難易度Aの術式に大苦戦するイリス。


「お・・・おわた・・・」パタリ・・・
イリスが最後の術式解除に成功したのは実になんと半年後だったのだ!
エルフならではの時間感覚だね!

言い換えればイリスは半年で大学に入学出来る学力を身に着けたとも言える。

しかしここまで来るのに正味8ヶ月・・・それを待つ事が出来るドライアドも、なんてのんびり屋さんなのか・・・

遂に最深部に足を踏み入れて見ると立派なログハウスがあった。

「あら?2年くらい掛かるかなぁ?と思っていたのに早かったですわ♪
初めまして、ドライアドのシルヴァーナですわ」

「イリスです!初めまして、シルヴァーナさん!」

大きなログハウスのテラスで紅茶?を飲んでいたシルヴァーナさん・・・
「あー!ずるいです!わたくしもお酒が飲みたい!」
突然シルフィーナが騒ぎ出した?

え?お酒?紅茶っぽいお酒を飲んでいたのだ!
しかも度数が60度のめっちゃ強いお酒だ。

「え~?まだ夕方前ですよ?」ダメな大人に呆れるイリス。

「おほほほ、私にとっては、お水見たいな物ですわ」
んな訳あるかい!しっかりと酔っ払ってるシルヴァーナさん。

ちゃっかりとシルヴァーナの隣りに座るシルフィーナ。

しかし精霊って皆んな酒が強いのか?と言うとそんな事も無い。
どちらかと言うと精霊はお酒が苦手だ。

シルフェリアはビールを三杯も飲めばベロンベロンのへべれけになる、この2人が異常とも言えるのだ。

結局その日は今迄の話しを肴にお酒を飲んで話しは進まなかった。

「もー・・・「ドライアドの涙」早く下さいよぉ」
さすがに不貞腐れるイリスだったのだ。




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