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第2章
俺の考える最強の戦闘機
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小型核融合炉の開発に成功した川北重工とその協力会社たちは航空機、いや独自開発の戦闘機の開発に本格的に力を注ぐ事になった。
第四開発室の面々が次に担当したのは、航空機の制御システムの小型化と汎用品を活用して開発費と製造費を安価に収める方法を確立させること。
近年の戦闘機開発はそれこそ何十年、何兆円もかかるようなものなので、一国だけでは不可能になりつつある正に国家事業と言うに相応しいものになっていたのだが、第四開発室の坂本主任は「そんなのオカシイだろ、十分の一程度の開発費で同等以上のものを作り出してやるよ」と常々 周囲に言い続けていた。
「従来の最新鋭戦闘機を軽く凌駕する全く新たなコンセプトの戦闘機」のアイデアを子供の頃から持ち続けていた坂本にとって、開発を補助するAIの開発もその野望の実現の一歩に過ぎないのだった。
正直、小型核融合発電機の発明ってのは坂本の構想からは外れていたのだが、彼はこの核融合炉(パワーユニット)を得て、新たなコンセプトの戦闘機を決めた。
「現代にゼロ戦を蘇らせて、しかもそれに最強の戦闘力と防御力を与える」ということだ。
小型の核融合炉による豊富な発電量により電動モーターでプロペラを回し推進力を得る。
プロペラによって得られる推進力による速度はせいぜい800km/hが精々なので、その速度で得られる戦闘力はたかが知れている。
戦闘機というものは誘導ミサイルなどを除き、予め稼いでおいた高度(位置エネルギー)を速度(運動エネルギー)に変換して戦うというのが空戦の常識なのだが、速度が遅いということはマッハ2とか3が出る最新鋭のジェット戦闘機には最初から歯が立たないということになる。
常識では。
そこで坂本はぶっ飛んだ発想をすることで「ゼロ戦」に現代最強の戦闘力を与える方法を思い付く。
まず問題となった「速度の遅さ」だが、速度が遅いということは逆に言うと旋回半径を小さくし、旋回率も上げることが出来る。
もしジェット戦闘機が大戦機のゼロ戦みたいな高機動をしようとしたらまず機体が高Gに耐えられないだろうし、パイロットも耐えられない。
だが、軽量で旋回性が高く格闘戦がやたらと強かった「ゼロ戦」ならジェット機の半分以下の時間と半径でターンができる、つまり容易く後ろを取ることが出来る。
常識的に考えて、現代の戦闘機同士の空中戦では目視が不可能な距離をレーダーで敵の位置を捕捉して、空対空ミサイルで仕留める、という戦法が主流なわけなのだが、レーダーで捕捉することが極めて困難なステルス機の登場で多少なりとも昔ながらの格闘戦が見直されてきた。
だがそれはあくまでも「ジェット機同士」の話であって、ジェット機vsプロペラ機ではどう足掻いても速度の劣るプロペラ機ではジェット機には敵わない。
高速で上昇力の高いジェット戦闘機が旧式のレシプロ機を攻撃するのであれば、まず優れた上昇力を活かして高度を取り、「高度」を「速度」に換えながらレシプロ機を上空から一気に攻撃する一撃離脱戦法を採るだろう。
史実でも格闘戦を得意とするゼロ戦は、一撃離脱戦法を得意とする連合軍機に最終的には敗れ去ってしまっていた。
だが、もしその攻撃を事前に的確に「察知」し、低速なプロペラ機の利点を活かして一気にブレイク(急激な方向変換)、攻撃してきたジェット機の攻撃を躱すと共にオーバーシュート(追い抜かせること)させ敵の後ろを取り、無防備な後方から一方的に高い火力を叩き込むことが出来れば、いくら最新鋭のジェット戦闘機と言えども旧式(に見える)プロペラ機にも容易く堕とされてしまうわけだ。
坂本は若い頃から夢想していた。
「もし旧式のゼロ戦が最新鋭のステルスジェット戦闘機に勝てるとしたらどうすればいいのか?」
「現代の技術ではレーダーに捉えられないようにする技術は機体形状を工夫して『レーダー波を反射させない形状にすること』と『レーダー波を吸収する塗料を塗布して反射させないこと』の2つを活用することだが、もっと別の方法が開発出来たら機体形状に関係なくレーダー波に捉えられないようになるのではないか?」
「そうすれば機体形状を最初から考える必要がなく、昔実際に存在した“バトルプルーフ(戦闘での実証証明付き)
”の機体形状をそのまま利用出来るのではないか?」
「それなら『ゼロ戦』を現代に復活させても、最強の戦闘力を付与出来るのではないか?」
「レーダーで捉えることが不可能にさせれれば、現代の戦闘機の戦闘スタイルを根底から崩すことが出来る」
最初はこんな理由で、たまたま親父さんが川北重工の(当時)社長をしていたこともあって開発部門のひとつに潜り込んだのだった。
開発部門は基本的に横同士の繋がりがなく、隣の研究室が何をやっているのか分からなかったのだが、坂本はその独特の人誑し(ヒトタラシ)の能力を駆使して他の研究室の研究者たちとあっという間に仲良くなっていった。
そこで、坂本は驚愕の事実を知る。
『レーダーを無効化する技術はもう既に完成していた』ということを。
従来のステルス技術というのは先程も書いたが機体形状と電波吸収塗装の2つの組み合わせなのだが、川北が新たに開発していたのは、『電波吸収塗装と誘導性電波吸収材料を機体の素材に直接組み込む』という極めて特殊な技術だったのだ。
まず、誘導性電波吸収材料というのを簡単に説明すると、材料そのものが電波を吸収し易い物ということ。
川北が以前開発していた航空機の機体(特に翼)で使う素材はカーボンとチタン等の複合素材があったのだが、川北ではカーボンと樹脂系素材の積層構造の新素材を作り上げていた。
これは表に出されることがなかったので自国や他国の戦闘機などで採用されたことはなかったのだが、これだけでもかなり画期的なものだった。
川北の開発陣はこの素材の表面にさらに1mm程度の厚さの誘導性電波吸収素材を貼り付けることに成功したのだが、この誘導性電波吸収素材(RAMと呼ぶ)の表面にある加工が施された。
それは電波暗室で壁面などで使われている四角錐(しかくすい)の突起物がミクロン単位の大きさで表面をビッチリと覆ったものだった。
この目で見えないほど小さな四角錐が電波を四方に乱反射させるのだ。
従来のステルス技術は「機体形状そのものでレーダー波の反射を拡散させ吸収させる」というものだったのだが、この新技術では「素材そのもので電波を吸収させる」ので機体形状を好きに出来るという大きなメリットがあったのだ。
当然ながらその素材をそのままむき出しにしていると表面がザラザラになり空気抵抗が増してしまうので、半透明の電波吸収塗装を表面に塗ることで表面をなだらかにして空気抵抗を減少させる。
この方式の利点は「機体形状を好きなように出来る」と言う他にも「機体に光が反射することを抑える」という効果がある。
レーダーを使えない戦闘、ということは当然、目視中心での有視界戦闘が中心となる。
そうなったとき、光を反射させにくい機体を作れるということは非常にメリットが高い。
またこの素材は従来の電波吸収塗装みたいに度々塗る必要もないので、メンテナンス費用が格段に安く済むというメリットもある。
これは実は既に何年も前に日本国の独自開発の戦闘機を作る時に載せる予定で開発されていたものなのだが、結局のところアメリカやオーストラリア、カナダなどとの共同開発になってしまったため、情報漏洩を恐れて川北の会長が情報提供を拒んだ(隠した)のだった。
元々、電波吸収塗装というのは日本の某メーカーがビルや海洋長大橋などに塗って、航空機や船舶のレーダーに映り込むゴーストを解消させるため開発されたものだったのだが、そのメーカーはこともあろうに日本国ではなくアメリカにその技術を「売ってしまった」。
その結果、アメリカで更に研究開発が進み、ご存知のように最新鋭のステルス戦闘機などにはこの塗料が塗られるようになっているわけなのだが、川北はその技術を会社まるごと買い取り、グループ会社のひとつに組み込んで、他国に情報を抜かれないよう気を付けながら、南海の離れ小島(新都市群)でこっそりと独自の進化を遂げさせていたのだった。
坂本が入る以前から、川北は戦後間も無くの頃から『なんとしてもゼロ戦に継ぐ最強の戦闘機を自社開発する』というのが上層部や開発などの念願だったのだ。
戦後の『平和教育』では兵器というものは忌まわしいもの、持つと侵略や虐殺など悪いことに使うもの、というような歪んだ教育がされてきたのだが、実際には武力を持たないチベットやウイグルは旧共産党国家に侵略され、民族そのものを消滅させてしまうような大虐殺と大弾圧が加えられてしまっている。
この世の中はシビアなのだ。
弱い者は強い者に虐げられ、場合によっては殺される。
それは民主主義や科学が進歩した現在でも変わらないのだ。
そのような「リアリスト(現実主義者)」的な考え方は特に戦前から戦艦や航空機、兵器などを開発していた会社やそれを受け継ぐ企業などに色濃く受け継がれていて、龍国に情報やノウハウが流れてしまうということに危機感を持っていたそれら戦前から存在していた会社は時が流れても代々、「最強の兵器を開発して国を護るのだ」という意思を持ち続けていたのだ。
坂本は以前からゲームをよくやっていた方で、特に大戦期のレシプロ機同士で戦うマルチ対戦型のシミュレーションゲームが好きで、その中でも「ゼロ戦 三二型」を特にこよなく愛用していた。
夢中になったらとことんのめり込むタイプなので十代の頃は廃人寸前までのめり込んでいたわけだが、持ち前のセンスであっという間に達人クラスにまで上達していた。
坂本が次に愛用したのは、川西飛行機が開発した「紫電改」であった。
この紫電改で戦場を荒らしていると、ゼロ戦の時とは違い、度々ジェット戦闘機とマッチングするようになる。
まだ黎明期のジェット戦闘機は欠陥も多く、彼らが持つ弱点、例えば旋回性の低さ、ロールの遅さ、加速性能の悪さなどを突けば勝てないことはないのだが、「もしこれでF-4ファントムとかF-15イーグルなどある程度完成したジェット戦闘機相手だと手も足も出ないよな」と思っていたのだった。
速度がまだそれほど速くない黎明期のジェット戦闘機ならまだしも、F-15など比較的新型のジェット戦闘機がしっかり高度を取って、上空から一気に降下し一撃を加えたあと、格闘戦に移らず逃げに徹したら万に一の勝ち目もない。
だから紫電改でジェット機が襲ってきたらヒラリとかわし、オーバーシュートさせ逃げる敵を機関銃で一撃を加えるのだが、「ここで逃げる敵を高い確率で撃墜出来る武器があったら無敵じゃないの?」と思うようになった。
つまりだ、「遠距離の敵をいちはやく察知」し、「敵の攻撃を素早く交わし」、「追い抜いていく敵を確実に仕留める」ことが可能になりさえすれば、レーダーが使えない世界では無敵になるというわけだ。
最強の戦闘機を作り上げるにはこのような要素が必要となってくる。
1:有視界で敵をいち早く発見するシステム
2:ジェット機ではありえない程の圧倒的な機動力
3:高速で追い抜いていく敵を後方から確実に撃墜する攻撃手段
4:レーダーによる索敵を無効とするシステム
このうち、4の完璧なステルス技術は坂本が入社した頃には既に川北重工が開発を済ませていた。
彼はすぐにその他、1~3までの開発に取り組むのだった。
第四開発室の面々が次に担当したのは、航空機の制御システムの小型化と汎用品を活用して開発費と製造費を安価に収める方法を確立させること。
近年の戦闘機開発はそれこそ何十年、何兆円もかかるようなものなので、一国だけでは不可能になりつつある正に国家事業と言うに相応しいものになっていたのだが、第四開発室の坂本主任は「そんなのオカシイだろ、十分の一程度の開発費で同等以上のものを作り出してやるよ」と常々 周囲に言い続けていた。
「従来の最新鋭戦闘機を軽く凌駕する全く新たなコンセプトの戦闘機」のアイデアを子供の頃から持ち続けていた坂本にとって、開発を補助するAIの開発もその野望の実現の一歩に過ぎないのだった。
正直、小型核融合発電機の発明ってのは坂本の構想からは外れていたのだが、彼はこの核融合炉(パワーユニット)を得て、新たなコンセプトの戦闘機を決めた。
「現代にゼロ戦を蘇らせて、しかもそれに最強の戦闘力と防御力を与える」ということだ。
小型の核融合炉による豊富な発電量により電動モーターでプロペラを回し推進力を得る。
プロペラによって得られる推進力による速度はせいぜい800km/hが精々なので、その速度で得られる戦闘力はたかが知れている。
戦闘機というものは誘導ミサイルなどを除き、予め稼いでおいた高度(位置エネルギー)を速度(運動エネルギー)に変換して戦うというのが空戦の常識なのだが、速度が遅いということはマッハ2とか3が出る最新鋭のジェット戦闘機には最初から歯が立たないということになる。
常識では。
そこで坂本はぶっ飛んだ発想をすることで「ゼロ戦」に現代最強の戦闘力を与える方法を思い付く。
まず問題となった「速度の遅さ」だが、速度が遅いということは逆に言うと旋回半径を小さくし、旋回率も上げることが出来る。
もしジェット戦闘機が大戦機のゼロ戦みたいな高機動をしようとしたらまず機体が高Gに耐えられないだろうし、パイロットも耐えられない。
だが、軽量で旋回性が高く格闘戦がやたらと強かった「ゼロ戦」ならジェット機の半分以下の時間と半径でターンができる、つまり容易く後ろを取ることが出来る。
常識的に考えて、現代の戦闘機同士の空中戦では目視が不可能な距離をレーダーで敵の位置を捕捉して、空対空ミサイルで仕留める、という戦法が主流なわけなのだが、レーダーで捕捉することが極めて困難なステルス機の登場で多少なりとも昔ながらの格闘戦が見直されてきた。
だがそれはあくまでも「ジェット機同士」の話であって、ジェット機vsプロペラ機ではどう足掻いても速度の劣るプロペラ機ではジェット機には敵わない。
高速で上昇力の高いジェット戦闘機が旧式のレシプロ機を攻撃するのであれば、まず優れた上昇力を活かして高度を取り、「高度」を「速度」に換えながらレシプロ機を上空から一気に攻撃する一撃離脱戦法を採るだろう。
史実でも格闘戦を得意とするゼロ戦は、一撃離脱戦法を得意とする連合軍機に最終的には敗れ去ってしまっていた。
だが、もしその攻撃を事前に的確に「察知」し、低速なプロペラ機の利点を活かして一気にブレイク(急激な方向変換)、攻撃してきたジェット機の攻撃を躱すと共にオーバーシュート(追い抜かせること)させ敵の後ろを取り、無防備な後方から一方的に高い火力を叩き込むことが出来れば、いくら最新鋭のジェット戦闘機と言えども旧式(に見える)プロペラ機にも容易く堕とされてしまうわけだ。
坂本は若い頃から夢想していた。
「もし旧式のゼロ戦が最新鋭のステルスジェット戦闘機に勝てるとしたらどうすればいいのか?」
「現代の技術ではレーダーに捉えられないようにする技術は機体形状を工夫して『レーダー波を反射させない形状にすること』と『レーダー波を吸収する塗料を塗布して反射させないこと』の2つを活用することだが、もっと別の方法が開発出来たら機体形状に関係なくレーダー波に捉えられないようになるのではないか?」
「そうすれば機体形状を最初から考える必要がなく、昔実際に存在した“バトルプルーフ(戦闘での実証証明付き)
”の機体形状をそのまま利用出来るのではないか?」
「それなら『ゼロ戦』を現代に復活させても、最強の戦闘力を付与出来るのではないか?」
「レーダーで捉えることが不可能にさせれれば、現代の戦闘機の戦闘スタイルを根底から崩すことが出来る」
最初はこんな理由で、たまたま親父さんが川北重工の(当時)社長をしていたこともあって開発部門のひとつに潜り込んだのだった。
開発部門は基本的に横同士の繋がりがなく、隣の研究室が何をやっているのか分からなかったのだが、坂本はその独特の人誑し(ヒトタラシ)の能力を駆使して他の研究室の研究者たちとあっという間に仲良くなっていった。
そこで、坂本は驚愕の事実を知る。
『レーダーを無効化する技術はもう既に完成していた』ということを。
従来のステルス技術というのは先程も書いたが機体形状と電波吸収塗装の2つの組み合わせなのだが、川北が新たに開発していたのは、『電波吸収塗装と誘導性電波吸収材料を機体の素材に直接組み込む』という極めて特殊な技術だったのだ。
まず、誘導性電波吸収材料というのを簡単に説明すると、材料そのものが電波を吸収し易い物ということ。
川北が以前開発していた航空機の機体(特に翼)で使う素材はカーボンとチタン等の複合素材があったのだが、川北ではカーボンと樹脂系素材の積層構造の新素材を作り上げていた。
これは表に出されることがなかったので自国や他国の戦闘機などで採用されたことはなかったのだが、これだけでもかなり画期的なものだった。
川北の開発陣はこの素材の表面にさらに1mm程度の厚さの誘導性電波吸収素材を貼り付けることに成功したのだが、この誘導性電波吸収素材(RAMと呼ぶ)の表面にある加工が施された。
それは電波暗室で壁面などで使われている四角錐(しかくすい)の突起物がミクロン単位の大きさで表面をビッチリと覆ったものだった。
この目で見えないほど小さな四角錐が電波を四方に乱反射させるのだ。
従来のステルス技術は「機体形状そのものでレーダー波の反射を拡散させ吸収させる」というものだったのだが、この新技術では「素材そのもので電波を吸収させる」ので機体形状を好きに出来るという大きなメリットがあったのだ。
当然ながらその素材をそのままむき出しにしていると表面がザラザラになり空気抵抗が増してしまうので、半透明の電波吸収塗装を表面に塗ることで表面をなだらかにして空気抵抗を減少させる。
この方式の利点は「機体形状を好きなように出来る」と言う他にも「機体に光が反射することを抑える」という効果がある。
レーダーを使えない戦闘、ということは当然、目視中心での有視界戦闘が中心となる。
そうなったとき、光を反射させにくい機体を作れるということは非常にメリットが高い。
またこの素材は従来の電波吸収塗装みたいに度々塗る必要もないので、メンテナンス費用が格段に安く済むというメリットもある。
これは実は既に何年も前に日本国の独自開発の戦闘機を作る時に載せる予定で開発されていたものなのだが、結局のところアメリカやオーストラリア、カナダなどとの共同開発になってしまったため、情報漏洩を恐れて川北の会長が情報提供を拒んだ(隠した)のだった。
元々、電波吸収塗装というのは日本の某メーカーがビルや海洋長大橋などに塗って、航空機や船舶のレーダーに映り込むゴーストを解消させるため開発されたものだったのだが、そのメーカーはこともあろうに日本国ではなくアメリカにその技術を「売ってしまった」。
その結果、アメリカで更に研究開発が進み、ご存知のように最新鋭のステルス戦闘機などにはこの塗料が塗られるようになっているわけなのだが、川北はその技術を会社まるごと買い取り、グループ会社のひとつに組み込んで、他国に情報を抜かれないよう気を付けながら、南海の離れ小島(新都市群)でこっそりと独自の進化を遂げさせていたのだった。
坂本が入る以前から、川北は戦後間も無くの頃から『なんとしてもゼロ戦に継ぐ最強の戦闘機を自社開発する』というのが上層部や開発などの念願だったのだ。
戦後の『平和教育』では兵器というものは忌まわしいもの、持つと侵略や虐殺など悪いことに使うもの、というような歪んだ教育がされてきたのだが、実際には武力を持たないチベットやウイグルは旧共産党国家に侵略され、民族そのものを消滅させてしまうような大虐殺と大弾圧が加えられてしまっている。
この世の中はシビアなのだ。
弱い者は強い者に虐げられ、場合によっては殺される。
それは民主主義や科学が進歩した現在でも変わらないのだ。
そのような「リアリスト(現実主義者)」的な考え方は特に戦前から戦艦や航空機、兵器などを開発していた会社やそれを受け継ぐ企業などに色濃く受け継がれていて、龍国に情報やノウハウが流れてしまうということに危機感を持っていたそれら戦前から存在していた会社は時が流れても代々、「最強の兵器を開発して国を護るのだ」という意思を持ち続けていたのだ。
坂本は以前からゲームをよくやっていた方で、特に大戦期のレシプロ機同士で戦うマルチ対戦型のシミュレーションゲームが好きで、その中でも「ゼロ戦 三二型」を特にこよなく愛用していた。
夢中になったらとことんのめり込むタイプなので十代の頃は廃人寸前までのめり込んでいたわけだが、持ち前のセンスであっという間に達人クラスにまで上達していた。
坂本が次に愛用したのは、川西飛行機が開発した「紫電改」であった。
この紫電改で戦場を荒らしていると、ゼロ戦の時とは違い、度々ジェット戦闘機とマッチングするようになる。
まだ黎明期のジェット戦闘機は欠陥も多く、彼らが持つ弱点、例えば旋回性の低さ、ロールの遅さ、加速性能の悪さなどを突けば勝てないことはないのだが、「もしこれでF-4ファントムとかF-15イーグルなどある程度完成したジェット戦闘機相手だと手も足も出ないよな」と思っていたのだった。
速度がまだそれほど速くない黎明期のジェット戦闘機ならまだしも、F-15など比較的新型のジェット戦闘機がしっかり高度を取って、上空から一気に降下し一撃を加えたあと、格闘戦に移らず逃げに徹したら万に一の勝ち目もない。
だから紫電改でジェット機が襲ってきたらヒラリとかわし、オーバーシュートさせ逃げる敵を機関銃で一撃を加えるのだが、「ここで逃げる敵を高い確率で撃墜出来る武器があったら無敵じゃないの?」と思うようになった。
つまりだ、「遠距離の敵をいちはやく察知」し、「敵の攻撃を素早く交わし」、「追い抜いていく敵を確実に仕留める」ことが可能になりさえすれば、レーダーが使えない世界では無敵になるというわけだ。
最強の戦闘機を作り上げるにはこのような要素が必要となってくる。
1:有視界で敵をいち早く発見するシステム
2:ジェット機ではありえない程の圧倒的な機動力
3:高速で追い抜いていく敵を後方から確実に撃墜する攻撃手段
4:レーダーによる索敵を無効とするシステム
このうち、4の完璧なステルス技術は坂本が入社した頃には既に川北重工が開発を済ませていた。
彼はすぐにその他、1~3までの開発に取り組むのだった。
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