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第二部 家庭編
長老カミラ
しおりを挟む大変な事が起きた。世界樹の葉も実も、どんどん減っていく。この様な事態は長く生きている私でも経験が無い。
世界樹が枯れてしまえば、我々エルフの存在意義がなくなってしまう。我々エルフは世界樹の護り主であり、世界樹の共生者であるのだから。
なんとしても原因を突き止めねば!
そんな中、里にクリスティーナが戻ってきた。
我が娘、クリスティーナとクロエはヒューマン達の社会で暮らしている。二人ともこの里の暮らしに飽きてしまい、出て行った。
別に悪いことでは無い。
私も昔同じ事をしたからだ。
でもエルフの里で世界樹を護るという崇高な使命を感じ戻ってきた。
話が逸れた。
クリスティーナは一人のヒューマンを連れてきた。ネロという黒髪、黒目の貧相な体格の男だった。
強い魔力は感じたが、並のヒューマン程度だった。
丁寧な言葉使いは好感が持てるが、はっきり言ってそんな場合では無い。
世界樹の対応が最優先だ。ヒューマンに構っている暇は無い。
クリスティーナは植物が好きだったから、何かわかるかも知れない。連れていこうとすると、帰らせたはずのネロもついて来た。注意している時間も惜しい。邪魔でないなら良いと許可した。
なんという事か‥‥‥
まさか水毒病とは‥‥‥
水毒病は木の病気だが、治療しないとたちまち枯れてしまう。普通の木なら治療も可能だが、世界樹に至っては無理だ。
あの世界を支える巨大な木の水分を残らず入れ替えるなど到底不可能だ。
エルフは風と水の魔法が得意だが、里の全員の魔力を足して全て使ったとしても10分の1も入れ替え出来ないだろう。
今返せば、枯れて落ちた葉も実も水毒病の兆候はあった。世界樹が水毒病に罹るなど想像もしていなかった。
は? ネロがやってみる?
冗談もいい加減にしろ。
しかし出来ると言った時の目に偽りを感じなかった。どうせ他に手も無いのだ。やってみて諦めてもらおう。
何が起きている?
ネロが魔力を解放した‥‥‥
あれはもうヒューマンやエルフとはレベル、いや種族が違う‥‥‥
ドキドキドキドキ
はっ! なんじゃ⁉︎この鼓動は⁉︎
ネロの魔力に圧倒され、恐れているのか?
いや、確かにあれ程の魔力見た事は無いが。
ネロが治療を始める。
また見た事も無い勢いで水が生成されていく。
そこで気が付いた、排泄された水は汚水だ。このまま地面に吸わせては意味がない。皆に指示を出す。
土魔法で堀と大穴を作り、壁面を固めてそこに一時的に貯めておく。下水溜まりの様になってしまうが仕方がない。時間をかけて浄化していけば良い。
世界樹が徐々に生気を取り戻してきた様に感じる。葉も実も枯れた部分が回復している。
上手くいきそうだ。
ネロが左手で汚水に手を翳した。
すると、そこから先の水は、綺麗な清流のような水に変わっていった。
これなら浄化する必要もない。
この様な魔法使いは見た事がない。
ドキドキドキドキ
まただ、何故‥‥‥?
ふと、ネロの顔を見ようと隣に周った。ネロは泣いていた。
キュン!!!!
泣いている理由はわからない。
おそらく世界樹の水毒病の苦しみを分かち合っているのだろう。
何という労りと友愛か‥‥‥
あれだけの魔力を使えば、苦しくて当然‥‥‥
しかし一言も苦を漏らさず、世界樹の為に治療をしている‥‥‥
ネロを背後から抱きしめていたのに気付いたのは、ネロによる治療が終わってからだった。
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