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第2章
20年戦争の予兆
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沖縄では長年続いた反基地闘争が実り、2030年に米軍基地は撤退、佐世保に第7艦隊の一部は移動し、在日米軍基地は横田、佐世保、横須賀の3つに集約されつつあった。
米軍が撤退した後の広大な跡地にはしばらくは自衛隊が駐屯していたが、そこも反基地闘争が再び激化し、最終的には南海新都市側が用意したメガフロートに基地機能を移して沖縄西方に浮かぶ久米島のさらに西方10kmの地点に移動した。
この動きに龍国は猛烈に反発。
日本国内でも反政府デモが沖縄、北海道、東京、愛知、広島、京都、大阪、兵庫などで頻発するようになる。
デモ隊の主張は概ね「龍国を刺激するようなことはするな!」「そのメガフロートの建造費はどこから出ているのだ!」「政府は南海新都市と癒着しているのではないか!説明せよ!!」
このようなもので連日のようにマスコミもそのデモを好意的に取り上げた。
さらに南海新都市側はもう一つのメガフロートを自衛隊に提供し、それを対馬に設置するよう政府に申し入れた。
この提案に防衛省側も賛同し、その意向を受けた政府は自衛隊と長崎の佐世保に駐屯中の在日米軍のうちの一部をそのメガフロートに移転させる計画を立てた。
その日本側からの申し出は意外とアッサリとアメリカ国防総省と政府は賛成し、即座に受け入れ事務所を設置し、3年かけて少しずつ戦力の移転をしていった。
沖縄沖のメガフロートには自衛隊だけ駐屯していたが、これは赤城の約半分程度の面積しか持たないメガフロートの中では最小単位のもので3500m級滑走路が1本、2000m級が1本の計2本しか滑走路を持たないものであった。
対馬側の物は赤城と同規模の物で、特にコレを龍国は問題視し、世界中に「これらの動きは明らかな日本とアメリカによる我が国に対する侵略行為である!」というプロパガンダを展開していた。
その動きに呼応する日本やアメリカのマスメディアもまた多く、それぞれの国の大半の世論は「そこまでする必要があるのか?」「政府は何を隠しているのだ?説明せよ!」などという論調でほぼ占められていた。
だが、アメリカも日本も口を揃えたかのように「この動きは朝鮮半島や日本海で操業する龍国の漁船や漂流民を保護する平和的な目的で設置されたものである」と発表した。
実際、対馬側のメガフロートは赤城と同じく自力での航行が可能なため、日本海側の大和堆などまで出向き、違法操業などの監視なども定期的に行っていた。
当然、そのメガフロートは付近で活動する水産庁の船や巡視艇などの一時停泊地などにもなり、また付近で操業している日本の漁民の避難地や休息地、補給地(補給は原則母港で行うので緊急時のみだが)として活躍した。
特に冬場の日本海は非常に波が高く、慣れている漁民たちにとっても手強い場所なのだが、その時期には必ずこのメガフロートが来るので漁民たちからは非常に歓迎されていた。
もちろん、基本的には日本自衛隊と海上保安庁、アメリカ軍の駐留地なので民間人が停泊するスペースなどは限られた範囲に限定されていたが、居住スペースに隣接している飲食店や飲屋街などは一般にも解放されていたので、ここはちょっとした日米の軍関係者と海上保安庁のスタッフ、日本の漁民たちの交流の場となっていた。
このような様子は一般のメディアでは全く報道されなかったし、仮にされても「本当にこんなことで日本は大丈夫なのか?議論を呼びそうです」などという否定的な報道がほとんどであったが、
南海新都市側のインターネットメディアは、ここの様子などを非常に好意的に報道し続けた。
この様子は当然、龍国内のメディアも大々的に報じ、「日本は戦争準備を整えている!我が国も彼らの侵攻に備えねばならない!」と大規模な軍備増強と海軍の整備などを連日、国民に向けて訴え続けていた。
日本のメディアもこういうことだけは積極的に取り上げ、日本政府や南海新都市、防衛省などの対応を非難し続けていた。
こういう動きは前線の人間からしてみれば噴飯ものなのだが、本土で住む多くの一般人にとっては龍国からの侵略の危機などどこ吹く風だし、マスメディアも政府などもその危機を拡散していなかったので、前線と本土との意識の差は非常に大きいものであった。
そのような中、龍国では長年のライバルであったインドとの紛争に(一応)勝利したことで龍国内の世論は対外拡張政策の支持で沸き立っていた。
この情報はいくつかのルートで日本政府を始め、日海軍、米軍などにも伝わっていた。
龍印紛争は2035年から2年弱 断続的に行われていた。
当初は砲兵による小規模の報復合戦が行われていた程度だったが、龍国軍はある時から大量の試作ドローンを戦線に投入した。
インド軍も数種類のドローンを当時使用していたが、龍国軍は新たに開発した数種類のドローンを実践投入することで能力を試したのだった。
中でも猛威を振るったのは、GPSによるAIによる制御で群体で動く小型自爆型ドローン(群蝴蝶 Qún húdié)であった。
このドローンは事前に目標物の緯度経度を入力しておき、グレネードランチャーなどで打ち出すタイプの小型ドローン。
打ち出された後で空中で展開、展開後は10分程度は滞空可能。親機だけにはGPSが付いていて子機はその親機の誘導電波を目指して殺到し、次々と目標物を爆破するというタイプのものであった。
これは歩兵が携行しているグレネードランチャーで手軽に打ち出せるため、場合によっては数百機、数千機の大量のドローンを打ちっぱなしで攻撃出来るのと、親機を手動で誘導することで大量の子機もまとめて操作出来るという手軽さがあって、龍国軍はインド軍の砲兵陣地に対し、この大量のドローンで一気に攻撃し、陣地を一時壊滅させたことがあった。
この後、インド軍によって大規模な反撃が行われたのであるが、龍国はこの“戦果”だけを大々的に世界に向けて宣伝した。
また、この戦果を元にした映画なども次々と作られ、この戦勝により龍国は活気付いた。
インドも正式にこれらの動きについて反論し、それなりの宣伝工作も行ったが、世界各国での報道は「龍国側の一方的勝利」で統一されていたのだ。
結局はこの動きが龍国を「対日宣戦」に突き動かしていくことになる。
なまじインドに「勝った」と宣伝してしまった結果、国民の多くは本来の実力以上に自分たちは力を持っていると思ってしまったのだ。
ただでさえ龍国の国民は正しい情報を知らされていない。
表向きは先進国のようにな「国民の知る権利の保護」だとか「報道の自由」など謳っているが、実際には一党独裁の政府による強烈な言論弾圧が施されているし、マスコミは政府の意見のみを公表するプロパガンダ機関でしかなかったからだ。
龍国は「民主的な手続きを経て国民の代表を選んだ民主主義を標榜した国」である。
だが、それゆえに「国民が正しい情報を知らない」場合、時としてこの場合みたいに国民世論の暴走であらぬ方向に突っ走り、政府といえども止めれなくなる場合があるのだ。
それは歴史を見れば枚挙に暇ない。
それ故に「国民に正しい情報を伝える」ということ、更に「その情報を正しく判断出来るようになること」この2つは民主制度を正しく維持する上で極めて重要になる。
だが、日本のマスコミはそもそも大半が龍国の手先となり、龍国に都合の悪いことを日本人に伝えなかったばかりか、自衛の大事さを国民に伝えず、その結果 龍国の侵略を招くことになってしまった。
龍国は「日本 与しやすし!」と勘違いしてしまい、大陸国家なのに関わらず海洋国家の代表格の日本と更に後ろにいるアメリカやイギリスなどファイブアイズと呼ばれる国に喧嘩を売るようなことをしてきた。
確かにこの時点で、国力だけで見ると龍国のソレは日本とアメリカを足した以上に大きく、南海新都市などは龍国の規模に遥かに及ばないのではあったが。
まぁ、このようにして日龍双方は戦争へと突き進んでいく。
具体的な龍国侵攻の動きは次々と日海軍や日米の情報機関に伝えられた。
まず、2038年の初頭には多くの武装漁船に新たな装甲板などを取り付けているという情報が多数寄せられ、2038年の秋頃になり、龍国の南部沿岸部の港の多くに、装甲を施した武装漁船が多く見られるようになってきた。
日海軍の明石大佐はこの偽装民兵に数名、ヒューミットを紛れ込ませていたのでおおよその動きは分かるようになっていた。
彼らからもたらされる情報では、「2040年に大きな動きがあるかもしれない」というものが多くを占めていた。
つまりあと一年ちょっとで龍国海軍がなんらかの形で日本に侵攻してくる可能性が極めて高いということなのだ。
2038年当時で、実戦配備されたゼロ戦はおよそ20機。
イ400KAIにいたってはわずか三隻が実戦配備された処だったのだ。
量産の最大の障害になっているのは水素核融合電池(パワーパック)の量産が現在の生産体制ではかなり困難だったからだ。
当時はメガフロートの発電所用の大型のパワーパックの量産も急がねばならない理由もあり、戦闘機用などに生産を集中出来なかったのだ。
そこで川北大将をはじめ、日海軍の幹部たちは「可能な限り時間稼ぎをしよう」という案を出した。
川北は戦術面での最高責任者である中将の根本に「龍国と衝突した処から2年、なんとか時間稼ぎ出来ないだろうか?」ということと、
「今ある戦力だけで初戦を完勝させてくれ」という二つのオーダーを彼に対して出した。
根本をはじめ、日海軍の幹部たちは総出で知恵を絞りはじめた。
龍国との緒戦がどのようなものになるかを数パターン用意した。
まず敵がどこに上陸してくるか?
どのような軍の編成で侵攻してくるか?
どのような戦法で攻めてくるのか?
どのような時期を狙って攻めてくるか?
まず、中距離巡航ミサイルなどで一方的に飽和攻撃をしかけてくるか?という点で会議に参加している面々がそれぞれ意見を出したが、これについては情報部の明石が「彼らのこれまでの侵略パターンとしてはその選択はおそらくありえないだろう」という認識を示した。
これまでの彼らの侵略法は、テロ組織に先に破壊活動をさせておいて、その鎮圧などを口実に現地政府の了承を得ながら少しずつ部隊を駐屯させていく、というものが大半で、武力を行使した事例はウイグルやチベット、朝鮮半島など明らかに戦力が劣っている相手に対して行われていた。
インドなど比較的強力な敵に対しては、瞬間的な勝利のみを得て、終息させている点などを考えると、米軍が後ろに控えている状態の日本を相手にいきなりミサイルの飽和攻撃はさすがに考え難いというものだった。
(続く)
米軍が撤退した後の広大な跡地にはしばらくは自衛隊が駐屯していたが、そこも反基地闘争が再び激化し、最終的には南海新都市側が用意したメガフロートに基地機能を移して沖縄西方に浮かぶ久米島のさらに西方10kmの地点に移動した。
この動きに龍国は猛烈に反発。
日本国内でも反政府デモが沖縄、北海道、東京、愛知、広島、京都、大阪、兵庫などで頻発するようになる。
デモ隊の主張は概ね「龍国を刺激するようなことはするな!」「そのメガフロートの建造費はどこから出ているのだ!」「政府は南海新都市と癒着しているのではないか!説明せよ!!」
このようなもので連日のようにマスコミもそのデモを好意的に取り上げた。
さらに南海新都市側はもう一つのメガフロートを自衛隊に提供し、それを対馬に設置するよう政府に申し入れた。
この提案に防衛省側も賛同し、その意向を受けた政府は自衛隊と長崎の佐世保に駐屯中の在日米軍のうちの一部をそのメガフロートに移転させる計画を立てた。
その日本側からの申し出は意外とアッサリとアメリカ国防総省と政府は賛成し、即座に受け入れ事務所を設置し、3年かけて少しずつ戦力の移転をしていった。
沖縄沖のメガフロートには自衛隊だけ駐屯していたが、これは赤城の約半分程度の面積しか持たないメガフロートの中では最小単位のもので3500m級滑走路が1本、2000m級が1本の計2本しか滑走路を持たないものであった。
対馬側の物は赤城と同規模の物で、特にコレを龍国は問題視し、世界中に「これらの動きは明らかな日本とアメリカによる我が国に対する侵略行為である!」というプロパガンダを展開していた。
その動きに呼応する日本やアメリカのマスメディアもまた多く、それぞれの国の大半の世論は「そこまでする必要があるのか?」「政府は何を隠しているのだ?説明せよ!」などという論調でほぼ占められていた。
だが、アメリカも日本も口を揃えたかのように「この動きは朝鮮半島や日本海で操業する龍国の漁船や漂流民を保護する平和的な目的で設置されたものである」と発表した。
実際、対馬側のメガフロートは赤城と同じく自力での航行が可能なため、日本海側の大和堆などまで出向き、違法操業などの監視なども定期的に行っていた。
当然、そのメガフロートは付近で活動する水産庁の船や巡視艇などの一時停泊地などにもなり、また付近で操業している日本の漁民の避難地や休息地、補給地(補給は原則母港で行うので緊急時のみだが)として活躍した。
特に冬場の日本海は非常に波が高く、慣れている漁民たちにとっても手強い場所なのだが、その時期には必ずこのメガフロートが来るので漁民たちからは非常に歓迎されていた。
もちろん、基本的には日本自衛隊と海上保安庁、アメリカ軍の駐留地なので民間人が停泊するスペースなどは限られた範囲に限定されていたが、居住スペースに隣接している飲食店や飲屋街などは一般にも解放されていたので、ここはちょっとした日米の軍関係者と海上保安庁のスタッフ、日本の漁民たちの交流の場となっていた。
このような様子は一般のメディアでは全く報道されなかったし、仮にされても「本当にこんなことで日本は大丈夫なのか?議論を呼びそうです」などという否定的な報道がほとんどであったが、
南海新都市側のインターネットメディアは、ここの様子などを非常に好意的に報道し続けた。
この様子は当然、龍国内のメディアも大々的に報じ、「日本は戦争準備を整えている!我が国も彼らの侵攻に備えねばならない!」と大規模な軍備増強と海軍の整備などを連日、国民に向けて訴え続けていた。
日本のメディアもこういうことだけは積極的に取り上げ、日本政府や南海新都市、防衛省などの対応を非難し続けていた。
こういう動きは前線の人間からしてみれば噴飯ものなのだが、本土で住む多くの一般人にとっては龍国からの侵略の危機などどこ吹く風だし、マスメディアも政府などもその危機を拡散していなかったので、前線と本土との意識の差は非常に大きいものであった。
そのような中、龍国では長年のライバルであったインドとの紛争に(一応)勝利したことで龍国内の世論は対外拡張政策の支持で沸き立っていた。
この情報はいくつかのルートで日本政府を始め、日海軍、米軍などにも伝わっていた。
龍印紛争は2035年から2年弱 断続的に行われていた。
当初は砲兵による小規模の報復合戦が行われていた程度だったが、龍国軍はある時から大量の試作ドローンを戦線に投入した。
インド軍も数種類のドローンを当時使用していたが、龍国軍は新たに開発した数種類のドローンを実践投入することで能力を試したのだった。
中でも猛威を振るったのは、GPSによるAIによる制御で群体で動く小型自爆型ドローン(群蝴蝶 Qún húdié)であった。
このドローンは事前に目標物の緯度経度を入力しておき、グレネードランチャーなどで打ち出すタイプの小型ドローン。
打ち出された後で空中で展開、展開後は10分程度は滞空可能。親機だけにはGPSが付いていて子機はその親機の誘導電波を目指して殺到し、次々と目標物を爆破するというタイプのものであった。
これは歩兵が携行しているグレネードランチャーで手軽に打ち出せるため、場合によっては数百機、数千機の大量のドローンを打ちっぱなしで攻撃出来るのと、親機を手動で誘導することで大量の子機もまとめて操作出来るという手軽さがあって、龍国軍はインド軍の砲兵陣地に対し、この大量のドローンで一気に攻撃し、陣地を一時壊滅させたことがあった。
この後、インド軍によって大規模な反撃が行われたのであるが、龍国はこの“戦果”だけを大々的に世界に向けて宣伝した。
また、この戦果を元にした映画なども次々と作られ、この戦勝により龍国は活気付いた。
インドも正式にこれらの動きについて反論し、それなりの宣伝工作も行ったが、世界各国での報道は「龍国側の一方的勝利」で統一されていたのだ。
結局はこの動きが龍国を「対日宣戦」に突き動かしていくことになる。
なまじインドに「勝った」と宣伝してしまった結果、国民の多くは本来の実力以上に自分たちは力を持っていると思ってしまったのだ。
ただでさえ龍国の国民は正しい情報を知らされていない。
表向きは先進国のようにな「国民の知る権利の保護」だとか「報道の自由」など謳っているが、実際には一党独裁の政府による強烈な言論弾圧が施されているし、マスコミは政府の意見のみを公表するプロパガンダ機関でしかなかったからだ。
龍国は「民主的な手続きを経て国民の代表を選んだ民主主義を標榜した国」である。
だが、それゆえに「国民が正しい情報を知らない」場合、時としてこの場合みたいに国民世論の暴走であらぬ方向に突っ走り、政府といえども止めれなくなる場合があるのだ。
それは歴史を見れば枚挙に暇ない。
それ故に「国民に正しい情報を伝える」ということ、更に「その情報を正しく判断出来るようになること」この2つは民主制度を正しく維持する上で極めて重要になる。
だが、日本のマスコミはそもそも大半が龍国の手先となり、龍国に都合の悪いことを日本人に伝えなかったばかりか、自衛の大事さを国民に伝えず、その結果 龍国の侵略を招くことになってしまった。
龍国は「日本 与しやすし!」と勘違いしてしまい、大陸国家なのに関わらず海洋国家の代表格の日本と更に後ろにいるアメリカやイギリスなどファイブアイズと呼ばれる国に喧嘩を売るようなことをしてきた。
確かにこの時点で、国力だけで見ると龍国のソレは日本とアメリカを足した以上に大きく、南海新都市などは龍国の規模に遥かに及ばないのではあったが。
まぁ、このようにして日龍双方は戦争へと突き進んでいく。
具体的な龍国侵攻の動きは次々と日海軍や日米の情報機関に伝えられた。
まず、2038年の初頭には多くの武装漁船に新たな装甲板などを取り付けているという情報が多数寄せられ、2038年の秋頃になり、龍国の南部沿岸部の港の多くに、装甲を施した武装漁船が多く見られるようになってきた。
日海軍の明石大佐はこの偽装民兵に数名、ヒューミットを紛れ込ませていたのでおおよその動きは分かるようになっていた。
彼らからもたらされる情報では、「2040年に大きな動きがあるかもしれない」というものが多くを占めていた。
つまりあと一年ちょっとで龍国海軍がなんらかの形で日本に侵攻してくる可能性が極めて高いということなのだ。
2038年当時で、実戦配備されたゼロ戦はおよそ20機。
イ400KAIにいたってはわずか三隻が実戦配備された処だったのだ。
量産の最大の障害になっているのは水素核融合電池(パワーパック)の量産が現在の生産体制ではかなり困難だったからだ。
当時はメガフロートの発電所用の大型のパワーパックの量産も急がねばならない理由もあり、戦闘機用などに生産を集中出来なかったのだ。
そこで川北大将をはじめ、日海軍の幹部たちは「可能な限り時間稼ぎをしよう」という案を出した。
川北は戦術面での最高責任者である中将の根本に「龍国と衝突した処から2年、なんとか時間稼ぎ出来ないだろうか?」ということと、
「今ある戦力だけで初戦を完勝させてくれ」という二つのオーダーを彼に対して出した。
根本をはじめ、日海軍の幹部たちは総出で知恵を絞りはじめた。
龍国との緒戦がどのようなものになるかを数パターン用意した。
まず敵がどこに上陸してくるか?
どのような軍の編成で侵攻してくるか?
どのような戦法で攻めてくるのか?
どのような時期を狙って攻めてくるか?
まず、中距離巡航ミサイルなどで一方的に飽和攻撃をしかけてくるか?という点で会議に参加している面々がそれぞれ意見を出したが、これについては情報部の明石が「彼らのこれまでの侵略パターンとしてはその選択はおそらくありえないだろう」という認識を示した。
これまでの彼らの侵略法は、テロ組織に先に破壊活動をさせておいて、その鎮圧などを口実に現地政府の了承を得ながら少しずつ部隊を駐屯させていく、というものが大半で、武力を行使した事例はウイグルやチベット、朝鮮半島など明らかに戦力が劣っている相手に対して行われていた。
インドなど比較的強力な敵に対しては、瞬間的な勝利のみを得て、終息させている点などを考えると、米軍が後ろに控えている状態の日本を相手にいきなりミサイルの飽和攻撃はさすがに考え難いというものだった。
(続く)
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