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9話
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黒に囲まれた幕の中で狂った笑い声が響く。よく目を凝らして見ると、その者は仮面をつけていた。しかし、甲高い声という特徴から、女ということが簡単に分かる。
その者が持っているのは、鋭い刃物。周りには、赤いものが飛び散っていた。そして、屍が積みあがっている。一つの国がたった一人によって滅びた瞬間であった。
一人しかいなかったところにあらわれる者。その者は、血にまみれた者に、刃物を持っている者に語りかける。
「人を殺すことが楽しくて仕方がないみたいだね。我にもその気持ちは理解できるけれど、やり過ぎだと思うよ。まぁ、すでに壊れてしまっている主に言っても意味はないだろう。だから、せいぜい我の役に立ってもらわないと困ってしまうよ」
その者は、全く困っているような雰囲気ではない。ただ、楽しそうに笑みを浮かべ、彼女に近づく。
「主は我の最高の駒だ。元々あった国が滅び、新たな国ができる。そこから、我の望む国が作られるのだ。主は復讐するために我と契約をしたが、結局は我に操られて違うものを殺し、いろいろなものを滅ぼした。最高に面白い」
そう述べた者は、彼女に近づく。彼女はそれに怖気づくことはなく、その場に立ち続けている。顔は近づいてくる者の方に向けられており、なぜか不思議なことに膝をついた。
「主人、私は貴方様の駒であり、人形です。好きに使ってください。貴方様の意のままに……」
彼女の頭に触れた手。優しく丁寧に撫でている。
「我には欲しいものがあるのだ。絶対に手に入れて欲しいものだ。だから、主には期待しているよ。協力してもらわないと手に入らないからね」
彼女はその言葉に自信の主に頭を下げた。
「かしこまりました」
彼女の主人の方を見ると、何とも言えない笑みを浮かべている。嬉しいのか、楽しいのか判断できない。しかし、何かを企んでいる表情をしていた。きっと、何か良くないことが起こる。滅びた国に民はいない。なぜなら、民さえも彼女が殺している。では、その国にどんな人が入ってくるのだろうか。
「人ではなく、ここは悪魔が暮らす国になるのだ。主は、そのためによく働いてくれたよ。これからもよろしくね」
人の国ではなく、悪魔の国になってしまう。さて、これからどうなるのだろうか。自分自身の望む未来に思いをはせる者。それは彼女の影に溶けるように消えていった。
その場に残るのは、静寂と燃える音。
「主人のために働き、主人のために死ぬことが私の使命。主人に永遠の忠誠を誓いましょう」
屍に落とされる火種。燃え盛る、人々。国を立ち上げるための復元は、悪魔の力のみで十分だ。人は脆弱だ。悪魔という大きな力に叶うはずがない。人は自身の弱みから悪魔と契約してしまうのだから。
悪魔の国ができたら、悪魔に従う人々は増えてくるだろう。そして、悪魔たちは人の弱みに付け込み、力を得ていくのかもしれない。
彼女は気づいていない。彼女を駒と扱っている主人に利用されていることに、気づくことすらできない。なぜなら、彼女は……。
その者が持っているのは、鋭い刃物。周りには、赤いものが飛び散っていた。そして、屍が積みあがっている。一つの国がたった一人によって滅びた瞬間であった。
一人しかいなかったところにあらわれる者。その者は、血にまみれた者に、刃物を持っている者に語りかける。
「人を殺すことが楽しくて仕方がないみたいだね。我にもその気持ちは理解できるけれど、やり過ぎだと思うよ。まぁ、すでに壊れてしまっている主に言っても意味はないだろう。だから、せいぜい我の役に立ってもらわないと困ってしまうよ」
その者は、全く困っているような雰囲気ではない。ただ、楽しそうに笑みを浮かべ、彼女に近づく。
「主は我の最高の駒だ。元々あった国が滅び、新たな国ができる。そこから、我の望む国が作られるのだ。主は復讐するために我と契約をしたが、結局は我に操られて違うものを殺し、いろいろなものを滅ぼした。最高に面白い」
そう述べた者は、彼女に近づく。彼女はそれに怖気づくことはなく、その場に立ち続けている。顔は近づいてくる者の方に向けられており、なぜか不思議なことに膝をついた。
「主人、私は貴方様の駒であり、人形です。好きに使ってください。貴方様の意のままに……」
彼女の頭に触れた手。優しく丁寧に撫でている。
「我には欲しいものがあるのだ。絶対に手に入れて欲しいものだ。だから、主には期待しているよ。協力してもらわないと手に入らないからね」
彼女はその言葉に自信の主に頭を下げた。
「かしこまりました」
彼女の主人の方を見ると、何とも言えない笑みを浮かべている。嬉しいのか、楽しいのか判断できない。しかし、何かを企んでいる表情をしていた。きっと、何か良くないことが起こる。滅びた国に民はいない。なぜなら、民さえも彼女が殺している。では、その国にどんな人が入ってくるのだろうか。
「人ではなく、ここは悪魔が暮らす国になるのだ。主は、そのためによく働いてくれたよ。これからもよろしくね」
人の国ではなく、悪魔の国になってしまう。さて、これからどうなるのだろうか。自分自身の望む未来に思いをはせる者。それは彼女の影に溶けるように消えていった。
その場に残るのは、静寂と燃える音。
「主人のために働き、主人のために死ぬことが私の使命。主人に永遠の忠誠を誓いましょう」
屍に落とされる火種。燃え盛る、人々。国を立ち上げるための復元は、悪魔の力のみで十分だ。人は脆弱だ。悪魔という大きな力に叶うはずがない。人は自身の弱みから悪魔と契約してしまうのだから。
悪魔の国ができたら、悪魔に従う人々は増えてくるだろう。そして、悪魔たちは人の弱みに付け込み、力を得ていくのかもしれない。
彼女は気づいていない。彼女を駒と扱っている主人に利用されていることに、気づくことすらできない。なぜなら、彼女は……。
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