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冒険者 編
フランツの憂鬱な一日
しおりを挟む俺はフランツ・フレイン。フレイン辺境伯次期当主だ。
今日はけしからん一日になりそうだ。
あの可愛いマリアが婚約者を家に連れてくるらしい。あの若さで急いで結婚する事はないだろう。俺だってまだなんだ。
相手がまた『神級の祝福』なんて聞いたことのない才能だ、そんなもの本当に有るのか?
魔術師というだけでも腹立たしい。魔法の威力は認めるがそれを撃つまでの時間を誰が稼いでいると思っているのか?それを忘れて偉そうにしている、大体の魔術師はそんなものだ。
魔術師は体を鍛えなくて良いという理屈もあり得ない。極端な事を言えば突然目の前に敵が現れたとしたらどうするのか?やられてしまうだけではないか?鍛えていれば距離を取る為に離れたり逃げたりも出来るだろうが。
ヤツが来た。よりによってとんでも無く細い、ヒョロヒョロのまるで枯れ枝だ。挨拶だけはしてやったが俺の意見を伝える。マリアにはもっと良い相手が居るはずだ、愛する者を身体を張って守れるような男が。
少々強引だがヤツの弱さを証明してやる。模擬戦と考えたが殺してしまうまでの事ではない。ヤツは素早く動けるらしい、俺の槍を躱しつづけてもらう事も考えたがこれはフェアでは無いな。
だとすると狩り勝負か?そうなると奴の属性の確認だ。火魔法で森を燃やされても困る。
は?聞き間違いじゃない?水魔法しか使えないクセに狩り慣れているだと?パーティーの狩りで無くソロの狩りだぞ。出来るはずないだろう。
狩り勝負が始まった、と同時にダッシュしていった。まるで消えたように見えた。素早いのは本当だな、あれなら敵からも逃げ遂せるだろう。
おかしい‥‥‥。さっきからモンスターが現れない、この森でこんな事起きた事はない。異常事態か?大物モンスターが現れるのかもな。
予想外だ、ワイバーンとは。こんなところに現れるはずがない。さっきからモンスターが出なかったのはコイツのせいか?
そして狩りのため軽装で来てしまった、守備力が心許ない。ワイバーンのブレスも普段の重装備なら耐えられただろうが。ダメージを負ってしまった。
ヤツも来た、ポーションをくれた。そしてワイバーンを撃ち落とせるらしい。
良かろう、一時休戦だ。やれる事はなんでもやってもらおう。
ネロの身体から水の塊が出たかと思ったら一つはワイバーンの背後に回った。何をするんだ?水の塊の形が変わる。
??
さっぱり何をしているのかわからない。早くしろ!間に合わなくなっても知らんぞ!
ワイバーンの翼に穴が開いた、光の柱のようなものが通ったと思ったら穴が開いていたと言うべきだろうか?
ワイバーンが落ちてくる。俺の槍でワイバーンの鱗を貫けるだろうか?と考えていたらまた水の塊がワイバーンの頭部に展開し、さっきとは違う柱みたいなものが目から頭を貫いた‥‥‥。
ワイバーンが魔石になっていく、かなり大きいな。俺の槍ではワイバーンに苦戦はしただろう、勿論空を飛んで無ければ勝てただろうが。
ただあんな風に一方的に倒す事は出来なかっただろう。
ネロの魔法袋が破れて中身が散らばる、魔法袋の容量が溢れでもしない限り中身が出るなんて事はない。
ワイバーンのせいでモンスターが居なかったのではなく、ネロが根こそぎ狩り倒していたから居なかったのだ。
さっきから衝撃的な事が起こりすぎて理解が追いつかない。
更に何故か謝罪してきた。
「ご‥‥‥ごめんなさい」
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