その男、凶暴により

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四章~とある寺の戦い~

進むべき未来の為に

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「うがぁぁぁぁぁっ!」

思わず午を掴んでいた手を離し目を押さえる樺山。
そのまま、叫び声が小さくなり前屈みに倒れ、動かなくなった。

「大丈夫、午さん?」
「あぁ、何とか…だがな。それよりも…」
「ん?」
「格好良かったじゃないか。」
「止してよ、午さんが頑張ってくれたからだよ。」
ボロボロになった二人がそう言って顔を見合せて笑う。

「悪いが、感傷に浸るのは後にしてもらって良いか?」小走りで駆け寄る鷹。

「そうだな。いつコイツが起き上がるか分からないから直ぐにここから離れよう。ヒロトは?」
「建物の中だよ、呼んでくる。」
石段を登り、建物の中に入る未。

「助かった、流石にもう限界だったんだ…」
「お前は昔から、我慢強くて参ったって言わなかったもんな。」
満身創痍の午を見て、やれやれと鷹が呟く。
「こんな体になるまで無茶しやがって…歩けるか?」

そうして、手を伸びそうとした瞬間。
外に出てきた未が叫ぶ。

「まだ終わってない!」
そう言われた瞬間、午と鷹の頭上に影が差した。

「とりあえず、この目の借りは今すぐ返すぞぉぉ!」
大きな右手が鷹を掴もうとする。

だか、掴まったのは鷹に体当たりをした午だった。
「午っ!」

「この際、お前でも良い。膝蹴りは喰らったが、何とか右目はまだ見えるからな。お前達の、その絶望に歪む表情をたっぷり見てやる!」

再び午の首根っ子を掴み、持ち上げる樺山。
「あぁぁぁぁぁっ!」
辺りに響き渡る叫び声、それに反応したかのように場違いな声が小さく音を立てた。


「午さん、大丈夫?」

「ヒロト、出ちゃダメだ!」
えっ、という口の動きをした瞬間。

ボンッ!という音と共に少年の首から上が弾き飛んだ。

一際大きな笑い声だけが一瞬の静寂の後、耳障りなほど聞こえてくる。

「ガハハハハハッ!死んだフリは効果抜群だったみたいだな!?焦って、建物に出るからそんな事になるんだ。そのガキが死んだのはお前のせいだ!未ぃ!」
「うわぁぁぁぁっ!」その場に崩れ落ちる未。

「黙れ!」
首を絞められながら、ありったけの声で叫ぶ午。

「未のせいなんかじゃない!全ては…全ては、お前達がしたことじゃないか!?俺達は俺達の生活が出来れば良かったのに、それを壊したのはお前達だ!」

「まだ、そんな減らず口を叩けるのか?」
強く、更に右手に力をこめる樺山。

「未、鷹を連れて子供達の元へ行け!落ち込んでる暇はない!お前があの子達をこれから導くんだ!」

「でも…」
「泣き言を抜かすな!お前の頭脳がまだこれから先、必要なんだ!」
「午さん…」
「早く行けぇ!俺も直ぐに追い付く!」

未も、鷹でさえ、今まで聞いたことの無いような大声で激を飛ばす午。

そして、走り出した二人を横目で見つめ…

「おらぁぁぁぁっ!」最後の力を振り絞り、右手に力を込め、拳を握り、樺山の右目に叩き込んだ。



「皆、大丈夫?」
「そんな所にいたのか?」
林の中に入り、奥の方、とある地面の落葉や枯れ木を払いのけ、声をかける未に、思わず口を出す。

「午さんと作戦を立ててね…俺が指示して、この数ヶ月、半分は逃げて、残り半分は隠れながら穴を掘ってたんだ。」
20数人の子供達が地面から這い出してくる。

「終わったんだね?あれ、午さんは?」
「ごめん、俺のせいで皆が好きな午さんが…」

「まだ、そうと決まった訳じゃない。」
「慰めなくて良いよ、俺は午さんを、たった今、見捨てたんだ。ヒロトも助けられなかった。何も出来なかったんだ!」

「そんなことない!」

怒ったように何人かが口を開いた。
「未さんが、皆の事を考えたの知ってるもん!」
「お寺に戻る時、午さんがいつも『もうすぐ未の凄い作戦で皆を助けるから、もうちょっと我慢してくれな?』って言ってた!」
「『何かあっても、未が皆を引っ張るから、安心して付いていけ。』って!」

皆の言葉を聞いて、涙を流しながら立ち竦む未の肩に手を置き、鷹が口を開く。

「とりあえずは、この大所帯だ。俺達の街に戌さんがいる。まずは、そこに帰ろう。」



「痛ぇよ、クソが!雑魚のクセに楯突きやがって!黙ってヤられてたら良かったのによ!」
そう叫びながら、首があらぬ方向に曲がった午を、投げ捨てる。
「痛ぇ、痛ぇよぉ…何も見えねぇ…おおい、誰かいないのか!」
そう、大声で叫ぶが辺りに虚しく響く。

すると。

「こっぴどくやられたなぁ、樺山よ?」耳元にそう呟かれる。
「その声、○○か!?」
「おいおい、今は【青龍】なんだぜ?間違えるなよ。」
「あぁ…悪い。それよりも助けてくれよ!?目が見えねぇんだよ!」
「あっ、やっぱり見えてねぇんだ?大変だなぁ。どうしようかなぁ…」
「頼むよ…治って【黄龍】になったらアイツらなんて一撃で殺してやるから!なっ!?」

やれやれと首を振り、呆れた声で男が口を開いた。
「分かったよ、助けてやるから力を抜けよ。運ぶにしても重いんだよ、てめえは。」
「あっ、あぁ…分かった。あいつら許せねぇ!治ったらぐちゃぐちゃにして…えっ?ゴボッ!」

喉が焼ける様に熱く感じた樺山は、数秒経って首元を斬られた事に気付いた。

「な、なんでぇ?」
「助けてやるよ、『苦しみ』からな。」

「い、嫌だ!死にたくない!頼む!お願いだから、助けてくれ!たの…」



ゆっくりと、目を瞑る樺山を見ながら唾を吐いた男。

「やれやれ…手酷くやられたもんだな、午よ?」
そう言って、首の骨が折れた男を優しく抱き抱えた。




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