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改稿版
幽霊退治屋セリス登場!
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☆
《カターニア公爵家の娘に3歳の誕生日が来たそうだ》
《当然知っているわ、うふふふふ、そうね、あの子が3歳になったのよ魔王・・・
遂に・・・遂に私が動き出す時が来たわ》
《分かっておると思うが無理はするなよ?・・・・・・・死ぬぞ?》
《分かっているわ》
南の大陸中央部に聳え立つ巨大な魔王城の魔王の間にて「死ぬ」とか何やら不穏な話し合いがされている。
《あの子の未来、しっかりと見届けさせてもらうわよ》
《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だから無理すんなよ!》
《魔王しつっこい!!》
魔王と話す女性は一体何者なのだろうか・・・そして彼女の目的とは?
「あの子」やらの運命は?
これから5年後の「あの子」が8歳になった時から物語が始まる・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここは魔法がある世界・・・その中に存在するピアツェンツェア王国。
中央大陸の中央部に位置して中央大陸の80%を支配している大国だ。
そのピアツェンツア王国の3大公爵家の一つにカターニア公爵家がある。
かの家は国内でも絶大な権力を誇り、また国内有数の超がつく「貧乏」な公爵家だった。
何で?と言われても貧乏なのだから仕方ないのだ。
そんなカターニア公爵家に産まれた長女、現在8歳の娘が「セリス・フォン・カターニア」だ。
彼女がこの物語の主人公である。
「おとうさま!まずはおいえのことからです!」
現在セリスは舌足らずの言葉で一生懸命に必死で父のコーバス公爵を諫めている。
父親譲りのキラキラした淡い金髪に濃い青色の碧眼、母親譲りの容姿は将来は絶世の美女になる事が約束された整った顔立ちの可愛いらしい少女だ。
「うむうむ、そうだなセリス、それは大事な事だな」
必死で自分を諌める娘の頭をヨシヨシと撫でるコーバ公爵だが、娘のセリスにしては、たまったモンではないのだ!
「おとうさま!ベンせいにくてん、と、とりひきが、ていしすると、カターニア家はおわり、なのですよ!」
「ええい!幼児の口じゃあ上手く喋れんわい!つーか何で8歳なのにちゃんと喋れんのだ?!」と自分の不甲斐無さに憤慨するセリス。
舌足らずなのは、単に成長途中のセリスの口が小さいだけで数年も掛からずに直ぐに治るのだが・・・
そして彼女は基本的には「口が悪い」のだ。
表向き普段は淑女らしいお淑やかな喋り方だが、知らん人が誰も居ない時とか怒った時に途端に口が悪くなる性質がある。
と言うのも最初にぶっちゃけると彼女の前世は日本人だったからだ。
元日本人だと口が悪いのか?と言われるとそうでは無く、前世の彼女の生き様が先天的に口を悪くしている。
セリスの前世は西暦1914年、大正3年の第1次世界大戦が開戦した年に日本人の八千代として生まれて激動の大東亜戦争(太平洋戦争)を経て、平成の中期まで99歳まで長生きした苦労人だった。
「うおお!!マジか!100歳まで生きられんかったとは!少し残念!」
と・・・とぉーても元気な最後の言葉を残しての素晴らしい大往生だったと言う。
あまりにも元気ハツラツな最後だったので最初の5分ほどは医者も八千代が亡くなった事が分からなかったとの事だった。
「あれ?八千代さん?・・・ああ!亡くなってます??あれ?本当に?」
医者も半信半疑で静かになった八千代の脈を測るとやっぱり亡くなっていた・・・
そしてようやく嘆き悲しむ八千代の最後を看取った「200名弱」の親族達と知人達・・・
めっちゃ多くね?病院の部屋の中がパンパンじゃん?
廊下か?廊下にはみ出しているのか?と言う心配は御無用、要領の良い八千代は本人希望で病院から自宅療養に切り替えていたのだ。
病院側も日に30人単位で八千代の見舞いに群れを形成して来やがる人達に嫌気がさしていたのか、「どうぞどうぞ」状態だったらしい。
「うおおお!かあさーーーん!!
頑張った!かあさんより何とか頑張って生き残った俺偉い!」
親より先に死ねん!と、途中リタイヤした弟達の思いを胸に頑張った齢80歳の長男が雄叫びを上げる!
お爺ちゃん!とぉーても元気そうで何よりです!後20年位は行けそうだね!
「おばあちゃーーーーん!!」もうすぐ還暦を迎える齢58歳の孫娘。
「ひいばあちゃーーーーん!!」
もうすぐ3歳になる八千代の玄孫を抱きしめ泣く齢23歳の曾孫娘。
他にも大量の子孫達が集う、とにかくうるさく賑やかな最後だったのだ。
「理事長ーーー!!」
「親方ーーーー!!」
・・・・・・・・いや、最後の「親方」っておかしくね?
親方と言うのは八千代は北海道は日高地方の漁師の娘として産まれ、太平洋戦争で負傷し引退した父親に代わって漁船「煌々丸」を受け継ぎ、女性ながらに15歳で漁師となり、戦後の混乱期を夫と共に太平洋の荒波に揉まれながら毛蟹と昆布を捕りまくって乗り越えたのだ。
資源保護の禁漁期間中に行商も積極的に行い「日高昆布」の知名度を全国区に押し上げて日高漁協組合の理事長も務めたほどに頑張ったのだ!
なので引退した後も漁協の重鎮達から「親方」や「理事長」と呼ばれて親しまれていた。
私生活の面では5人の息子を見事に育て上げて、その5人の息子達から更に派生した大勢の曾孫達や玄孫達に看取られ99歳ゾロ目にて大往生してこちらの世界に転生したのだ。
この様に前世は、とぉーても子沢山の家系で転生後も「子沢山属性」を引き継ぐ事となる。
長年生粋の漁師として生きて来た前世のせいで先天的にめちゃくちゃ口が悪いが、基本的には真面目で善良、家族思いな幼児である。
残念ながら日本で100年近く生きた前世での記憶は転生の為に朧げでほぼ無いが感覚的には色々と何と無く覚えている感じだ。
その前世での漁協組合長の金銭感覚が今のカターニア公爵家の財政状態が「めっちゃヤバい」と警鐘を鳴らしているのだ。
帳簿を見ても全然カターニア公爵領の収入と支出が取れていない。
「おとうさま!これやばい!やばいです!なんすかこの出費??」
初めて父コーバ公爵からブン取った帳簿を見た時のセリスの愕然ぶりは凄かったらしい。
主な大幅支出の原因は両親の社会貢献の度が過ぎているからだ。
その行為自体はとても素晴らしい行いで、セリスも両親を誇りに思っているが、
「先ずは自分ん家の家計の事も考えてくれい!」ともセリスは思う。
カターニア公爵領の代官で叔父のバルトリト伯爵が何とか本領内の財政を切り盛りしてくれてるから破綻せずに乗り越えている状態なのだ。
最近は6歳になった双子の妹達も良くお肉を食べる様になり自分もたくさんお肉を食べて大きく成長せねばならぬ!
魚でも良いが得意の漁も悔しい事に「大陸中央部」に有る王都では不可能なのだ。
ならば「湖」で!と湖で漁をしたら、王家から「馬鹿者ーー!」とメッチャ怒られた・・・
王都近くにある湖は「特別環境保護区」なのだ、残念。
その為にも「ベン精肉店」との取り引き停止だけは断固阻止なのだ。
ちなみに野菜やパンなどは無駄に広い王都の公爵邸の庭園に有った花畑を申し訳程度に残して他全てを畑に変えて自家農園栽培で何とか賄っている。
自家農園には小麦畑まである始末で、一応は公爵邸に住む使用人も含めて飢え死にはしないがお肉だけはどうにもならない。
最近は規模が大きくなり過ぎて公爵家で収穫物を捌ききれずにその内市場に卸す予定だ。
ちなみに米関連の記憶はセリスの頭から全部無くなってしまった、・・・これは無念。
しかし北海道の日高地方で生まれ育ったので酪農の知識は少し覚えている。
「マジで公爵邸で酪農やってやらあ!」とセリスは思っているが、さすがに酪農は畑と違い簡単には出来ないので、まだまだ計画段階だ。
8歳の幼児が酪農をしようとする発想がかなりヤバいと思うが周りの使用人達は、「まぁ、セリス様だしね!」と思っている。
それでも土地が余りそうなので、「少し土地を売っぱらってやろうか?」と思ったが、その場合は王家からの許可が必要で、「さすがに怒られるよ」と叔父のバルトリト伯爵に却下された。
「それなら、かぶで、いんさいだー、とりひきを・・・」
「セリス?物騒な事を考えない様にね・・・」食い気味に姪を諌めるバルトリト伯爵。
株のインサイダー取り引きは当然この世界でも犯罪行為だ。
こんな感じに若干8歳のセリスは既に公爵家運営に深く関わっている、
叔父のバルトリト伯爵もこの変な姪を、「やべえ俺の姪っ子ってば天才かも」と叔父馬鹿全開で可愛がっている。
「なにか、もうけばなしを・・・」
8歳児にあるまじき言葉を呟きながら儲け話しを求めて王都の街をテクテクと歩く公爵令嬢のセリス。
王都内の移動に馬車?そんなもんに金を使うなら「ベン精肉店」のツケを払うわ!
「ホント困りますよね、旦那様達にも」
そう言いながらセリスの横を歩くのは、24歳で女性ながらに身長170cmの長身に茶色い髪に茶色の瞳の平民出身のセリス専属女性護衛騎士のフェナだ。
ぶっちゃけると、彼女はめちゃくちゃ強い、「他は足手纏いだから付いてくんな」と、男の護衛騎士を蹴散らすくらいには異常なレベルで強すぎる。
彼女の異常な強さの秘密は、おいおい判明して行きます。
この奇妙な奇天烈幼児セリスの事が大好きなフェナは「セリス様って面白いよね!」
との理由だけで王宮の騎士団の誘いを蹴り、薄給でカターニア公爵家に仕えている。
まぁ、彼女も相当な変わり者だと言う事だね。
「それなら公爵邸にストックされている金銀の取り引きで・・・あっ!うちの金銀達はすでに、みんなのおなかの中だったわ・・・」
オール平仮名だと読むのも疲れるのでセリフを通常のモノにしましょう・・・書く方も疲れるので。
古い公爵家だけあって美術品としての金銀細工や宝石はたくさんあるが、これを売っぱらったら先祖に祟られそうなので流石に手を付けていない。
「12歳になったら冒険者になれるのに・・・」
いくらチャランポランなこの世界でも8歳児を冒険者にするアホンダラは居ない・・・
冒険者になれるのは基本は15歳からだが、満12歳で、かなりの制限を受けてようやく1番下のGランクになれる。
Gランク冒険者の具体的な仕事は運送業の荷役やギルドの掃除などの仕事をする。
「セリス様は冒険者になるのですか?」
「冒険者の資格を取れば運送のアルバイトと清掃のアルバイトができるから・・・」
運送業→ポーターは冒険者の仕事なのだ。
Gランク冒険者の殆どは運送業の仕事の為に冒険者資格を取っている。
なぜ冒険者ギルドが運送業の管轄をしているかと言うと「5代目国王ライモンドがそう定めたから」だ。
詳しい理由は誰も知らん。
長年そうなっているので今更法律や運送システムを変えるのが大変なので国も冒険者ギルドに丸投げ状態になっている。
「セリス様・・・私、号泣して良いですか?」
「何言ってんのよ?私が運送業をやると貴女も付き合うハメになるのよ?」
「ええー!私もー!」
カターニア公爵家の専属護衛騎士は基本的に主が15歳の成人する時まで側を離れる事が出来ないので風呂に入るのも寝るのも一緒なのだ。
そこに令嬢専属メイドや妹達も加わって一緒に風呂に入って一緒に寝るのだから鬱陶しい事この上ないが、これはカターニア公爵家令嬢の宿命とも言える。
要するに経費削減の為に幼い3姉妹とメイドと護衛は同じ大部屋にぶち込まれて生活をしているのだ。
この一見すると大貴族令嬢に対して酷い扱いだが、将来的には3姉妹にとって社交性の向上など意外と良い効果を生み出す要因になる。
この様にセリスが運送業で駆け回ると必然的にフェナも駆け回る事になる。
「・・・・・・・・・・・・・・別口で報酬は貰えます?」
「一緒に走るんだから当然じゃない?」
「なら良いです」
「良いんだ・・・」
フェナは給料を貰えるなら細かい事を気にしないタイプなのだ。
そんな毎度の会話をしながら街中を歩いて行くと・・・
《あっ!セリス、そこを右に曲がって》と不意にセリスの頭に直接言葉が響く。
「ん?右?なにがあるの?」
《いいから、いいから》
始めてこの声が聞こえた時、「あんた誰?」とセリスが尋ねると、《霊視だよ》と答えて来たので「嘘つけ」と返したのが3年前、最近ではセリスも謎の声を別に気にしなくなり普通に会話をしている。
《霊視》に言われた通りに右に曲がると貴族達が多く住む住居区画だった。
「曲がったよ?」
《その道を真っ直ぐ歩くと大きな白いお屋敷があるからそこまで行って》
「んー?わかったよ」
200mほど歩くと、本当に白い大きな貴族のお屋敷があった。
セリスの実家は腐っても公爵家なので、このお屋敷の10倍以上はあるのだが。
「そうだよ!経費削減で使ってない古い建物も全部ぶっ壊して畑にすりゃ良いじゃん!」
そんな物騒な事を考えたセリスがマジで実行しようとしたら親に「公爵家の歴史が・・・」と、ガチで泣かれたから止めた。
「また妖精タンのお告げですか?」またか?と言った様子のフェナ。
霊視?と話しをしてる所を偶然フェナに見られて、「セリス様?!気でも触れたか?」と、危うく病院にぶち込まれそうになって、「「妖精タン」とお話ししてるのー」と、超ぶりっ子で誤魔化したのだが・・・
フェナに「セリス様、本当に気色悪いです」と言われて超イラついたセリス。
「そうだよ、なんかあるらしいわ」
なんで自家農園だの酪農だの難しい事を知っている?と聞かれたセリスは、面倒くさい事は全て「妖精タン」から聞いたと周囲には言っている。
《霊視にそんな知識ある訳ないじゃない!》
「やかましい!霊視め!頭ん中で叫ぶな!」と、そんなやり取りがあったのが2年前で周囲の人間は突然セリスが叫ぶ事にももう慣れた。
「で?ここに、なにがあるの?」
《セリスお金欲しんでしょ?それなら幽霊退治しようよ》
「幽霊退治の意味が分からんが金儲けの話しなら詳しく!」
《だから心霊現象で困ってる人を助けてお礼を貰う手なんてどう?》
「なるほど・・・しかし私には、幽霊退治とかそんな器用な能力など無い」
《大丈夫だって私も手助けするわ。
私が霊視で幽霊を見つけて、セリスがその良く回る口で説得するのよ」
「よくまわる、くちとかいうな!、こんな、はなしかたじゃ、むりよ」
セリスの舌足らずの言葉はこんな感じに周囲には聞こえています。
《大丈夫よ、私の力で精神体に直接話し掛けるから問題無しよ》
「・・・ちょっとまて、それあんたにも、つうよう、するんじゃない?」
《通用するよ》
「早く言えー!、5年間も無駄な苦労したわ!」
作者も2行ひらがなでセリフを書いただけで疲れたので通常モードに戻ります。
漢字変換機能とは人類と作者に取って偉大な発明品なのです。
周囲の人間には、セリスの言葉はまだ舌足らずに聞こえていると思って下さい。
「セリス様、1人漫才は終わりですか?」
「1人漫才言うな、私も地味に精神ダメージを受けたんだから」
《そのお屋敷には小さな女の子の霊が居るわ、説得して成仏させましょう!》
「えー?そんなに上手く行くモンなのかねぇ?」
こうして「幽霊退治屋」としての一歩を踏み出すセリスだったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
屋敷を見上げるセリスとフェナ・・・セリスは一つ息を吐き。
「不安しかないけど・・・お肉の為にやって見るしかないか・・・」と覚悟を決める
《そうですね、何事もやって見なきゃ分かりませんよ》
「それもそうだね、で?あんたの名前は?」
《私はイ・・・霊視です》
「あんた今、「イ」って言わなかった?」
《言ってません》
「そう?それで?これからどうするの?」
《幼児のセリスでは相手にしてくれないだろうから始めはフェナさんに行って貰います》
「だってさ、フェナ!GO!」
フェナはキョトンとした顔で「何がです?」と、当然の質問をして来た。
そりゃそうかと、セリスが一連の話しの内容を説明をすると、「上手く行きますか?そのガバガバな作戦?」セリスと同じ反応をするフェナ。
「それに先ず・・・多分通報されると思います」
そうだね、知らん人から見ると不審者以外の何者でも無いもんね、君達。
「私もそう思う、どうすんの?」
《ふっふっふっ、甘いわよセリス!
このお屋敷はクロッセート侯爵家の別邸なんですよ。
セリスとその従者なら間違い無く入れてくれるわ!》
「ん~?あー、クロッセート侯爵家かぁ、なるほどね確かに顔見知りだわ」
カターニア公爵とクロッセート侯爵は旧知の中でセリスも度々クロッセート侯爵と会った事がある。
ダメ元でフェナが扉をノックをすると若い執事さんが顔を出しセリスを見ると、
「・・・!!!カターニア公爵令嬢様?」かなり驚いた様子の執事さん。
「先ぶれも無く急な訪問、申し訳ありません」と、子供らしくペコリ普通に頭を下げるセリス。
セリスは公爵令嬢としてガッツリと鍛え上げているので美しいカーテシーも当然出来るが、状況的になんか白々しくなると思ったので普通に頭を下げたのだ。
「いえいえ、それで当家にはどの様なご用件で?」どうやらこれで正解だった様だ。
執事さんの警戒心が少し柔らかくなった感じがする。
「こちらは私の従者のフェナと申しますが、実はこの者は占星術の名手でして。
実家にて占いをしておりましたら、このお屋敷の中に何か超常的な存在を感知しまして・・・」
セリスが舌足らずにそう言うとフェナは悠然とした表情で頭を下げたが内心は大混乱だ。
《セリス様ー?!説明!事前の説明は大事ですよ!
ほうれんそう知ってます?
まぁ実際には占いは超得意なので任せて下さい、でも事前に説明はして下さい!》
幸か不幸か口から出まかせの訪問理由だったが、フェナは趣味で占いに傾倒していたのだ。占星術もお手の物だったりする。
すると若い執事さんは相当ビックリした様子になり少し考えると、「セリス様申し訳ありません、少々お待ち下さいますか?」と屋敷の中へ入って行った。
5分後、彼より上位の侍女と思われる年配の女性が出てきて、「クロッセート侯爵家で侍女長をしております、エリと申します」と頭を下げる。
「その・・・現在は旦那様も奥様も不在ですがセリス様に是非ともご相談したい事がありまして」
「もちろん大丈夫です、私もそのつもりで参りましたから」
ニコリと笑うセリスと無表情のフェナ・・・フェナは気を抜くと笑いそうだったので気合いで無表情になってるだけだが・・・
「すっごいわー、セリス様の口から出まかせの上手さと言ったら、ないわー」
そう考えると可笑しくて仕方がないのだ。
こうしてクロッセート侯爵家別邸に潜入成功したセリスだが、
《ここからどうすれば良いのかサッパリ分からん》と思った。
とりあえず客室に案内されて、お茶を出しながらエリが説明を始めた。
「実は先代様の妹君の幽霊が出るのです。
妹君は3歳の時に流行り病で亡くなられたのですが・・・以降40年近くこの屋敷の中を彷徨っておられて・・・」
そう話すエリの目から一粒の涙が落ちた。
「それは・・・お辛いでしょう」
「除霊師に頼もうかとも思ったのですが・・・かなり荒っぽいやり方と聞きまして先代様も旦那様も依頼を躊躇なされておられます」
「先代様と閣下の心中をお察し致します」
「・・・・・・・・・・」
セリスの公爵令嬢っぽい振る舞いを見て、思わず吹き出しそうになるのを必死こらえて、ますます無表情になる不敬なフェナだった。
フェナの考えなどお見通しのセリスは「こんにゃろめ」と思いつつ、頭の中で霊視と作戦会議をする事にした。
《で?これからどうすんの?私には除霊の作戦を考えるなんて器用な事は出来ないわよ?》
《とりあえず、それっぽい事を言ってお屋敷を探索しましょ?
まぁ、妹ちゃんの居場所はもう分かってるから安心して》
《へー?凄いねアンタ?
でもさ、フェナに通じて無いんだよ?霊視の声がフェナに聞こえたらなぁ》
《ん?出来るよ、やろうか?》
《そう言う事は早くせんかい!このボケ霊視め!》
《相変わらず口悪っ!・・・・・・・・・・・前世で何があったのやら》
《なんか言った?》
《何も?じゃあフェナに話し掛けるわよ?」
すると霊視の声がフェナに聞こえたのだろう、フェナがピクリとする。
無表情でも目だけは驚いてるのが分かる、ちなみに霊視とフェナの会話はセリスには聞こえ無い。
説明を続けるエリの話しを聞くセリスが横目でチラッとフェナを見るとフェナの目が思い切り笑っていやがりましたよ!
《あいつら~、ぜってー私の悪口で盛り上がってんな」
そう思うセリスだが公爵令嬢の微笑みは消さないのだ。
一通りの説明を聞き終えると、
「では、従者のフェナに占星術を使いながらお屋敷の中を見て貰ってからどうするか決めましょう」
「よろしくお願いします」
エリが同意したので早速、お屋敷内の探索に出る事にした。
「それで?その妹ちゃん、どこに居るの?」
《2階に居るわよ、でも少しは勿体ぶらなきゃ、一階から探索しよ?》
「わかったよ、んで?お前らさっき私の悪口言ってただろ?」
《言ってないよ?》
「嘘つけ」
フェナは小さな水晶を取り出して水晶に導かれる様に1階を探索する・・・
実際には霊視に導かれてるのだが。
するとフェナは紙に何か訳分からん文字を書いて壁にペタペタ貼り出した。
「いや、お前何してんの?」変な物を見る目でフェナを見るセリス。
《こう言うのは演出だよ、分かってないなぁ、セリスは》
そう言って人を小馬鹿にして来る霊視にムカついたセリスだった。
《ああ!そうだ!私の視覚をセリスと共有するの忘れてたわ、フェナとはもう共有しているけど》
「だから!そう言う大事な事は先にやっとけっての!」
《はいはい、行くよ~》
するとセリスの視界が変化する。
クリアになったと言うか・・・遠くの物も自分の意思でズームになって見えるのだ。
「・・・いや・・・あんたの事舐めてたわ、凄いねこれ」
《へっへ~ん、そうでしょう、そうでしょう》なぜか得意気な霊視。
実際に凄いのは霊視では無く「魔王のスキル」が凄いのだが、ここでは関係無いので省略します。
完全に面白がりセリスが周囲をキョロキョロと見ると、2階部分の階段の手すりからヒョコっと顔を出しこちらを見ているワンピース姿の黒髪の女の子が居た。
「えっ?あの子?」
《そうだよ》
「可愛い普通の女の子にしか見えないけど?本当に幽霊??」
《悪意が無いからね》
「ほへぇ~そうなんだ・・・それで?あんたの名前は?」
《イリ・・・霊視だってば》
「今、「イリ」って言った?」
《言ってない》
じーと見ている女の子にニコッと笑いセリスが手を振ると「ピャ?」っと言った様子で手すりの影に隠れる幽霊の女の子。
「え?凄く可愛いんですけど?」
そんな事をしている間にもフェナはドンドンと変な紙をペタペタ壁に貼り続けていた。
「いやお前?どんだけ貼ってんの?もう良いから!紙代が勿体ないよ!」
この世界の紙代はとても、とぉーてもお高いのです。
この時、フェナが無駄遣いした紙代は5万円相当なり(チーン)
「止めなさい!そろそろ二階へ上がりますわよ?!」
「ああ!もう少しで「対魔結界」が張れるのにぃ」
セリスはズリズリとフェナを引っ張る・・・のは無理なのでお腹に抱きついて土俵際へ寄せて行く。
そして遂に2階への階段を上がる、セリスとフェナ。
妹ちゃんはちょこちょこと走りながら廊下の陰へと逃げて行った。
《可愛いな!妹ちゃん!》と思いながら、「さあ!いよいよ説得開始ですわよ!」セリスが気合いを入れると、「うわぁ・・・セリス様の「ですわよ」って本当に気色悪いですねー」とフェナに言われて、「わたくしもそう思いますことよ、おーほほほほ」と反撃してやった。
階段を上がり廊下の端っこに居る妹ちゃんを刺激しない様に近づくと、先ずはフェナが膝立ちで座り「チッチッチッ」と妹ちゃんを呼ぶ。
「いや猫か?!」
すると手すりの陰からジーとこちらを見ていた妹ちゃんはちょこちょことセリスとフェナの側に寄って来た。
「いや妹ちゃんも出て来るんかい!」
「言葉は解りますか?」フェナが優しく問いかけると首を傾げる妹ちゃん。
《長い間、霊魂のままでいたから言葉を忘れちゃったのね》
「そっか~、おいで妹ちゃん」
セリスが両手を広げると妹ちゃんはセリスにテテテテと駆け寄りスルンとセリスの中に入ってしまった。
「うええええ?!おっお嬢様?!大丈夫ですか?!」
いきなり妹ちゃんに取り憑かれたセリスに驚くフェナ。
「ん~?・・・いや、特に変な感じはないよ、つーか何でお嬢様呼びになるのよ?」
そう言いながらセリスはフェナの前でクルンと一回りすると・・・
「おお?!可愛い!!今のは気色悪くありませんでした!」
「お前は気色良い悪いベースでしか私の事を語れんのかい!」
《うふふふ、妹ちゃんはずっと1人で寂しかったのね、セリスの魂にしがみ付いてるよ》
「そっか~、じゃあ気の済むままそこに居ても良いよ」
心の中で背中をポンポンしてやると妹ちゃんが「ムニムニ」をした感じがした。
もう記憶は無いが、セリスには5人の子供を育てた経験がある。
無意識に子供にどう接するのか良いか分かるのだ、今の妹ちゃんに必要なのは母親の体温なのだ。
《凄いねセリス、妹ちゃんはセリスの魂に寄り添ってあっという間に寝ちゃったわ》
「えっ?どうすれば良いの?」
《気が済むまで寝たら成仏すると思うわよ》
「そっか~、ゆっくりとおやすみ」もう意識の中で一回ポンポンをする。
「セリスお嬢様の事見直しました。
ただの変なお子様じゃなかったのですね」
「変なお子様言うな」
こうして妹ちゃんのえ説得は終わったのだった・・・
いや何の説得もしてないじゃないか!と言う苦情は現在受け付けておりません。
それにアッサリし過ぎてねぇか?と言う苦情には「除霊はこんな感じです」とだけ。
妹ちゃんはセリスが責任を持って成仏させる事をエリに伝えるとエリは嬉し涙を流して号泣してしまった。
ずっとエリも辛かったんだね、ちゃんとセリスが成仏させてくれるよ。
「後はわたくしに全てをお任せ下さいませと侯爵閣下にお伝え下さいまし」
フェナに対する嫌がらせで思い切り公爵令嬢っぽく言ってやったセリス。
期待通りにフェナにダメージが入ると「へっザマァ!」と思った。
こうして初仕事を終えて公爵邸へ帰宅するセリスとフェナ。
ちなみに今回の収入は・・・フェナが無駄に使った紙代、-5万円相当なり
「大赤字じゃねえか?!しかも結構痛い!フェナのぶわかぁー!うわぁんん!!」
セリスは泣いた・・・それはもう子供っぽく。
さすがに悪いと思ったのかフェナはシュンとしている。
しかしこの時、セリスが金銭を要求しなかった事がセリスの除霊に対する良い評判を呼ぶ事になる。
後日、クロッセート侯爵が公爵邸にお礼に訪れると領地の特産品であるソーセージを大量に持って来てくれて、セリスは感涙する事になる。
ちなみに妹ちゃんは3ヶ月後に成仏して輪廻の輪の中に無事に入ったのだった。
その事をクロッセート侯爵に伝えると追加のソーセージが届いた!やったね!
「結構良い仕事かもね!」
目の前のソーセージの山を見てご満悦のセリス、日持ちするのも嬉しい。
《次の幽霊退治を探して見る?》
「うん!やろう!」
幽霊退治屋として本格的に活動を始めるセリスだった。
《カターニア公爵家の娘に3歳の誕生日が来たそうだ》
《当然知っているわ、うふふふふ、そうね、あの子が3歳になったのよ魔王・・・
遂に・・・遂に私が動き出す時が来たわ》
《分かっておると思うが無理はするなよ?・・・・・・・死ぬぞ?》
《分かっているわ》
南の大陸中央部に聳え立つ巨大な魔王城の魔王の間にて「死ぬ」とか何やら不穏な話し合いがされている。
《あの子の未来、しっかりと見届けさせてもらうわよ》
《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だから無理すんなよ!》
《魔王しつっこい!!》
魔王と話す女性は一体何者なのだろうか・・・そして彼女の目的とは?
「あの子」やらの運命は?
これから5年後の「あの子」が8歳になった時から物語が始まる・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここは魔法がある世界・・・その中に存在するピアツェンツェア王国。
中央大陸の中央部に位置して中央大陸の80%を支配している大国だ。
そのピアツェンツア王国の3大公爵家の一つにカターニア公爵家がある。
かの家は国内でも絶大な権力を誇り、また国内有数の超がつく「貧乏」な公爵家だった。
何で?と言われても貧乏なのだから仕方ないのだ。
そんなカターニア公爵家に産まれた長女、現在8歳の娘が「セリス・フォン・カターニア」だ。
彼女がこの物語の主人公である。
「おとうさま!まずはおいえのことからです!」
現在セリスは舌足らずの言葉で一生懸命に必死で父のコーバス公爵を諫めている。
父親譲りのキラキラした淡い金髪に濃い青色の碧眼、母親譲りの容姿は将来は絶世の美女になる事が約束された整った顔立ちの可愛いらしい少女だ。
「うむうむ、そうだなセリス、それは大事な事だな」
必死で自分を諌める娘の頭をヨシヨシと撫でるコーバ公爵だが、娘のセリスにしては、たまったモンではないのだ!
「おとうさま!ベンせいにくてん、と、とりひきが、ていしすると、カターニア家はおわり、なのですよ!」
「ええい!幼児の口じゃあ上手く喋れんわい!つーか何で8歳なのにちゃんと喋れんのだ?!」と自分の不甲斐無さに憤慨するセリス。
舌足らずなのは、単に成長途中のセリスの口が小さいだけで数年も掛からずに直ぐに治るのだが・・・
そして彼女は基本的には「口が悪い」のだ。
表向き普段は淑女らしいお淑やかな喋り方だが、知らん人が誰も居ない時とか怒った時に途端に口が悪くなる性質がある。
と言うのも最初にぶっちゃけると彼女の前世は日本人だったからだ。
元日本人だと口が悪いのか?と言われるとそうでは無く、前世の彼女の生き様が先天的に口を悪くしている。
セリスの前世は西暦1914年、大正3年の第1次世界大戦が開戦した年に日本人の八千代として生まれて激動の大東亜戦争(太平洋戦争)を経て、平成の中期まで99歳まで長生きした苦労人だった。
「うおお!!マジか!100歳まで生きられんかったとは!少し残念!」
と・・・とぉーても元気な最後の言葉を残しての素晴らしい大往生だったと言う。
あまりにも元気ハツラツな最後だったので最初の5分ほどは医者も八千代が亡くなった事が分からなかったとの事だった。
「あれ?八千代さん?・・・ああ!亡くなってます??あれ?本当に?」
医者も半信半疑で静かになった八千代の脈を測るとやっぱり亡くなっていた・・・
そしてようやく嘆き悲しむ八千代の最後を看取った「200名弱」の親族達と知人達・・・
めっちゃ多くね?病院の部屋の中がパンパンじゃん?
廊下か?廊下にはみ出しているのか?と言う心配は御無用、要領の良い八千代は本人希望で病院から自宅療養に切り替えていたのだ。
病院側も日に30人単位で八千代の見舞いに群れを形成して来やがる人達に嫌気がさしていたのか、「どうぞどうぞ」状態だったらしい。
「うおおお!かあさーーーん!!
頑張った!かあさんより何とか頑張って生き残った俺偉い!」
親より先に死ねん!と、途中リタイヤした弟達の思いを胸に頑張った齢80歳の長男が雄叫びを上げる!
お爺ちゃん!とぉーても元気そうで何よりです!後20年位は行けそうだね!
「おばあちゃーーーーん!!」もうすぐ還暦を迎える齢58歳の孫娘。
「ひいばあちゃーーーーん!!」
もうすぐ3歳になる八千代の玄孫を抱きしめ泣く齢23歳の曾孫娘。
他にも大量の子孫達が集う、とにかくうるさく賑やかな最後だったのだ。
「理事長ーーー!!」
「親方ーーーー!!」
・・・・・・・・いや、最後の「親方」っておかしくね?
親方と言うのは八千代は北海道は日高地方の漁師の娘として産まれ、太平洋戦争で負傷し引退した父親に代わって漁船「煌々丸」を受け継ぎ、女性ながらに15歳で漁師となり、戦後の混乱期を夫と共に太平洋の荒波に揉まれながら毛蟹と昆布を捕りまくって乗り越えたのだ。
資源保護の禁漁期間中に行商も積極的に行い「日高昆布」の知名度を全国区に押し上げて日高漁協組合の理事長も務めたほどに頑張ったのだ!
なので引退した後も漁協の重鎮達から「親方」や「理事長」と呼ばれて親しまれていた。
私生活の面では5人の息子を見事に育て上げて、その5人の息子達から更に派生した大勢の曾孫達や玄孫達に看取られ99歳ゾロ目にて大往生してこちらの世界に転生したのだ。
この様に前世は、とぉーても子沢山の家系で転生後も「子沢山属性」を引き継ぐ事となる。
長年生粋の漁師として生きて来た前世のせいで先天的にめちゃくちゃ口が悪いが、基本的には真面目で善良、家族思いな幼児である。
残念ながら日本で100年近く生きた前世での記憶は転生の為に朧げでほぼ無いが感覚的には色々と何と無く覚えている感じだ。
その前世での漁協組合長の金銭感覚が今のカターニア公爵家の財政状態が「めっちゃヤバい」と警鐘を鳴らしているのだ。
帳簿を見ても全然カターニア公爵領の収入と支出が取れていない。
「おとうさま!これやばい!やばいです!なんすかこの出費??」
初めて父コーバ公爵からブン取った帳簿を見た時のセリスの愕然ぶりは凄かったらしい。
主な大幅支出の原因は両親の社会貢献の度が過ぎているからだ。
その行為自体はとても素晴らしい行いで、セリスも両親を誇りに思っているが、
「先ずは自分ん家の家計の事も考えてくれい!」ともセリスは思う。
カターニア公爵領の代官で叔父のバルトリト伯爵が何とか本領内の財政を切り盛りしてくれてるから破綻せずに乗り越えている状態なのだ。
最近は6歳になった双子の妹達も良くお肉を食べる様になり自分もたくさんお肉を食べて大きく成長せねばならぬ!
魚でも良いが得意の漁も悔しい事に「大陸中央部」に有る王都では不可能なのだ。
ならば「湖」で!と湖で漁をしたら、王家から「馬鹿者ーー!」とメッチャ怒られた・・・
王都近くにある湖は「特別環境保護区」なのだ、残念。
その為にも「ベン精肉店」との取り引き停止だけは断固阻止なのだ。
ちなみに野菜やパンなどは無駄に広い王都の公爵邸の庭園に有った花畑を申し訳程度に残して他全てを畑に変えて自家農園栽培で何とか賄っている。
自家農園には小麦畑まである始末で、一応は公爵邸に住む使用人も含めて飢え死にはしないがお肉だけはどうにもならない。
最近は規模が大きくなり過ぎて公爵家で収穫物を捌ききれずにその内市場に卸す予定だ。
ちなみに米関連の記憶はセリスの頭から全部無くなってしまった、・・・これは無念。
しかし北海道の日高地方で生まれ育ったので酪農の知識は少し覚えている。
「マジで公爵邸で酪農やってやらあ!」とセリスは思っているが、さすがに酪農は畑と違い簡単には出来ないので、まだまだ計画段階だ。
8歳の幼児が酪農をしようとする発想がかなりヤバいと思うが周りの使用人達は、「まぁ、セリス様だしね!」と思っている。
それでも土地が余りそうなので、「少し土地を売っぱらってやろうか?」と思ったが、その場合は王家からの許可が必要で、「さすがに怒られるよ」と叔父のバルトリト伯爵に却下された。
「それなら、かぶで、いんさいだー、とりひきを・・・」
「セリス?物騒な事を考えない様にね・・・」食い気味に姪を諌めるバルトリト伯爵。
株のインサイダー取り引きは当然この世界でも犯罪行為だ。
こんな感じに若干8歳のセリスは既に公爵家運営に深く関わっている、
叔父のバルトリト伯爵もこの変な姪を、「やべえ俺の姪っ子ってば天才かも」と叔父馬鹿全開で可愛がっている。
「なにか、もうけばなしを・・・」
8歳児にあるまじき言葉を呟きながら儲け話しを求めて王都の街をテクテクと歩く公爵令嬢のセリス。
王都内の移動に馬車?そんなもんに金を使うなら「ベン精肉店」のツケを払うわ!
「ホント困りますよね、旦那様達にも」
そう言いながらセリスの横を歩くのは、24歳で女性ながらに身長170cmの長身に茶色い髪に茶色の瞳の平民出身のセリス専属女性護衛騎士のフェナだ。
ぶっちゃけると、彼女はめちゃくちゃ強い、「他は足手纏いだから付いてくんな」と、男の護衛騎士を蹴散らすくらいには異常なレベルで強すぎる。
彼女の異常な強さの秘密は、おいおい判明して行きます。
この奇妙な奇天烈幼児セリスの事が大好きなフェナは「セリス様って面白いよね!」
との理由だけで王宮の騎士団の誘いを蹴り、薄給でカターニア公爵家に仕えている。
まぁ、彼女も相当な変わり者だと言う事だね。
「それなら公爵邸にストックされている金銀の取り引きで・・・あっ!うちの金銀達はすでに、みんなのおなかの中だったわ・・・」
オール平仮名だと読むのも疲れるのでセリフを通常のモノにしましょう・・・書く方も疲れるので。
古い公爵家だけあって美術品としての金銀細工や宝石はたくさんあるが、これを売っぱらったら先祖に祟られそうなので流石に手を付けていない。
「12歳になったら冒険者になれるのに・・・」
いくらチャランポランなこの世界でも8歳児を冒険者にするアホンダラは居ない・・・
冒険者になれるのは基本は15歳からだが、満12歳で、かなりの制限を受けてようやく1番下のGランクになれる。
Gランク冒険者の具体的な仕事は運送業の荷役やギルドの掃除などの仕事をする。
「セリス様は冒険者になるのですか?」
「冒険者の資格を取れば運送のアルバイトと清掃のアルバイトができるから・・・」
運送業→ポーターは冒険者の仕事なのだ。
Gランク冒険者の殆どは運送業の仕事の為に冒険者資格を取っている。
なぜ冒険者ギルドが運送業の管轄をしているかと言うと「5代目国王ライモンドがそう定めたから」だ。
詳しい理由は誰も知らん。
長年そうなっているので今更法律や運送システムを変えるのが大変なので国も冒険者ギルドに丸投げ状態になっている。
「セリス様・・・私、号泣して良いですか?」
「何言ってんのよ?私が運送業をやると貴女も付き合うハメになるのよ?」
「ええー!私もー!」
カターニア公爵家の専属護衛騎士は基本的に主が15歳の成人する時まで側を離れる事が出来ないので風呂に入るのも寝るのも一緒なのだ。
そこに令嬢専属メイドや妹達も加わって一緒に風呂に入って一緒に寝るのだから鬱陶しい事この上ないが、これはカターニア公爵家令嬢の宿命とも言える。
要するに経費削減の為に幼い3姉妹とメイドと護衛は同じ大部屋にぶち込まれて生活をしているのだ。
この一見すると大貴族令嬢に対して酷い扱いだが、将来的には3姉妹にとって社交性の向上など意外と良い効果を生み出す要因になる。
この様にセリスが運送業で駆け回ると必然的にフェナも駆け回る事になる。
「・・・・・・・・・・・・・・別口で報酬は貰えます?」
「一緒に走るんだから当然じゃない?」
「なら良いです」
「良いんだ・・・」
フェナは給料を貰えるなら細かい事を気にしないタイプなのだ。
そんな毎度の会話をしながら街中を歩いて行くと・・・
《あっ!セリス、そこを右に曲がって》と不意にセリスの頭に直接言葉が響く。
「ん?右?なにがあるの?」
《いいから、いいから》
始めてこの声が聞こえた時、「あんた誰?」とセリスが尋ねると、《霊視だよ》と答えて来たので「嘘つけ」と返したのが3年前、最近ではセリスも謎の声を別に気にしなくなり普通に会話をしている。
《霊視》に言われた通りに右に曲がると貴族達が多く住む住居区画だった。
「曲がったよ?」
《その道を真っ直ぐ歩くと大きな白いお屋敷があるからそこまで行って》
「んー?わかったよ」
200mほど歩くと、本当に白い大きな貴族のお屋敷があった。
セリスの実家は腐っても公爵家なので、このお屋敷の10倍以上はあるのだが。
「そうだよ!経費削減で使ってない古い建物も全部ぶっ壊して畑にすりゃ良いじゃん!」
そんな物騒な事を考えたセリスがマジで実行しようとしたら親に「公爵家の歴史が・・・」と、ガチで泣かれたから止めた。
「また妖精タンのお告げですか?」またか?と言った様子のフェナ。
霊視?と話しをしてる所を偶然フェナに見られて、「セリス様?!気でも触れたか?」と、危うく病院にぶち込まれそうになって、「「妖精タン」とお話ししてるのー」と、超ぶりっ子で誤魔化したのだが・・・
フェナに「セリス様、本当に気色悪いです」と言われて超イラついたセリス。
「そうだよ、なんかあるらしいわ」
なんで自家農園だの酪農だの難しい事を知っている?と聞かれたセリスは、面倒くさい事は全て「妖精タン」から聞いたと周囲には言っている。
《霊視にそんな知識ある訳ないじゃない!》
「やかましい!霊視め!頭ん中で叫ぶな!」と、そんなやり取りがあったのが2年前で周囲の人間は突然セリスが叫ぶ事にももう慣れた。
「で?ここに、なにがあるの?」
《セリスお金欲しんでしょ?それなら幽霊退治しようよ》
「幽霊退治の意味が分からんが金儲けの話しなら詳しく!」
《だから心霊現象で困ってる人を助けてお礼を貰う手なんてどう?》
「なるほど・・・しかし私には、幽霊退治とかそんな器用な能力など無い」
《大丈夫だって私も手助けするわ。
私が霊視で幽霊を見つけて、セリスがその良く回る口で説得するのよ」
「よくまわる、くちとかいうな!、こんな、はなしかたじゃ、むりよ」
セリスの舌足らずの言葉はこんな感じに周囲には聞こえています。
《大丈夫よ、私の力で精神体に直接話し掛けるから問題無しよ》
「・・・ちょっとまて、それあんたにも、つうよう、するんじゃない?」
《通用するよ》
「早く言えー!、5年間も無駄な苦労したわ!」
作者も2行ひらがなでセリフを書いただけで疲れたので通常モードに戻ります。
漢字変換機能とは人類と作者に取って偉大な発明品なのです。
周囲の人間には、セリスの言葉はまだ舌足らずに聞こえていると思って下さい。
「セリス様、1人漫才は終わりですか?」
「1人漫才言うな、私も地味に精神ダメージを受けたんだから」
《そのお屋敷には小さな女の子の霊が居るわ、説得して成仏させましょう!》
「えー?そんなに上手く行くモンなのかねぇ?」
こうして「幽霊退治屋」としての一歩を踏み出すセリスだったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
屋敷を見上げるセリスとフェナ・・・セリスは一つ息を吐き。
「不安しかないけど・・・お肉の為にやって見るしかないか・・・」と覚悟を決める
《そうですね、何事もやって見なきゃ分かりませんよ》
「それもそうだね、で?あんたの名前は?」
《私はイ・・・霊視です》
「あんた今、「イ」って言わなかった?」
《言ってません》
「そう?それで?これからどうするの?」
《幼児のセリスでは相手にしてくれないだろうから始めはフェナさんに行って貰います》
「だってさ、フェナ!GO!」
フェナはキョトンとした顔で「何がです?」と、当然の質問をして来た。
そりゃそうかと、セリスが一連の話しの内容を説明をすると、「上手く行きますか?そのガバガバな作戦?」セリスと同じ反応をするフェナ。
「それに先ず・・・多分通報されると思います」
そうだね、知らん人から見ると不審者以外の何者でも無いもんね、君達。
「私もそう思う、どうすんの?」
《ふっふっふっ、甘いわよセリス!
このお屋敷はクロッセート侯爵家の別邸なんですよ。
セリスとその従者なら間違い無く入れてくれるわ!》
「ん~?あー、クロッセート侯爵家かぁ、なるほどね確かに顔見知りだわ」
カターニア公爵とクロッセート侯爵は旧知の中でセリスも度々クロッセート侯爵と会った事がある。
ダメ元でフェナが扉をノックをすると若い執事さんが顔を出しセリスを見ると、
「・・・!!!カターニア公爵令嬢様?」かなり驚いた様子の執事さん。
「先ぶれも無く急な訪問、申し訳ありません」と、子供らしくペコリ普通に頭を下げるセリス。
セリスは公爵令嬢としてガッツリと鍛え上げているので美しいカーテシーも当然出来るが、状況的になんか白々しくなると思ったので普通に頭を下げたのだ。
「いえいえ、それで当家にはどの様なご用件で?」どうやらこれで正解だった様だ。
執事さんの警戒心が少し柔らかくなった感じがする。
「こちらは私の従者のフェナと申しますが、実はこの者は占星術の名手でして。
実家にて占いをしておりましたら、このお屋敷の中に何か超常的な存在を感知しまして・・・」
セリスが舌足らずにそう言うとフェナは悠然とした表情で頭を下げたが内心は大混乱だ。
《セリス様ー?!説明!事前の説明は大事ですよ!
ほうれんそう知ってます?
まぁ実際には占いは超得意なので任せて下さい、でも事前に説明はして下さい!》
幸か不幸か口から出まかせの訪問理由だったが、フェナは趣味で占いに傾倒していたのだ。占星術もお手の物だったりする。
すると若い執事さんは相当ビックリした様子になり少し考えると、「セリス様申し訳ありません、少々お待ち下さいますか?」と屋敷の中へ入って行った。
5分後、彼より上位の侍女と思われる年配の女性が出てきて、「クロッセート侯爵家で侍女長をしております、エリと申します」と頭を下げる。
「その・・・現在は旦那様も奥様も不在ですがセリス様に是非ともご相談したい事がありまして」
「もちろん大丈夫です、私もそのつもりで参りましたから」
ニコリと笑うセリスと無表情のフェナ・・・フェナは気を抜くと笑いそうだったので気合いで無表情になってるだけだが・・・
「すっごいわー、セリス様の口から出まかせの上手さと言ったら、ないわー」
そう考えると可笑しくて仕方がないのだ。
こうしてクロッセート侯爵家別邸に潜入成功したセリスだが、
《ここからどうすれば良いのかサッパリ分からん》と思った。
とりあえず客室に案内されて、お茶を出しながらエリが説明を始めた。
「実は先代様の妹君の幽霊が出るのです。
妹君は3歳の時に流行り病で亡くなられたのですが・・・以降40年近くこの屋敷の中を彷徨っておられて・・・」
そう話すエリの目から一粒の涙が落ちた。
「それは・・・お辛いでしょう」
「除霊師に頼もうかとも思ったのですが・・・かなり荒っぽいやり方と聞きまして先代様も旦那様も依頼を躊躇なされておられます」
「先代様と閣下の心中をお察し致します」
「・・・・・・・・・・」
セリスの公爵令嬢っぽい振る舞いを見て、思わず吹き出しそうになるのを必死こらえて、ますます無表情になる不敬なフェナだった。
フェナの考えなどお見通しのセリスは「こんにゃろめ」と思いつつ、頭の中で霊視と作戦会議をする事にした。
《で?これからどうすんの?私には除霊の作戦を考えるなんて器用な事は出来ないわよ?》
《とりあえず、それっぽい事を言ってお屋敷を探索しましょ?
まぁ、妹ちゃんの居場所はもう分かってるから安心して》
《へー?凄いねアンタ?
でもさ、フェナに通じて無いんだよ?霊視の声がフェナに聞こえたらなぁ》
《ん?出来るよ、やろうか?》
《そう言う事は早くせんかい!このボケ霊視め!》
《相変わらず口悪っ!・・・・・・・・・・・前世で何があったのやら》
《なんか言った?》
《何も?じゃあフェナに話し掛けるわよ?」
すると霊視の声がフェナに聞こえたのだろう、フェナがピクリとする。
無表情でも目だけは驚いてるのが分かる、ちなみに霊視とフェナの会話はセリスには聞こえ無い。
説明を続けるエリの話しを聞くセリスが横目でチラッとフェナを見るとフェナの目が思い切り笑っていやがりましたよ!
《あいつら~、ぜってー私の悪口で盛り上がってんな」
そう思うセリスだが公爵令嬢の微笑みは消さないのだ。
一通りの説明を聞き終えると、
「では、従者のフェナに占星術を使いながらお屋敷の中を見て貰ってからどうするか決めましょう」
「よろしくお願いします」
エリが同意したので早速、お屋敷内の探索に出る事にした。
「それで?その妹ちゃん、どこに居るの?」
《2階に居るわよ、でも少しは勿体ぶらなきゃ、一階から探索しよ?》
「わかったよ、んで?お前らさっき私の悪口言ってただろ?」
《言ってないよ?》
「嘘つけ」
フェナは小さな水晶を取り出して水晶に導かれる様に1階を探索する・・・
実際には霊視に導かれてるのだが。
するとフェナは紙に何か訳分からん文字を書いて壁にペタペタ貼り出した。
「いや、お前何してんの?」変な物を見る目でフェナを見るセリス。
《こう言うのは演出だよ、分かってないなぁ、セリスは》
そう言って人を小馬鹿にして来る霊視にムカついたセリスだった。
《ああ!そうだ!私の視覚をセリスと共有するの忘れてたわ、フェナとはもう共有しているけど》
「だから!そう言う大事な事は先にやっとけっての!」
《はいはい、行くよ~》
するとセリスの視界が変化する。
クリアになったと言うか・・・遠くの物も自分の意思でズームになって見えるのだ。
「・・・いや・・・あんたの事舐めてたわ、凄いねこれ」
《へっへ~ん、そうでしょう、そうでしょう》なぜか得意気な霊視。
実際に凄いのは霊視では無く「魔王のスキル」が凄いのだが、ここでは関係無いので省略します。
完全に面白がりセリスが周囲をキョロキョロと見ると、2階部分の階段の手すりからヒョコっと顔を出しこちらを見ているワンピース姿の黒髪の女の子が居た。
「えっ?あの子?」
《そうだよ》
「可愛い普通の女の子にしか見えないけど?本当に幽霊??」
《悪意が無いからね》
「ほへぇ~そうなんだ・・・それで?あんたの名前は?」
《イリ・・・霊視だってば》
「今、「イリ」って言った?」
《言ってない》
じーと見ている女の子にニコッと笑いセリスが手を振ると「ピャ?」っと言った様子で手すりの影に隠れる幽霊の女の子。
「え?凄く可愛いんですけど?」
そんな事をしている間にもフェナはドンドンと変な紙をペタペタ壁に貼り続けていた。
「いやお前?どんだけ貼ってんの?もう良いから!紙代が勿体ないよ!」
この世界の紙代はとても、とぉーてもお高いのです。
この時、フェナが無駄遣いした紙代は5万円相当なり(チーン)
「止めなさい!そろそろ二階へ上がりますわよ?!」
「ああ!もう少しで「対魔結界」が張れるのにぃ」
セリスはズリズリとフェナを引っ張る・・・のは無理なのでお腹に抱きついて土俵際へ寄せて行く。
そして遂に2階への階段を上がる、セリスとフェナ。
妹ちゃんはちょこちょこと走りながら廊下の陰へと逃げて行った。
《可愛いな!妹ちゃん!》と思いながら、「さあ!いよいよ説得開始ですわよ!」セリスが気合いを入れると、「うわぁ・・・セリス様の「ですわよ」って本当に気色悪いですねー」とフェナに言われて、「わたくしもそう思いますことよ、おーほほほほ」と反撃してやった。
階段を上がり廊下の端っこに居る妹ちゃんを刺激しない様に近づくと、先ずはフェナが膝立ちで座り「チッチッチッ」と妹ちゃんを呼ぶ。
「いや猫か?!」
すると手すりの陰からジーとこちらを見ていた妹ちゃんはちょこちょことセリスとフェナの側に寄って来た。
「いや妹ちゃんも出て来るんかい!」
「言葉は解りますか?」フェナが優しく問いかけると首を傾げる妹ちゃん。
《長い間、霊魂のままでいたから言葉を忘れちゃったのね》
「そっか~、おいで妹ちゃん」
セリスが両手を広げると妹ちゃんはセリスにテテテテと駆け寄りスルンとセリスの中に入ってしまった。
「うええええ?!おっお嬢様?!大丈夫ですか?!」
いきなり妹ちゃんに取り憑かれたセリスに驚くフェナ。
「ん~?・・・いや、特に変な感じはないよ、つーか何でお嬢様呼びになるのよ?」
そう言いながらセリスはフェナの前でクルンと一回りすると・・・
「おお?!可愛い!!今のは気色悪くありませんでした!」
「お前は気色良い悪いベースでしか私の事を語れんのかい!」
《うふふふ、妹ちゃんはずっと1人で寂しかったのね、セリスの魂にしがみ付いてるよ》
「そっか~、じゃあ気の済むままそこに居ても良いよ」
心の中で背中をポンポンしてやると妹ちゃんが「ムニムニ」をした感じがした。
もう記憶は無いが、セリスには5人の子供を育てた経験がある。
無意識に子供にどう接するのか良いか分かるのだ、今の妹ちゃんに必要なのは母親の体温なのだ。
《凄いねセリス、妹ちゃんはセリスの魂に寄り添ってあっという間に寝ちゃったわ》
「えっ?どうすれば良いの?」
《気が済むまで寝たら成仏すると思うわよ》
「そっか~、ゆっくりとおやすみ」もう意識の中で一回ポンポンをする。
「セリスお嬢様の事見直しました。
ただの変なお子様じゃなかったのですね」
「変なお子様言うな」
こうして妹ちゃんのえ説得は終わったのだった・・・
いや何の説得もしてないじゃないか!と言う苦情は現在受け付けておりません。
それにアッサリし過ぎてねぇか?と言う苦情には「除霊はこんな感じです」とだけ。
妹ちゃんはセリスが責任を持って成仏させる事をエリに伝えるとエリは嬉し涙を流して号泣してしまった。
ずっとエリも辛かったんだね、ちゃんとセリスが成仏させてくれるよ。
「後はわたくしに全てをお任せ下さいませと侯爵閣下にお伝え下さいまし」
フェナに対する嫌がらせで思い切り公爵令嬢っぽく言ってやったセリス。
期待通りにフェナにダメージが入ると「へっザマァ!」と思った。
こうして初仕事を終えて公爵邸へ帰宅するセリスとフェナ。
ちなみに今回の収入は・・・フェナが無駄に使った紙代、-5万円相当なり
「大赤字じゃねえか?!しかも結構痛い!フェナのぶわかぁー!うわぁんん!!」
セリスは泣いた・・・それはもう子供っぽく。
さすがに悪いと思ったのかフェナはシュンとしている。
しかしこの時、セリスが金銭を要求しなかった事がセリスの除霊に対する良い評判を呼ぶ事になる。
後日、クロッセート侯爵が公爵邸にお礼に訪れると領地の特産品であるソーセージを大量に持って来てくれて、セリスは感涙する事になる。
ちなみに妹ちゃんは3ヶ月後に成仏して輪廻の輪の中に無事に入ったのだった。
その事をクロッセート侯爵に伝えると追加のソーセージが届いた!やったね!
「結構良い仕事かもね!」
目の前のソーセージの山を見てご満悦のセリス、日持ちするのも嬉しい。
《次の幽霊退治を探して見る?》
「うん!やろう!」
幽霊退治屋として本格的に活動を始めるセリスだった。
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謎が多くも頼りになる女性、ティニアに感謝しつつ、懸命に生きようとする人々と関わっていく。その様を穏やかだと感じれば感じるほど、かつての少女マリアは普通ではない自問自答を始めてしまうのだ。
Nolaノベル様、アルファポリス様にて投稿しております。執筆はNola(エディタツール)です。
Nolaノベル様、カクヨム様、アルファポリス様の順番で投稿しております。
キャラクターイラスト:はちれお様
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別で投稿している「暁の草原」と連動しています。
どちらから読んでいただいても、どちらかだけ読んでいただいても、問題ないように書く予定でおります。読むかどうかはお任せですので、おいて行かれているキャラクターの気持ちを知りたい方はどちらかだけ読んでもらえたらいいかなと思います。
面倒な方は「暁の荒野」からどうぞ!
※「暁の草原」、「暁の荒野」共に残酷描写がございます。ご注意ください。
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この物語はフィクションであり、実在の人物、国、団体等とは関係ありません。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
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