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第2章
赤城と南海新都市で働く車
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さて「車」についてだが、南海新都市はその言葉通り「南海」に浮かんでいる。
つまり「暑い」「日差しが強い」処で使うことを想定されているわけだが、南海新都市の居住区の多くは一階層下の屋根が一面に張ってある場所なので基本的にはかなり涼しくて過ごしやすい。
台風などが近付いたときは側面の防壁を閉めてしまうので風通しが悪くなりいきなり暑くなるが、その時は強力な冷房機が稼働するので30度以上になって熱中症になってしまうことはない。
だが、最上層は「暑い」「風が強い」「日差しが強い」のでそれに応じた耐久性や装備のある車を使う必要がある。
日本の車は世界的に見ても品質がきわめてよく、僻地などでも非常によく使われている。
龍国やロシアなどは日本にフロント会社を作り、中古車を大量に買い付けていたりするし、またタフな使い方が出来る四駆などは「貿易用」などと言って東南アジアなどに輸出され、そこで原型を留めないくらいまで使用されたりする。
南海新都市は普通の都市とそれほど変わりがないので使われている車もそれほど本土と変わりがないのだが、「赤城」は言ってしまえば「戦場」なわけなので使っている車はそれらとはまた少し違うものが選ばれていた。
まず、赤城ではガソリンエンジンの車は基本的には軽四以外には存在していない。
燃料の調達が面倒という理由もあるのだが、先にも書いたがガソリンは揮発性が極めて高く、引火性が強いため被弾した場合に火災や爆発を起こしやすいからだ。
そこで多くはディーゼルエンジンが使われているわけだが、赤城で最も多いのはランドクルーザー70(ナナマル)系で、ボディバリエーションや年代がバラバラなものを目的に応じて使われていた。
個人で運用する場合は2ドアのショートホイールベース(全長4mほど)、家族持ちなど複数人で運用する場合はややホイルベースの長いFRPトップ2ドアのミドル(全長4.3mほど)や4枚ドアのセミロング(全長4.8mほど)が多く使われていた。
このうち、2ドアのショートには純正で屋根が幌布を張ったタイプの物は外せば荷台がむき出しになるので、荷台に直接トライポッドや銃座を備え付けてM2ブローニング重機関銃を載せたり、カールグスタフ84mm無反動砲、場合によってはVAD(Vulcan Air Defense System)と呼ばれる20mm対空機関砲を軽量化した物を搭載することがあった。
73(ナナサン)とか74(ナナヨン)とか呼ばれているミドルホイルベースのFRPトップや77(ナナナナ)とか76(ナナロク)と呼ばれている4枚ドアのセミロング車には天井にタレット銃座が備え付けられていて、非常時にはその銃座にM2ブローニングなどの銃器を載せて使う様に準備されていた。
銃座にはかなりの荷重がかかるため、タレットはボディ内に張られたロールバーに直結されて強度を稼いでいたため、内部が狭くなることを嫌い、アウターロールバー(ロールケージ)を車の外に付けて強度を稼いでいた。
これらは通常、人間がダイレクトに操作するのだがそうなると当然被弾することでの人的損害もあり、セントリーガン(無人で稼働させる光学センサーで目標を自動的に捕捉、追尾し、射撃する兵器)の開発を急いだ。
これについては航空機に搭載する必要もあり、最優先で開発が急がれていたのだが、見張りを自動で行う処までは出来ているが、射撃判断までは機械やAIに任せておくと誤射が相次ぐので射撃の判断は人間に任せておいて、遠隔地でひとつもしくは複数のセントリーガンを同時に操作する方式が考えられていた。
また、車の外に顔を出して射撃するのではなく、比較的防弾装置もしっかりした車内から遠隔操作で車外のセントリーガンを操作する方式も可能としていた。
一般で使われている車両を兵器として活用することでコストを安く抑えようとしているので「防弾」はきわめて重要な要素である。
ただ、普段からバカ重い防弾ガラスや装甲板を付けているとあまりにも燃費やタイヤの消費、足回りなどの劣化がひどくなるので、普段は取り外しておいて必要時だけ必要な箇所に貼り付け使用するという方式が採用された。
防弾板についての技術開発も急ピッチで進められている。
これは防衛省の技本で独自開発が進められているMBTなどの装甲の技術が流用されていて、現在、技本と日海軍開発部は連携して防弾能力の向上の技術開発を進めている。
車両や戦闘機の防弾能力の向上にもそれらの技術が使われていて、特に車両の防弾板は必要に応じて複数の防弾板を重ねることで防御力を上げることが手軽に行えるようにしていた。
その装甲板の重さは一枚で15kg程度で個人でも持ち上げれる重さで、腕に引っ掛けるベルトを装着させることで個人携行用の盾としても使用出来る。
また、背中に背負えば後方からの銃弾や爆弾の破片をある程度は防ぐことも出来る。
車載する機関銃の前面に取り付ければ手軽に防御力をアップさせることも出来る。
ランクルは通常であれば最大積載量が350kg~800kg程度なので1tを超える重量物を載せての運用は基本的に不可能であるのだが、エンジンやミッション、デフやドライブシャフトなどの強度は元からかなり余裕があるので強化する必要はなかった。
だが、操舵系、特にタイロッドエンドなどのジョイント部は大型トラックで使われている大型でグリスニップルが付いている耐久性の高いものと交換されたり、ショックやリーフスプリング、ブッシュなどを一回り強度の高いものに交換したことで重量物の積載も可能としている。
これらは比較的、技術的にも容易なため、いわゆる町工場で十分対応可能ということで大量に輸入された後に南海新都市内の町工場で改造が加えられて使われている。
南海新都市で使用されている一般車はガソリン車やハイブリッド車も多いが、近年、日本メーカーによって量産化が実現されたナトリウムイオンバッテリーを使用した電気自動車がかなり普及していた。
南海新都市は、バイオ燃料の一大生産地&精製地や水素核融合発電所が豊富にあるため、電気代はきわめて安く、さらにナトリウムイオンバッテリーが安くなっているのと再生使用が容易なことなどもあってかなり普及が進んでいる。
そのため、各家庭などにもUBS(予備電源)として大型のバッテリーを保有するものが増えていた。
これは近年、日本本土がインフラに対して国が費用をかけないことが原因となっての大規模停電等が立て続けにおこり、多くの国民が電気が突然なくなる恐怖を実感として持ち始めたことも原因としてあるのだが、
戦略空母である赤城はもちろんのこと、南海新都市も基本的に「龍国の敵」になる前線なわけなのだから住民の意識もそれ相応に高いというわけなのだ。
電気がなくなるとスマホはもちろんありとあらゆる家電は使えなくなり、突然、石器時代の生活を強要されてしまう。
かといって、太陽電池は龍国が粗悪品を大量生産したことで世界中で公害問題なども起こっていたのと、国産品はきわめて少ないので南海新都市では普及していなかった。
表向き「日本製」となっているものもよく調べると龍国で作って日本で最終組み立てしているものなどもある。
こういう製品は現在 非常に多く、我々のお金がそのような形で龍国に流れるのはマズいし、そのお金が間接的に我々への脅威となる兵器に転用されることは避けねばならないわけだ。
南海新都市や赤城の居住区は屋根の下というのも太陽電池が普及しない要因のひとつでもあった。
わざわざ太陽光を電気に換えなくても、バイオマス燃料を作っているので空いたスペースがあればバイオマス燃料用の培養プールを作った方が遥かに効率が良い。
住民によって考え方が若干違うのだが、多くの人は従来のレシプロエンジンの車を使用している。
理由は「ディーゼルエンジン車はとりあえず頑丈で長持ち」だからだ。
例えばランクル70系では途中から24V車から12Vにはなっているのだが、それでも比較的大型のバッテリーを二つ搭載している。
「いざ長期停電」とかになったとしても、90リットルもある大きめな燃料タンクを臨時のジェネレーター(発電機)として使用し、その電力を家庭用に回す、という使い方も出来る。
赤城にせよ南海新都市にせよ、本土に比べて軽油(相当の燃料)の価格は半分以下で、しかも供給ポイント(ガソリンスタンド)があちこちにあるというのも電気自動車やハイブリット車がそこまで普及していない理由でもある。
だが、最初から「発電は専用の発電機を使う」という前提で小型のディーゼルエンジン発電機を購入し、電気自動車やハイブリッド車の大容量のバッテリーを併用する動きもある。
割合的に言うと、南海新都市での車の割合はディーゼル車:ハイブリット車:電気自動車=5:3:2 くらいの割合だ。
これは余談だが、電子制御される前のエンジンを搭載している「丸目」の頃のランクル70系は、エンジンを一度かけてしまえば例えバッテリーを取り外してもエンジンは回り続けるので、赤城の乗員の多くは、わざわざ古いランクル70系を好んで乗る者が多い。
生産時期が新しい「角目」のランクル70系は、エンジンが電子制御が一部導入されているのでエンジンをかけた後でバッテリーが破損したり取り外した場合はエンジンが止まってしまう。
細かいようだが、このような小さな違いは「戦場」では命取りになることもあるので、拘りを持つものが非常に多いのだ。
日海軍というものは、一応軍隊式の階級制が導入はされているが、いわば「私的武装集団」に過ぎないので、一般的な軍隊ほどガチガチに統制されているわけではない。
これは、キッチリ統制されている自衛隊などをディスっているというわけではなく、どちらかというと「龍国の脅威に対して立ち上がった有志の集まり」という性質が大きく影響しているのだと思う。
それはそうと、ランクルを生産しているのは、T社の子会社のA社なのだが、T社自体は龍国にドップリと首まで浸かってしまっているので南海新都市には入れていない。
だが、子会社のA社はエンジンの生産拠点を南海新都市に移転してもらっている。
ちなみに現在、生産しているのは電子制御される前のエンジンだった1PZ-T(直列5気筒3.5リッターディーゼルターボエンジン)と、1HZ-T(直列6気筒4.2リッターディーゼルターボエンジン)の2種類だ。
これらは従来品をターボ化したものの再生産品なのだが、1PZ-Tは130馬力、1HZ-Tは150馬力の出力がある。
これらのエンジンは従来品のノンターボエンジンにエンジンの圧縮比を下げることなく比較的小型のタービンを載せることで、エンジンの超低速回転時のエンジンの粘りやトルクをそのままに、高回転時のパワーを増した改造が施されている。
ちなみに、A社では自衛隊に納品されている高機動車が未だに生産されており、これをマニュアルミッションに改造したモデルを赤城では使われている。
「えっ??MT(マニュ車)?!」と驚かれるかもしれないが、それにはちゃんとした理由がある。
自衛隊・・・というか、元になった米軍のハンビーの運用思想は「誰でも乗れるようにAT車にする」であったのだが、赤城の乗員はマニュ車で訓練を受けているし、先にも書いたがバッテリーが被弾したら動かなくなるAT車はここでは都合が悪いのだ。
(ま、ここら辺は運用思想が違うだけだ)
ただ、この高機動車はエンジンが多少面白いものが搭載されている。
15B-FTエンジンといって、4.1リッター四気筒 直噴インタークーラーターボディーゼルエンジンが搭載されている。
前出の1PZ-T や1HZ-T エンジンは基本的にH社系のエンジンなのだが、この15B-FTというのはB社系エンジンがベースとなっていてその基本設計はなんと1960年代に設計され、初代のB型エンジンが1969年に登場してから、延々とボアアップと改良が繰り返されて使われ続けている、ある意味日本の「名品エンジン」だ。
欠点は1HZ-Tなどと比べ、回転がモッサリしていたり振動や騒音が大きいことや、やや重いことなどがあるのだが、1HZ-TなどがOHCといってタイミングベルトでカムなどを同期して駆動させているのに対し、15B-FTは昔ながらのOHVでメカ的にカムを駆動させている。
その結果、「カシャカシャ」「パチパチ」というカムとタイロッドが動く時に出る騒音や振動がすごくなるのだが、タイミングベルトが10万キロ毎に交換しなければならないのに対し、OHVはそもそも交換する部品がないことなどから軍用車やトラックなどでは未だに根強く使用されている。
では、1PZ-Tや1HZ-Tが兵器として劣っているのか?と言えばそうとも言えなくて、エンジン自体が小型軽量に出来る点や、振動や騒音が少ない点は隠密行動に適しているとか、タイミングベルトの交換も工具さえあれば素人でも20分程度で可能なので、それほどOHCであることは短所とはされていないのだ。(部品も安いし)
高機動車の15B-FTに話を戻すが、元々3リッターであったB型エンジンを直噴化し、更にボアアップやターボ化、更に更にインタークーラーまで付けて高出力を実現しているという点でマニアも喜ぶエンジンであることは間違いがない。
そこで、70系オーナーの中にもエンジンのオーバーホールをキッカケにして15B-FTにエンジンを載せ替えする、という人間がいた。
70系や高機動車は普段はこのように普通の車として使われていたのだが、緊急時には大量の装甲板を取り付け、荷台やタレットに銃器を載せて前線に飛び出していくのだった。
つまり「暑い」「日差しが強い」処で使うことを想定されているわけだが、南海新都市の居住区の多くは一階層下の屋根が一面に張ってある場所なので基本的にはかなり涼しくて過ごしやすい。
台風などが近付いたときは側面の防壁を閉めてしまうので風通しが悪くなりいきなり暑くなるが、その時は強力な冷房機が稼働するので30度以上になって熱中症になってしまうことはない。
だが、最上層は「暑い」「風が強い」「日差しが強い」のでそれに応じた耐久性や装備のある車を使う必要がある。
日本の車は世界的に見ても品質がきわめてよく、僻地などでも非常によく使われている。
龍国やロシアなどは日本にフロント会社を作り、中古車を大量に買い付けていたりするし、またタフな使い方が出来る四駆などは「貿易用」などと言って東南アジアなどに輸出され、そこで原型を留めないくらいまで使用されたりする。
南海新都市は普通の都市とそれほど変わりがないので使われている車もそれほど本土と変わりがないのだが、「赤城」は言ってしまえば「戦場」なわけなので使っている車はそれらとはまた少し違うものが選ばれていた。
まず、赤城ではガソリンエンジンの車は基本的には軽四以外には存在していない。
燃料の調達が面倒という理由もあるのだが、先にも書いたがガソリンは揮発性が極めて高く、引火性が強いため被弾した場合に火災や爆発を起こしやすいからだ。
そこで多くはディーゼルエンジンが使われているわけだが、赤城で最も多いのはランドクルーザー70(ナナマル)系で、ボディバリエーションや年代がバラバラなものを目的に応じて使われていた。
個人で運用する場合は2ドアのショートホイールベース(全長4mほど)、家族持ちなど複数人で運用する場合はややホイルベースの長いFRPトップ2ドアのミドル(全長4.3mほど)や4枚ドアのセミロング(全長4.8mほど)が多く使われていた。
このうち、2ドアのショートには純正で屋根が幌布を張ったタイプの物は外せば荷台がむき出しになるので、荷台に直接トライポッドや銃座を備え付けてM2ブローニング重機関銃を載せたり、カールグスタフ84mm無反動砲、場合によってはVAD(Vulcan Air Defense System)と呼ばれる20mm対空機関砲を軽量化した物を搭載することがあった。
73(ナナサン)とか74(ナナヨン)とか呼ばれているミドルホイルベースのFRPトップや77(ナナナナ)とか76(ナナロク)と呼ばれている4枚ドアのセミロング車には天井にタレット銃座が備え付けられていて、非常時にはその銃座にM2ブローニングなどの銃器を載せて使う様に準備されていた。
銃座にはかなりの荷重がかかるため、タレットはボディ内に張られたロールバーに直結されて強度を稼いでいたため、内部が狭くなることを嫌い、アウターロールバー(ロールケージ)を車の外に付けて強度を稼いでいた。
これらは通常、人間がダイレクトに操作するのだがそうなると当然被弾することでの人的損害もあり、セントリーガン(無人で稼働させる光学センサーで目標を自動的に捕捉、追尾し、射撃する兵器)の開発を急いだ。
これについては航空機に搭載する必要もあり、最優先で開発が急がれていたのだが、見張りを自動で行う処までは出来ているが、射撃判断までは機械やAIに任せておくと誤射が相次ぐので射撃の判断は人間に任せておいて、遠隔地でひとつもしくは複数のセントリーガンを同時に操作する方式が考えられていた。
また、車の外に顔を出して射撃するのではなく、比較的防弾装置もしっかりした車内から遠隔操作で車外のセントリーガンを操作する方式も可能としていた。
一般で使われている車両を兵器として活用することでコストを安く抑えようとしているので「防弾」はきわめて重要な要素である。
ただ、普段からバカ重い防弾ガラスや装甲板を付けているとあまりにも燃費やタイヤの消費、足回りなどの劣化がひどくなるので、普段は取り外しておいて必要時だけ必要な箇所に貼り付け使用するという方式が採用された。
防弾板についての技術開発も急ピッチで進められている。
これは防衛省の技本で独自開発が進められているMBTなどの装甲の技術が流用されていて、現在、技本と日海軍開発部は連携して防弾能力の向上の技術開発を進めている。
車両や戦闘機の防弾能力の向上にもそれらの技術が使われていて、特に車両の防弾板は必要に応じて複数の防弾板を重ねることで防御力を上げることが手軽に行えるようにしていた。
その装甲板の重さは一枚で15kg程度で個人でも持ち上げれる重さで、腕に引っ掛けるベルトを装着させることで個人携行用の盾としても使用出来る。
また、背中に背負えば後方からの銃弾や爆弾の破片をある程度は防ぐことも出来る。
車載する機関銃の前面に取り付ければ手軽に防御力をアップさせることも出来る。
ランクルは通常であれば最大積載量が350kg~800kg程度なので1tを超える重量物を載せての運用は基本的に不可能であるのだが、エンジンやミッション、デフやドライブシャフトなどの強度は元からかなり余裕があるので強化する必要はなかった。
だが、操舵系、特にタイロッドエンドなどのジョイント部は大型トラックで使われている大型でグリスニップルが付いている耐久性の高いものと交換されたり、ショックやリーフスプリング、ブッシュなどを一回り強度の高いものに交換したことで重量物の積載も可能としている。
これらは比較的、技術的にも容易なため、いわゆる町工場で十分対応可能ということで大量に輸入された後に南海新都市内の町工場で改造が加えられて使われている。
南海新都市で使用されている一般車はガソリン車やハイブリッド車も多いが、近年、日本メーカーによって量産化が実現されたナトリウムイオンバッテリーを使用した電気自動車がかなり普及していた。
南海新都市は、バイオ燃料の一大生産地&精製地や水素核融合発電所が豊富にあるため、電気代はきわめて安く、さらにナトリウムイオンバッテリーが安くなっているのと再生使用が容易なことなどもあってかなり普及が進んでいる。
そのため、各家庭などにもUBS(予備電源)として大型のバッテリーを保有するものが増えていた。
これは近年、日本本土がインフラに対して国が費用をかけないことが原因となっての大規模停電等が立て続けにおこり、多くの国民が電気が突然なくなる恐怖を実感として持ち始めたことも原因としてあるのだが、
戦略空母である赤城はもちろんのこと、南海新都市も基本的に「龍国の敵」になる前線なわけなのだから住民の意識もそれ相応に高いというわけなのだ。
電気がなくなるとスマホはもちろんありとあらゆる家電は使えなくなり、突然、石器時代の生活を強要されてしまう。
かといって、太陽電池は龍国が粗悪品を大量生産したことで世界中で公害問題なども起こっていたのと、国産品はきわめて少ないので南海新都市では普及していなかった。
表向き「日本製」となっているものもよく調べると龍国で作って日本で最終組み立てしているものなどもある。
こういう製品は現在 非常に多く、我々のお金がそのような形で龍国に流れるのはマズいし、そのお金が間接的に我々への脅威となる兵器に転用されることは避けねばならないわけだ。
南海新都市や赤城の居住区は屋根の下というのも太陽電池が普及しない要因のひとつでもあった。
わざわざ太陽光を電気に換えなくても、バイオマス燃料を作っているので空いたスペースがあればバイオマス燃料用の培養プールを作った方が遥かに効率が良い。
住民によって考え方が若干違うのだが、多くの人は従来のレシプロエンジンの車を使用している。
理由は「ディーゼルエンジン車はとりあえず頑丈で長持ち」だからだ。
例えばランクル70系では途中から24V車から12Vにはなっているのだが、それでも比較的大型のバッテリーを二つ搭載している。
「いざ長期停電」とかになったとしても、90リットルもある大きめな燃料タンクを臨時のジェネレーター(発電機)として使用し、その電力を家庭用に回す、という使い方も出来る。
赤城にせよ南海新都市にせよ、本土に比べて軽油(相当の燃料)の価格は半分以下で、しかも供給ポイント(ガソリンスタンド)があちこちにあるというのも電気自動車やハイブリット車がそこまで普及していない理由でもある。
だが、最初から「発電は専用の発電機を使う」という前提で小型のディーゼルエンジン発電機を購入し、電気自動車やハイブリッド車の大容量のバッテリーを併用する動きもある。
割合的に言うと、南海新都市での車の割合はディーゼル車:ハイブリット車:電気自動車=5:3:2 くらいの割合だ。
これは余談だが、電子制御される前のエンジンを搭載している「丸目」の頃のランクル70系は、エンジンを一度かけてしまえば例えバッテリーを取り外してもエンジンは回り続けるので、赤城の乗員の多くは、わざわざ古いランクル70系を好んで乗る者が多い。
生産時期が新しい「角目」のランクル70系は、エンジンが電子制御が一部導入されているのでエンジンをかけた後でバッテリーが破損したり取り外した場合はエンジンが止まってしまう。
細かいようだが、このような小さな違いは「戦場」では命取りになることもあるので、拘りを持つものが非常に多いのだ。
日海軍というものは、一応軍隊式の階級制が導入はされているが、いわば「私的武装集団」に過ぎないので、一般的な軍隊ほどガチガチに統制されているわけではない。
これは、キッチリ統制されている自衛隊などをディスっているというわけではなく、どちらかというと「龍国の脅威に対して立ち上がった有志の集まり」という性質が大きく影響しているのだと思う。
それはそうと、ランクルを生産しているのは、T社の子会社のA社なのだが、T社自体は龍国にドップリと首まで浸かってしまっているので南海新都市には入れていない。
だが、子会社のA社はエンジンの生産拠点を南海新都市に移転してもらっている。
ちなみに現在、生産しているのは電子制御される前のエンジンだった1PZ-T(直列5気筒3.5リッターディーゼルターボエンジン)と、1HZ-T(直列6気筒4.2リッターディーゼルターボエンジン)の2種類だ。
これらは従来品をターボ化したものの再生産品なのだが、1PZ-Tは130馬力、1HZ-Tは150馬力の出力がある。
これらのエンジンは従来品のノンターボエンジンにエンジンの圧縮比を下げることなく比較的小型のタービンを載せることで、エンジンの超低速回転時のエンジンの粘りやトルクをそのままに、高回転時のパワーを増した改造が施されている。
ちなみに、A社では自衛隊に納品されている高機動車が未だに生産されており、これをマニュアルミッションに改造したモデルを赤城では使われている。
「えっ??MT(マニュ車)?!」と驚かれるかもしれないが、それにはちゃんとした理由がある。
自衛隊・・・というか、元になった米軍のハンビーの運用思想は「誰でも乗れるようにAT車にする」であったのだが、赤城の乗員はマニュ車で訓練を受けているし、先にも書いたがバッテリーが被弾したら動かなくなるAT車はここでは都合が悪いのだ。
(ま、ここら辺は運用思想が違うだけだ)
ただ、この高機動車はエンジンが多少面白いものが搭載されている。
15B-FTエンジンといって、4.1リッター四気筒 直噴インタークーラーターボディーゼルエンジンが搭載されている。
前出の1PZ-T や1HZ-T エンジンは基本的にH社系のエンジンなのだが、この15B-FTというのはB社系エンジンがベースとなっていてその基本設計はなんと1960年代に設計され、初代のB型エンジンが1969年に登場してから、延々とボアアップと改良が繰り返されて使われ続けている、ある意味日本の「名品エンジン」だ。
欠点は1HZ-Tなどと比べ、回転がモッサリしていたり振動や騒音が大きいことや、やや重いことなどがあるのだが、1HZ-TなどがOHCといってタイミングベルトでカムなどを同期して駆動させているのに対し、15B-FTは昔ながらのOHVでメカ的にカムを駆動させている。
その結果、「カシャカシャ」「パチパチ」というカムとタイロッドが動く時に出る騒音や振動がすごくなるのだが、タイミングベルトが10万キロ毎に交換しなければならないのに対し、OHVはそもそも交換する部品がないことなどから軍用車やトラックなどでは未だに根強く使用されている。
では、1PZ-Tや1HZ-Tが兵器として劣っているのか?と言えばそうとも言えなくて、エンジン自体が小型軽量に出来る点や、振動や騒音が少ない点は隠密行動に適しているとか、タイミングベルトの交換も工具さえあれば素人でも20分程度で可能なので、それほどOHCであることは短所とはされていないのだ。(部品も安いし)
高機動車の15B-FTに話を戻すが、元々3リッターであったB型エンジンを直噴化し、更にボアアップやターボ化、更に更にインタークーラーまで付けて高出力を実現しているという点でマニアも喜ぶエンジンであることは間違いがない。
そこで、70系オーナーの中にもエンジンのオーバーホールをキッカケにして15B-FTにエンジンを載せ替えする、という人間がいた。
70系や高機動車は普段はこのように普通の車として使われていたのだが、緊急時には大量の装甲板を取り付け、荷台やタレットに銃器を載せて前線に飛び出していくのだった。
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