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第2章

疲弊する本土と急成長する新天地

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  沖大東島と小笠原諸島の間にある、日本の領海でも排他的経済水域(EEZ)でもない延長大陸棚に浮かぶ巨大なメガフロート群は当初は川北重工の本拠地のあった兵庫県神戸市の一部のような扱いをされていた。



  ただ、この街は誰でも自由に往来が出来るわけではなく、あくまでも「川北グループの持つ“船舶”という私的所有物」という扱いをされているので川北が許可する者や物資、情報のみ交流や交易が可能であった。

  司法や行政、警察などは川北の許可を得て支部を置き、それらの規模は神戸市は言うに及ばず、兵庫県や大阪府などを凌駕する規模にまで拡大されていた。

  この新都市で上陸を特に規制されていたのは日本国内のマスコミで、川北側は訪問するそれらマスコミの記者などにも強い制限を加え、更に日本本土や海外への報道内容などにもチェックを加え、規制を破った者やフェイクニュースを流す記者やメディアに対しては渡航禁止や独自のメディアによるそれらフェイクニュースの否定や非難など強い対応をしていくことになった。

  この当時、日本国内のマスメディアの大半は、中国本土に存在していた旧共産党政権や過去に朝鮮半島に存在していた政府などの工作活動による影響を強く受けていて、記者の名を借りた「スパイ」や「工作員」が跳梁跋扈していたので川北側の対応は至極当然のものと言えるのだった。

  また川北も新たな都市に入ってくる企業に対しては電気代の無料化などの他にも工業用地の無償提供、社員に対しての社宅などの無償提供など多くのメリットを与える代わりに、それら企業に入り込んでいる「スパイ」を徹底的に排除することを求めた。

  新都市への移転を希望する企業の中にはそれら排除の動きを嫌い、辞退するものもあったが、日本国内の企業の多くは特に中国や朝鮮からの工作員の多さに頭を抱える処も多く、この川北の条件提示に対して快く対処する処が多かった。

  実際、この頃、日本の企業に限らずアメリカやヨーロッパなどでも多くの技術や情報を持つ企業は中国からの工作員によって散々にやられてしまっていて、技術の流出、技術者の流出、ノウハウの流出などが後を絶たない状況に陥っていた。

  これは何も今になって始まったというわけではなく、支那に共産党が誕生する前、つまり第二次世界大戦があった更に前まで遡る。

  1970年代、経済の自由化を掲げた中国共産党政府は欧米や日本などから手に入れた技術やノウハウを元に爆発的な経済成長を始め、2010年頃には世界二位の日本をGDPで追い抜き、世界二位にまで発展した。

  2012年、共産党の内部対立で内戦に陥った支那だったが、東北地方に存在していた旧瀋陽軍区が中心となったクーデターにより「龍国政府」により再度  支那本土は統一されたのだが、新政府への期待により、欧米、特にアメリカからの龍国への投資ブームが沸き起こり、支那は再度、爆発的な経済成長を遂げていくことになる。

  この動きにより、日本は当初こそ龍国への交易によって多くの利益をもたらされることになったのだが、それにより龍国からの工作員は社会の隅々にまで浸透して徐々に企業は活力を失っていくことになった。

  マスコミは龍国にとって不利な情報を一切報道せず、耳障りの良い情報のみを垂れ流す。

  テレビは連日連夜、龍国出身のミュージシャンやエンターテイナーを番組に出させ、龍国で制作された映画やドラマなどを放送し続けた。

  大学や文部科学省などの教育機関にも多くの工作員が入り込み、日本が大戦期に行った侵略をでっち上げ、日本国民に自虐史観を植え付けることに専念する。

  財務省にも多くの工作員が入り込み、増税を繰り返すことで日本経済を疲弊させていく。

  当然、政治家にも工作員が大量に紛れ込み、日本にとって必要な法整備や防衛対策などは徹底的に妨害された。

  このような浸透工作は日本だけでなく西側諸国ほぼ全てに対して満遍なく行われ、それらの工作を一手に仕切っていた統一外交工作部は非常に大きな力を持つようになっていたのだった。

  これらの動きに非常に大きな危機感を持っていた企業は日本国内だけに留まらず、アメリカ、オーストラリア、イギリス、インドなどからも新都市への移転を希望する企業が相次ぐようになっていた。

  中国本土や朝鮮半島での内戦の影響で多数発生した難民の多数が日本本土に流れ込んだ結果、治安は乱れ、経済は混乱をきたした。

  それによって被害を被った日本人の多くはこの新都市への移転を強く希望するようになるのだった。
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