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冒険者 編

ヴァッサー家 集合

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「ナタリー、今週の闇の日空いてる?」
「はい、仕事は休みです」
「うちの家族が来るって」
「え!」

 急な来客が来ると困るので伝えたのだが驚いてしまったようだ、うちも一応貴族だからな。

 学院で慣れていたから麻痺しているがマリアは辺境伯令嬢だし、シャルなんて王女だからな。

 どっちの時も俺も胃が痛くなりそうだが。

 卒業した、フィアンセ見つけた、屋敷を買った的な手紙を書いたら急いで行くと返事が届いた。
 うちは通信機器が無いので手紙だ、普通なら行商人、急ぎなら早馬便だ。一応王都にいるポール兄にも伝えておこう。


 闇の日になった、とりあえずお迎えの準備は大丈夫だ。馬車が来たようだ、玄関で出迎える。

「ネロ、立派になって!」
「ご無沙汰しております、母様」

 母様にハグされる、もう俺の方が背が高いのであの胸で苦しくなることはなくなった、ちょっと寂しい。

「立派な屋敷だな、ネロよ」
「うちよりデカくない? お、ポールもいたか」
「ネロくん、殿下、マリア様もご無沙汰しております」

 ゲオルグ、ピーター兄、奥さんのララ義姉さんも出て来た。一家勢揃いするのは久しぶりだ。

「父様、変わりなさそうで。ピーター兄さん結婚式の準備どう? ララ義姉さんもお久しぶりです」

「お義父様、お義母様、お義兄様、お義姉様、シャルロット・ヤーパニーでございます。本日はようこそお越し下さいました」

「お義父様、お義母様、お義兄様、お義姉様、マリア・フレインです。大したおもてなしは出来ませんが、ごゆっくりお過ごしください」

「お義父様、お義母様、お義兄様、お義姉様、ナタリーと申します。ヴァッサー家の末席に加えさせていただきました。今後とも宜しくお願い致します」

エリスママンが
「まぁまぁまぁ、みんな可愛い! うちは女の子が居なかったから義娘が出来て本当に嬉しいわ。ネロは昔からマイペースだから皆よろしくね!」

「王女殿下に辺境伯令嬢ともう一人まで、贅沢な奴だな、お前は」とゲオルグ。

「しかし立派な屋敷だな、どうしたんだ?」
ゲオルグからの質問だ。
「こちらのナタリーに紹介してもらって購入しました」

「ナタリーさん、すごいな。君は」
「えぇ⁇ そんな事ありません!」

「いいえ、あなたはすごいわ。ここには王族も貴族令嬢もいるのに堂々と自分のなすべき事を全うしています、素晴らしい事です」

ママン絶賛にナタリーは涙目になった。

「皆様が貴族とか偉い人なのに私だけ平民でここに居ていいのか? ってずっと思ってて‥」
「私達も元冒険者の成り上がり貴族よ、私達もあなたもちっとも変わらないわ、そしてネロには貴方みたいな子も必要なのよ、あの子は貴族に興味ないから」
 さすがママン、俺の気持ちわかってるね。

 ヴァッサー家揃っての夕食だ、ほとんど空気だったポール兄が話す話す。溜まってるんだなぁ。

「いや、騎士って大変なんだわ」
「えぇ、わかります。王族に仕えるのはなかなか骨が折れますわ」

 ララ義姉さんが話を盛り上げる。シャルの前でそんな事言っていいのか? あ、酔ってるのか、酒好きだけど弱いしな。

「ララちゃん、その辺にしといたら?私はちょっとお花を摘みに言って来ますわね」
「あ、こちらですわ、お義母さま」

 ナタリーが積極的に動く、さっきの話で一気に打ち解けたのだろう、トイレの説明をしてる。

「ネロ! あのトイレは何!?」
「「「!!!!!?」」」

 ものすごい剣幕で迫って来たママン、みんなびっくりしてるよ。

「どうしたんだ、エリス」
「貴方‼︎トイレに行ってみて下さいな!」
「わかった、わかった」

「ネロ!なんだあのトイレは⁉︎」
 夫婦揃っておんなじリアクションですやん。

「ああなりますわよね」
「仕方ないですわ」
「私ももう戻れなそうですし」

 フィアンセ三人の同意。

 ゲオルグが騒ぐ。

「ネロ、ウチにもアレを付けてくれ!」
「あー、今陛下に申請中なんですが」

「あ、今日付けで申請通ったわよ。全部お願いするって」
シャルが報告する。申請が通ると特許権が認められるような感じらしい。どこぞでパクられても俺に少し入るみたいな。どういう仕組みなのかはわからないけど。

「まぁ、ウチの実家は王家の後という事で」
「うっ、それは致し方無い‥‥‥」

 その後は、王家の全部のトイレと実家のトイレと。
 ひたすらトイレに刻印を刻む、まるでトイレ業者になった気分の週だった。
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