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改稿版
ワイトキング戦勃発???
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入学を済ませて今日は半ドンだと分かったセリスは学園からの帰り道に冒険者ギルドへ行く事にした。
「今からならクソ親父の所で1日分稼げる!!」
目的はクソ親父イノセントの部屋掃除アルバイトの為だ。
「セリス?!えぇ?!く・・・クソ??」
母バーバラは娘の仕事モードを始めて見てビックリしている。
と言うかセリスの口の悪さに驚いたとも言える。
「お母様!行って来まーーす!!」制服のまま走り出すセリス。
「セリスーーー?!?!」人間とは思えない娘の走りっぷりに唖然とする母。
突然猛烈ダッシュする公爵令嬢に周囲の同級生も保護者も唖然としている・・・
「自走セリス登場だ・・・」
「アレが自走セリス・・・」
「早えぇ・・・」
「「自走セリス」とは何でございましょうか?!」
近くの男子生徒達の呟きに反応する母バーバラ。
1人の男子生徒の両肩を掴んで「詳しく教えて下さいまし!」と涙目で懇願する。
「え?!・・・え~と~??」目を泳がす男子生徒。
「自走セリスを妨げる者には死を」を掲げる過激派ファンが街に居るので話して良いか悩んでいる。
「お願い致します!」
「はい・・・」
さすがに泣く美女を邪険には出来ずに観念する男子生徒。
セリスが「自走セリス」と言う異名で街の人々に愛されている事を話す。
男子生徒は、かなーりオブラートに包んで説明したがバーバラ夫人を卒倒させるには充分な内容だった・・・
この時のセリスは入学に浮かれていて完全に失念をしていたのだ。
両親の前では猫を被って、それはそれは令嬢らしくお淑やかに振る舞っていた事を。
つーか今までバレてなかったのが奇跡じゃね?
家に帰って今まで見た事もない怖い顔で自分を見る母を見てその事を思い出し顔面蒼白になるセリスなのだが・・・もう遅い。
この後丸々と3ヶ月間、授業終了後に強制帰宅させて母が自ら娘に淑女教育をみっちりとやり直す事になる・・・ザマァ、良いぞもっとやれ。
あっという間にギルドに着いて正面玄関のドアを開けて中を覗くとギルドの職員がセリスを見て「お疲れ様です」と言うのやめて欲しいのだ。
「私はここの職員じゃ無いんですけど?!」
そうツッコミいれても「そうだったんですか?」と返されるだけなので諦めた。
「セリス様、お疲れ様でーす」
書類を見たままセリスに挨拶する男性職員達・・・とうとう顔すら見てくれなくなった?!
対するセリスもセリスで「はーい、お疲れ様です」と言って勝手に従業員入り口のドアを開けてイノセントの所へ向かう。
「ふう・・・」セリスはドアの前で一度深呼吸をして・・・ガチャッ!一気にドアを開けて「どうだ?!」と気勢を上げる!
イノセントの部屋の片付けアルバイトは3日と空けずに欠かさずやっている!・・・はず!
つい3日前にも片付けた!・・・はず!それなのに!
「何で過去最大クラスに酷くなってんだ!クソ親父!」
順調に身長が145cmにまで成長したセリスが完全に書類に埋まっている。
「いや~最近は問題児が活発に行動を始めてな~、毎日このザマなんだよ」
姿は見えないがイノセントの声は聞こえる。
「マスター!追加の苦情でーす!」
後ろから来た職員が良い感じの場所にオーバースローで書類をぶん投げる。
イノセントの手だけ見えてそれをキャッチしてそのままゴミ箱にぶん投げる。
「いやゴミ箱に捨てんな!市民からの苦情を無視すんな!」
これが通常運転なのでセリスも気にもしなくなっている。
「きりがなくてよ~」
「それよりも問題児?私の他にも問題児なんていんの??」
「問題児を自覚してんのかよ・・・」
そうは言うがセリスはそこまで問題は起こしていない、単に金にがめつくて口が悪いだけだ。
「まぁセリスには関係ない話しだけどな」
しかしセリスは直ぐにこの問題児とガッツリと関わる事になる。
気合いと根性で2時間で部屋を片付けて金貨を強奪して次の仕事の話しを聞く。
「ワイトキング?」セリスの記憶だと死者達の王様と言われている魔物だ。
「そうだ」
「そんなモン実際に本当にいるの?御伽話しじゃないの?」
「それを確定させる為にセリスの霊視で調べて欲しい」
「嫌よ、本当にワイトキングなんて居たら私が死んじゃうでしょ?」
「ジャックを付けるからよ頼むよ」
「・・・報酬次第かな?」ジャックと一緒なら・・・まあ。
「1人につき2000万円(相当)」
「・・・・・もう一声!」
「1人3000万円(相当)」
「よし!分かった」
本当はピアツェンツア王国の通貨単位で話しているのだが分かり易く円単位に変換してます。
最近のセリスは霊視の能力が王家にも高く評価されて引く手数多だ。
これ程度の報酬を吊り上げる交渉は出来る様になって来たのだ。
でもまだ生活は苦しいけどね!
「それで場所はどこなの?もう学生なんだから遠い場所は無理よ?」
「ああ、それは大丈夫、王都の地下だから」
「・・・・・・・・・・・・・・おいこら??」
「なんだ?」
「そんな物騒なモンが自分ん家の下に居てどこが大丈夫なんだ?!」
「まぁ聞けって」
古い本を1冊取り出して詳細を話し始めるイノセント。
それは1冊の古文書だった。
腐った公爵令嬢のセリスだが知識は充分で古代語も余裕で読めるのだ。
「口さえ開かなければ素晴らしい公爵令嬢なのに」と、ミミリーに不敬極まりない事を毎回言われている。
『王都の地下に迷宮を作った。
そほ王都の迷宮に「死者」の王を封印する。
しかし400年後に封印は力を失い、王都は死者で溢れる事になるだろう。
我の子孫達が死者の王に再度の封印を施せる様にこの本を残す。
ライモンド・フォン・ヴィアール』
と最初のページに書いてあった。
「だからどこがどう大丈夫なんだ?ドンドン悪化してるじゃないの!」
「そうなんだが・・・ただなぁ英雄ライモンドにはもう一つの言い伝えがあってなぁ」
イノセントはもう1冊の書籍を取り出した。本の表紙には「俺様の小説の設定集」とか書いてある。
「え??何これ?」
「英雄ライモンドの趣味は小説を書く事だったんだよ。かなりの数のフィクション本も出版したらしくてな」
「ああー・・・これも小説の可能性が有るのかぁ」
「そう言う事だな、当のライモンドの末裔の王家は「小説」と見ているな。
王都の地下の迷宮は俺達も散々探索しているが、その本に書いてある封印の場所とやらには確かに部屋があったのだが・・・そこは英雄ライモンドの隠れ書斎だったらしい」
「もう探索済みなの?!私、必要ねぇじゃん?!」
「当たり前だろ?こんな物騒な話しを放置する様な鈍臭い王家じゃ無いからな」
「えーと?つまり?大体の調査が終わったから最後に私の霊視でそれの確証を得たいと?」
「正確には嬢ちゃんを含めた多数の鑑定スキル持ちで多角的に検証したいらしいな。
報酬の3000万円には「口止め料」も当然含まれている」
「そう言う話しならやります!でもジャックさんは護衛に付けて下さい!」
危険度が爆下がりしてテンションマックスのセリス。
「本当にちゃっかりしてんなぁ」
そもそも王都地下の迷宮の話しが聞いちゃいけない話しだった事に気づいたセリス。
「クソ親父にドンドンと危ない世界に引き込まれている?!」
その事に夜寝てて気がついてガバッと飛び起きたのだった。
良く考えたら王都に秘密の地下迷宮なんぞある事自体が国家の重要機密だと気が付いたセリスのテンションは駄々下がりだ。
次の日の朝、セリスは王宮の中にある近衛騎士団の詰所に居た。
王家からの依頼なので今日の学校の授業は免除されたのだ。
かなり大規模な検証を行うのか100名以上の魔導兵団の魔道士が集まっている。
「どうした?やけに大人しいな」
久しぶりにセリスの護衛になったジャックの兄貴がセリスを心配そうな目で見ている。
「クソ親父に嵌められました。
親父に良い様に煽てられてしまってここに居ます」
「そりゃしょうがないイノセントだからな!がははは!
そんじゃあ中央公園から地下迷宮に行くか?」
「え?ここから入るんじゃないの?」
「王宮からだと単純に遠回りになるな。中央公園から入った方が早い」
「そうなんだ」
何だかんだ長い付き合いになって来たSランク冒険者のジャックと共に王都にある中央公園の天龍王アメデの像前にやって来たセリス。
万が一を考えて中央公園は年に一回の一斉清掃日と言う名目で封鎖されていて静まり返っている。
何でもこのアメデの像の足元の土台が迷宮入り口なんだそうな。
少し待っていると王宮の憲兵隊の武官らしき人がやって来て、
「お待たせしました!セリス様とジャック殿ですね。本日はよろしくお願いします」
と頭を下げて挨拶して来た。
「はい、私はセリスと申します、よろしくお願い致します」セリスも頭を下げる。
「ジャックです、よろしくお願いします」「!!!!!!」
普通に頭を下げて挨拶したジャックにかなりの衝撃を受けたセリス・・・失礼な奴だ。
「ジャックさんって普通に挨拶出来たんだ・・・私の時と違うじゃん?」
「そりゃ嬢ちゃんが最初に「クマ?」とか言うからだ」
「ああ!そう言えばそうだったね」
そりゃあ初対面でいきなり「お前クマか?」とか言われた後に敬語で挨拶は出来んわな。
「さて、早速行きましょう、目立ちたくありませんから」
そう言いながら武官さんはアメデ像の足元にある倉庫の鍵を開けて中に入る。
ちなみにこの武官さんはチャーリーさんと言う名前らしい。
地味な登場だが蒼剣士団と呼ばれている王家の秘蔵の剣士団の1人でメチャクチャ強い。
強いのは当然で蒼剣士団が天舞龍リール直属の天龍達だからだ。
チャーリーさんの表向きな立場は憲兵隊の中隊長さんだ。
今回のセリスへの護衛の派遣がチャーリーさん1人だけなのも納得の強さなのだ。
扉を開けて中に入ると普通に公園設備の倉庫だった。
倉庫の奥に進むとチャーリーが丸いブツを取り出して壁の穴にはめ込むと、ゴゴゴゴ・・・と壁が動き階段が現れた。
「おー?お約束やね」
ランプを持ったチャーリーを先頭にセリス、ジャックと続く。
チャーリーさんやジャックは「暗視」のスキルを持っているのでセリスに対するエスコートである。
「疲れたら肩車してやるよ」そうジャックが言うので、「ん!」と両手を伸ばすと「いきなりかよ」と笑いながら肩車をしてくれるジャック。
単に久しぶりのジャックに甘えたいだけのセリスだった。
「相変わらず軽いな、ちゃんとメシ食ってんのか?」
「いやジャックさんの体重と比べられても困るわ」
セリスの現在の体重は38kg、平均より少し軽いかな?程度だ。
階段を降り切ると大きめな扉があった。
かなり古い扉だが何回も開閉したのかスムーズに開いた。
「この先はFランクまでの魔物が自然発生しているので気をつけて下さい」
Fランクの魔物、強さ的には「下の上」と言った感じで油断してなければ大丈夫。
しかしそれでも戦闘力皆無のセリスは余裕で負けるのでジャックの肩の上にいて正解なのだ。
な~んて、チャーリーはセリスに伝え忘れたのだ。
「8階まで降りると稀にBランクの魔物が出ますよ」との情報を。
おかげでセリスにアーレーイヤーンフラグが立ったのだ!
迷宮の中は新しい照明の魔導具が設置されていて明るかった。
「何で新型の照明が設置してあるの?」
「調査でかなり手が入ってますからね。
それにこの迷宮は騎士団や兵団や冒険者の新人訓練とかにも良く使われてますよ」
「へー?極秘じゃないんだ」
「一応は一般の人には軍事機密ですよ」と笑うチャーリーに少し安心するセリス。
またとんでもない国家機密を知ってしまったと思っていたからだ。
確かに迷宮はかなり人の手が入っており、幾つかの救護所らしき場所には兵団の衛生兵らしき人が作業をしていた。
「入り口ってあそこだけじゃ無いんだ?」
「騎士団の訓練場や近衛兵団の訓練場から直接入れますよ、でも武装した兵士が公園に来ると悪目立ちしますからね」
「そりゃそうだね」
「嬢ちゃんは今日は「公爵令嬢モード」じゃ無いんだな」
「モード言うな・・・チャーリーさんが「近所の兄ちゃん」って感じがしてね」
「あははは、それで正解ですよ、俺は下町の出身ですから」
チャーリーさんは「天龍の街での下町」と注釈が付くがね。
訓練で慣れているのかドンドン迷宮内を進むチャーリーさん。
途中で何回か訓練中と思しき兵士達とすれ違う。
「王都の地下で兵士さんがこんな訓練してたんだね」
訓練の過程で魔物が間引きされているのか全然魔物と遭遇しなくて快適だ。
「2階からはこう楽には行かないので気をつけて下さい」
そう言うチャーリーさんの前に新たな扉が見えて警備の兵士が立っている。
「例の検証の為に2階に降ります」警備の兵士に書類を見せるチャーリー。
「2階からは魔物の間引きが不十分なので気をつけて下さい」
警備の兵士が扉を開けると直ぐに階段があった。
「ん?何層まで降りるの?」
「検証場所は15階層ですね、迷宮の最深部と言われています」
「15階層?!」どうやらお気楽な迷宮観光とは言え無い様子だった。
地下迷宮の5階まで降りたセリス達は初めて魔物と遭遇していた。
ロックスパイダーと言われる迷宮定番の大型な蜘蛛の魔物だ。
ロックスパイダーは無駄に身体が大きいので蜘蛛の割には動きが鈍く毒も無い。
鋭い牙にさえ気を付ければ危険度は低く新人が訓練するのに最適なFランクの魔物だ。
「はあ!」スパーン!「おりゃあー!!」ドン!!
Fランクの魔物などジャックとチャーリーさんの敵ではなく瞬殺された。
「きゃああ?!!怖い怖い?!」実は魔物と遭遇したのがこれが始めてのセリス。
散々悪霊とか見ていたので「魔物なんて大丈夫だろ?」とか自分でもタカを括っていたのだが実際に魔物を見と凄え怖かった。
なにせ魔物の殺気や血の匂いがダイレクトに伝わって来るからだ。
次の相手は「紫虫」で場所を問わずどこにでも無限湧きして来るこれまた新人が相手をする基本的な魔物だ。
亜種で黒虫、緑虫などがいる。
風の噂では勇者達のウザ絡み被害を受けている体長15mを超える「紫虫王の《しーちゃん》」なるバカ強い魔王が居るらしいが海外の事なので詳細は分からない。
紫虫は食べれる魔物で庶民の食卓には唐揚げがよく出て来る。
食糧が豊富なピアツェンツェア王国でも紫虫の肉はエビの味がして美味しいので普通に食べられている。
「唐揚げが来たーーー!」
「ん?持って帰るのか?」冒険者ギルドでは紫虫肉の高価買取をしております。
「・・・・・・・重いからヤダ」断腸の思いで諦めるセリス。
紫虫を専門に駆除する冒険者が居るくらい繁殖力が強く放置すると他国では村が全滅する話しも良く聞く。
駆除と食品転用体制が確立しているピアツェンツェア王国では、ほとんどそんな事は起きないが。
30分ほど掛けて70匹ほどの紫虫を駆除するチャーリーさんとジャック。
「こっこれを15階層まで?」魔物とは言えエグい死体の山を見て気が遠くなるセリス。
9階あたりから紫虫がいなくなりCランクの魔物で体長3mほどのマダラ蛇がドグロを巻いてたくさん出てくる。
紫虫が産まれてもすぐにマダラ蛇に喰われるので9階で紫虫の姿が見えないのだ。
マダラ蛇は基本的には怒らせないと人間を襲わない魔物なので刺激しない様にコソコソと移動をする。
セリスが蛇を見ても全然騒がないので、「嬢ちゃんは蛇は大丈夫なのか?」「・・・・・・」ジャックが尋ねるとセリスは大量の蛇を見たショックで気絶していた。
こうして、やかましい奴が寝ている間に「これ幸い」と蛇エリアを突破する。
11層目でまた魔物の種類が変わった。
いよいよBランクの黒狼と言われる群れで行動する魔物の登場だ!
黒狼の基本的な餌は紫虫だが人間も襲う!勿論セリス達も早速襲われる。
「ガアアアアアアアアアアア!!!!」迫力満点の雄叫び!さすがBランク!
こうして雄叫びで威圧して餌に襲いかかるのだが、ジャックとチャーリーには通用しない。Sランクコンビを舐めんなよ!
「きゃああ?!怖いぃいいい?!」ここにまともに威圧を食らった奴が居るが・・・
右はチャーリー、左はジャックで黒狼を迎撃する。
先ずは、ジャックが黒狼の群れに突撃する!肩の上にセリスが居るが無視だ!
「えええええ?!!特攻?!」セリスがうるさい!戦闘中ですよ!
「おおおお!!!」魔力込めた右ストレートが黒狼にヒットする!
ガアアアアンン!!「ギャウン!!」ドオオオオオン!
ジャックの正拳突きで吹っ飛ばされた黒狼が後ろの2匹を巻き込んで壁にめり込んだ!
その際に血飛沫がセリスにブッかかる!「きゃっ?!」
続きチャーリーも突撃して、
スパーン!黒狼の首を刎ねる!ブシャアー!!また血飛沫がセリスにブッかかる!
「いやーーん?!?!」
ここで!「お前らいい加減しろー!」セリスがキレるが仲間を殺されて殺気マシマシの黒狼が迫り来て、「ごめんなさい!嘘です!スケさんカクさん!やっておしまい!」自分では何もせんのに好き勝手な事を言う。
「せりゃああ!」ジャックの後ろ回し蹴りが炸裂!セリスも一緒に回る!
続けて、「旋風脚!」ジャックの大技だ!セリスもめっちゃ回る!グルグルと!
バキバギ!ドガガガ!セリスのグルグル回る視界に吹き飛ぶ黒狼とジャックの足が見える!当然、その都度に血飛沫がセリスにブッかかる!
その蹴り残しをチャーリーがドンドン片付けて行く!
スパーン!スパパーン!!やはり血飛沫がセリスにだけにブッかかるのだ!
何でセリスにだけ血飛沫ブッかかるのかと言うと戦士達は自分の視界を遮らない様に相手の血飛沫が出る方向を微調整しているからだ。
丁度、ジャックの肩にいるセリスの場所が血飛沫ベストポジションだった訳だ。
戦闘が終わった時、セリスは既にギャン泣きしていた。
「ひどいよーひどいよーふええええんん」
セリスはギャン泣きしていたが次が来ると困るので強制的に移動中だ。
「泣くなよ、帰ったら飴買ってやるから」
「グス、・・・イチゴ味ね」結構余裕あるセリスだった。
そして自分で歩くと疲れるからジャックの肩からは絶対に降りないセリスだった。
途中で水汲み場があったのでセリスは霊視する。
《うん大丈夫、毒は無い清水だね、体拭かないとねぇええええええ?!?!》
仕事が終わったのかいつの間にか登場した霊視さんがそう言う前にセリスは服を全部脱いで素っ裸になった??!!
「セリス様ーーー?!」これにはさすがに驚くチャーリー。
《きゃああああ?!男性の前で何してんのーー?!》大絶叫する霊視さん。
「がははは!豪快だなぁ!嬢ちゃん!」大笑いのジャック。
「ん?何騒いでんの?子供が裸になったくらいで?」
精神年齢100歳超えのセリスにして見れば13歳の小娘などはただのガキンチョだ。
しかも胸も腰もまだまだ、まな板に寸胴だ。一体何が恥ずかしいやら。
そう思うセリスだが特殊な性癖の人間もいる事を忘れてはならないのだ。
ジャックはボンキュボンの美人な嫁さん持ちで、チャーリーは歳上好みだっただけなのだ。
これは後で折檻だね!
「3年後は、さすがに恥ずかしいから無理だけどねー」
セリスは呑気にそう言いながらジャブジャブと身体と服を洗い出す。
後に母バーバラにこの件がバレて8時間に渡るお説教と1日5時間の3ヶ月に渡る徹底した淑女再教育を受ける羽目になるのだった。
セリスストリップショーなど無かったように15階層を目指して突き進むセリス達。
途中でまた血塗れセリスがまた途中にあった池で素っ裸になって・・・
《もう!もう!いい加減になさい!セリス!淑女がはしたないですわ!!!》と霊視に怒られて、「はしたない「ですわ」って言った?アンタやっぱり王侯貴族なの?」と、つかさずツッコミを入れるセリス。
《言ってない》
そんな会話をしつつバッシャバッシャと水浴びする。
「これ後でイリス陛下から俺達怒られますよね?」
今後はセリスに背を向けてる紳士なチャーリー、もう既に全部見てるがな!
「嬢ちゃんが自分でやってるんだから大丈夫だろ!がははは!」
セリスと同じ年代の娘が居るジャックはセリスの全裸に得に興味無し。
と言うか自分の娘を見る目になっている。
「あー、もう、これで着替えがないよ」一応持って来た着替えが全部無くなったセリス。
血塗れの服は持って帰って鶏小屋掃除の雑巾にするつもりの倹約家セリスだ。
「今度血飛沫をブッかけたら全裸で肩に乗るからね!」そう怒るセリスだが論点が違うわ!
「公爵令嬢が全裸で肩車って・・・」唖然とするチャーリー。
チャーリーよ・・・コイツはマジで乗るぞ。
「がははは!大丈夫だ。目的地はもうそこだからな!」
ジャックがそう言って指をさす先には15階層への階段があった。
「よし!行くよ」そう言いながら「ん!」っと両腕を上げてまた肩車を所望するセリス。
ジャックの肩に乗りいよいよ15階層への階段を降り始める一行。
「話しによれば15階層に魔物は居ません」
チャーリーにそう言われてホッとするセリス、さすがに乙女は乙女なので全裸で街中の帰還は嫌なのだ。
・・・・・・・・・・・・・・いや!そう言う問題か?
階段を降りるとすぐに神殿の様な建造物があった魔力も感じる。
奥にある祭壇の前まで来る3人。
「気のせいかなぁ?すっごく嫌な予感がするんだけど」
《あっ!セリス!ワイトキングが来るよ!》
「サラッと爆弾発言をすんなぁ!!」
そうセリスが叫ぶや否や神殿中央に封印の魔法陣が浮かび上がり弾けた?!
「いやああ!!これ絶対にワイトキングさんが登場ですよー!」
ゴゴゴゴ・・・低い地鳴りと共に禍々しい血の色の魔法陣が浮かび上がる!
そして魔法陣の中心から何か強大な存在が出現する。
身長は170cmくらいと大きくはないが黒のローブを身につけて黒のオーラを纏う姿は見るからにヤバい!
ん?でも顔は普通のお爺ちゃんだ。どことなく人が良さげな?・・・罠か?!
しかし罠でもこちらには「勇者」のジャックがいるのだ!簡単にやられてなるものか!
ジャックとチャーリーさんが身構える!何も出来んが一応セリスも身構える!
すると『んんーーー』ワイトキングは大きく伸びをしてから『あー、良く寝たわー』なんか眠そう声が聞こえた?!
『んん?なんじゃお主達は?・・・もしやお嬢さんはライモンドの子孫かえ?面影があるのう」
ワイトキングがセリス達に気が付いてセリスをじーと見て首を傾げる。
「違うと言ったら?」ジャックが挑発っぽい返事をすると?
『ん?そうか?違うのか?お嬢さんはライモンドに似ておるがのぅ・・・ところで今は何年なのじゃ?』
とワイトキングが聞いてくる。
「えーと?王国歴だと483年だよ、私は一応ライモンド王の末裔にはなるのかな?
でも直系じゃないと思う??あれ?どうなんだろ?」
ピアツェンツェア王族の母体はカターニア共和国の系譜とヴィアール共和国の系譜を主軸として外縁の血筋を多く取り込んでいる。
セリスはカターニア共和国の系譜をガッツリと受け継いでいるのか親戚筋が複雑なヴィアール共和国の系譜をどれだけ受け継いでいるのか分からない。
《セリスのお母さんがヴィアール系譜のライモンド王の末娘の直系だよ。
だからセリスは母系でライモンド王の直系になるわね》
「随分詳しいね?!」
実はハイブリッド娘だったセリス自身が知らない母系血統を知っている霊視に驚くセリス。
『そりゃ詳しいじゃろうて、何せイリスはリア姫の後援人じゃったから《ああああーーーーーーー!!!!!》キィイイイーーーーーン!!
煩っ?!いきなりなんじゃい?!イリ《言うなああああああ!!!》』
キイイイイイーーーーーンンンンン!!!
「霊視うるっさい!!何も聞こえん!」
ワイトキングが盛大に霊視の本名をバラしたがギリギリセーフだった。
《これ以上余計な言ったらハルモニアちゃんにハーデス様の居場所をチクります》
そう霊視がガチでワイトキングを脅すと、『分かった!分かった!お口チャックじゃな!』めっちゃ慌てるワイドキング、どうやら霊視に弱みを握られている様子だ。
《分かればよろしい!ではお話しの続きを、ささどうぞ》
「いえ・・・到底聞き逃す事が出来ないパワーワードが聞こえたんですけど?
ハーデス様ですか・・・これはさすがに上に報告しないと・・・」
《ふーん?チャーリーちゃんってば、そう言うつれない事言うんだ?
じゃあ、チャーリーちゃんが家のテレサにちょっかい掛けて来て困ってますぅ・・・
って、リールさんにチクろうかなぁ?》
「はい分かりましたぁ!ハーデス様の事は綺麗サッパリと忘れましたぁ!!」
どうやらチャーリーさんも霊視に弱味を握られているらしい。
『分かった分かったお主の勝ちじゃ。
それより儂とライモンド王との関係が気になるんじゃろ?
しかしおかしいのぅ?そこまで複雑な話しじゃないんじゃがのぅ?
爺はとっても不思議じゃ、アヤツは儂の事をなんと説明しておったのじゃ?』
「えーと?「ワイトキングが復活して王都が死者で溢れる」とか言ってます」
『んー?ああ!そうかそうか、なるほどなるほど、お主達はライモンドの小説の話しを勘違いしておるんじゃな?』
カッカッカと楽しそうに笑い出したワイトキング、どうやら王家の見立て通りに古文書は小説だった。
『どうせあれじゃろ?どうせ目覚まし時計の魔法陣を封印の魔法陣とかに話しを変えたのじゃろ?』
「アレってめっ目覚まし時計?!だったのー?!」
『そんでもってワシが目覚めたならば国が滅ぶとか何とか書いたんじゃろ?
大丈夫じゃ、その話しは「小説」じゃ、当時はそう言う話しが流行っておってな、分かり易い善と悪の話しがウケたのじゃ」
「つまり?どう言う事ですか?」
『当時ライモンドは小説の執筆に行き詰まっておってのぅ。
「何か面白いネタが無いか?」とワシに相談しに来おってな、ゆっくりと寝れる場所を提供してくれたらワシを題材にして良い契約をだな・・・』
「アホかー!5代目国王ー!」
「つまりハーデス様は王都の人間に危害を加える気はないと?」
忘れたと言っておきながらモロに「ハーデス様」呼びのチャーリーさん。
『ないない、自分で殺して自分で輪廻させて・・・仕事を増やしてどうする?
そんなモンマッチポンプが極まっておろう?』
「つまりアンタが人間を輪廻転生させているのか?」
余計な事を言って霊視を怒らせると面倒臭いので黙っていたジャックが疑問に思ってた事をワイトキングに質問する。
「正確には「我々」じゃな、世界各地方にはワイトキングがおってのぅ。
交代で休みを取りながら輪廻の仕事をしておる。
その休みのローテーションが400年周期と言う訳じゃな」
「つまり目指し時計って・・・」
『おそらくお主達も見たアレじゃな』浮き上がった赤い魔法陣の事だね。
「400年?!おいおい、それが今って・・・どんな確率だよ」
ピンポイントで「おはようございます!の日」の大当たりを引いたジャックが呆れてる。
『おっといかんいかん!ギリギリまで寝ておったから時間がない。
休みの交代待ちの奴がめっちゃ怒っておるわい。
ワシはもう仕事に行くぞい。それじゃ、死んだらまた会おうぞ!』
そう言うとワイトキングはそそくさと転移陣を使ってどこかに行ってしまった・・・
神殿に沈黙が訪れる・・・
「おい・・・霊視さんよ?
絶対アンタ、ワイトキングが安全な存在な事を知ってたろ?
悪霊の時と違って全然慌ててなかったよな?」
《そんな事ありませんわよ》
「嘘つけー!この!どっかの王侯貴族めがー!」
《王侯貴族?なんの話しでしょうか?》
「はあ~・・・もう良いよ・・・帰ろ?」
こうしてワイトキング騒動は、半分本当で半分間違いの微妙な結末を迎えたのだった。
それより霊視の話しの方が気になって仕方ない3人でしたとさ。
次回!霊視さんの正体が判明します!(いまさら??)
「今からならクソ親父の所で1日分稼げる!!」
目的はクソ親父イノセントの部屋掃除アルバイトの為だ。
「セリス?!えぇ?!く・・・クソ??」
母バーバラは娘の仕事モードを始めて見てビックリしている。
と言うかセリスの口の悪さに驚いたとも言える。
「お母様!行って来まーーす!!」制服のまま走り出すセリス。
「セリスーーー?!?!」人間とは思えない娘の走りっぷりに唖然とする母。
突然猛烈ダッシュする公爵令嬢に周囲の同級生も保護者も唖然としている・・・
「自走セリス登場だ・・・」
「アレが自走セリス・・・」
「早えぇ・・・」
「「自走セリス」とは何でございましょうか?!」
近くの男子生徒達の呟きに反応する母バーバラ。
1人の男子生徒の両肩を掴んで「詳しく教えて下さいまし!」と涙目で懇願する。
「え?!・・・え~と~??」目を泳がす男子生徒。
「自走セリスを妨げる者には死を」を掲げる過激派ファンが街に居るので話して良いか悩んでいる。
「お願い致します!」
「はい・・・」
さすがに泣く美女を邪険には出来ずに観念する男子生徒。
セリスが「自走セリス」と言う異名で街の人々に愛されている事を話す。
男子生徒は、かなーりオブラートに包んで説明したがバーバラ夫人を卒倒させるには充分な内容だった・・・
この時のセリスは入学に浮かれていて完全に失念をしていたのだ。
両親の前では猫を被って、それはそれは令嬢らしくお淑やかに振る舞っていた事を。
つーか今までバレてなかったのが奇跡じゃね?
家に帰って今まで見た事もない怖い顔で自分を見る母を見てその事を思い出し顔面蒼白になるセリスなのだが・・・もう遅い。
この後丸々と3ヶ月間、授業終了後に強制帰宅させて母が自ら娘に淑女教育をみっちりとやり直す事になる・・・ザマァ、良いぞもっとやれ。
あっという間にギルドに着いて正面玄関のドアを開けて中を覗くとギルドの職員がセリスを見て「お疲れ様です」と言うのやめて欲しいのだ。
「私はここの職員じゃ無いんですけど?!」
そうツッコミいれても「そうだったんですか?」と返されるだけなので諦めた。
「セリス様、お疲れ様でーす」
書類を見たままセリスに挨拶する男性職員達・・・とうとう顔すら見てくれなくなった?!
対するセリスもセリスで「はーい、お疲れ様です」と言って勝手に従業員入り口のドアを開けてイノセントの所へ向かう。
「ふう・・・」セリスはドアの前で一度深呼吸をして・・・ガチャッ!一気にドアを開けて「どうだ?!」と気勢を上げる!
イノセントの部屋の片付けアルバイトは3日と空けずに欠かさずやっている!・・・はず!
つい3日前にも片付けた!・・・はず!それなのに!
「何で過去最大クラスに酷くなってんだ!クソ親父!」
順調に身長が145cmにまで成長したセリスが完全に書類に埋まっている。
「いや~最近は問題児が活発に行動を始めてな~、毎日このザマなんだよ」
姿は見えないがイノセントの声は聞こえる。
「マスター!追加の苦情でーす!」
後ろから来た職員が良い感じの場所にオーバースローで書類をぶん投げる。
イノセントの手だけ見えてそれをキャッチしてそのままゴミ箱にぶん投げる。
「いやゴミ箱に捨てんな!市民からの苦情を無視すんな!」
これが通常運転なのでセリスも気にもしなくなっている。
「きりがなくてよ~」
「それよりも問題児?私の他にも問題児なんていんの??」
「問題児を自覚してんのかよ・・・」
そうは言うがセリスはそこまで問題は起こしていない、単に金にがめつくて口が悪いだけだ。
「まぁセリスには関係ない話しだけどな」
しかしセリスは直ぐにこの問題児とガッツリと関わる事になる。
気合いと根性で2時間で部屋を片付けて金貨を強奪して次の仕事の話しを聞く。
「ワイトキング?」セリスの記憶だと死者達の王様と言われている魔物だ。
「そうだ」
「そんなモン実際に本当にいるの?御伽話しじゃないの?」
「それを確定させる為にセリスの霊視で調べて欲しい」
「嫌よ、本当にワイトキングなんて居たら私が死んじゃうでしょ?」
「ジャックを付けるからよ頼むよ」
「・・・報酬次第かな?」ジャックと一緒なら・・・まあ。
「1人につき2000万円(相当)」
「・・・・・もう一声!」
「1人3000万円(相当)」
「よし!分かった」
本当はピアツェンツア王国の通貨単位で話しているのだが分かり易く円単位に変換してます。
最近のセリスは霊視の能力が王家にも高く評価されて引く手数多だ。
これ程度の報酬を吊り上げる交渉は出来る様になって来たのだ。
でもまだ生活は苦しいけどね!
「それで場所はどこなの?もう学生なんだから遠い場所は無理よ?」
「ああ、それは大丈夫、王都の地下だから」
「・・・・・・・・・・・・・・おいこら??」
「なんだ?」
「そんな物騒なモンが自分ん家の下に居てどこが大丈夫なんだ?!」
「まぁ聞けって」
古い本を1冊取り出して詳細を話し始めるイノセント。
それは1冊の古文書だった。
腐った公爵令嬢のセリスだが知識は充分で古代語も余裕で読めるのだ。
「口さえ開かなければ素晴らしい公爵令嬢なのに」と、ミミリーに不敬極まりない事を毎回言われている。
『王都の地下に迷宮を作った。
そほ王都の迷宮に「死者」の王を封印する。
しかし400年後に封印は力を失い、王都は死者で溢れる事になるだろう。
我の子孫達が死者の王に再度の封印を施せる様にこの本を残す。
ライモンド・フォン・ヴィアール』
と最初のページに書いてあった。
「だからどこがどう大丈夫なんだ?ドンドン悪化してるじゃないの!」
「そうなんだが・・・ただなぁ英雄ライモンドにはもう一つの言い伝えがあってなぁ」
イノセントはもう1冊の書籍を取り出した。本の表紙には「俺様の小説の設定集」とか書いてある。
「え??何これ?」
「英雄ライモンドの趣味は小説を書く事だったんだよ。かなりの数のフィクション本も出版したらしくてな」
「ああー・・・これも小説の可能性が有るのかぁ」
「そう言う事だな、当のライモンドの末裔の王家は「小説」と見ているな。
王都の地下の迷宮は俺達も散々探索しているが、その本に書いてある封印の場所とやらには確かに部屋があったのだが・・・そこは英雄ライモンドの隠れ書斎だったらしい」
「もう探索済みなの?!私、必要ねぇじゃん?!」
「当たり前だろ?こんな物騒な話しを放置する様な鈍臭い王家じゃ無いからな」
「えーと?つまり?大体の調査が終わったから最後に私の霊視でそれの確証を得たいと?」
「正確には嬢ちゃんを含めた多数の鑑定スキル持ちで多角的に検証したいらしいな。
報酬の3000万円には「口止め料」も当然含まれている」
「そう言う話しならやります!でもジャックさんは護衛に付けて下さい!」
危険度が爆下がりしてテンションマックスのセリス。
「本当にちゃっかりしてんなぁ」
そもそも王都地下の迷宮の話しが聞いちゃいけない話しだった事に気づいたセリス。
「クソ親父にドンドンと危ない世界に引き込まれている?!」
その事に夜寝てて気がついてガバッと飛び起きたのだった。
良く考えたら王都に秘密の地下迷宮なんぞある事自体が国家の重要機密だと気が付いたセリスのテンションは駄々下がりだ。
次の日の朝、セリスは王宮の中にある近衛騎士団の詰所に居た。
王家からの依頼なので今日の学校の授業は免除されたのだ。
かなり大規模な検証を行うのか100名以上の魔導兵団の魔道士が集まっている。
「どうした?やけに大人しいな」
久しぶりにセリスの護衛になったジャックの兄貴がセリスを心配そうな目で見ている。
「クソ親父に嵌められました。
親父に良い様に煽てられてしまってここに居ます」
「そりゃしょうがないイノセントだからな!がははは!
そんじゃあ中央公園から地下迷宮に行くか?」
「え?ここから入るんじゃないの?」
「王宮からだと単純に遠回りになるな。中央公園から入った方が早い」
「そうなんだ」
何だかんだ長い付き合いになって来たSランク冒険者のジャックと共に王都にある中央公園の天龍王アメデの像前にやって来たセリス。
万が一を考えて中央公園は年に一回の一斉清掃日と言う名目で封鎖されていて静まり返っている。
何でもこのアメデの像の足元の土台が迷宮入り口なんだそうな。
少し待っていると王宮の憲兵隊の武官らしき人がやって来て、
「お待たせしました!セリス様とジャック殿ですね。本日はよろしくお願いします」
と頭を下げて挨拶して来た。
「はい、私はセリスと申します、よろしくお願い致します」セリスも頭を下げる。
「ジャックです、よろしくお願いします」「!!!!!!」
普通に頭を下げて挨拶したジャックにかなりの衝撃を受けたセリス・・・失礼な奴だ。
「ジャックさんって普通に挨拶出来たんだ・・・私の時と違うじゃん?」
「そりゃ嬢ちゃんが最初に「クマ?」とか言うからだ」
「ああ!そう言えばそうだったね」
そりゃあ初対面でいきなり「お前クマか?」とか言われた後に敬語で挨拶は出来んわな。
「さて、早速行きましょう、目立ちたくありませんから」
そう言いながら武官さんはアメデ像の足元にある倉庫の鍵を開けて中に入る。
ちなみにこの武官さんはチャーリーさんと言う名前らしい。
地味な登場だが蒼剣士団と呼ばれている王家の秘蔵の剣士団の1人でメチャクチャ強い。
強いのは当然で蒼剣士団が天舞龍リール直属の天龍達だからだ。
チャーリーさんの表向きな立場は憲兵隊の中隊長さんだ。
今回のセリスへの護衛の派遣がチャーリーさん1人だけなのも納得の強さなのだ。
扉を開けて中に入ると普通に公園設備の倉庫だった。
倉庫の奥に進むとチャーリーが丸いブツを取り出して壁の穴にはめ込むと、ゴゴゴゴ・・・と壁が動き階段が現れた。
「おー?お約束やね」
ランプを持ったチャーリーを先頭にセリス、ジャックと続く。
チャーリーさんやジャックは「暗視」のスキルを持っているのでセリスに対するエスコートである。
「疲れたら肩車してやるよ」そうジャックが言うので、「ん!」と両手を伸ばすと「いきなりかよ」と笑いながら肩車をしてくれるジャック。
単に久しぶりのジャックに甘えたいだけのセリスだった。
「相変わらず軽いな、ちゃんとメシ食ってんのか?」
「いやジャックさんの体重と比べられても困るわ」
セリスの現在の体重は38kg、平均より少し軽いかな?程度だ。
階段を降り切ると大きめな扉があった。
かなり古い扉だが何回も開閉したのかスムーズに開いた。
「この先はFランクまでの魔物が自然発生しているので気をつけて下さい」
Fランクの魔物、強さ的には「下の上」と言った感じで油断してなければ大丈夫。
しかしそれでも戦闘力皆無のセリスは余裕で負けるのでジャックの肩の上にいて正解なのだ。
な~んて、チャーリーはセリスに伝え忘れたのだ。
「8階まで降りると稀にBランクの魔物が出ますよ」との情報を。
おかげでセリスにアーレーイヤーンフラグが立ったのだ!
迷宮の中は新しい照明の魔導具が設置されていて明るかった。
「何で新型の照明が設置してあるの?」
「調査でかなり手が入ってますからね。
それにこの迷宮は騎士団や兵団や冒険者の新人訓練とかにも良く使われてますよ」
「へー?極秘じゃないんだ」
「一応は一般の人には軍事機密ですよ」と笑うチャーリーに少し安心するセリス。
またとんでもない国家機密を知ってしまったと思っていたからだ。
確かに迷宮はかなり人の手が入っており、幾つかの救護所らしき場所には兵団の衛生兵らしき人が作業をしていた。
「入り口ってあそこだけじゃ無いんだ?」
「騎士団の訓練場や近衛兵団の訓練場から直接入れますよ、でも武装した兵士が公園に来ると悪目立ちしますからね」
「そりゃそうだね」
「嬢ちゃんは今日は「公爵令嬢モード」じゃ無いんだな」
「モード言うな・・・チャーリーさんが「近所の兄ちゃん」って感じがしてね」
「あははは、それで正解ですよ、俺は下町の出身ですから」
チャーリーさんは「天龍の街での下町」と注釈が付くがね。
訓練で慣れているのかドンドン迷宮内を進むチャーリーさん。
途中で何回か訓練中と思しき兵士達とすれ違う。
「王都の地下で兵士さんがこんな訓練してたんだね」
訓練の過程で魔物が間引きされているのか全然魔物と遭遇しなくて快適だ。
「2階からはこう楽には行かないので気をつけて下さい」
そう言うチャーリーさんの前に新たな扉が見えて警備の兵士が立っている。
「例の検証の為に2階に降ります」警備の兵士に書類を見せるチャーリー。
「2階からは魔物の間引きが不十分なので気をつけて下さい」
警備の兵士が扉を開けると直ぐに階段があった。
「ん?何層まで降りるの?」
「検証場所は15階層ですね、迷宮の最深部と言われています」
「15階層?!」どうやらお気楽な迷宮観光とは言え無い様子だった。
地下迷宮の5階まで降りたセリス達は初めて魔物と遭遇していた。
ロックスパイダーと言われる迷宮定番の大型な蜘蛛の魔物だ。
ロックスパイダーは無駄に身体が大きいので蜘蛛の割には動きが鈍く毒も無い。
鋭い牙にさえ気を付ければ危険度は低く新人が訓練するのに最適なFランクの魔物だ。
「はあ!」スパーン!「おりゃあー!!」ドン!!
Fランクの魔物などジャックとチャーリーさんの敵ではなく瞬殺された。
「きゃああ?!!怖い怖い?!」実は魔物と遭遇したのがこれが始めてのセリス。
散々悪霊とか見ていたので「魔物なんて大丈夫だろ?」とか自分でもタカを括っていたのだが実際に魔物を見と凄え怖かった。
なにせ魔物の殺気や血の匂いがダイレクトに伝わって来るからだ。
次の相手は「紫虫」で場所を問わずどこにでも無限湧きして来るこれまた新人が相手をする基本的な魔物だ。
亜種で黒虫、緑虫などがいる。
風の噂では勇者達のウザ絡み被害を受けている体長15mを超える「紫虫王の《しーちゃん》」なるバカ強い魔王が居るらしいが海外の事なので詳細は分からない。
紫虫は食べれる魔物で庶民の食卓には唐揚げがよく出て来る。
食糧が豊富なピアツェンツェア王国でも紫虫の肉はエビの味がして美味しいので普通に食べられている。
「唐揚げが来たーーー!」
「ん?持って帰るのか?」冒険者ギルドでは紫虫肉の高価買取をしております。
「・・・・・・・重いからヤダ」断腸の思いで諦めるセリス。
紫虫を専門に駆除する冒険者が居るくらい繁殖力が強く放置すると他国では村が全滅する話しも良く聞く。
駆除と食品転用体制が確立しているピアツェンツェア王国では、ほとんどそんな事は起きないが。
30分ほど掛けて70匹ほどの紫虫を駆除するチャーリーさんとジャック。
「こっこれを15階層まで?」魔物とは言えエグい死体の山を見て気が遠くなるセリス。
9階あたりから紫虫がいなくなりCランクの魔物で体長3mほどのマダラ蛇がドグロを巻いてたくさん出てくる。
紫虫が産まれてもすぐにマダラ蛇に喰われるので9階で紫虫の姿が見えないのだ。
マダラ蛇は基本的には怒らせないと人間を襲わない魔物なので刺激しない様にコソコソと移動をする。
セリスが蛇を見ても全然騒がないので、「嬢ちゃんは蛇は大丈夫なのか?」「・・・・・・」ジャックが尋ねるとセリスは大量の蛇を見たショックで気絶していた。
こうして、やかましい奴が寝ている間に「これ幸い」と蛇エリアを突破する。
11層目でまた魔物の種類が変わった。
いよいよBランクの黒狼と言われる群れで行動する魔物の登場だ!
黒狼の基本的な餌は紫虫だが人間も襲う!勿論セリス達も早速襲われる。
「ガアアアアアアアアアアア!!!!」迫力満点の雄叫び!さすがBランク!
こうして雄叫びで威圧して餌に襲いかかるのだが、ジャックとチャーリーには通用しない。Sランクコンビを舐めんなよ!
「きゃああ?!怖いぃいいい?!」ここにまともに威圧を食らった奴が居るが・・・
右はチャーリー、左はジャックで黒狼を迎撃する。
先ずは、ジャックが黒狼の群れに突撃する!肩の上にセリスが居るが無視だ!
「えええええ?!!特攻?!」セリスがうるさい!戦闘中ですよ!
「おおおお!!!」魔力込めた右ストレートが黒狼にヒットする!
ガアアアアンン!!「ギャウン!!」ドオオオオオン!
ジャックの正拳突きで吹っ飛ばされた黒狼が後ろの2匹を巻き込んで壁にめり込んだ!
その際に血飛沫がセリスにブッかかる!「きゃっ?!」
続きチャーリーも突撃して、
スパーン!黒狼の首を刎ねる!ブシャアー!!また血飛沫がセリスにブッかかる!
「いやーーん?!?!」
ここで!「お前らいい加減しろー!」セリスがキレるが仲間を殺されて殺気マシマシの黒狼が迫り来て、「ごめんなさい!嘘です!スケさんカクさん!やっておしまい!」自分では何もせんのに好き勝手な事を言う。
「せりゃああ!」ジャックの後ろ回し蹴りが炸裂!セリスも一緒に回る!
続けて、「旋風脚!」ジャックの大技だ!セリスもめっちゃ回る!グルグルと!
バキバギ!ドガガガ!セリスのグルグル回る視界に吹き飛ぶ黒狼とジャックの足が見える!当然、その都度に血飛沫がセリスにブッかかる!
その蹴り残しをチャーリーがドンドン片付けて行く!
スパーン!スパパーン!!やはり血飛沫がセリスにだけにブッかかるのだ!
何でセリスにだけ血飛沫ブッかかるのかと言うと戦士達は自分の視界を遮らない様に相手の血飛沫が出る方向を微調整しているからだ。
丁度、ジャックの肩にいるセリスの場所が血飛沫ベストポジションだった訳だ。
戦闘が終わった時、セリスは既にギャン泣きしていた。
「ひどいよーひどいよーふええええんん」
セリスはギャン泣きしていたが次が来ると困るので強制的に移動中だ。
「泣くなよ、帰ったら飴買ってやるから」
「グス、・・・イチゴ味ね」結構余裕あるセリスだった。
そして自分で歩くと疲れるからジャックの肩からは絶対に降りないセリスだった。
途中で水汲み場があったのでセリスは霊視する。
《うん大丈夫、毒は無い清水だね、体拭かないとねぇええええええ?!?!》
仕事が終わったのかいつの間にか登場した霊視さんがそう言う前にセリスは服を全部脱いで素っ裸になった??!!
「セリス様ーーー?!」これにはさすがに驚くチャーリー。
《きゃああああ?!男性の前で何してんのーー?!》大絶叫する霊視さん。
「がははは!豪快だなぁ!嬢ちゃん!」大笑いのジャック。
「ん?何騒いでんの?子供が裸になったくらいで?」
精神年齢100歳超えのセリスにして見れば13歳の小娘などはただのガキンチョだ。
しかも胸も腰もまだまだ、まな板に寸胴だ。一体何が恥ずかしいやら。
そう思うセリスだが特殊な性癖の人間もいる事を忘れてはならないのだ。
ジャックはボンキュボンの美人な嫁さん持ちで、チャーリーは歳上好みだっただけなのだ。
これは後で折檻だね!
「3年後は、さすがに恥ずかしいから無理だけどねー」
セリスは呑気にそう言いながらジャブジャブと身体と服を洗い出す。
後に母バーバラにこの件がバレて8時間に渡るお説教と1日5時間の3ヶ月に渡る徹底した淑女再教育を受ける羽目になるのだった。
セリスストリップショーなど無かったように15階層を目指して突き進むセリス達。
途中でまた血塗れセリスがまた途中にあった池で素っ裸になって・・・
《もう!もう!いい加減になさい!セリス!淑女がはしたないですわ!!!》と霊視に怒られて、「はしたない「ですわ」って言った?アンタやっぱり王侯貴族なの?」と、つかさずツッコミを入れるセリス。
《言ってない》
そんな会話をしつつバッシャバッシャと水浴びする。
「これ後でイリス陛下から俺達怒られますよね?」
今後はセリスに背を向けてる紳士なチャーリー、もう既に全部見てるがな!
「嬢ちゃんが自分でやってるんだから大丈夫だろ!がははは!」
セリスと同じ年代の娘が居るジャックはセリスの全裸に得に興味無し。
と言うか自分の娘を見る目になっている。
「あー、もう、これで着替えがないよ」一応持って来た着替えが全部無くなったセリス。
血塗れの服は持って帰って鶏小屋掃除の雑巾にするつもりの倹約家セリスだ。
「今度血飛沫をブッかけたら全裸で肩に乗るからね!」そう怒るセリスだが論点が違うわ!
「公爵令嬢が全裸で肩車って・・・」唖然とするチャーリー。
チャーリーよ・・・コイツはマジで乗るぞ。
「がははは!大丈夫だ。目的地はもうそこだからな!」
ジャックがそう言って指をさす先には15階層への階段があった。
「よし!行くよ」そう言いながら「ん!」っと両腕を上げてまた肩車を所望するセリス。
ジャックの肩に乗りいよいよ15階層への階段を降り始める一行。
「話しによれば15階層に魔物は居ません」
チャーリーにそう言われてホッとするセリス、さすがに乙女は乙女なので全裸で街中の帰還は嫌なのだ。
・・・・・・・・・・・・・・いや!そう言う問題か?
階段を降りるとすぐに神殿の様な建造物があった魔力も感じる。
奥にある祭壇の前まで来る3人。
「気のせいかなぁ?すっごく嫌な予感がするんだけど」
《あっ!セリス!ワイトキングが来るよ!》
「サラッと爆弾発言をすんなぁ!!」
そうセリスが叫ぶや否や神殿中央に封印の魔法陣が浮かび上がり弾けた?!
「いやああ!!これ絶対にワイトキングさんが登場ですよー!」
ゴゴゴゴ・・・低い地鳴りと共に禍々しい血の色の魔法陣が浮かび上がる!
そして魔法陣の中心から何か強大な存在が出現する。
身長は170cmくらいと大きくはないが黒のローブを身につけて黒のオーラを纏う姿は見るからにヤバい!
ん?でも顔は普通のお爺ちゃんだ。どことなく人が良さげな?・・・罠か?!
しかし罠でもこちらには「勇者」のジャックがいるのだ!簡単にやられてなるものか!
ジャックとチャーリーさんが身構える!何も出来んが一応セリスも身構える!
すると『んんーーー』ワイトキングは大きく伸びをしてから『あー、良く寝たわー』なんか眠そう声が聞こえた?!
『んん?なんじゃお主達は?・・・もしやお嬢さんはライモンドの子孫かえ?面影があるのう」
ワイトキングがセリス達に気が付いてセリスをじーと見て首を傾げる。
「違うと言ったら?」ジャックが挑発っぽい返事をすると?
『ん?そうか?違うのか?お嬢さんはライモンドに似ておるがのぅ・・・ところで今は何年なのじゃ?』
とワイトキングが聞いてくる。
「えーと?王国歴だと483年だよ、私は一応ライモンド王の末裔にはなるのかな?
でも直系じゃないと思う??あれ?どうなんだろ?」
ピアツェンツェア王族の母体はカターニア共和国の系譜とヴィアール共和国の系譜を主軸として外縁の血筋を多く取り込んでいる。
セリスはカターニア共和国の系譜をガッツリと受け継いでいるのか親戚筋が複雑なヴィアール共和国の系譜をどれだけ受け継いでいるのか分からない。
《セリスのお母さんがヴィアール系譜のライモンド王の末娘の直系だよ。
だからセリスは母系でライモンド王の直系になるわね》
「随分詳しいね?!」
実はハイブリッド娘だったセリス自身が知らない母系血統を知っている霊視に驚くセリス。
『そりゃ詳しいじゃろうて、何せイリスはリア姫の後援人じゃったから《ああああーーーーーーー!!!!!》キィイイイーーーーーン!!
煩っ?!いきなりなんじゃい?!イリ《言うなああああああ!!!》』
キイイイイイーーーーーンンンンン!!!
「霊視うるっさい!!何も聞こえん!」
ワイトキングが盛大に霊視の本名をバラしたがギリギリセーフだった。
《これ以上余計な言ったらハルモニアちゃんにハーデス様の居場所をチクります》
そう霊視がガチでワイトキングを脅すと、『分かった!分かった!お口チャックじゃな!』めっちゃ慌てるワイドキング、どうやら霊視に弱みを握られている様子だ。
《分かればよろしい!ではお話しの続きを、ささどうぞ》
「いえ・・・到底聞き逃す事が出来ないパワーワードが聞こえたんですけど?
ハーデス様ですか・・・これはさすがに上に報告しないと・・・」
《ふーん?チャーリーちゃんってば、そう言うつれない事言うんだ?
じゃあ、チャーリーちゃんが家のテレサにちょっかい掛けて来て困ってますぅ・・・
って、リールさんにチクろうかなぁ?》
「はい分かりましたぁ!ハーデス様の事は綺麗サッパリと忘れましたぁ!!」
どうやらチャーリーさんも霊視に弱味を握られているらしい。
『分かった分かったお主の勝ちじゃ。
それより儂とライモンド王との関係が気になるんじゃろ?
しかしおかしいのぅ?そこまで複雑な話しじゃないんじゃがのぅ?
爺はとっても不思議じゃ、アヤツは儂の事をなんと説明しておったのじゃ?』
「えーと?「ワイトキングが復活して王都が死者で溢れる」とか言ってます」
『んー?ああ!そうかそうか、なるほどなるほど、お主達はライモンドの小説の話しを勘違いしておるんじゃな?』
カッカッカと楽しそうに笑い出したワイトキング、どうやら王家の見立て通りに古文書は小説だった。
『どうせあれじゃろ?どうせ目覚まし時計の魔法陣を封印の魔法陣とかに話しを変えたのじゃろ?』
「アレってめっ目覚まし時計?!だったのー?!」
『そんでもってワシが目覚めたならば国が滅ぶとか何とか書いたんじゃろ?
大丈夫じゃ、その話しは「小説」じゃ、当時はそう言う話しが流行っておってな、分かり易い善と悪の話しがウケたのじゃ」
「つまり?どう言う事ですか?」
『当時ライモンドは小説の執筆に行き詰まっておってのぅ。
「何か面白いネタが無いか?」とワシに相談しに来おってな、ゆっくりと寝れる場所を提供してくれたらワシを題材にして良い契約をだな・・・』
「アホかー!5代目国王ー!」
「つまりハーデス様は王都の人間に危害を加える気はないと?」
忘れたと言っておきながらモロに「ハーデス様」呼びのチャーリーさん。
『ないない、自分で殺して自分で輪廻させて・・・仕事を増やしてどうする?
そんなモンマッチポンプが極まっておろう?』
「つまりアンタが人間を輪廻転生させているのか?」
余計な事を言って霊視を怒らせると面倒臭いので黙っていたジャックが疑問に思ってた事をワイトキングに質問する。
「正確には「我々」じゃな、世界各地方にはワイトキングがおってのぅ。
交代で休みを取りながら輪廻の仕事をしておる。
その休みのローテーションが400年周期と言う訳じゃな」
「つまり目指し時計って・・・」
『おそらくお主達も見たアレじゃな』浮き上がった赤い魔法陣の事だね。
「400年?!おいおい、それが今って・・・どんな確率だよ」
ピンポイントで「おはようございます!の日」の大当たりを引いたジャックが呆れてる。
『おっといかんいかん!ギリギリまで寝ておったから時間がない。
休みの交代待ちの奴がめっちゃ怒っておるわい。
ワシはもう仕事に行くぞい。それじゃ、死んだらまた会おうぞ!』
そう言うとワイトキングはそそくさと転移陣を使ってどこかに行ってしまった・・・
神殿に沈黙が訪れる・・・
「おい・・・霊視さんよ?
絶対アンタ、ワイトキングが安全な存在な事を知ってたろ?
悪霊の時と違って全然慌ててなかったよな?」
《そんな事ありませんわよ》
「嘘つけー!この!どっかの王侯貴族めがー!」
《王侯貴族?なんの話しでしょうか?》
「はあ~・・・もう良いよ・・・帰ろ?」
こうしてワイトキング騒動は、半分本当で半分間違いの微妙な結末を迎えたのだった。
それより霊視の話しの方が気になって仕方ない3人でしたとさ。
次回!霊視さんの正体が判明します!(いまさら??)
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キャラクターイラスト:はちれお様
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別で投稿している「暁の草原」と連動しています。
どちらから読んでいただいても、どちらかだけ読んでいただいても、問題ないように書く予定でおります。読むかどうかはお任せですので、おいて行かれているキャラクターの気持ちを知りたい方はどちらかだけ読んでもらえたらいいかなと思います。
面倒な方は「暁の荒野」からどうぞ!
※「暁の草原」、「暁の荒野」共に残酷描写がございます。ご注意ください。
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この物語はフィクションであり、実在の人物、国、団体等とは関係ありません。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
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