その男、凶暴により

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四章~とある寺の戦い~

果てしない闇の先へ

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「午さん!」
「早く…逃げろ…未」

煙の中、樺山と目が合う。
しかし、直ぐに彼の右手が持っているモノに視線が釘付けになる。

「痛ぇよ、クソが!もう【ゲーム】なんて知るか!ガキ共がいねえんだから、コイツをオモチャにしてやるよ!」
午の攻撃を喰らって、所々顔から流血している樺山の右手は午の首を掴んでおり、お互いが相対する様に向かい合っているため未から、その表情は見えなかった。

「最後に面白い話をしてやろうか?お前達が住んでいた、あの街の入り口で無駄な足掻きをしてた二人の男の話だ。」
「丑さんと亥さんの?」未が口を開く。

「あぁ、そうさ。傑作だったぜ?ハンマーで叩いたら一瞬でムキムキの男の首の骨が折れてよ、もう一人のデブはうまいこと防御してたが、結局やられ過ぎてフラフラしてきたから、最後はそいつも首の骨を折ってやったんだ…だから、コイツも首の骨折るんだよ!」

高々と上げられた右手。
何とか、午がもがき逃げようとするが、強く握られた手はびくともしなかった。

「やめろ!」未が駆け寄ろうとしたその時。

「来るな!」首を絞められながら、あらん限りの大声で午が叫んだ。
そして…最後の力を振り絞るかのように、樺山の右手を両手で掴み、全身を振り子の様に揺らし、自身の右膝を樺山の右目に叩き付ける。

「がぁぁぁぁっ!」

その動きに呼応するかのように、樺山の右腕に凄いスピードで何かが貫通し、思わず午を掴んでいた手を緩める。

『今まで好き勝手やってくれたな、樺山。全部まとめて返させてもらうぜ。』
長い黒髪を後ろで束ねた男が林の中から現れた。

「鷹さん!」「鷹…」

「良く頑張ってくれた、未、午。さぁ、終わらせるぞ!」青いデニムジャケットを身に纏い、次の発射の準備をする鷹。

「どこから来やがった!?この辺りは部下が周りを囲んでるのに…」右目を手で押さえながら、樺山が叫ぶ。
「あいつらか、大したことなかったぜ。今の俺ならな。まぁ、子供達を抱えながらは厳しいが、お前を倒せば問題ない。」

「そいつはどうかな?」低い声で笑う樺山。
「どういう事だ?」
「それはお前が一番分かってるだろう?未。」

鷹が未に目を向ける。

「やっぱり、ヒロトの首に着いてるアレは目印じゃないんだね?」未が無表情のまま、樺山に尋ねる。

薄汚く唇を歪めた樺山が応える「あぁ、そうさ。あれは【時限爆弾】なんだよ。まぁ、今回は『時』じゃなく『距離』だがな。」
「ばくだん?」
「あぁ、ある程度牢屋から離れたら爆発する、ドカン!とな」
ガハガハと笑う樺山を見て黙り込む三人。

「そんな…」膝から崩れ落ちる未。
「勿論、制限時間内に俺を倒せたら、このゲームは終わりだが…あと5分って所だが、どうだ?倒せそうかな?ガッハッハッ、良いか?勘違いするなよ?この【ゲーム】は俺が主導権を握るんだ!?お前らは大人しく絶望すりゃ良いんだよ!」

手から離れた午が四つん這いで距離を置こうとしてるのを目敏く見つけ、その右足を掴む樺山。
「うおぉぉぉ!」
「どうだ!人間ヌンチャクを掻い潜ってそのオモチャを俺に当てられるかな?鷹!?」
ブンブンと軽々しく午を振り回し鷹に詰め寄る樺山。

「くっ!」思わず距離を取り、様子を伺う鷹。

(考えろ…考えるんだ、ここまで来たのに…)
格闘技を学んで来なかった未、その分戦術を磨いてきたが、何も思い付きはしなかった。
こんな時に限って、一つ年上のアイツ・・・の事を思い出す。

一番最後に入ってきたネズミ。でも、誰より泥だらけになって特訓をしたネズミ。
そのおかげか、あの日までに剣術に関しては目を見張る成果を上げたネズミ。

それを何処か冷めた目で見ながらも、羨ましいと思ってた未。

最後の最後にこんな事を思うなんて…
石段を駆け下り、樺山に体当たりを試みる未。
「よせっ!行くな未!」声の主の鷹をチラリと見つめ、頷き、減速する事なく樺山に突っ込む。

「馬鹿野郎が、上手くいくか分からんぞ。」発射の準備をし、とある場所に照準を合わせる鷹。

その時、未の左側から凄い衝撃が襲う。
「直撃だな!ハハハ!…あっ?」
樺山の右手が一瞬、止まった。

「本当に体当たりなんてしないよ、午さんを掴むのが目的さ。そしたら、一瞬、二人分の重さで動きが止まるだろ?」

瞬間、鷹の攻撃が樺山の左目を貫いた。
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