ぼくが幼馴染みのお兄さんを諦めるために、最後に欲しいって言ったもの

1 ぼくの好きを認めて欲しい

「ねぇタカ兄。今日でタカ兄を諦めるから…だから……タカ兄の、白いのいっぱいちょうだい？」






  30分前。
  いつものように、創は貴史の部屋に遊びに来た。



  初めて創と貴史が会ったのは数年前。見上げるほど背の高い父親に抱かれ、引っ越しの挨拶だと、貴史の家までやって来た。そのとき、父親の太い腕の中で、ご機嫌だった創が貴史を見るなり盛大に泣きだしたのだ。

  しかしなぜか創は、タカ兄タカ兄と後ろを付いて回るようになった。それからは、新しいゲームを買う度に、一緒に画面に齧りつくよう遊ぶのがよくある休日となった。これは貴史が大学生になった今でも変わらない。



  今現在。
  貴史の腹の上に乗り、創は今にも押し倒そうとしている。




「創？…ど、どどどうした？」

  世の小学生の平均よりもかなり小さい創。折れそうに細い肩から伸びるその小さな白い両手が、貴史の薄い腹の上で可愛らしく揃えられている。



  両肘で身体を支える貴史を、創はつぶらな瞳で見つめる。短パンから伸びる細い足で脇腹を挟み、そのままぐっと顔を近づけた。



「タカ兄…ぼく、タカ兄が大好きってこと、知ってるよね？いつも言ってるし」

「そりゃ、いつも言ってるからな」

「うん。タカ兄、大好きだよ！」

「はいはい。オレもだよ」

「本当はね、タカ兄の好きとは違って…えっちなこと…したいって、意味、なんだ…」

「は？」

「でも大丈夫！昨日卒業式だったし。ちょうどいいから、今日で、タカ兄を諦めようと思って」

「へ？」

「今日でタカ兄を諦めるから…だから…」



  創は、柔らかな髪が少しかかる大きな瞳をそっと閉じた。幼ない顔が貴史に近づく。そして、まだ小さな唇が、確実に触れる。

  呆気にとられる貴史を他所に、創は全体重で強く押し付けた。


「タカ兄…」

  …ぼくはずっと夢見てた。タカ兄とキスするのはもちろんだけど、もっともっと先も。


  でも、今日で諦める。