55 / 65
☆こーひーぶれいく☆番外編
腹黒王子の失恋
しおりを挟む
☆美月の兄、悠一視点のお話です。
********************************************
仕事を終えたある日の夜、俺は呼び出しのあったバーへと向かった。ビルの一角にある店の重厚な扉を開くと、顎髭を蓄えた初老のマスターが俺を一瞥して静かにほほ笑む。客もまばらな店内を見渡せば、カウンターの隅に突っ伏している人物の姿を捉えた。
俺を呼び出した張本人──須崎輝翔、である。
呼び出された理由になんとなく心当たりはあったが、輝翔のうなだれた様子で予想が的中していたのがわかる。
「悪い、遅くなった。……彼と同じものを」
俺の呼びかけに対しても反応はない。黙って隣に座ると、二の句を探した。
輝翔の落ち込みの原因……それは、妹の美月に彼氏ができた、ということだろう。
先日、美月が珍しく外泊をした。今まで大学のゼミの課題やら飲み会やらで遅くなることはあったが、方々からの圧力もあり終電ギリギリで帰宅していた。それなのに、だ。
翌朝顔を合わせた途端にピンときた。美月は考えていることが顔に出やすい。本人の口からはっきりとしたことは聞かなくても、言い訳する時のはにかみ具合や照れ隠しのようなぶっきらぼうな口調で、おそらくその場にいた家族全員気がついたことだろう。
『あ……、男、できたな』
もちろん、誰も突っ込んだりはしない。神妙な顔つきの父親と、呑気に娘の成長に感慨にふける母親と、妙に浮かれている妹の中で、俺だけが不安を感じていたことは確かだった。
──それが、この有り様だ……。
店内では沈黙が続き、ピアノジャズのメロディーが静かに流れる。
「どうぞ」
マスターが俺の目の前にグラスを差し出す……ん?ショットグラスと塩とライム???
……っお前、なんでこんな時にテキーラなんだよ!?」
思ってたのと違ーう!!相変わらずうつぶせたまま動こうとしない輝翔に、思わずツッコミを入れた。
「普通、大の男が失恋してやけ酒を煽ってるんなら、ウイスキーとかバーボンとかブランデーとかじゃないのか!? なんで『テキィーラァ!!』なんだ。『アミィーゴォ!!』なんだ。店の雰囲気を考えろ!!」
まくしたてる俺に苦笑いしながら、マスターはグラスを拭き続ける。いや、同じものを頼んだのは俺だし、飲むけどね?ギュっとしてグイっとしてペロって……あー、キツイ……。
強烈なアルコールで喉が焼けるのを感じていると、ようやく輝翔が起き上がった。
「……悠一ぃぃぃ」
「お前……泣くなよ……」
その顔は、見るも無残にボロボロだった。
男の俺でも見惚れるほどの容姿はどこへやら。いつもは凛々しい眉も下がり、大きな瞳から恥ずかしげもなく涙を流したのだろう、目も鼻も赤くなっている。おまけに口はへの字にして、子供かっ!?
「やっぱりそうか……。美月に、男ができたのか……」
言うなり輝翔は、またもがっくりとカウンターに突っ伏した。
「今日、久しぶりに美月の姿を見かけたら……、男と一緒だった……」
ここには、美月曰く王子様然とした男の姿はない。背中に負のオーラを纏った輝翔は弱々しく呟いた。
「いや、ゼミの同期とか、ただの男友達、なんじゃね?」
輝翔の落ち込み具合はある程度予想していたものの、ここまでとは思わなかった俺は、今さらながらはぐらかすことにした。だが、突っ伏して泣いていたはずの輝翔はふいに起き上がると真顔で俺を睨みつける。
「……お前さっき、失恋って言った」
それだけ言うと、三度カウンターにうつ伏せる。誤魔化せなかった……うん。
「……美月が、女の顔をしてたんだよ」
身体はカウンターに伏せたまま顔だけ前を向いた輝翔は、まるで飼い主に捨てられた犬のように瞳をウルウルさせながら遠くを見つめていた。
「……まあ、こればっかりは、仕方ないわな」
慰めの言葉は見つからない。空になったグラスを指ではじいていると、頼んでもいないのにマスターがお代わりを差し出した。──え、2杯目? さすがにテキーラ2杯は…。いや、出されたものは飲むけどね。あー、キツイ……。
「……でも、俺は嬉しいんだよ。お前がちゃんと、俺との約束を守ってくれて、さ」
『妹の恋愛の自由は守ること』
輝翔が美月を好きだと言い出した時、妹のために輝翔と約束をした。
当初それは、社交界という特殊で閉鎖された空間に妹が身を投じることのないように配慮した予防線のようなものであった。だがしかし、本当は輝翔から美月を守るという意味も兼ねていた。
一見すると王子様のように品の良い輝翔の実態が、策略家で肉食であることを長年の付き合いで知っている。人当たりも良くて社交的、温厚で穏やかというのは世間一般の評価でしかなく、誰に対しても態度を崩さないということは、裏を返せば他人には滅多に素の自分を晒すことはないということだ。それが輝翔の育った環境の中で身に着けた処世術なのかもしれないが、出会った頃の輝翔は他人に興味を示すことも、執着することもなかった。
なぜ美月なのか。その答えは今でもよくわからない。輝翔の口から好意自体は聞かされたが、理由だけは未だに教えられることはなかった。2人が出会ったのは美月が中1の時で、当時は輝翔ロリコン説が俺の中では有力ではあったが、美月が22歳になった今でも変わっていないということは、やはり他の理由があるのだろう。
つまり輝翔は、親友であり仕事上のパートナーである俺に対してさえも、すべての本音を語ってはくれないということだ。
そんな男が初めて自分から興味を示したのが、美月だった。
他人に無関心だった男が、自分から何かを望んだらどうなるか。さらに、実家は父親の雇い主であり、大企業の御曹司ともなればそれなりの権力を持っている。
輝翔がその気になれば、美月は間違いなく婚約者だのなんだのと、逃れられないポジションに持って行かれたことだろう。
「誰かさんたちが、ロリコンだの、自重しろだの、社会人として対等な立場になってからの方がいいだの言うから、こんなことに……」
──うぐっ。恨みったらしい輝翔の言葉を聞き流すためにカウンターに目をやると、なぜか3杯目のテキーラが運ばれた。いや、もう無理……。無言で断ろうとするが、マスターの眼光に妙な圧力を感じる。いや、出されたからには飲みますよ、飲めばいいんでしょう。
「で? 相手の男はどんなヤツ?」
「いや……、俺は、何も」
輝翔の聞きたいことはわかっているが、知らないふりをしてテキーラを飲み干した。あー、キツイ……。
嘘はついていない。少なくとも美月から『俺は』なにも聞いてない。
美月からいろいろ聞きだした母親や沙紀から、相手の男の名前や学部等の多少の情報は得ていたが、ここは黙っておいてやるほうが得策だろう。
妹に彼氏ができたということは兄としては複雑な心境でもあるが、同時に喜ばしくもある。ようやく庇護を外れて自立しようとしている妹の幸せを願えば、兄の口から妹の彼氏の不利益な情報は渡せない。
考えすぎかもしれないが、相手の保身、という意味もある。輝翔がその気になれば調べる方法はいくらでもあるだろうが、とりあえず、今は何も言うまい。
できるのであれば、美月には『普通』の幸せを手に入れてほしい。
そのためには、腹黒御曹司の魔の手から守ってやるのも、兄としての勤めだろう。
「……とりあえず、飲め」
「いや、さすがに……」
小さく舌打ちした輝翔は、マスターに合図すると次々と酒を追加する。
律儀に約束を守ってくれたことに感謝はしているが、輝翔の気持ちに協力することはできなかった。
せめて友人として、この席には付き合ってやるか。それが男同士の友情ってもんだろう。
その夜、俺は輝翔にベロベロになるまで飲まされて酔わされた。
**********
缶ビールを手に輝翔から送られたふざけたメールを読み返しながら、俺は当時のことを思い出していた。
その後美月の交際相手だった男は就職難に遭遇し、ようやく地元である地方の企業へと就職が決まったと聞いた。卒業と同時に離れ離れとなった二人はそのまま自然消滅し、それから1年と経たない内に輝翔は美月を手に入れたのである。
──いろいろあったが、結局美月は輝翔を選んだわけだ。
本人は無自覚を装っていたが、美月が輝翔に惹かれていることは誰の目から見ても一目瞭然だった。
美月が長く誰とも付き合う機会がなかったのは、輝翔や俺の妨害工作もさることながら、本人が輝翔以外の男を意識することがなかったからだと思う。それは当然だろう。目の前に常に優良物件があれば、その辺の男は比較対象にすらなることはない。
「あら、悠一さん、飲んでるの?」
夕飯の片づけを終えてリビングに戻った沙紀が、空になったビールを珍しそうに見ていた。
「たまにはいいだろう?」
俺は普段、家では酒を飲まない。だが今日はなんとなく飲みたい気分だった。
祝杯ではない。だが、長年の片思いが実った親友に対する気持ちと、妹を想う兄の気持ちとが入り混じった複雑な心境ではあった。
輝翔が無理強いしたわけではなく、美月自身が導き出した結果であるのならば、もはや何も言うことはない。この先、自分や美月が考えている以上の展開が待っているかもしれないが、乗り越えるかどうかは本人たち次第だ。
それに、あれだけ美月だけを想い続けた輝翔ならば、美月が不幸になるようなことはしないだろう。
俺の気持ちを察したのか、沙紀は静かに隣に座る。手にしていたビールも空になったので、次に手を伸ばそうとすると、軽く制された。
「飲みすぎないようにね。悠一さんは、酔うと口が軽くなっちゃうんだから。」
************************************************
☆美月が長谷部くんとお付き合いをはじめたことを知った輝翔の話。以前、輝翔視点だと暗くなりそうなので悠一視点で、というコメントを頂きましたので書いてみました。『腹黒王子』の失恋なんで、なんとなーく、ミステリー風な感じにしてみたかったのですが、できたのか…?
********************************************
仕事を終えたある日の夜、俺は呼び出しのあったバーへと向かった。ビルの一角にある店の重厚な扉を開くと、顎髭を蓄えた初老のマスターが俺を一瞥して静かにほほ笑む。客もまばらな店内を見渡せば、カウンターの隅に突っ伏している人物の姿を捉えた。
俺を呼び出した張本人──須崎輝翔、である。
呼び出された理由になんとなく心当たりはあったが、輝翔のうなだれた様子で予想が的中していたのがわかる。
「悪い、遅くなった。……彼と同じものを」
俺の呼びかけに対しても反応はない。黙って隣に座ると、二の句を探した。
輝翔の落ち込みの原因……それは、妹の美月に彼氏ができた、ということだろう。
先日、美月が珍しく外泊をした。今まで大学のゼミの課題やら飲み会やらで遅くなることはあったが、方々からの圧力もあり終電ギリギリで帰宅していた。それなのに、だ。
翌朝顔を合わせた途端にピンときた。美月は考えていることが顔に出やすい。本人の口からはっきりとしたことは聞かなくても、言い訳する時のはにかみ具合や照れ隠しのようなぶっきらぼうな口調で、おそらくその場にいた家族全員気がついたことだろう。
『あ……、男、できたな』
もちろん、誰も突っ込んだりはしない。神妙な顔つきの父親と、呑気に娘の成長に感慨にふける母親と、妙に浮かれている妹の中で、俺だけが不安を感じていたことは確かだった。
──それが、この有り様だ……。
店内では沈黙が続き、ピアノジャズのメロディーが静かに流れる。
「どうぞ」
マスターが俺の目の前にグラスを差し出す……ん?ショットグラスと塩とライム???
……っお前、なんでこんな時にテキーラなんだよ!?」
思ってたのと違ーう!!相変わらずうつぶせたまま動こうとしない輝翔に、思わずツッコミを入れた。
「普通、大の男が失恋してやけ酒を煽ってるんなら、ウイスキーとかバーボンとかブランデーとかじゃないのか!? なんで『テキィーラァ!!』なんだ。『アミィーゴォ!!』なんだ。店の雰囲気を考えろ!!」
まくしたてる俺に苦笑いしながら、マスターはグラスを拭き続ける。いや、同じものを頼んだのは俺だし、飲むけどね?ギュっとしてグイっとしてペロって……あー、キツイ……。
強烈なアルコールで喉が焼けるのを感じていると、ようやく輝翔が起き上がった。
「……悠一ぃぃぃ」
「お前……泣くなよ……」
その顔は、見るも無残にボロボロだった。
男の俺でも見惚れるほどの容姿はどこへやら。いつもは凛々しい眉も下がり、大きな瞳から恥ずかしげもなく涙を流したのだろう、目も鼻も赤くなっている。おまけに口はへの字にして、子供かっ!?
「やっぱりそうか……。美月に、男ができたのか……」
言うなり輝翔は、またもがっくりとカウンターに突っ伏した。
「今日、久しぶりに美月の姿を見かけたら……、男と一緒だった……」
ここには、美月曰く王子様然とした男の姿はない。背中に負のオーラを纏った輝翔は弱々しく呟いた。
「いや、ゼミの同期とか、ただの男友達、なんじゃね?」
輝翔の落ち込み具合はある程度予想していたものの、ここまでとは思わなかった俺は、今さらながらはぐらかすことにした。だが、突っ伏して泣いていたはずの輝翔はふいに起き上がると真顔で俺を睨みつける。
「……お前さっき、失恋って言った」
それだけ言うと、三度カウンターにうつ伏せる。誤魔化せなかった……うん。
「……美月が、女の顔をしてたんだよ」
身体はカウンターに伏せたまま顔だけ前を向いた輝翔は、まるで飼い主に捨てられた犬のように瞳をウルウルさせながら遠くを見つめていた。
「……まあ、こればっかりは、仕方ないわな」
慰めの言葉は見つからない。空になったグラスを指ではじいていると、頼んでもいないのにマスターがお代わりを差し出した。──え、2杯目? さすがにテキーラ2杯は…。いや、出されたものは飲むけどね。あー、キツイ……。
「……でも、俺は嬉しいんだよ。お前がちゃんと、俺との約束を守ってくれて、さ」
『妹の恋愛の自由は守ること』
輝翔が美月を好きだと言い出した時、妹のために輝翔と約束をした。
当初それは、社交界という特殊で閉鎖された空間に妹が身を投じることのないように配慮した予防線のようなものであった。だがしかし、本当は輝翔から美月を守るという意味も兼ねていた。
一見すると王子様のように品の良い輝翔の実態が、策略家で肉食であることを長年の付き合いで知っている。人当たりも良くて社交的、温厚で穏やかというのは世間一般の評価でしかなく、誰に対しても態度を崩さないということは、裏を返せば他人には滅多に素の自分を晒すことはないということだ。それが輝翔の育った環境の中で身に着けた処世術なのかもしれないが、出会った頃の輝翔は他人に興味を示すことも、執着することもなかった。
なぜ美月なのか。その答えは今でもよくわからない。輝翔の口から好意自体は聞かされたが、理由だけは未だに教えられることはなかった。2人が出会ったのは美月が中1の時で、当時は輝翔ロリコン説が俺の中では有力ではあったが、美月が22歳になった今でも変わっていないということは、やはり他の理由があるのだろう。
つまり輝翔は、親友であり仕事上のパートナーである俺に対してさえも、すべての本音を語ってはくれないということだ。
そんな男が初めて自分から興味を示したのが、美月だった。
他人に無関心だった男が、自分から何かを望んだらどうなるか。さらに、実家は父親の雇い主であり、大企業の御曹司ともなればそれなりの権力を持っている。
輝翔がその気になれば、美月は間違いなく婚約者だのなんだのと、逃れられないポジションに持って行かれたことだろう。
「誰かさんたちが、ロリコンだの、自重しろだの、社会人として対等な立場になってからの方がいいだの言うから、こんなことに……」
──うぐっ。恨みったらしい輝翔の言葉を聞き流すためにカウンターに目をやると、なぜか3杯目のテキーラが運ばれた。いや、もう無理……。無言で断ろうとするが、マスターの眼光に妙な圧力を感じる。いや、出されたからには飲みますよ、飲めばいいんでしょう。
「で? 相手の男はどんなヤツ?」
「いや……、俺は、何も」
輝翔の聞きたいことはわかっているが、知らないふりをしてテキーラを飲み干した。あー、キツイ……。
嘘はついていない。少なくとも美月から『俺は』なにも聞いてない。
美月からいろいろ聞きだした母親や沙紀から、相手の男の名前や学部等の多少の情報は得ていたが、ここは黙っておいてやるほうが得策だろう。
妹に彼氏ができたということは兄としては複雑な心境でもあるが、同時に喜ばしくもある。ようやく庇護を外れて自立しようとしている妹の幸せを願えば、兄の口から妹の彼氏の不利益な情報は渡せない。
考えすぎかもしれないが、相手の保身、という意味もある。輝翔がその気になれば調べる方法はいくらでもあるだろうが、とりあえず、今は何も言うまい。
できるのであれば、美月には『普通』の幸せを手に入れてほしい。
そのためには、腹黒御曹司の魔の手から守ってやるのも、兄としての勤めだろう。
「……とりあえず、飲め」
「いや、さすがに……」
小さく舌打ちした輝翔は、マスターに合図すると次々と酒を追加する。
律儀に約束を守ってくれたことに感謝はしているが、輝翔の気持ちに協力することはできなかった。
せめて友人として、この席には付き合ってやるか。それが男同士の友情ってもんだろう。
その夜、俺は輝翔にベロベロになるまで飲まされて酔わされた。
**********
缶ビールを手に輝翔から送られたふざけたメールを読み返しながら、俺は当時のことを思い出していた。
その後美月の交際相手だった男は就職難に遭遇し、ようやく地元である地方の企業へと就職が決まったと聞いた。卒業と同時に離れ離れとなった二人はそのまま自然消滅し、それから1年と経たない内に輝翔は美月を手に入れたのである。
──いろいろあったが、結局美月は輝翔を選んだわけだ。
本人は無自覚を装っていたが、美月が輝翔に惹かれていることは誰の目から見ても一目瞭然だった。
美月が長く誰とも付き合う機会がなかったのは、輝翔や俺の妨害工作もさることながら、本人が輝翔以外の男を意識することがなかったからだと思う。それは当然だろう。目の前に常に優良物件があれば、その辺の男は比較対象にすらなることはない。
「あら、悠一さん、飲んでるの?」
夕飯の片づけを終えてリビングに戻った沙紀が、空になったビールを珍しそうに見ていた。
「たまにはいいだろう?」
俺は普段、家では酒を飲まない。だが今日はなんとなく飲みたい気分だった。
祝杯ではない。だが、長年の片思いが実った親友に対する気持ちと、妹を想う兄の気持ちとが入り混じった複雑な心境ではあった。
輝翔が無理強いしたわけではなく、美月自身が導き出した結果であるのならば、もはや何も言うことはない。この先、自分や美月が考えている以上の展開が待っているかもしれないが、乗り越えるかどうかは本人たち次第だ。
それに、あれだけ美月だけを想い続けた輝翔ならば、美月が不幸になるようなことはしないだろう。
俺の気持ちを察したのか、沙紀は静かに隣に座る。手にしていたビールも空になったので、次に手を伸ばそうとすると、軽く制された。
「飲みすぎないようにね。悠一さんは、酔うと口が軽くなっちゃうんだから。」
************************************************
☆美月が長谷部くんとお付き合いをはじめたことを知った輝翔の話。以前、輝翔視点だと暗くなりそうなので悠一視点で、というコメントを頂きましたので書いてみました。『腹黒王子』の失恋なんで、なんとなーく、ミステリー風な感じにしてみたかったのですが、できたのか…?
0
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
あさの紅茶
恋愛
学生のときにストーカーされたことがトラウマで恋愛に二の足を踏んでいる、橘和花(25)
仕事はできるが恋愛は下手なエリートチーム長、佐伯秀人(32)
職場で気分が悪くなった和花を助けてくれたのは、通りすがりの佐伯だった。
「あの、その、佐伯さんは覚えていらっしゃらないかもしれませんが、その節はお世話になりました」
「……とても驚きましたし心配しましたけど、元気な姿を見ることができてほっとしています」
和花と秀人、恋愛下手な二人の恋はここから始まった。
**********
このお話は他のサイトにも掲載しています
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。