兄弟ってこれで合ってる！？

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「えっと、教科書はこのダンボールに入れて…。
あと服はあっちで、」

僕、山中 伊央やまなか いお高校1年生は絶賛引越しの準備中だった。

シングルマザーだった母が、再婚することになり義父になる白石さんの家で新しい生活を迎えるためだ。

幸いなことに、今年入った高校から近い距離だったため転校はせずにすんだ。
義父はもう3度会ったことがあり、とてもイケメンで優しく、この人と家族になると思うと恐れ多い。
義父には、僕より1個年上の息子さんがいるそうだが部活が忙しいらしく、まだ1度も会えていなかった。

せっかく家族になるんだから、義兄とも仲良くしたいと思っている。
不安と緊張に押しつぶされそうになりながら、期待を胸に着々とダンボールを詰めていった。

あらかた自分の荷物が終わると、次はキッチン周りの箱詰めに勤しむ。母は仕事をしていたので、家事はほとんど僕がやっていた。料理は好きだし、掃除も嫌いでは無い。

むしろ母がした方が、汚れるし失敗も多いので自分がした方がいい。

「よし、あと調理器具を閉まって…」

ピンポーン


誰か来たようだ。
母が出ると、玄関から賑やかな声がした。

「こんにちは、伊央くん」

義父になる白石 匠たくみさんだった。

「こんにちは…どうしたんですか？急に…」

いつも来る時は連絡をくれるのに。

そう聞くと白石さんは困ったように眉を寄せた。部屋中散らかっているが、とりあえずリビングの椅子に座る。
白石さんは緊張して重くなった口を開くと、思ってもみなかった話だった。

「実はね、来月からシンガポールに行かなくてはならなくなったんだ。」

「え」

「あら、シンガポール？素敵ねぇ」

いや、お母さん。素敵ねぇじゃないでしょ。
明後日には白石さんの家に越して、新婚生活だったよね？？何で、そんな呑気なの。

「…それでね、半年くらいいなきゃ行けなくなってしまってね、、」

「え」

「あら！私パスポートどこにしまったかしら」

「え」

お母さん、ついて行く気満々じゃん～！！
これって僕どうなるの？？まさか僕もシンガポール？？嘘だよね？？

「春美さん！！着いてきてくれるかい！？」

「ええ！もちろんよ！シンガポールで新婚生活も素敵よね！それに、ちょっと長いハネムーンだと思うと楽しみだわ」

「……いや、ハネムーンはちゃんと別で行こうね。それで、相談なんだけど子供たちをどうしようかなと」

「そうねぇ、伊央はせっかく高校受かったんだし日本に残ったほうがいいかも。良りょうくんも部活があるしねぇ。大丈夫よ！伊央は家事が得意だからきっと良くんと2人で暮らせるわ！！」

「は！？」

良くんとは、白石さんの息子さん＝良介さんのことである。僕より1個上の高校2年生でサッカー部に入ってて忙しいけど！！

いや、2人生活って厳しくない！？
よく考えて、2人共！！

「…なるほど、、、どうかな、伊央くん
良介と二人暮し」

「伊央も一緒にシンガポールいく？」


新婚二人とシンガポールは邪魔でしかない。
頑張って勉強して受かった高校だし、日本に残りたい。お義兄さんと仲良くできるか不安だけど、、
でも、折角再婚する2人を邪魔したくないかな。

「…いいよ、僕日本に居たい。良介さんと2人で暮らすよ。」


そういって、まだ出会ったことの無い義兄との二人暮しが決まってしまった。