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改稿版
槍の勇者と幽霊退治屋セリス。世界の守護者の査問会と後日談。後編
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アテネ型霊視のエジオスの恩寵の影響から、そのうち気が向いたらイリスがオリュンポスの女神になる事が分かった。
この話しの最終的な結末は女神になったイリスは女神アテネにハメられて魔法世界から地球に配属替えになってイリスがブチキレる事で終わりになるのだがそれは遠い遠い未来の話で現在の物語の進行に全く影響ないのであまり深く考えないで下さい。
そして査問会の議題は何か知らんがカルト集団「エルフ女神イリス教」へと流れるのだった。
先に言ってしまうと「エルフ女神イリス教」なるこの集団は真なるアホの子の集まりである。
イリスを百合の女神様だと勝手に崇めて勝手に大騒ぎするバカちん達なのだ。
確かに女友達と簡単に同衾するなど百合疑惑を増長させるイリスも悪いのだがイリス的にはパジャマパーティーのノリでやっているだけなのだ。
ぶっちゃけると単に親愛の情が強いだけで別に百合っ気などは無くイリスの恋愛感情や性癖などは至って普通である。
強いて上げるとすれば同じ種族のハイエルフとの交際や結婚に妙にこだわっている保守派思想なのでお相手が物理的に見つからず年齢=彼氏居ない歴になってしまっているのも男嫌い=女好きだと思われる原因になっている。
物理的に見つからないって何?と言われると現在のハイエルフの成人男性は全員が既婚者でイリスより後に産まれた6人のハイエルフの子供は全員が女性である。
要するにハイエルフの男性で独身者が居ないのでイリスのお相手はこれから産まれてくる男の子次第と言う訳だね。
ハイエルフの出生は200年に1人と言われているので、ここ1000年はやや新生児が多いくらいだろう。
イリス的にはつい100年ほど前に産まれたルナの子供にめっちゃ期待していたのだが産まれたのは見事に女の子だった。
つまりイリスの次のチャンスは100年後でしかも産まれる子が男の子とは限らずしかも男の子が産まれてもその子がイリスと結婚する訳とも限らない。
巡り合わせが悪ければ後1000年イリスは結婚出来ない可能性すらある。
長命種の結婚は人類の想像を絶するのんびりとしたものなのだ。
お先真っ暗ボッチな独身イリスを見かねた、お前も似たような理由で独身だがな魔王エリカから「結婚の事は一旦置いておいてさ?とりあえず別の種族で彼氏だけでも作って見れば?」と提案されたのだが・・・
「何てふしだらな事を?!それで万が一でも子供が出来たら大変です。
男性とお付き合いするのは結婚を前提として行うモノです!」
とまぁ、こんな感じに恋愛に関して考え方が凄く古風なのです。
お遊びで彼氏を作る事すらNGな淑女イリスなので、それ以上に卑猥とも言える百合の長に奉られる事をマジで嫌がって、この珍妙な集団を一刻も早く解散させようと日夜頑張っているのです。
しかし敵もさる事ながら祭神イリスからのあの手この手の妨害工作にもめげずに地下に潜って活動を続けておりなかなか撲滅に至っておりません。
『そ・・・そんな変な教団が有るんですね・・・
やはり人とは神の予想を超えて来ますね・・・勉強になります』
百合っぺ達の行動力と執着心と真なるアホンダラ具合には、ただただ驚ろかされる女神ハルモニア。
「いえ!アイツらからは何も勉強しなくても良いです。
何なら今すぐ天罰女神ビームを撃ち込んでやっても良いです」
『そんな事で天罰なんて与えませんよ!』
ハルモニアの本心は「アホの子だなぁ~」としか思っていない。
しかし今から5分後にエルフ女神イリス教のせいでシャレにならん事態が判明するのだが・・・
「でも・・・あの子達なら女神ビームにもどうにか耐えそうなんですよね」
「・・・・・・・・・・かも知れぬな」
ウンウンと頷く魔王バルドルと精霊王ホワイト。
過去に精霊王ホワイトの連日に渡るお仕置きにも耐え抜いた鉄壁防御な百合っぺ達なのだ。
『百合っぺとは何者なんですか?!』
「アホです」素で辛辣なイリス。
『・・・そうですか』
《少し思い込みは激しいですが良い子達ですよ?》
「・・・なぜユグドラシルママが百合っぺ達の事を知っているのですか?」
ユグドラシルと百合っぺ達の繋がりが有ると想像出来ないイリスは怪訝な表情になる。
「?!?!?!ユグドラシル待って下さぁい?!」そして何故か悲鳴を上げるシーナ。
《いえ?シーナがですね?「エルフ女神イリス教のピアツェンツア支部の名誉顧問」なので、あの子達とは私達も良く会っているんです》ガラガラガラガラピシャーーン!
「あら?あらあら?シーナ?何で精神世界へ引き籠るのですか?
あらあら?シャッターまで閉めて?どうしたんですかシーナ???おーい?」
瞬時に表層人格をユグドラシルに移し精神シャッターを閉めて閉店してしまったシーナ。
「?!?!はっ!!!シーナ!!私に隠れて何してくれてんですかぁ!!!」
密かに隠れてエルフ女神イリス教の布教活動していたシーナに激オコのイリスだが既に精神世界の遠くに逃亡してしまったシーナ名誉顧問。
シーナって基本的には常識人だがたまに変な事をやるんだよな。
「シーナのこう言う所は女神アテネ様と全く同じ行動じゃな・・・」
シーナ逃走にめっちゃ呆れてる天龍王アメデ。
「あれ?でもシーナってハルモニアちゃんの分身体なのよね?
どちらかと言うとオリュンポス神族の性質かも知れませんわ」
別に悪気は無いが痛いツッコミを入れる海龍王アメリア。
「アメリアよ・・・思っても口に出してはならん事もあるのじゃ」
スッと女神ハルモニアから視線を逸らす地龍王クライルスハイム。
「オリュンポスの神様って皆んなこんな感じなのか?」
神々らしさを微塵も感じられないクルーゼ。
「これは・・・言い訳が出来んのう」
一応、女神ハルモニアの従者の魔王バルドルは凄く気まずそうにハルモニアを見ると・・・
ボボボボボボと揺れている火の玉、どうやら怒りに震えているらしい。
マズイ!我らの主神様がお怒りになられた?!
『なんて事・・・そんな得体の知れない教団なんかに入信して・・・・・・』
ん?なんと?
『逃げていないでママの前に出てきなさーーーーい!!シーナーーーー!!!!
ママに隠れて何をやっているんですかぁーーー!!!
ちゃんとお話しを聞かせなさーーい!!』
シーナ母のハルモニアさんは査問会から逃走してオリュンポス神族の神威を下げた事より、母に隠れて娘が珍妙なカルト教団に所属して事に対して怒ったのだ!
この時、普段優しい母が鬼の形相で子を叱る気持ちが良ーーーく分かったと後に語るハルモニアさん。
天界から子を激しく叱る母を見てて何故もっと優しく子を諭してあげないのだろうと不思議に思っていたのだが・・・
なるほど・・・我が子の道を正すのは己しか居ないと思ったら己も命を賭けて子を叱るしかないのだ。
今のハルモニアは女神でも何でも無い!「母」なのだ!
しかし変な事をして逃げたシーナも悪いが一応は擁護をしておくと最初に「エルフ女神イリス教」に入信したのは10歳の頃のユグドラシルである。
つまり当時は精神体として体の外で浮遊霊をしていたシーナには何も出来ない頃である。
6年前のスカンディッチ伯爵領にて。
「ね?ね?ね?そこを行く可愛い黒髪のお嬢様!ちょっといいかな?」
「はい?」
10歳の時のある日の事、毎日の日課である天龍教教会に訪問する為に大通りを歩いていると黒のローブに身を包んだ如何にも怪しげな女2人組と遭遇したユグドラシル。
こやつらは言わずと知れた「百合っぺ達」である。
何で百合っぺ達が怪しげな黒のローブを纏っているのか簡単に言うとイリス門派の装備品のイメージカラーが黒だからだ。
なして黒かと言うと戦場での迷彩目的や寒冷地での保温性の観点から採用しているだけである。
なので戦場によってはグレーや青(空戦時)に臨機応変に変わります、ただの迷彩目的なので。
「絶対にイリス隊の軍装色はイリス様のイメージカラーのピンクー!」
とか騒ぐ馬鹿タレ共に、
ピンクぅ?!そんな目立つ色で戦場で的になりたいの?!バカ!・・・
と言うか私のイメージカラーはピンクじゃ無くてシルバーです!」
と銀髪イリスが問答無用で黒の軍装色を採用したのだ。
「あはははは、黒ってラザフォードさんのイメージカラーじゃん?」
「とにかく!軍装は実用性重視です!」
「ぶー、ぶー」
ちなみにイリスの銀髪はハイエルフではとても珍しいです。
イリスが何で銀髪なのかはなんか理由があった気がしますが・・・一年以上も前に書いた話しなの作者は忘れました。
うん!全然思い出せませんね!
気になる人は「龍騎士イリス」で探して見て下さい、簡単に探せとは言えあの魔窟は80万字くらい有りますけど・・・
いずれ訪れる「龍騎士イリス」の改稿に戦々恐々としております。
改稿完了まで一年近く掛かる予感がしています。
話しを戻しまして警戒心が薄く人懐っこいユグドラシルは怪しげな二人組に近づき、「私に何かご用ですか?」とニッコリ笑いながら尋ねると・・・
「可愛い!!あのね?貴女は神を信じますか?」と二人組の百合っぺは昭和時代に流行った文言で質問してくる。
「ええ、それは勿論信じてますよ」
信じるも何も女神フレイヤとは仲が良い友達なユグドラシル。
「そうなのね!それでね?私達はエルフのイリス様を崇めているんです!
どうですか?貴女もイリス様を信仰して見ませんか?」
ここで遂に本性を現した百合っぺ達。
「貴女も百合になりませんか?」とのお誘いである。
「まあ?!イリスちゃんを崇めているのですね!分かりました、ご一緒させて頂きます」
そしてあろう事かアッサリとカルト教団に入信してしまったユグドラシル。
もしここで保護者のエレンお姉様が居れば百合っぺ達は問答無用で蹴散らされていたのだがこの時に限ってユグドラシルは一人だったのだ。
「やったー!」
こうして天然のユグドラシルはスカンデイッチ伯爵領に布教に来たエルフ女神イリス教の信者の勧誘にまんまと引っかかってしまったのだ。
ユグドラシル的には「可愛いイリスの為に協力しましょう」と思って入信しただけであるが、それがまさかイリス本人が蛇蝎の如く嫌がっているカルト教団とは今でも思っていない。
何なら百合っぺ達はイリスちゃんの大切なお友達と思っている。
ここからシーナが悪いのはユグドラシルと同一化した後に興味本位で考え無しにエルフ女神イリス教の教団活動をめっちゃ頑張った事である。
類稀なる知略を駆使して布教活動を行いピアツェンツェア王国地区のエルフ女神イリス教の信者の数を500人から5000人まで増やして、そのまま大幹部になってしまっている。
教団の大幹部になり世の中の理も大分理解した頃に冷静になって考えて「あれ?これってイリスさんにバレたら凄く不味くないですかね?」と思ったが後の祭りである。
ようやくエルフ女神イリス教が非常識迷惑集団だと気が付いたのである。
そして査問会で突如としてエルフ女神イリス教の話しになり「うう・・・マズイです、バレません様に・・・」とシーナの目の前に御降臨されている女神ハルモニア様に必死に祈っていたらユグドラシルがイリスの前でいきなり自分達がエルフ女神イリス教の信徒だとカミングアウトするものだから、さあ大変!
「これはもうダメです!もうここは逃げるしかありません!一時撤退です!・・・
と言うか女神ハルモニア様ってすぐ10cmの間近で祈っても全然御利益ありませんね?!」と、精神世界へ逃走した次第である。
割と常識的な調和の女神ハルモニア様はバカチン共には祝福も加護も与えてはくれないのである。
と言うかそんなアホなお祈りをされても迷惑なだけである。
つーより元自分に祈って何の効果が有ると思ったのかも謎である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『うううう・・・もうあの子の考えてる事が私にも理解出来ません』
間違いなく1000年ほど前に自分が作り出した分身体なのだが、自分とは性格や考え方がドンドン変わって行くシーナに涙が止まらん女神ハルモニア。
シュウシュウシュウシュウ・・・・
流す涙が炎で蒸発してヤカンの煙の様に火の玉から湯気が立ち昇っている・・・
本当に器用な事をする女神様である。
ぶっちゃけるとシーナの性格は現世の生母のファニーの影響をモロに受けているのでシーナの魂には女神ハルモニアの要素はほとんど残っていない。
「道理でアイツら突然勢力を増して来たと思っていたら・・・ぶつぶつぶつぶつ」
めっちゃ仏頂面なイリスである。
長い長い戦いの中であの手この手を駆使してようやく全世界の信徒を8000人前後にまで減らしたのに、この数年でピアツェンツェア王国を中心にして、ある日を境にして突然また30000人にまで信徒が急増して「?!?!?!」だったイリス。
信徒急増の原因によもや自分と同じユグドラシルの瞳の継承者のシーナが絡んでいるとは思ってなかったのだ。
しかしエルフ女神イリス教の設立には、同じユグドラシルの瞳の継承者の魔王バルドルと火の精霊王ホワイトも絡んでいる。
そして諸悪の根源だった初代教祖の魔王エリカは既に没している。
イリスにそこを突っ込まれると都合が悪過ぎるので内心は「こっちにイリスの矛先向いたらどうしよう?」とドキドキしているが表面上は澄ました顔で黙って正座しているバルドルとホワイトの両名である。
魔王バルドルは単にイタズラ心で設立に協力したので余計だろう。
そして当時ラーデンブルグ公国の軍務大臣だった火の精霊王ホワイトは年がら年中暴走しやがる百合っぺ達をとりあえずエルフ女神イリス教にまとめて駆除しよう考えたのだが、かえって百合っぺ達の力を増大させる結果になり手に負えなくなって逃げたのだ。
その後はイリスに丸投げである。
イリスもいい機会なのでこの査問会でバルドルとホワイトに当時の責任追求してやりたいのだが自分が怒り出す前に女神ハルモニアがそれ以上に激怒したので大人しくしている。
「我からもシーナを叱っておくので落ち着いて下されハルモニア様」
『シクシクシク・・・クライルスハイム君、お願いしますぅ』
シュウシュウシュウシュウ・・・
この後の折衷案でシーナにヤキを入れるのはシーナの義父の地龍王クライルスハイムに決まった。
天然のユグドラシルはキョトンとしている。
そしてこの時には「イリスが女神になる!」との割と世界的にも重大な話しはイリスも含めて全員が忘れてしまっていた。
神や世界の守護者達を翻弄する百合っぺとは恐ろしい存在である。
自分には全く関係無いしょうもない話しにクルーゼとアメデとアメリアは途中から話しを聞かないで半分眠っていた。
百合っぺ達のせいで、これが一体何の査問会なのか誰にも分からなくなっているのだ。
そして・・・限界が来る。
「うむ!すまぬがそろそろ我にも公務が有るので帰らねばならぬな」
何しにここに来たのか分からん天龍王アメデが小さく手を挙げ閉会を促す。
マジでそろそろ時間がヤバいのだ。
王が不在で天空城で天朱龍ニームあたりが泣いているだろう。
「そうですわね・・・名残惜しいですけど」
世界の海を統べる海龍王アメリアも暇では無いのだ。
これまた王が不在で恐らくは海湊龍クローディアあたりは忙し過ぎて今頃泣いている事だろう。
「そうだな、俺もそろそろ報告書を作らんとな」
完全に忘れていたがクルーゼも一連の討伐の報告書作成の仕事が残っている。
こうして百合っぺ達と直接関係のない者達から「忙しいから早く帰らせろ」コールが始まったのだ。
「うむそうじゃな、何か有れば後は個別に報告し合うと言う事で」
「そうそう、そうですわね!」
イリスが自分達に対して怒り出す前にとっとと退散したい魔王バルドルと火の精霊王ホワイトにとっても渡りの船なのだ。
「ふむ・・・我もシーナを捕まえにいかんとな」
シーナが逃げた先に心当たりが有る地龍王クライルスハイムも行動を開始する。
どうせ前に一緒に修行した精神世界に居るのだろうと。
『クライルスハイム君、本当にシーナの更生をお願いしますよ!』
シュウシュウシュウシュウシュウ・・・
魔法世界の主神であるヤカン女神ハルモニアとて仕事が多過ぎて全然暇じゃないのだ。
そしてイリスは・・・めっちゃホッとしていた。
何せ自分に対する査問会が最後はグダグダになって全て悪いのがシーナになったからだ。
正しく棚からぼた餅である。
確かに今もエルフ女神イリス教団とそれに加担したシーナに怒ってはいるが対百合っぺ戦線など今更である。
それより査問会を有耶無耶にしてくれて初めて百合っぺ達には感謝しているくらいなのだ。
しかしシーナは後から〆るつもりである。
具体的には24時間耐久社交ダンスの刑に処すつもりだ。
シーナのお股は無惨に砕け散る事だろう。
こうして世界の守護者による査問会は終了したのであった。
☆
さてここでイリスがなぜ自分を慕っているはずの「エルフ女神イリス教」をここまで嫌がっているのか説明せねばならないだろう。
理由は単純明快、「百合っぺ達が時と場所も選ばすにイリスの公式な業務を妨害するレベルで乱痴気大騒ぎするから」である。
エルフ女神イリス教のやらかしでイリスが様々な方面から怒られた事など数知れずなのだ。
「ホント!アイツら何とか出来ませんかイリス様?!」
「私は知りませんが?!アイツらの保護者ではありません!」
自分の預かり知らない所で勝手に教団を結成して勝手に騒いでいる連中の面倒など見てられないのだ。
しかしエルフ女神イリス教の信徒(百合っぺ)が真夜中にイリスの寝所に不法侵入してデバカメした挙げ句に場所の取り合いで騒いで周囲で寝ている人達に迷惑を掛けるわ。
スッゲェ真面目で大切な儀式の最中なのにハイエルフの正装をしたイリスの姿を一目見ようと立ち入り禁止区域を集団でウロチョロして警備員と追いかけっこして儀式の邪魔をするわ。
イリスお気に入りのマグカップやリボンを盗んで違法な盗品オークションを始めるわ。
国の許可も無く非公認トレーニングカードを作って広範囲に売り払って活動資金にするわ。
挙げ句の果てには国を跨いだ転売騒動を起こして外交問題にまで発展させたのだ。
他にもまだまだあるが、とにかくイリスのハイエルフやエルフの女王としての業務を妨害するレベルでやりたい放題なのである。
更に言うと「エルフ女神イリス教」の他に「イリス教団」と言われるラーデンブルグ公国公認の宗教団体がしっかりと存在しているのでヤツらは別に要らんのだ。
このイリス教団は亜人を中心にした普通の男性の信者と普通の女性信者で構成されており、彼らは至っては実にまともで真面目な教団で過去の世界大戦時に自分達の種族の命を救ってくれたハイエルフのイリスを心から信奉して崇めている。
ハイエルフの儀式の準備も積極的に手伝ってくれるしイリスも頼りにしているのだ。
しかし百合っぺ達は違う。
「お前ら本当は私の事を嫌いなんじゃないの?!」と疑うレベルでとにかくイリスの周辺で煩く騒いでイリスに迷惑を掛けているのだ。
サッカーで例えるとフーリガンの様なモノである。
「お前らサッカーを全然見てねぇじゃねえか!つーかサッカーのルールすら分かってねえだろ!」ってヤツである。
なのでイリスも「イリス教団」と百合っぺ達「エルフ女神イリス教」は別に考えている。
亜人主体の正規のイリス教団の事は「教団」と呼び、教団に求められると信者の前で定期的な説法もするし場合によってはハイエルフの祝福も与えている。
それに対して百合っぺ達主体のエルフ女神イリス教団の事は「アイツら」と呼び、見つけ次第片っ端から蹴散らして解散させているのだ。
何事もやり過ぎると好きな者から嫌われるってヤツである。
しかし鬼の形相で自分達を蹴散らして来るイリスが「いやーん可愛いー!」とかキャッキャするのだから始末におけない。
なら無視すれば?と言われると、とんでもない!そんな甘い連中ではない。
アイツらは放置すればするほど図に乗って何すっか分からないのだ。
毎回地道に蹴散らして行くしかないのだ。
そんな連中がシーナのせいで8000人から30000人に増殖してしまったからイリスも大変である。
そりゃシーナもイリスに怒られても仕方ないね。
ちなみに、まともな方のイリス教団は亜人を中心に「亜人の人権と自由を守る」をスローガンに世界で30万人規模の信徒数を誇っている世界有数の教団なのだ。
なのでどちらかと言うと「イリス教団」は宗教と言うよりはイリスを盟主にした「亜人大同盟」に近いかも知れないね。
そして「他教団との余計な諍いを避けるべし!」とのイリスの意向でイリス教団は単独として行動はしておらず本部をハイエルフの神殿の中の一角に置いて古くから存在しているラーデンブルグ公国国教の「ハイエルフ信教」の一派閥として行動をしている。
・・・・・ここまで大人数に祀られて自分が亜神になったと気が付いていなかったイリスもどうなのだろうか?
まあ要するに、ネタカルト集団「エルフ女神イリス教」と、まともな「イリス教団」は全くの別物なのだね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして話しは一連の討伐の後日談へと移る。
「陛下、今回の各所での討伐作戦の結果報告書です」
「うん?どれどれ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この「女神波動砲」ってナニ??????
そしてセリス嬢がデュラハンを踏んで倒したの????」
ピアツェンツェア王国の国王ヤニックがクルーゼからの報告書を読んでの第一声がこれである。
当然だろう。
「だから、セリス嬢が女神波動砲をブッ放してネクロマンサーを倒したんですよ。
それからデュラハンを超重量級で踏み潰したんです」
「だから女神波動砲の全然意味が分からないんですけど?!?!
超重量級って・・・セリス嬢の体重って1トン超えてんの?」
「そんな訳ないでしょう?ジャックが馬になって潰したんです」
「?!?!?!馬ってなに???」
世界の守護者としての秘匿義務が有るクルーゼは起った実際の現象のみしか報告書に書けない場合が多いので国王ヤニックには訳分からん内容になっている。
「どうしても事の真相が知りたいならエルフの女王陛下に御連絡をどうぞ」
もう既に面倒くさくなっているクルーゼは真相の説明を師匠のイリスに丸投げしたのだった。
「・・・いや良い、討伐の任務ご苦労様でした」
どうせ真相はロクでもない内容なんだろうなぁと思いスルーする事にした国王ヤニック。
ここで師匠のイリスに下手に連絡なんて取ろうものなら、これ幸いと何をやらされるか分かったモンじゃないのだ。
「ん?ああ、そうだ。セリス嬢に2億円(相当)の報酬を出して下さい」
「うん?ああ・・・分かった」
セリスとの約束通りに国王ヤニックから2億円(相当)をふんだくるクルーゼ。
ヤニックもこれ以上、下手に関わるのが面倒くさいので素直に小切手にサインする。
やったね!国王から2億円(相当)もガメちゃったよ。
そして・・・
「小切手だと現金に換金するまで3ヶ月も掛かるんですけど?!」
報酬を小切手で渡されて涙目のセリス。
「わがまま言うんじゃありません!
王侯貴族が高額の報酬のやり取りを現金で行う訳がないでしょう?」
今日は侍従モードのクルーゼさんは報酬を即現金で欲しいとわがままを言うセリスを国王直属の文官としてピシッと嗜める。
基本的に王侯貴族の億を超える高額な金銭のやり取りは小切手や国債である。
数百万円(相当)程度なら即日換金も出来るが今回は億単位である。
セリスから銀行へ小切手の現金化申請→銀行から確認を求める書類が国王ヤニックへと→国王ヤニックの採決の末に国王ヤニックから銀行への決済OKのサイン→そしてようやく現金化となる・・・この流れを踏まないと限界化は不可なのだ。
この流れだけで小切手から換金まで大体3ヶ月掛かるのだ。
随分と換金の流れが遅いがこれは報酬を受け取る側が銀行に自分の預金の流れを見せる為に必要な工程なのだ。
大体の場合は、今回の様な高額な小切手などは年単位で銀行に眠らせておいて、それを担保にして銀行から融資を得る流れだ。
「だって融資って高い手数料が掛かるじゃん?!」
「貴族とはそう言うものなので諦めなさい」
ピアツェンツア王国の場合、平均の融資手数料は年率で8%くらいだね。
こんな感じに銀行にも儲けさせないと貴族家は成り立たない仕組みになっている。
まあ、貴族は預金額で銀行から信用を買う訳だね。
しかしセリスはベン精肉店の現金でのツケ払いがあるので今すぐにたくさんの現金が欲しいのだ。
「ううークルーゼさぁん」ウルウルと涙目でクルーゼを見つめるセリス。
「う・・・はあ・・・分かりましたよ、今回だけは私が全額立て替えておきます。
額が額なので今すぐは無理なので後で公爵邸に持って行きます」
2億円(相当)の現金をポンと立て替えれるクルーゼの兄貴カッケェっす。
戦場では大胆不敵なクルーゼ兄貴だが金銭感覚は割とシビアなのだ。
そしてクルーゼより大雑把なイノセントも意外に金銭感覚だけはかなりしっかりしている。
そしてついでに言うとイリスやジャックもちゃんと金の管理をしている。
勇者ってプライベートでは堅実派揃いなんだね。
「ありがとうございます!クルーゼさん大好きです!」
「はいはい。これからはちゃんと銀行に現金を眠らせておいて下さいね。
眠らせる金額次第で融資の手数料も下がりますからね」
「はーい」
なんか手間の掛かる娘が増えてしまった感覚のクルーゼだった。
ちなみにクルーゼはエルフの妻を持つ既婚者で200歳になるハーフエルフの娘が2人おり安全面の観点から奥さんと娘さんは現在ラーデンブルク公国首都郊外に在住です。
クルーゼは国を跨いで単身赴任をしているのだね。
遠い国を跨いで離れた家族だが転移魔法の使い手のクルーゼには特に支障は無い。
毎週日曜日とまで行かなくても1ヶ月に数回はちゃんと帰宅しているのだ。
前のラーデンブルク公国で行われた査問会に特に文句も言わずに来たのは査問会のついでに家族に会う為でもあったのだ。
クルーゼはプライベートでは家族思いの良いお父さんなのだ。
こうして大金をゲットしてホクホクのセリスだったが、ここから思いも寄らない受難が始まる。
「セリス嬢だ・・・』
「あれが「ネクロマンサーWキル&デュラハンスレイヤー」のセリス・・・」
「まあ!あんなに美しい方なのに・・・セリス様ってとても怖い方なのね?」
「違いますから!私の仕業じゃありません!そして称号が妙に長いです!
無理に異名で呼ばなくてよろしくてよ?!」
ネクロマンサーやデュラハンを倒した時に貴族の目撃者が多く冒険者ギルドや裏社会からだけでなく社交界でも武勇を恐れられる様になってしまったセリス。
これでますます結婚からは遠ざかる事だろう。
この話しの最終的な結末は女神になったイリスは女神アテネにハメられて魔法世界から地球に配属替えになってイリスがブチキレる事で終わりになるのだがそれは遠い遠い未来の話で現在の物語の進行に全く影響ないのであまり深く考えないで下さい。
そして査問会の議題は何か知らんがカルト集団「エルフ女神イリス教」へと流れるのだった。
先に言ってしまうと「エルフ女神イリス教」なるこの集団は真なるアホの子の集まりである。
イリスを百合の女神様だと勝手に崇めて勝手に大騒ぎするバカちん達なのだ。
確かに女友達と簡単に同衾するなど百合疑惑を増長させるイリスも悪いのだがイリス的にはパジャマパーティーのノリでやっているだけなのだ。
ぶっちゃけると単に親愛の情が強いだけで別に百合っ気などは無くイリスの恋愛感情や性癖などは至って普通である。
強いて上げるとすれば同じ種族のハイエルフとの交際や結婚に妙にこだわっている保守派思想なのでお相手が物理的に見つからず年齢=彼氏居ない歴になってしまっているのも男嫌い=女好きだと思われる原因になっている。
物理的に見つからないって何?と言われると現在のハイエルフの成人男性は全員が既婚者でイリスより後に産まれた6人のハイエルフの子供は全員が女性である。
要するにハイエルフの男性で独身者が居ないのでイリスのお相手はこれから産まれてくる男の子次第と言う訳だね。
ハイエルフの出生は200年に1人と言われているので、ここ1000年はやや新生児が多いくらいだろう。
イリス的にはつい100年ほど前に産まれたルナの子供にめっちゃ期待していたのだが産まれたのは見事に女の子だった。
つまりイリスの次のチャンスは100年後でしかも産まれる子が男の子とは限らずしかも男の子が産まれてもその子がイリスと結婚する訳とも限らない。
巡り合わせが悪ければ後1000年イリスは結婚出来ない可能性すらある。
長命種の結婚は人類の想像を絶するのんびりとしたものなのだ。
お先真っ暗ボッチな独身イリスを見かねた、お前も似たような理由で独身だがな魔王エリカから「結婚の事は一旦置いておいてさ?とりあえず別の種族で彼氏だけでも作って見れば?」と提案されたのだが・・・
「何てふしだらな事を?!それで万が一でも子供が出来たら大変です。
男性とお付き合いするのは結婚を前提として行うモノです!」
とまぁ、こんな感じに恋愛に関して考え方が凄く古風なのです。
お遊びで彼氏を作る事すらNGな淑女イリスなので、それ以上に卑猥とも言える百合の長に奉られる事をマジで嫌がって、この珍妙な集団を一刻も早く解散させようと日夜頑張っているのです。
しかし敵もさる事ながら祭神イリスからのあの手この手の妨害工作にもめげずに地下に潜って活動を続けておりなかなか撲滅に至っておりません。
『そ・・・そんな変な教団が有るんですね・・・
やはり人とは神の予想を超えて来ますね・・・勉強になります』
百合っぺ達の行動力と執着心と真なるアホンダラ具合には、ただただ驚ろかされる女神ハルモニア。
「いえ!アイツらからは何も勉強しなくても良いです。
何なら今すぐ天罰女神ビームを撃ち込んでやっても良いです」
『そんな事で天罰なんて与えませんよ!』
ハルモニアの本心は「アホの子だなぁ~」としか思っていない。
しかし今から5分後にエルフ女神イリス教のせいでシャレにならん事態が判明するのだが・・・
「でも・・・あの子達なら女神ビームにもどうにか耐えそうなんですよね」
「・・・・・・・・・・かも知れぬな」
ウンウンと頷く魔王バルドルと精霊王ホワイト。
過去に精霊王ホワイトの連日に渡るお仕置きにも耐え抜いた鉄壁防御な百合っぺ達なのだ。
『百合っぺとは何者なんですか?!』
「アホです」素で辛辣なイリス。
『・・・そうですか』
《少し思い込みは激しいですが良い子達ですよ?》
「・・・なぜユグドラシルママが百合っぺ達の事を知っているのですか?」
ユグドラシルと百合っぺ達の繋がりが有ると想像出来ないイリスは怪訝な表情になる。
「?!?!?!ユグドラシル待って下さぁい?!」そして何故か悲鳴を上げるシーナ。
《いえ?シーナがですね?「エルフ女神イリス教のピアツェンツア支部の名誉顧問」なので、あの子達とは私達も良く会っているんです》ガラガラガラガラピシャーーン!
「あら?あらあら?シーナ?何で精神世界へ引き籠るのですか?
あらあら?シャッターまで閉めて?どうしたんですかシーナ???おーい?」
瞬時に表層人格をユグドラシルに移し精神シャッターを閉めて閉店してしまったシーナ。
「?!?!はっ!!!シーナ!!私に隠れて何してくれてんですかぁ!!!」
密かに隠れてエルフ女神イリス教の布教活動していたシーナに激オコのイリスだが既に精神世界の遠くに逃亡してしまったシーナ名誉顧問。
シーナって基本的には常識人だがたまに変な事をやるんだよな。
「シーナのこう言う所は女神アテネ様と全く同じ行動じゃな・・・」
シーナ逃走にめっちゃ呆れてる天龍王アメデ。
「あれ?でもシーナってハルモニアちゃんの分身体なのよね?
どちらかと言うとオリュンポス神族の性質かも知れませんわ」
別に悪気は無いが痛いツッコミを入れる海龍王アメリア。
「アメリアよ・・・思っても口に出してはならん事もあるのじゃ」
スッと女神ハルモニアから視線を逸らす地龍王クライルスハイム。
「オリュンポスの神様って皆んなこんな感じなのか?」
神々らしさを微塵も感じられないクルーゼ。
「これは・・・言い訳が出来んのう」
一応、女神ハルモニアの従者の魔王バルドルは凄く気まずそうにハルモニアを見ると・・・
ボボボボボボと揺れている火の玉、どうやら怒りに震えているらしい。
マズイ!我らの主神様がお怒りになられた?!
『なんて事・・・そんな得体の知れない教団なんかに入信して・・・・・・』
ん?なんと?
『逃げていないでママの前に出てきなさーーーーい!!シーナーーーー!!!!
ママに隠れて何をやっているんですかぁーーー!!!
ちゃんとお話しを聞かせなさーーい!!』
シーナ母のハルモニアさんは査問会から逃走してオリュンポス神族の神威を下げた事より、母に隠れて娘が珍妙なカルト教団に所属して事に対して怒ったのだ!
この時、普段優しい母が鬼の形相で子を叱る気持ちが良ーーーく分かったと後に語るハルモニアさん。
天界から子を激しく叱る母を見てて何故もっと優しく子を諭してあげないのだろうと不思議に思っていたのだが・・・
なるほど・・・我が子の道を正すのは己しか居ないと思ったら己も命を賭けて子を叱るしかないのだ。
今のハルモニアは女神でも何でも無い!「母」なのだ!
しかし変な事をして逃げたシーナも悪いが一応は擁護をしておくと最初に「エルフ女神イリス教」に入信したのは10歳の頃のユグドラシルである。
つまり当時は精神体として体の外で浮遊霊をしていたシーナには何も出来ない頃である。
6年前のスカンディッチ伯爵領にて。
「ね?ね?ね?そこを行く可愛い黒髪のお嬢様!ちょっといいかな?」
「はい?」
10歳の時のある日の事、毎日の日課である天龍教教会に訪問する為に大通りを歩いていると黒のローブに身を包んだ如何にも怪しげな女2人組と遭遇したユグドラシル。
こやつらは言わずと知れた「百合っぺ達」である。
何で百合っぺ達が怪しげな黒のローブを纏っているのか簡単に言うとイリス門派の装備品のイメージカラーが黒だからだ。
なして黒かと言うと戦場での迷彩目的や寒冷地での保温性の観点から採用しているだけである。
なので戦場によってはグレーや青(空戦時)に臨機応変に変わります、ただの迷彩目的なので。
「絶対にイリス隊の軍装色はイリス様のイメージカラーのピンクー!」
とか騒ぐ馬鹿タレ共に、
ピンクぅ?!そんな目立つ色で戦場で的になりたいの?!バカ!・・・
と言うか私のイメージカラーはピンクじゃ無くてシルバーです!」
と銀髪イリスが問答無用で黒の軍装色を採用したのだ。
「あはははは、黒ってラザフォードさんのイメージカラーじゃん?」
「とにかく!軍装は実用性重視です!」
「ぶー、ぶー」
ちなみにイリスの銀髪はハイエルフではとても珍しいです。
イリスが何で銀髪なのかはなんか理由があった気がしますが・・・一年以上も前に書いた話しなの作者は忘れました。
うん!全然思い出せませんね!
気になる人は「龍騎士イリス」で探して見て下さい、簡単に探せとは言えあの魔窟は80万字くらい有りますけど・・・
いずれ訪れる「龍騎士イリス」の改稿に戦々恐々としております。
改稿完了まで一年近く掛かる予感がしています。
話しを戻しまして警戒心が薄く人懐っこいユグドラシルは怪しげな二人組に近づき、「私に何かご用ですか?」とニッコリ笑いながら尋ねると・・・
「可愛い!!あのね?貴女は神を信じますか?」と二人組の百合っぺは昭和時代に流行った文言で質問してくる。
「ええ、それは勿論信じてますよ」
信じるも何も女神フレイヤとは仲が良い友達なユグドラシル。
「そうなのね!それでね?私達はエルフのイリス様を崇めているんです!
どうですか?貴女もイリス様を信仰して見ませんか?」
ここで遂に本性を現した百合っぺ達。
「貴女も百合になりませんか?」とのお誘いである。
「まあ?!イリスちゃんを崇めているのですね!分かりました、ご一緒させて頂きます」
そしてあろう事かアッサリとカルト教団に入信してしまったユグドラシル。
もしここで保護者のエレンお姉様が居れば百合っぺ達は問答無用で蹴散らされていたのだがこの時に限ってユグドラシルは一人だったのだ。
「やったー!」
こうして天然のユグドラシルはスカンデイッチ伯爵領に布教に来たエルフ女神イリス教の信者の勧誘にまんまと引っかかってしまったのだ。
ユグドラシル的には「可愛いイリスの為に協力しましょう」と思って入信しただけであるが、それがまさかイリス本人が蛇蝎の如く嫌がっているカルト教団とは今でも思っていない。
何なら百合っぺ達はイリスちゃんの大切なお友達と思っている。
ここからシーナが悪いのはユグドラシルと同一化した後に興味本位で考え無しにエルフ女神イリス教の教団活動をめっちゃ頑張った事である。
類稀なる知略を駆使して布教活動を行いピアツェンツェア王国地区のエルフ女神イリス教の信者の数を500人から5000人まで増やして、そのまま大幹部になってしまっている。
教団の大幹部になり世の中の理も大分理解した頃に冷静になって考えて「あれ?これってイリスさんにバレたら凄く不味くないですかね?」と思ったが後の祭りである。
ようやくエルフ女神イリス教が非常識迷惑集団だと気が付いたのである。
そして査問会で突如としてエルフ女神イリス教の話しになり「うう・・・マズイです、バレません様に・・・」とシーナの目の前に御降臨されている女神ハルモニア様に必死に祈っていたらユグドラシルがイリスの前でいきなり自分達がエルフ女神イリス教の信徒だとカミングアウトするものだから、さあ大変!
「これはもうダメです!もうここは逃げるしかありません!一時撤退です!・・・
と言うか女神ハルモニア様ってすぐ10cmの間近で祈っても全然御利益ありませんね?!」と、精神世界へ逃走した次第である。
割と常識的な調和の女神ハルモニア様はバカチン共には祝福も加護も与えてはくれないのである。
と言うかそんなアホなお祈りをされても迷惑なだけである。
つーより元自分に祈って何の効果が有ると思ったのかも謎である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『うううう・・・もうあの子の考えてる事が私にも理解出来ません』
間違いなく1000年ほど前に自分が作り出した分身体なのだが、自分とは性格や考え方がドンドン変わって行くシーナに涙が止まらん女神ハルモニア。
シュウシュウシュウシュウ・・・・
流す涙が炎で蒸発してヤカンの煙の様に火の玉から湯気が立ち昇っている・・・
本当に器用な事をする女神様である。
ぶっちゃけるとシーナの性格は現世の生母のファニーの影響をモロに受けているのでシーナの魂には女神ハルモニアの要素はほとんど残っていない。
「道理でアイツら突然勢力を増して来たと思っていたら・・・ぶつぶつぶつぶつ」
めっちゃ仏頂面なイリスである。
長い長い戦いの中であの手この手を駆使してようやく全世界の信徒を8000人前後にまで減らしたのに、この数年でピアツェンツェア王国を中心にして、ある日を境にして突然また30000人にまで信徒が急増して「?!?!?!」だったイリス。
信徒急増の原因によもや自分と同じユグドラシルの瞳の継承者のシーナが絡んでいるとは思ってなかったのだ。
しかしエルフ女神イリス教の設立には、同じユグドラシルの瞳の継承者の魔王バルドルと火の精霊王ホワイトも絡んでいる。
そして諸悪の根源だった初代教祖の魔王エリカは既に没している。
イリスにそこを突っ込まれると都合が悪過ぎるので内心は「こっちにイリスの矛先向いたらどうしよう?」とドキドキしているが表面上は澄ました顔で黙って正座しているバルドルとホワイトの両名である。
魔王バルドルは単にイタズラ心で設立に協力したので余計だろう。
そして当時ラーデンブルグ公国の軍務大臣だった火の精霊王ホワイトは年がら年中暴走しやがる百合っぺ達をとりあえずエルフ女神イリス教にまとめて駆除しよう考えたのだが、かえって百合っぺ達の力を増大させる結果になり手に負えなくなって逃げたのだ。
その後はイリスに丸投げである。
イリスもいい機会なのでこの査問会でバルドルとホワイトに当時の責任追求してやりたいのだが自分が怒り出す前に女神ハルモニアがそれ以上に激怒したので大人しくしている。
「我からもシーナを叱っておくので落ち着いて下されハルモニア様」
『シクシクシク・・・クライルスハイム君、お願いしますぅ』
シュウシュウシュウシュウ・・・
この後の折衷案でシーナにヤキを入れるのはシーナの義父の地龍王クライルスハイムに決まった。
天然のユグドラシルはキョトンとしている。
そしてこの時には「イリスが女神になる!」との割と世界的にも重大な話しはイリスも含めて全員が忘れてしまっていた。
神や世界の守護者達を翻弄する百合っぺとは恐ろしい存在である。
自分には全く関係無いしょうもない話しにクルーゼとアメデとアメリアは途中から話しを聞かないで半分眠っていた。
百合っぺ達のせいで、これが一体何の査問会なのか誰にも分からなくなっているのだ。
そして・・・限界が来る。
「うむ!すまぬがそろそろ我にも公務が有るので帰らねばならぬな」
何しにここに来たのか分からん天龍王アメデが小さく手を挙げ閉会を促す。
マジでそろそろ時間がヤバいのだ。
王が不在で天空城で天朱龍ニームあたりが泣いているだろう。
「そうですわね・・・名残惜しいですけど」
世界の海を統べる海龍王アメリアも暇では無いのだ。
これまた王が不在で恐らくは海湊龍クローディアあたりは忙し過ぎて今頃泣いている事だろう。
「そうだな、俺もそろそろ報告書を作らんとな」
完全に忘れていたがクルーゼも一連の討伐の報告書作成の仕事が残っている。
こうして百合っぺ達と直接関係のない者達から「忙しいから早く帰らせろ」コールが始まったのだ。
「うむそうじゃな、何か有れば後は個別に報告し合うと言う事で」
「そうそう、そうですわね!」
イリスが自分達に対して怒り出す前にとっとと退散したい魔王バルドルと火の精霊王ホワイトにとっても渡りの船なのだ。
「ふむ・・・我もシーナを捕まえにいかんとな」
シーナが逃げた先に心当たりが有る地龍王クライルスハイムも行動を開始する。
どうせ前に一緒に修行した精神世界に居るのだろうと。
『クライルスハイム君、本当にシーナの更生をお願いしますよ!』
シュウシュウシュウシュウシュウ・・・
魔法世界の主神であるヤカン女神ハルモニアとて仕事が多過ぎて全然暇じゃないのだ。
そしてイリスは・・・めっちゃホッとしていた。
何せ自分に対する査問会が最後はグダグダになって全て悪いのがシーナになったからだ。
正しく棚からぼた餅である。
確かに今もエルフ女神イリス教団とそれに加担したシーナに怒ってはいるが対百合っぺ戦線など今更である。
それより査問会を有耶無耶にしてくれて初めて百合っぺ達には感謝しているくらいなのだ。
しかしシーナは後から〆るつもりである。
具体的には24時間耐久社交ダンスの刑に処すつもりだ。
シーナのお股は無惨に砕け散る事だろう。
こうして世界の守護者による査問会は終了したのであった。
☆
さてここでイリスがなぜ自分を慕っているはずの「エルフ女神イリス教」をここまで嫌がっているのか説明せねばならないだろう。
理由は単純明快、「百合っぺ達が時と場所も選ばすにイリスの公式な業務を妨害するレベルで乱痴気大騒ぎするから」である。
エルフ女神イリス教のやらかしでイリスが様々な方面から怒られた事など数知れずなのだ。
「ホント!アイツら何とか出来ませんかイリス様?!」
「私は知りませんが?!アイツらの保護者ではありません!」
自分の預かり知らない所で勝手に教団を結成して勝手に騒いでいる連中の面倒など見てられないのだ。
しかしエルフ女神イリス教の信徒(百合っぺ)が真夜中にイリスの寝所に不法侵入してデバカメした挙げ句に場所の取り合いで騒いで周囲で寝ている人達に迷惑を掛けるわ。
スッゲェ真面目で大切な儀式の最中なのにハイエルフの正装をしたイリスの姿を一目見ようと立ち入り禁止区域を集団でウロチョロして警備員と追いかけっこして儀式の邪魔をするわ。
イリスお気に入りのマグカップやリボンを盗んで違法な盗品オークションを始めるわ。
国の許可も無く非公認トレーニングカードを作って広範囲に売り払って活動資金にするわ。
挙げ句の果てには国を跨いだ転売騒動を起こして外交問題にまで発展させたのだ。
他にもまだまだあるが、とにかくイリスのハイエルフやエルフの女王としての業務を妨害するレベルでやりたい放題なのである。
更に言うと「エルフ女神イリス教」の他に「イリス教団」と言われるラーデンブルグ公国公認の宗教団体がしっかりと存在しているのでヤツらは別に要らんのだ。
このイリス教団は亜人を中心にした普通の男性の信者と普通の女性信者で構成されており、彼らは至っては実にまともで真面目な教団で過去の世界大戦時に自分達の種族の命を救ってくれたハイエルフのイリスを心から信奉して崇めている。
ハイエルフの儀式の準備も積極的に手伝ってくれるしイリスも頼りにしているのだ。
しかし百合っぺ達は違う。
「お前ら本当は私の事を嫌いなんじゃないの?!」と疑うレベルでとにかくイリスの周辺で煩く騒いでイリスに迷惑を掛けているのだ。
サッカーで例えるとフーリガンの様なモノである。
「お前らサッカーを全然見てねぇじゃねえか!つーかサッカーのルールすら分かってねえだろ!」ってヤツである。
なのでイリスも「イリス教団」と百合っぺ達「エルフ女神イリス教」は別に考えている。
亜人主体の正規のイリス教団の事は「教団」と呼び、教団に求められると信者の前で定期的な説法もするし場合によってはハイエルフの祝福も与えている。
それに対して百合っぺ達主体のエルフ女神イリス教団の事は「アイツら」と呼び、見つけ次第片っ端から蹴散らして解散させているのだ。
何事もやり過ぎると好きな者から嫌われるってヤツである。
しかし鬼の形相で自分達を蹴散らして来るイリスが「いやーん可愛いー!」とかキャッキャするのだから始末におけない。
なら無視すれば?と言われると、とんでもない!そんな甘い連中ではない。
アイツらは放置すればするほど図に乗って何すっか分からないのだ。
毎回地道に蹴散らして行くしかないのだ。
そんな連中がシーナのせいで8000人から30000人に増殖してしまったからイリスも大変である。
そりゃシーナもイリスに怒られても仕方ないね。
ちなみに、まともな方のイリス教団は亜人を中心に「亜人の人権と自由を守る」をスローガンに世界で30万人規模の信徒数を誇っている世界有数の教団なのだ。
なのでどちらかと言うと「イリス教団」は宗教と言うよりはイリスを盟主にした「亜人大同盟」に近いかも知れないね。
そして「他教団との余計な諍いを避けるべし!」とのイリスの意向でイリス教団は単独として行動はしておらず本部をハイエルフの神殿の中の一角に置いて古くから存在しているラーデンブルグ公国国教の「ハイエルフ信教」の一派閥として行動をしている。
・・・・・ここまで大人数に祀られて自分が亜神になったと気が付いていなかったイリスもどうなのだろうか?
まあ要するに、ネタカルト集団「エルフ女神イリス教」と、まともな「イリス教団」は全くの別物なのだね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして話しは一連の討伐の後日談へと移る。
「陛下、今回の各所での討伐作戦の結果報告書です」
「うん?どれどれ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この「女神波動砲」ってナニ??????
そしてセリス嬢がデュラハンを踏んで倒したの????」
ピアツェンツェア王国の国王ヤニックがクルーゼからの報告書を読んでの第一声がこれである。
当然だろう。
「だから、セリス嬢が女神波動砲をブッ放してネクロマンサーを倒したんですよ。
それからデュラハンを超重量級で踏み潰したんです」
「だから女神波動砲の全然意味が分からないんですけど?!?!
超重量級って・・・セリス嬢の体重って1トン超えてんの?」
「そんな訳ないでしょう?ジャックが馬になって潰したんです」
「?!?!?!馬ってなに???」
世界の守護者としての秘匿義務が有るクルーゼは起った実際の現象のみしか報告書に書けない場合が多いので国王ヤニックには訳分からん内容になっている。
「どうしても事の真相が知りたいならエルフの女王陛下に御連絡をどうぞ」
もう既に面倒くさくなっているクルーゼは真相の説明を師匠のイリスに丸投げしたのだった。
「・・・いや良い、討伐の任務ご苦労様でした」
どうせ真相はロクでもない内容なんだろうなぁと思いスルーする事にした国王ヤニック。
ここで師匠のイリスに下手に連絡なんて取ろうものなら、これ幸いと何をやらされるか分かったモンじゃないのだ。
「ん?ああ、そうだ。セリス嬢に2億円(相当)の報酬を出して下さい」
「うん?ああ・・・分かった」
セリスとの約束通りに国王ヤニックから2億円(相当)をふんだくるクルーゼ。
ヤニックもこれ以上、下手に関わるのが面倒くさいので素直に小切手にサインする。
やったね!国王から2億円(相当)もガメちゃったよ。
そして・・・
「小切手だと現金に換金するまで3ヶ月も掛かるんですけど?!」
報酬を小切手で渡されて涙目のセリス。
「わがまま言うんじゃありません!
王侯貴族が高額の報酬のやり取りを現金で行う訳がないでしょう?」
今日は侍従モードのクルーゼさんは報酬を即現金で欲しいとわがままを言うセリスを国王直属の文官としてピシッと嗜める。
基本的に王侯貴族の億を超える高額な金銭のやり取りは小切手や国債である。
数百万円(相当)程度なら即日換金も出来るが今回は億単位である。
セリスから銀行へ小切手の現金化申請→銀行から確認を求める書類が国王ヤニックへと→国王ヤニックの採決の末に国王ヤニックから銀行への決済OKのサイン→そしてようやく現金化となる・・・この流れを踏まないと限界化は不可なのだ。
この流れだけで小切手から換金まで大体3ヶ月掛かるのだ。
随分と換金の流れが遅いがこれは報酬を受け取る側が銀行に自分の預金の流れを見せる為に必要な工程なのだ。
大体の場合は、今回の様な高額な小切手などは年単位で銀行に眠らせておいて、それを担保にして銀行から融資を得る流れだ。
「だって融資って高い手数料が掛かるじゃん?!」
「貴族とはそう言うものなので諦めなさい」
ピアツェンツア王国の場合、平均の融資手数料は年率で8%くらいだね。
こんな感じに銀行にも儲けさせないと貴族家は成り立たない仕組みになっている。
まあ、貴族は預金額で銀行から信用を買う訳だね。
しかしセリスはベン精肉店の現金でのツケ払いがあるので今すぐにたくさんの現金が欲しいのだ。
「ううークルーゼさぁん」ウルウルと涙目でクルーゼを見つめるセリス。
「う・・・はあ・・・分かりましたよ、今回だけは私が全額立て替えておきます。
額が額なので今すぐは無理なので後で公爵邸に持って行きます」
2億円(相当)の現金をポンと立て替えれるクルーゼの兄貴カッケェっす。
戦場では大胆不敵なクルーゼ兄貴だが金銭感覚は割とシビアなのだ。
そしてクルーゼより大雑把なイノセントも意外に金銭感覚だけはかなりしっかりしている。
そしてついでに言うとイリスやジャックもちゃんと金の管理をしている。
勇者ってプライベートでは堅実派揃いなんだね。
「ありがとうございます!クルーゼさん大好きです!」
「はいはい。これからはちゃんと銀行に現金を眠らせておいて下さいね。
眠らせる金額次第で融資の手数料も下がりますからね」
「はーい」
なんか手間の掛かる娘が増えてしまった感覚のクルーゼだった。
ちなみにクルーゼはエルフの妻を持つ既婚者で200歳になるハーフエルフの娘が2人おり安全面の観点から奥さんと娘さんは現在ラーデンブルク公国首都郊外に在住です。
クルーゼは国を跨いで単身赴任をしているのだね。
遠い国を跨いで離れた家族だが転移魔法の使い手のクルーゼには特に支障は無い。
毎週日曜日とまで行かなくても1ヶ月に数回はちゃんと帰宅しているのだ。
前のラーデンブルク公国で行われた査問会に特に文句も言わずに来たのは査問会のついでに家族に会う為でもあったのだ。
クルーゼはプライベートでは家族思いの良いお父さんなのだ。
こうして大金をゲットしてホクホクのセリスだったが、ここから思いも寄らない受難が始まる。
「セリス嬢だ・・・』
「あれが「ネクロマンサーWキル&デュラハンスレイヤー」のセリス・・・」
「まあ!あんなに美しい方なのに・・・セリス様ってとても怖い方なのね?」
「違いますから!私の仕業じゃありません!そして称号が妙に長いです!
無理に異名で呼ばなくてよろしくてよ?!」
ネクロマンサーやデュラハンを倒した時に貴族の目撃者が多く冒険者ギルドや裏社会からだけでなく社交界でも武勇を恐れられる様になってしまったセリス。
これでますます結婚からは遠ざかる事だろう。
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